欧州

平成26年7月17日
 7月16日(水曜日)、岸田文雄外務大臣は「中央アジア+日本」対話・第5回外相会合出席及び中央アジア各国との二国間会談のためキルギスを訪問したところ、概要は以下のとおり。

「中央アジア+日本」対話 第5回外相会合

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1 意義・成果

 2004年に「中央アジア+日本」対話を開始してから10周年の節目に開催された第5回外相会合は、初めて全ての国から外務大臣の出席を得て開催された。過去10年間にわたり、中央アジアの安定と発展には地域協力が不可欠との考えの下、日本が加わることで具体的な分野における地域協力について対話を重ねてきた。今回の会合では、この理念に基づきつつ、「次の10年」への展望として「中央アジア+日本」対話を実践的な協力を推進する場としていく方向性を確認した。
 今回の外相会合の結果、「中央アジア+日本」対話の10年を総括し、具体的分野での地域協力の進展、紛争の平和解決の重要性や軍縮・不拡散など国際場裡における協力など、幅広い内容からなる「共同声明」に署名し、また、農業分野の協力方針と具体例をまとめた「ロードマップ」を採択し、公表した。

2 議論

  • (1)冒頭セッションでは、アブディルダエフ・キルギス外相(議長国)から、歓迎の言葉があり、「中央アジア+日本」対話が10周年を迎え、多層的な対話と様々な分野での協力が着実に進展していることは喜ばしく、本日も喫緊の課題について議論を深めたい旨述べた。
     岸田外務大臣から、キルギス議長国の尽力に対して謝意を表明し、日本は、二国間でのきめ細かな協力と、「中央アジア+日本」対話の双方を通じて中央アジアとの関係を深めていく旨、また「中央アジア+日本」対話が具体的な分野における実践的協力を推進する場へと発展しつつあり、「次の10年」の展望について意見を交わしたい旨述べた。
  • (2)農業分野の協力に関するセッションにおいて、岸田外務大臣からは、中央アジアの外交当局者や農業専門家が訪日し、日本の農林水産省やJICA、民間企業関係者らと議論したことを評価し、こうした作業の結果、青果、種子、畜産、穀物、養蚕、害虫対策といった具体的分野について、生産、品質管理、加工、貯蔵等フードバリューチェーンの各段階で協力を進めていくことで各国が一致したことは喜ばしい、日本の「強み」を活かして日本と中央アジア双方の成長に資する協力を大きく育てていきたい旨述べ、今後各国が案件に応じ、日本の官民が日本の技術と経験を活かして、地域に資する具体的な案件を形成していくことになる旨述べました。中央アジア側からは、交通や輸送、食品、環境に優しい製品といった点も重要との発言があった。
  • (3)持続可能な発展(防災、女性など)のセッションでは、岸田外務大臣は、各国のミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けた取組を評価しつつ、ポスト2015年開発アジェンダについても中央アジアと協力していく旨述べた。特に、防災については「中央アジア+日本」対話において連携が進んでおり、来年3月に仙台で開催される第3回国連防災世界会議も見据え、官民連携での協力推進や、ビシュケクで開催予定の地域協力会合への協力等について言及した。また、日本政府が重視している女性の活躍について、日本はこれまで中央アジア各国と母子保健に関して開発面で協力してきているが、同時に、今後は女性の社会進出について中央アジア諸国の経験からも学びたい旨述べた。中央アジア側からは、より幅広い視点から問題提起があり、例えば、地震対策のほか、節水対策、塩害・砂漠化、安全な水へのアクセスといった、水に関わる問題について発言があった。
  • (4)アフガニスタン情勢を見据えた麻薬対策・国境管理に関するセッションでは、中央アジア側から、アフガニスタンは過去の問題ではなく、危機感を持って取り組むべきとの意見が表明され、状況はより厳しくなっているとの見方を示す国もあった。同時に、中央アジア側は、問題の解決のために決して武力を使ってはならず、平和裡に解決していく重要性を強調した。
     岸田外務大臣からは、ケリー米国務長官のカブール訪問など、現在進行中のアフガニスタン大統領選挙について、最終結果発表までのプロセスが公正かつ平和裡に進められることを求めていく、同国の安定と発展のための努力を引き続き支援していくとの考えを表明した。また、中央アジア諸国もアフガニスタンの安定化に支援の実施など取り組んでいることは心強く、日本としても歓迎している旨、日本としても麻薬対策と国境管理で各国と連携していく旨述べた。具体的には、これまで実施してきた国境管理の検査機材の供与や、税関、汚職対策等の研修の各国におけるフォローアップと各国間の連携、国際機関を通じた地域協力の実施など、引き続き、中央アジアの実情を踏まえた協力を行っていく用意がある旨を表明した。
  • (5)閉会セッションでは、アブディルダエフ・キルギス外相から、本日の会合までの各国の協力に対して謝意表明があり、「中央アジア+日本」対話を通じた実践的な協力の推進について総括した。メレドフ・トルクメニスタン副首相兼外相から、次期議長国としての意欲や今後の活動の考え方について紹介があった。
     岸田外務大臣から、共同声明の署名は喜ばしく、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の考え方、国際法に基づく紛争の平和的解決の重要性といった文言が入っている、「積極的平和主義」の一環として軍縮・不拡散での協力を行っていきたい旨述べた。最後に、中央アジアの国々から、中央アジア自身のみで会合を開催する重要性について言及があり、これまで日本が地域協力の「触媒」として果たしてきた役割について評価が示された。

