人権外交
児童の権利に関する条約第4・5回政府報告(児童売買,児童買春及び児童ポルノに関する選択議定書及び武力紛争下の児童の関与に関する選択議定書含む)市民・NGOとの意見交換会
平成28年2月10日 10:00-12:00
於 外務省
平成28年3月14日
出席者・機関
- 外務省ホームページで公募した一般参加者45名
- 関係省庁:内閣官房,内閣府,復興庁,警察庁,法務省,外務省,文部科学省,厚生労働省,経済産業省,環境省,防衛省
概要
1 政府側からの発言(事前の質問に対する回答という形で実施)
外務省
- (1)国際協力全般に関し,まずODA0.7%目標については,我が国の極めて厳しい財政状況も踏まえれば困難であるが,必要な予算が確保されるよう最大限の努力をしていく。
国際人権法の諸規定を踏まえつつ,2015年9月に策定した「平和と成長のための学びの戦略」を踏まえ,教育を受ける権利を享受できていない子どもへの教育支援を推進していく。また,2015年9月に日本が決定した国際保健政策「平和と健康のための基本方針」で,「特に脆弱な立場に置かれやすい子ども等,誰も取り残さないユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」の重要性に焦点を当てている。また,持続可能な開発のための2030アジェンダでも,人間の安全保障の理念が踏まえられており,保健,教育支援等,脆弱な人々の保護及び支援を表明している。
また,ODAを活用した官民連携事業においても,子どもの権利を含む事業の環境及び社会面の影響を十分配慮しつつ実施している。 - (2)児童労働は,児童の権利の侵害につながる深刻な問題と認識。その上で,児童の労働からの解放に資するための途上国の自助努力を支援してきている。児童労働に係る国際協力を政府報告を含めることにつき検討したい。
- (3)「ビジネスと人権に関する国別行動計画」作成の重要性については外務省として認識しており,関係省庁とも調整の上,検討していきたい。
- (4)児童売買,児童買春,児童ポルノ選択議定書第2条(c)のsimulatedという単語の訳を,現在の「擬似の」から訂正すべきとのご意見に関し,「擬似の」は,「児童の」または「あらゆる表現」ではなく,「性的な行為」という文言に係っている。我が国としては,同議定書第2条(c)に定義される「児童ポルノ」には,漫画やコンピュータによる合成画像等は含まれないと解している。条約の日本語訳は,正文テキストにおける個々の文言の意味をできるだけ正確に反映するように,慎重な検討を経て作成しており,訂正等は特段必要ないと考える。
内閣官房
内閣官房は内閣の重要政策の総合調整等を行っているが,児童の性的搾取への対処は,政府としても重要課題と捉えている。現在は,各関係省庁がそれぞれの所掌に従って,取締りなり広報啓発なり,必要に応じて法整備をするなりして対応しているところであるが,こうしたそれぞれの取組をより一層効果的に進めることができるよう,今後,対応を検討したい。
内閣府
内閣府の共生社会政策担当は,内閣府にある8つの政策統括官の一つであり,内閣府特命担当大臣の加藤大臣の下,共生社会に係る多様な施策に取り組んでいる。このうち,本日の意見交換会に係る施策としては,青少年育成支援施策,青少年の健全な育成のための環境整備に係る施策,子供の貧困対策に係る施策を所管しており,本日はこの3つについて簡単にご紹介させていただく。
- (1)まず,子供・若者育成支援施策については,教育,福祉,保健,医療,矯正,更生保護,雇用等,分野が非常に多岐に渡っている。内閣府では,子ども・若者育成支援推進施策について,その総合調整を行う立場から,平成21年に成立した「子ども・若者育成支援推進法」及びその下の「子ども・若者育成支援推進大綱」に基づき,各種施策の推進を図っている。子ども・若者育成支援推進大綱は,子供・若者の育成支援に関して,政府全体の基本的な方針を示すもの。個別施策については,各省庁において取り組んでいる。
