エネルギー安全保障

令和4年11月10日

 11月7日から8日にかけて、外務省は、日本に駐在する外交官を対象に、福島県内のエネルギー関連施設の視察を行うスタディー・ツアーを実施しました。合計8か国(8名)の大使館から参加がありました。このスタディー・ツアーは、福島復興支援の一環として、脱炭素社会に向けた先進的な取り組みや福島の現状を知ってもらおうと外務省が2016年から行ってきた事業です。

1 概要

 スタディー・ツアーでは、駐日外交団を対象に、福島県内の様々なエネルギー関連施設の視察を通じて、特に東日本大震災以降の福島県の先進的な取組みを紹介するとともに、ロシアによるウクライナ侵略によって生じたエネルギー危機を今後どのように乗り越えていくべきかについて、福島の取組みも踏まえつつ、議論を深める機会と致しました。

2 視察先等

(1)勿来(なこそ)IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle)パワー合同会社・勿来IGCC発電所

勿来(なこそ)IGCCパワー合同会社・勿来IGCC発電所視察の様子

 11月7日午前、勿来IGCCパワー合同会社・勿来IGCC発電所を視察しました。ここでは、世界最先端の石炭ガス化複合発電技術により、従来の石炭火力発電と比べて、大幅に効率を改善した、CO2排出低減に寄与する発電設備を視察するとともに、石炭ガス化複合発電技術の紹介を受けました。勿来IGCC発電所は、東日本大震災後の福島復興に向けて建設されたものであり、世界最新鋭の石炭火力発電所として2021年4月から運転を開始しています。

(2)福島原子力発電所

福島原子力発電所視察の様子

 11月7日、福島原子力発電所を視察しました。東日本大震災による津波に起因する福島原子力発電所の事故から12年目を迎えた現在の廃炉作業と安全管理の状況を視察しました。

(3)福島水素エネルギー研究フィールド

福島水素エネルギー研究フィールド視察の様子

 11月7日午後、世界最大級の再エネ由来の水素製造設備を有する施設である福島水素エネルギー研究フィールドを視察しました。ここでは、浪江町の地下水と施設に備えられた太陽光パネルで生み出した電気で水素を製造していること、水素は同町内の移動販売車の燃料等で活用されていること等、再生可能エネルギーと水素を組み合わせた最適な運用や再生可能エネルギーの利用拡大の取組みについて説明を受けました。

(4)地元関係者との交流会

地元関係者との交流会の様子
地元の若者との交流の様子

 11月7日夕方、駐日外交団と地元関係者との交流会を開催し、門馬(もんま)南相馬市長、福島県庁関係者及び地域産業関係者が出席しました。門馬・南相馬市長からご挨拶をいただき、東日本大震災からの復興の現状や再生可能エネルギーの取り組みについて紹介がありました。また、地元産業の振興に尽力している若手起業家と各国の外交官との間で積極的な交流が行われました。

(5)そうまIHIグリーンエネルギーセンター

そうまIHIグリーンエネルギーセンターでの講義の様子
そうまIHIグリーンエネルギーセンターでの記念撮影の様子

 11月8日午前、そうまIHIグリーンエネルギーセンターを視察しました。本施設では、昼間に太陽光パネルなどで生み出した再エネ由来の電気を蓄電池や水素に変換して貯蔵することで、電気の夜間供給ができるだけでなく、災害発生時には地域に対して重要なエネルギーを供給することができます。また、地産地消のエネルギー循環型地域社会づくりに向けた取組みとして、空気からの二酸化炭素回収装置、水素と二酸化炭素からメタンを製造する試験装置(メタンはコミュニティバスの燃料として利用)、水素を製造した際に発生する酸素を活用した魚の陸上養殖等について説明を受けました。

(6)産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所

風車と太陽光発電を視察する様子
産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所での講義の様子

 11月8日午後、産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所を視察しました。本施設では、太陽光、風力、地熱・地中熱等の再エネに加え、再エネ由来の水素やアンモニア等に関して先進的な研究を行っており、水素からのアンモニアの合成とアンモニアを利用したクリーンな発電、日本特有の地熱・地中熱の利用拡大に向けた取組みについて説明を受けました。

[参考]参加者(8カ国8名)

 アメリカ合衆国、イスラエル、インド、ウクライナ、オーストラリア、ドイツ、ベトナム、モザンビーク


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