二国間会談

日程の概要

 16日午前にキルギス大統領表敬、日・キルギス外相会談、ODA交換公文(E/N)署名式、日・ウズベキスタン外相会談、日・トルクメニスタン外相会談、日・カザフスタン外相会談を実施。

主要会談の概要

1 アブディルダエフ・キルギス外務大臣との会談

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  • (1)冒頭
     アブディルダエフ外務大臣は、岸田外務大臣のキルギス訪問を歓迎するとともに、近年両国間の交流の活性化を歓迎した。
  • (2)二国間関係・経済協力
     アブディルダエフ外務大臣から、日本は最も重要なパートナーだと考えている、昨年2月のアタムバエフ大統領訪日時の合意を着実に実施していきたい、またキルギスは民主国家であり、価値を共有する国として日本からの支援を必要としている旨述べた。これに対し岸田外務大臣から、民主化を進めるキルギスの国造りを引き続き支援していく立場を表明するとともに、大統領訪日の際に円借款の再開に向けて適切な案件形成を加速化させるべく協力するべく一致したことを踏まえ、日本政府として、幹線道路の改修及び防災のために総額約120億円の円借款供与を決定したことを伝達した。
     これに加え、岸田外務大臣から、空港整備、保健医療、日本の中小企業の技術を活かした防災の各分野での無償資金協力を検討中であることを伝達した。これに対しアブディルダエフ大臣は、我が国がこれまでキルギスに対して実施してきた経済協力に対し謝意を表明した。
  • (3)交換公文(E/N)署名
     会談終了後、岸田外務大臣とラヴロヴァ・キルギス財務大臣は、無償資金協力「オシュ州、ジャララバード州及びタラス州道路維持管理機材整備計画」及び無償資金協力「人材育成奨学計画」の交換公文(E/N)に署名を行った。

2 アタムバエフ・キルギス大統領表敬

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  • (1)冒頭
     アタムバエフ大統領から、10年ぶりとなる日本の外務大臣のキルギス訪問を歓迎しつつ、日本とキルギスが精神的に近く、共に自由の精神を有する民主主義国家である旨指摘した。
  • (2)二国間関係・経済協力
     アタムバエフ大統領から、日本人への敬意に言及しつつ、日本との関係強化に向けた考えの説明があった。
     岸田外務大臣から、キルギスの民主化努力を引き続き支援していく方針を伝達し、昨年2月のアタムバエフ大統領訪日の際、首脳間で円借款の早期再開に向け案件形成を加速化させる旨一致したことを踏まえ、今般キルギスの幹線道路の改修及び防災のため、総額約120億円の円借款供与を決定したことを伝達した。

3 カミロフ・ウズベキスタン外務大臣との会談

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  • (1)二国間関係
     岸田外務大臣から、我が国としてウズベキスタンとのパートナー関係強化を重視していると述べつつ、我が国の経済協力がウズベキスタンの発展にとって有益なものとなることに期待を表明した。
  • (2)経済協力
     両外務大臣は、JTC不正事案につき、再発防止策の取りまとめを含め迅速で厳正な取組を続けることで一致し、岸田大臣から、ウズベキスタン側における不正事案の取組の進展も踏まえて今後の協力を検討していく旨伝達した。

4 メレドフ・トルクメニスタン副首相兼外務大臣との会談

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  • (1)二国間関係
     双方は、昨年9月のベルディムハメドフ・トルクメニスタン大統領訪日後の民間分野を含む両国関係の更なる発展を歓迎した。また、双方は、同大統領の訪日時に発表された日本企業が参画するプロジェクトの進展を歓迎し、更なる進展に向け、人的交流の促進についても意見交換を行った。
  • (2)国際関係、「中央アジア+日本」対話
     アフガニスタン情勢に関連し、麻薬対策及び国境管理の分野における協力について意見交換を行った。
     このほか、双方は、次期議長国であるトルクメニスタンと共に、「中央アジア+日本」対話・外相会合の発展に向けて協力していくことで一致した。

5 イドリソフ・カザフスタン外務大臣との会談

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  • (1)経済関係
     岸田外務大臣から、最近のコスタナイでのトヨタ自動車工場の稼働開始に歓迎の意を表明した上で、今後カザフスタンとの間で国際舞台の様々な場面でも協力を拡大させていきたい旨述べた。
  • (2)二国間関係
     イドリソフ外務大臣から、経済関係の発展の文脈で、カザフスタンが最近我が国を含む各国に対する一方的査証免除措置を導入したことを紹介した。岸田外務大臣はこれを高く評価するとともに、カザフスタンにおける原発建設案件への日本企業の高い関心に言及し、2050年までの先進30か国入りをめざすカザフスタンの改革努力に協力の用意があることを伝達した。
  • (3)国際舞台での協力
     岸田外務大臣から、カザフスタンが軍縮・不拡散を含むグローバルな課題に積極的に取り組んでいることを高く評価し、最近5核兵器国が中央アジア非核兵器地帯条約の消極的安全保証に関する議定書に署名したことについて、起草段階から条約成立に協力してきた我が国として歓迎の意を表明しました。

(この他、6月に訪日したタジキスタンのアスロフ外務大臣と、先般の訪日の成果等について立ち話を行った。)



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