- (2)次に,青少年の健全な育成のための環境整備に係る施策について,政府においては「第二次児童ポルノ排除総合対策」に基づき,関係省庁が連携の上,「児童ポルノは絶対に許されない!」とのスローガンの下,児童ポルノ排除に向けた国民運動を推進。毎年11月に「児童ポルノ排除対策公開シンポジウム」を開催し,国民の意識の高揚を図っているほか,関係33団体及び関係省庁で構成する「児童ポルノ排除対策推進協議会」を開催し,情報共有を図るとともに,官民一体となった児童ポルノ排除対策に取り組んでいる。
- (3)最後に,子供の貧困対策に係る施策としては,平成25年6月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が全会一致で成立し,平成26年1月に施行されたことを受け,政府は平成26年8月に「子供の貧困対策に関する大綱」を策定し,子供の貧困対策を総合的に推進している。これらに基づき,子供の貧困対策が国を挙げて推進されるよう,国,地方公共団体,民間の企業・団体等によるネットワークを構築し,各種支援情報等の収集・提供や民間資金を活用した支援など,官公民の連携・協働プロジェクトを推進することとされており,平成27年10月「子供の未来応援国民運動」を始動させた。
警察庁
警察では,2002年に定めた「少年警察活動規則」等に基づき,少年の健全な育成や保護を図るための警察活動を実施している。
- (1)近年,インターネット上の違法・有害情報の氾濫,インターネット利用に起因する福祉犯被害の増加,いわゆる「JKビジネス」といった少年の性を売り物とする新たな形態の営業の出現等がみられることから,警察では,実態の把握を行うとともに,各種法令を適用した取締りや少年補導を推進しているほか,関係機関・団体等と連携しながら,保護者に対する広報啓発,児童に対する情報モラル教育等を実施している。
- (2)児童虐待については,2014年12月,関係省庁による副大臣等会議において,今後の児童虐待対策についての実施方針がとりまとめられた。警察庁においても,児童の安全の直接確認の徹底,迅速的確な事件化判断と捜査体制の確立,児童相談所等の関係機関との連携等,被害児童を早期に救出保護し,被害の拡大を防止するための取組を強化している。
- (3)児童ポルノ対策については,2013年5月の犯罪対策閣僚会議において決定された「第二次児童ポルノ排除総合対策」に基づき,関係機関・事業者と緊密に連携し,悪質な児童ポルノ事犯の徹底検挙,被害児童の早期発見及び支援活動の推進,インターネット上の児童ポルノ画像等の流通・閲覧防止対策の推進等に取り組んでいる。
法務省
- (1)面会交流・共同親権について,平成23年に民法の一部を改正し,離婚の際に父母が協議で定めるべき事項として,養育費の分担や面会交流の取決めを明示し,これにより,協議離婚の際に当事者間で養育費の分担や面会交流の取決めがされるよう促すこととしている。また,改正の趣旨を更に周知するため,離婚届書の様式改正を行い,届書にこれらの事項の取決めの有無をチェックする欄を加えた。
更なる取組として,離婚後の共同親権制度の導入については,現在,諸外国の親権制度等の調査をするなどして検討をしているところ。共同親権制度については,様々な御意見があるところであり,離婚に至った夫婦間では意思疎通をうまく図れず,子の養育監護について必要な合意を適時適切にすることができないなど,かえって子の利益の観点から望ましくない事態が生ずることになるおそれがないのかといった点も考慮の上で,慎重な検討が必要ではないかと考えている。 - (2)児童売買,児童買春,児童ポルノ選択議定書第2条(c)に記載された児童ポルノの定義を国内法に正確に反映してほしいとの意見に関し,同2条(c)の「児童ポルノ」とは,「現実の若しくは擬似のあからさまな性的な行為を行う児童のあらゆる表現(手段のいかんを問わない。)又は主として性的な目的のための児童の性的な部位のあらゆる表現をいう。」と定義されており,我が国としては,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律における定義と,上記選択議定書における児童ポルノの定義との間に齟齬はないと理解している。
