日本の安全保障と国際社会の平和と安定

平成26年8月12日
 7月25日,札幌市(公益社団法人 北海道国際交流・協力総合センター(ハイエック))で開催された女性・平和・安全保障に関する行動計画についての意見交換会の概要は以下のとおりです(外務省・NAP1325北海道共催,(公社)北海道国際交流・協力総合センター協力)。

1.出席者

 関心を有するNGO,有識者の方々など約10名に参加いただきました。

2.議論の概要

  • (1)女性・平和・安全保障(WPS)に関する安保理決議と「行動計画」の概要(PDF)行動計画案(第1稿)(PDF)及び市民社会から提出された行動計画案(第1稿)序文への修正案・コメント(PDF)「I.エンパワーメント・参画」に対するコメント(4月7日付け)(PDF)「II.予防」に関するコメント(PDF)「III.保護」に関するコメント(PDF)「IV.人道・復興支援」に関するコメント(PDF)「V.モニタリング・評価・見直し」に関するコメント(PDF)を配布し,冒頭,外務省アジア大洋州局大洋州課 和田幸浩課長(総合外交政策局総務課併任)から,安保理決議第1325号の概要,行動計画策定に関するこれまでの経緯,計画案(第1稿)及び市民社会からのコメントのポイントを説明しました。
  • (2)続いて,出席者の方々から御意見・御質問が出され,外務省と出席者との間で,質疑応答が行われました。出席者の方々から出された意見・質問は,取りまとめ以下のとおりです。これらの御意見等に対して,外務省から,政府の基本的な立場や計画案の具体的な検討状況,今後の予定等について説明しました。なお,各御意見・御質問の後に括弧書きがある場合は,外務省からの応答をまとめたものです。また,以下のやり取りのほかにも,戦後処理のあり方や財産・請求権の問題を含め幅広い意見交換がなされました。
    • (ア)「序文」には憲法を直接引用している部分があるが,仮に今後,憲法が改正された場合はどうなるのか。その場合,行動計画の見直し前のタイミングであっても,憲法改正に伴い計画の該当部分を修正する可能性もあるのではないか(実際にそのような状況になった場合に具体的に検討されることになろうが,全くの可能性の話として言えば,見直し前のタイミングでも修正される可能性も排除されないのではないかと考える。)。
    • (イ)行動計画(第1稿)の検討(一読)を終え,二読に向けて第2稿を作成中とのことであるが,第1稿を基にして作業しているのか,市民社会からのコメントを基に作業しているのか(市民社会からのコメントを基に第2稿を作成すべく関係府省庁等との調整を鋭意行っているが,施策や指標を含め,全ての提案が含まれることは難しく,政府等でどうしても対応できないものは削除させていただかざるを得ないことになろう。)。
    • (ウ)日本の行動計画だから防災・復興支援を組み入れるということについては,国際的な行動計画のあり方との関係で問題はないのか(UN Women関係者との意見交換などにおいても,日本の行動計画に防災・復興支援の観点が含まれることは,他国にも参考になるとの声が寄せられている。)。
    • (エ)行動計画における国内向けの施策と国外向けの施策との関係いかん。まずは国内施策をしっかりと推進していくべき(いわゆる先進国の行動計画は,国外向けの支援策が中心となっているが,そのような支援策を効果的・効率的に実施していくための体制整備などの国内施策も含まれている。日本の行動計画についても,他の先進国と同じような構成になるのではないかと考える。国内の施策については,男女共同参画基本計画との関係に留意が必要である。)。
    • (オ)慰安婦問題に関連し,多くの女性達は戦争,紛争下で性的暴力を含め様々な被害を被っているので,これらを現在進行中の問題として正面から記述すればどうか。国際的な評価に耐え得るものを作成すべきであり,慰安婦問題を含め性的暴力についての考えを示すべき。慰安婦問題は政治問題,外交問題以前に暴力の問題。行動計画では,慰安婦問題イコール政治問題,外交問題といった認識を越えて,性的暴力の問題として扱うべき。(紛争下の性的暴力が現在進行中の問題であることは指摘のとおりであり,どのような記述が可能か引き続き検討したい。)
    • (カ)平和構築でインフラ建設等多額の支援を行っても紛争が再発すれば破壊されてしまう。紛争予防が重要。人道・復興支援という名の下に利益を得ているのは実はドナー国といった面もある。紛争「後」よりも「前」を重視すべき。
    • (キ)特に北海道では自衛隊の内部でのセクシュアル・ハラスメントの問題に関心が高い。また,自衛隊内には男女格差も存在する。平時でのそのような傾向は,戦時には更に顕在化する。セクシュアル・ハラスメントの問題や男女格差をどのように防ぐかが問題。今後,海外に派遣される機会も増えるとすれば,ジェンダー研修は一層重要になってくる。自衛隊内部での対応にも課題があり,単に外部から講師を招いて話を聞くというだけでなく,外部の関与のあり方を含め対応振りを検討する必要がある。
    • (ク)難民保護の視点も重要。難民を支援する際には,「上から目線」ではなく,適切に対応するための教育が必要。
    • (ケ)行動計画の実施に当たっては国内外での周知徹底が重要。
    • (コ)個々の施策の実施に草の根無償資金協力が果たす役割もあると考えるが,草の根無償とは独立した形でジェンダーに基づく暴力(GBV)予防の基金を創設すればどうか。
    • (サ)「平和構築と紛争予防における女性の参画とリーダーシップ」と「紛争下の性的暴力の予防と対処」という安保理決議から導かれる柱の有機的な連関が重要。
    • (シ)集団的自衛権をめぐる議論にも関連して,憲法第9条を含め,暴力による紛争解決に荷担せず,紛争のない社会の構築に貢献する,といった日本らしさを出す必要がある。
    • (ス)安保理決議1325及び関連決議も完璧なものではなく,それらを実際に実施し,補完する行動計画を作成することには意味がある。他方,国際協力,平和,非暴力といった本来あるべき姿と異なった方向に向かわないようにしなければならない。


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