「中央アジア+日本」対話

平成27年4月2日
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 3月27日,東京において,「中央アジア・シンポジウム~未来を見据えた中央アジアの今:チャンスとチャレンジ~」が開催されました。

1 外務省挨拶

 外務省を代表して中根外務大臣政務官が出席し,挨拶を行いました。中根政務官は,中央アジア地域を取り巻く国際情勢の急激な変化に伴い,この地域が大きく変貌しようとする中で,日本の新たな役割が模索されるべき時期に来ていると指摘し,中央アジアの安定と発展を支える,いわば「公共財」の役割を,引き続き果たしていきたいと述べました。

2 基調講演

 田中明彦国際協力機構(JICA)理事長が基調講演を行いました。田中理事長は,中央アジア地域が独立後大きな経済成長を遂げたものの,今後更なる発展を目指すためには,日本が触媒となって,中央アジアの域内と域外をつなぎつつ,開かれた強靭な中央アジア地域を実現することが理想であると述べました。

3 パネルでの議論

 各セッションでは下記のような議論が行われました。

パネルの参加者
アンドリュー・クーチンス
CSISロシア・ユーラシア・プロジェクト長(米国)
ドミトリー・トレーニン
カーネギー・モスクワ・センター所長(ロシア)
フドベルディ・ホーリクナザル
タジキスタン戦略研究センター長(タジキスタン)
ウクタム・ナシロフ
大統領付属戦略地域域間研究所プロジェクト長(ウズベキスタン)
グルバンムハメット・カシモフ
トルクメニスタン外務省特任大使(トルクメニスタン)
アブドゥラ・クンダクバエフ
カザフスタン国際商工会議所会頭補佐(カザフスタン)
エルミラ・ノゴイバエヴァ
「ポリス・アジア」分析センター代表(キルギス)
廣木謙三
国土交通省水管理・国土保全局水資源部水資源計画課長

(1)中央アジアの地政学的重要性

(ア)発表者

  • アンドリュー・クーチンス氏
  • ドミトリー・トレーニン氏

(イ)まとめ

 トレーニン氏から中央アジアを考える上で重要な3つのファクターとして,ISAFの撤退,中国の進出,ユーラシア経済同盟の発足が挙げられました。また,クーチンス氏からは,中央アジアの多元性を確保し,独立した主権を強化するという観点から,陸上交通による連結性の強化が重要という指摘がありました。複雑な国際環境において,発展の歩みを進めるためにも,周辺国との連携により域内と域外を結ぶインフラ整備が進むことの重要性が指摘されました。

(2)中央アジアの安定:アフガニスタン情勢との関連から

(ア)発表者

  • フドベルディ・ホーリクナザル氏
  • ウクタム・ナシロフ氏

(イ)まとめ

 発表者からは,アフガニスタンの市民生活向上のためには,アフガニスタン国内の対策にとどまらず,アフガニスタンと中央アジアを結ぶ地域経済の連結及び活性化が重要との指摘がありました。引き続き,我が国としても役割を果たしていく必要があると確認されました。

(3)中央アジアの運輸・物流

(ア)発表者

  • グルバンムハメット・カシモフ氏
  • アブドゥラ・クンダクバエフ氏

(イ)まとめ

 この地域はland-lockedであることが大きな特徴で,これが大きな制約となっていることは事実ではありますが,発表者からは,この地域では最近,これを克服し,欧州とアジアを結ぼうとする試みが現れてきていることが指摘されました。中央アジアの発展にとり,今日,域内と域外との連結性強化が極めて重要な課題であることが改めて認識されました。日本としては,ハードインフラのみならず,物流等のソフトインフラといった日本の得意な分野で,投資の質に焦点を当てつつ「運輸・物流」面での協力に取り組んでいく必要があることが指摘されました。

(4)水とエネルギー

  • エルミラ・ノゴイバエヴァ氏
  • 廣木謙三氏

 中央アジアにおける水問題は,上流国(キルギス,タジキスタン)と下流国(ウズベキスタン,カザフスタン,トルクメニスタン)の間で水源の有無,水を必要とする季節の違いといった要因から生ずるものです。ソ連時代には域内での調整メカニズムが機能していましたが,独立後は,限られた水資源を巡り,潜在的な対立要因となっています。ノゴイバエヴァ氏からは,この問題の背景について紹介があり,「水の和平」達成の必要性や「もったいない」の重要性についても指摘がありました。日本がこうした問題に,節水や浄水等の水分野に加え,代替的あるいは効率的なエネルギー利用の分野における日本の最先端技術を活用することを通じ,問題の緩和に貢献していくことで,日本独自の役割を果たせるのではないかという指摘が廣木国土交通省水資源計画課長からなされました。


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