文部科学省
- (1)子どもたちが全国どこにいても一定水準の教育を受けられるようにするため,各学校が教育課程を編成する際の大綱的な基準として学習指導要領等を定めている。学習指導要領冒頭,総則には,学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育について,「人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生か」すことを,目標として掲げるなど,各教科,道徳,外国語活動,特別活動,総合的な学習の時間の特質に応じて,学校教育全体を通じて人権に配慮した教育を推進している。
- (2)教員の資質能力の向上は子どもたちの教育の充実を図る上で重要な政策課題となっている。特に,昨今の学校現場では,いじめ問題,特別支援教育等,複雑化・多様化する状況への対応が求められている。文部科学省では,こうした課題に対応できる専門的・実践的な指導力を身に付けることができるよう,教員の養成・採用・研修の一体的な改革を進めている。なお,教員を対象とした地方公共団体の教育委員会や文部科学省が所管する独立行政法人教員研修センターで実施する研修において,人権も重要なテーマの一つとして研修を実施している。
- (3)障害者権利条約が提唱する「インクルーシブ教育システム」の構築を目指し,障害の状態等に応じ,多様な学びの場を活用した指導や,障害の状態や特性に応じた教材・支援機器の活用等を推進している。
- (4)いじめ等の問題行動等について,学校・教育委員会等への指導や研修会の実施,教育相談体制の充実といった取組を推進している。
- (5)学校における体罰については,学校教育法第11条において厳に禁止されており,文部科学省では,体罰の実態把握のための調査の実施や,懲戒と体罰の区別について具体例を示すなどの取組を通じて,体罰禁止の徹底に努めている。
- (6)平成26年8月に策定された「子どもの貧困対策に関する大綱」を踏まえ,文部科学省では,幼児期から高等教育段階までの切れ目のない形での教育費負担軽減や,全ての子どもが集う場である学校を子どもの貧困対策のプラットフォームと位置づけた総合的な対策の推進を図っている。
厚生労働省
- (1)児童労働に関し,労働基準法は,満18歳に満たない者に,危険な業務,重量物を取り扱う業務,安全,衛生又は福祉に有害な場所における業務及び坑内労働に就かせることを禁止している。労働基準法に違反する事実がある場合に労働者が行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。また,使用者には法令等についての周知義務が課せられており,労働基準法の内容について,周知が図られるようになっている。
- (2)10代,20代のHIV / AIDS患者が増加の一途をたどっているとの意見をいただいたが,近年,新規報告は必ずしも増加の一途を辿っているとはいえない状況。また,学校及び地域の青少年におけるエイズ予防教育の普及を目的とした青少年エイズ対策事業を実施している。今後とも性感染症の発生及びまん延防止にしっかりと取り組んでまいりたい。
- (3)障害児支援に関わるデータについては,障害児入所給付費・障害児通所給付費の内訳と推移,利用者負担額の推移と現状等について把握し,HPへの公表を行っている。
- (4)児童養護施設に入所中の児童や里親に委託されている児童等については,平成20年の児童福祉法改正による被措置児童虐待の通報制度等により,施設職員や里親による虐待の防止を徹底している。
- (5)ひとり親家庭については,「就業・自立に向けた総合的な支援」へと施策を強化し,「子育て・生活支援策」,「就業支援策」,「養育費の確保策」,「経済的支援策」の4本柱により施策を推進してきたところ。
- (6)保育所の保育料に関しては,児童福祉法の下,各自治体が定める保育基準費に則って規定されている。
- (7)児童虐待については,昨年末に,児童虐待の発生予防から被虐待児童の自立支援までの一連の対策の更なる強化を図るため,政策パッケージをとりまとめた。また,児童福祉法等の改正に向けて議論をしており,その中で体罰禁止に関する規定等についても検討を進めているところであり,結果を踏まえ,必要な対応をしたい。
経済産業省
- (1)産業資金課・企業会計室は,CSR(企業の社会的責任)を政策アジェンダとしている。CSRは非常に広い概念のため各論については関係省庁と連携しながら対応しており,児童労働を含む「人権」も重要な論点の一つ。活動としては,主に国内企業のCSR活動の最新動向と課題を把握,ベストプラクティスを共有,特に海外に対しても発信していくことである。そのために,企業活力研究所の「CSR研究会」へオブザーブ参加による情報収拾や,EUのDG GROW(成長総局)とで日EU CSRワーキンググループを設置し,政策や企業のベストプラクティスの共有等を行うことで,海外への情報発信も行っている。
- (2)児童ポルノを含む青少年有害情報に関し,国内で販売されるテレビゲームソフトや国内で上映される映画については,社会の倫理基準に照らして適正でないものが流通・上映されないよう業界の自主規制が行われている。また,ポルノのインターネット上での流通について,「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」において,ポルノを含む有害情報を青少年がインターネットを利用して閲覧する機会をできるだけ少なくするための措置を講ずるよう努める義務を,青少年のインターネットの利用に関係する事業を行う者に課している。さらに,青少年が有害情報をインターネット上で閲覧する機会を少なくするため,望ましいフィルタリングの在り方についての判断基準を策定するとともに,フィルタリング利用の促進等を内容とするインターネットリテラシー向上のための情報提供・普及啓発活動を実施。
環境省
- (1)福島県では,子どもたちの健康を長期的に見守ることを目的として,震災時に概ね18歳以下であった住民(約37万人)を対象に,甲状腺がんの発見を目的とした「甲状腺検査」を実施しているところ。平成23から25年度に実施された「甲状腺検査」先行検査では受診者300,476人のうち,113人が,また平成26年度以降実施されている本格検査では受診者199,772人のうち,39人ががんまたはがん疑いとされている。この結果について,環境省で開催された専門家会議では,先行検査で発見された甲状腺がんについては甲状腺の被ばく線量は,チェルノブイリ原発事故の線量よりも低いと評価されていること,環境省の実施した三県調査の結果と比較して大きく異なるものでは無かったことなどから,原発事故由来のものでないと評価されている。
- (2)また,福島県では,福島県外に避難した方も含めて県民を対象とした県民健康調査を実施している。健康調査の項目としては,
- 全福島県民を対象とした,事故後4か月間の外部被ばく線量の推計を行う「基本調査」
- 事故時18歳以下であった県民の方を対象とした,「甲状腺検査」
- 避難区域等の住民の方を対象とした,白血球分画等の検査を含む「健康調査」
- 避難区域等の住民の方を対象とした,「こころの健康度・生活習慣に関する調査」
- 妊産婦の方を対象とした健康状態を把握するための「妊産婦に関する調査」
- (3)子どもが外で遊ぶ権利については,子どもがいるところに限らず,放射線物質の除染に努めているところ。子がいる空間の60%の除染を達成しており,残った空間についても除染を継続する予定。
防衛省
- (1)2010年4月以降,全ての自衛官は18歳以上の者から採用されることとなり,現在,18歳未満の自衛官は存在しない。18歳未満の自衛隊員としては,陸上自衛隊高等工科学校の生徒がいるが,当該生徒は,自衛隊法第25条第5項に定める,自衛官となるべき者に必要な知識及び技能を修得させるための教育訓練に専念している隊員であり,「自衛隊の隊務を行う」自衛官とは異なる身分の者であることから,当該生徒が「自衛隊の隊務」を行うことはない。
- (2)防衛省においては,「児童の権利に関する条約」等は,自衛隊の任務を遂行する上でも重要と認識しており,防衛大学校,自衛隊の学校等において教育を行っている。引き続き,これらの教育をより充実させ,一層の普及に努めていく所存である。
復興庁
東日本大震災からまもなく5年が経過し,当時の小学生は高学年や中学生,中高生は進学したり,就職して社会に出たりしている。復興庁は,そういった若者や子ども達,あるいは,震災後に生まれた子ども達が希望を持てるような地域を作るため,復興支援を行っている。
そのためには,子ども達の意見をよく聴くことが重要と認識。復興大臣が子ども達の提言を受け取ったり,福島の沿岸12市町村の将来像に関する有識者懇談会の提言を策定する過程において子ども達の意見を聴く機会を設けた。
復興庁では,5年を機に,震災の記憶を風化させないための行事を計画しており,その中でも何らかの形で子ども達に参加してもらえないか,検討したいと考えている。
2 質疑応答(出席者からの主な発言とそれに対する政府の回答)
- 関係省庁から各種法制度等を包括的に伺うことができて良かった。今後の政府報告の現状と,児童の権利委員会による審査の時期につき把握していたら教えてほしい。また,NGOとしては,できる限り市民社会の声,子どもの声を伝えていきたいと考えるので,関係省庁におかれては,今後気軽にNGOと意見交換させていただきたい。
- (外務省)関係省庁にて原稿を作成中でありそれを外務省にて取りまとめる。提出締め切りに間に合うよう進めていく。委員会による審査の時期は不明である。また,対話の機会は貴重であると考えるので,どのような形が望ましいかについては引き続き検討したい。
- 政府報告が提出される前に原案を見たいので,パブリックコメントにかけることを検討してほしい。
- (外務省)パブリックコメントの手続き自体に時間を要するので,提出期限との関係で慎重な検討を要する。
- ヘイトスピーチの実態を法務省にて調査していると承知しており,是非法律による規制をお願いしたい。
- (法務省)ご指摘のとおり,ヘイトスピーチが行われているとの指摘があるデモ等の発生状況・発言内容の調査や関係者からの聞き取り調査等を行っている。
- 体罰に関して,個別の省庁の取組は大事であることは理解するが,総合的な視点から見る部署が必要。女性関連施策については内閣府男女共同参画局がその役目を担っているところ,児童に対する暴力についても内閣府に担ってほしい。また,厚生労働省から,体罰禁止に関する規定等についても検討を進めているとの説明があり,これは是非進めてほしい。
- (外務省)現時点でそのような部署がないのは事実であり,内閣府からこの場では答えられるものではないが,ご指摘はよく考えたい。
- 障害児に関して,
- (1)障害者権利条約の政府報告のように,市民社会が作成過程を監視できるような制度設計にしてほしい。
- (2)障害者政策委員会に障害のある児童・生徒の代表がいない。
- (3)特別支援学校・特別支援学級・通級による指導以外の通常の教育を受けている障害のある児童・生徒について,基礎的データが欠如している。
- (4)あらゆる学校における障害のある児童・生徒の意見表明の機会がほとんど設けられていない。
- (5)障害者差別解消法の施行を踏まえ,障害のある児童への実質的な差別削減・人権教育への具体的取り組みについて確認が必要である。
- (6)引き続き障害のある児童・生徒に対する体罰事件が起きており,障害者虐待防止法において教育機関が通報義務の対象外となっている。
- (外務省)障害者権利条約の場合は,監視機関の設置が義務付けられており,我が国では障害者政策委員会がこれに当たるが,児童の権利条約にはそのような規定はない,という点を理解してほしい。
- (内閣府)障害者政策委員会のメンバーは,障害種別のバランス等を総合的に考慮した上で決定しており,その結果として障害児はメンバーに選出されなかったと理解している。
- (文部科学省)学習指導要領上,意見表明の機会は全ての生徒にあるとしている。文部科学省で策定した障害者差別解消法の対応指針では、障害者からの意見の表明のみならず、知的障害等により本人の意思の表明が困難な場合の介助者等からの意思表明も認められることとしている。
- (文部科学省)障害児の就学先決定に当たっては、決定権者である教育委員会が本人や保護者と十分に合意形成を図りながら進めていくことが望ましいことについて周知徹底しているところである。実際に本人等の意に反する就学先決定が起きてしまった場合、行政機関に不服申し立てできる制度もある。
- (文部科学省)特別支援学級のデータについては、政策立案のうえで必要なデータは調査し公開しているものと考えている。
- (厚生労働省)障害児の虐待については,障害者虐待防止法により,通報は義務ではないものの,学校の長が必要な措置をとることとしているので,各学校での指導を徹底したい。
- 里親に関し,条約第20条にかかる施策につき政府報告に盛り込んでほしい。
- 条約第12条には,あらゆる司法上・行政上の手続きにおける子どもの意見表明権について書かれている。裁判所では子どもの意見が尊重されているとは言い難い。
- (法務省)家事事件手続法では,裁判所は,15歳以上の児童の陳述を聴取する義務があり,15歳未満の児童であっても適切な方法で聴取することとされており,手続き上は,子どもの意見表明権は担保されている。個別の事案についてのコメントはできない。
- (外務省)我が国では,国内的な法整備がなされていると判断した上で条約を締結しており,そのような法整備がされてきちんと運用されている限り,条約上の義務違反はないと考えているが,司法の個別判断についてコメントする立場にない。
- 早急に児童福祉法を改正し,行政による一時保護措置に家庭裁判所による審査の手続きを関与させるべきである。
- (厚生労働省)「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」においても議論がなされているところ。法務省とも議論を重ねていきたい。
- (法務省)児童福祉法は厚生労働省所管の法律であるが,法務省として協力していくところはしていきたい。
- JKビジネスについて,
- (1)具体的な実態を政府報告に盛り込んでほしい
- (2)警察庁が述べていたモラル教育とは例えばどんな形で行っているのか。
- (外務省)昨年訪日した児童売買,児童買春,児童ポルノ国連特別報告者からも指摘があった点であるが,今回の政府報告に入れ込むのは時間的には困難な面もある。今後の御意見として参考にしたい。
- (警察庁)法律上,「JKビジネス」の定義はないが,女子高生等が児童買春等の被害者となる危険性があることなどから,少年の保護・健全育成の観点から憂慮すべきものと認識している。警察では,正に街頭活動などで実態を把握しようとしているところである。モラル教育については,児童に対する非行防止教室において稼働することにおける危険性を訴え,保護者に対しても広報啓発を実施。また,労働基準法等の各種法令を適用して取締りを行っている。
- 教育制度に関し,
- (1)教育制度は子ども中心の能力形成に力点を置くべきであると観点から,前回の政府報告に対して,教育制度全体の見直しが勧告されている。特に全国学力調査が競争をあおっているとの指摘や、いじめ・不登校対策が重要であると考えるが,この勧告をどう理解し,どう評価しているか。
- (2)高校無償化の議論について,社会権規約13条の留保を撤回したことと現在の制度との整合性についてどう考えているか。
- (文部科学省)前提として、学校現場に一定の競争があることが悪いとは考えていないが,「過度の」競争にならないよう留意する必要があるとは考えている。一方、保護者や地域住民に対して説明責任を果たすことも重要であることから、双方の観点を踏まえ、同調査における数値の公表に当たっての配慮事項を実施要領上に定めているところである。また、子どもの不登校の原因も調査しているが、その原因は「いじめ」だけでなく「無気力」「友人関係」等様々。これを個別の生徒に寄り添ってどうケアするかが重要であり,この点,教員の質の向上や教員の増加等により対応していくことが重要になると考える。 高校無償化については,平成26年より,就学支援金に所得制限を設け、それを財源に貧困家庭への奨学給付金の支給を開始した。これにより,ご指摘のとおり一律無償化は実現できないことになったが,限られた税金を有効活用し、より貧困格差を解消する施策となったことをご理解願いたい。
- (外務省)社会権規約第13条の留保撤回により,我が国は13条の規定に拘束されることになる。しかし,社会権規約に列挙された権利の実現については,締約国は漸進的に達成していくことが認められている。このため,高校無償化制度に所得制限を導入した場合においても,政府として,無償教育を漸進的に導入する方向に沿って努力していく方針が維持されており,かつ,本制度の具体的内容が中長期的には無償化の方向性の範囲内にあると認められることから,社会権規約との関係において直ちに問題になることはないと考える。
- ビジネスと人権に関し,企業が子どもに与える影響を考慮するよう勧告がなされているが,経済産業省ではそのうちの一部のみを担っているとのことであり,総合調整権限のある部署はどこか。
- (外務省)ビジネスと人権についての議論は日本ではまだ始まったばかりであるが,政府内で議論を深めていく必要があり,その中で,NGOとの協議についても何かできるか考えたい。
- 子の連れ去りは,西欧では虐待行為とみなされる。児童虐待は身体的なもののみを指し,精神的なものは虐待とはみなされないのか。児童相談所からは,第3者から見て明らかに身体的な傷等が見られる場合に虐待とみなすとの説明があった。
- (厚生労働省)児童虐待防止法では,児童虐待の定義として「心身に有害な影響を及ぼす言動」も含まれており,そのような被害を受けた子どもには児童心理司等によるカウンセリング等が実施されている。
- 親権の問題により子と会えなくなった事例が多くあり,これは法律の不備によるものと聞いた。会えるように制度を改善してほしい。
- (法務省)冒頭でも申し上げたとおり,共同親権の是非につき検討中である。
- SDGsには教育やあらゆる形態の暴力について盛り込まれた。SDGsは途上国向けであるとの説明を聞いたことがあるが,日本国内においても国内各省庁が各ターゲットに沿って,児童の権利条約にも則りつつ実現されていくものと考えている。外務省内の人権関係部署とSDGs関係部署との連携はどのように図っているのか。具体的なロードマップはあるか。外務省が中心となって国内の状況を注視してほしい。
- (外務省)SDGsは途上国のみならず全加盟国が実施すべきものと理解している。ご指摘のとおり,人権とSDGsとで担当部署が異なり,連携に関する具体的なロードマップはないが,日本における人権状況の改善に関しては人権人道課としても見ていく。
- (文部科学省,厚生労働省)SDGsが日本国内でも実現されるべきという点は外務省と同じ認識。政府全体として対応していきたい。
- 福島県の被災児童に対する対応を伺いたい。
- (復興庁)スクールカウンセラーを配置して,子どもの心のケアを充実させている。
- 児童相談所では親への支援が不足しており,これは子どものためになっていないのではないか。
- (厚生労働省)児童相談所は、個々の子どもや家庭に最も効果的な援助を行う機関である。これをしっかり周知していきたい。
- 前回の最終見解において,子の成長・発達について総合的な対策の必要性が指摘されている。子どもと親・教師との関係は非常に大切とであると考える。
- (外務省)非常に幅広い論点なので,報告全体の観点から検討したい。
- 警察から児童相談所への虐待通告件数が増加していることに関し,子の面前で行われるDV・虐待についても政府報告に含めてほしい。
- 子どもに関する政策全体の総合調整をどうしていくのか,各省庁それぞれの取組を政府報告としてどう調整していくのかという視点が欠けている。
- (外務省)子どもの権利をどう増進させるかが重要であり,外務省としてご指摘の点を踏まえてしっかりと取り組んでいきたい。
- 子どもの権利を子どもにどう教えるべきなのか,文部科学省と市民とのヒアリングの機会を作ってほしい。
- 共同親権制度が一向に進んでいない。離婚しても普通に親子が会えるような法律を策定してほしい。