経済外交

2014年OECD閣僚理事会(概要と評価)

平成26年5月16日

  • (写真提供:内閣広報室)

今次OECD閣僚理事会のポイント

  • OECD加盟50周年にあたる本2014年に,36年ぶりにOECD閣僚理事会議長国を務め,安倍総理が基調演説を行い,岸田外務大臣,甘利経済財政担当大臣,茂木経産大臣,林農水大臣他が出席した。
  • 「しなやかで強靱(レジリエント)な経済と包摂的社会-雇用と成長に向けた人々の能力強化」とのテーマの下,(1)人々の能力強化による持続可能でバランスの取れた包摂的成長としなやかで強靱な経済の実現,(2)東南アジアとの強固なパートナーシップ構築等を通じたよりグローバルなOECDの貢献の強化に焦点が当てられ,経済危機への対処,新しい成長の源泉,女性・高齢者・若年者の一層の参画,長期的課題(少子高齢化や気候変動),東南アジアとの関係強化,開発等のトピックについて議論を行った。
  • 東南アジア地域プログラムが正式に立ち上げられ,OECDと東南アジアとの関係強化が制度的に進められることとなった。同プログラム立ち上げ式典には,5人の東南アジアの閣僚が出席した。このほかにも,OECDフォーラムには,タイのスラポン副首相兼外相,岸田大臣が議長を務めたセッションには,インドネシアのルトフィ商業大臣参加し,今回のOECDへの東南アジアからの閣僚レベル以上は計7名となった。
  • 閣僚声明が採択されるとともに,税の自動情報交換,気候変動に関する閣僚声明が採択された。また,各セッションの議論をまとめた議長総括が発出された。
  • OECDエコノミック・アウトルックでは,世界経済の成長及び貿易は,2014年から2015年にかけて緩やかに強化されていくとの見通しが示されるとともに,米国経済の成長の加速化や,中国等新興国経済のリスク等について言及がなされた。
  • 議長国基調演説では,安倍総理から,デフレから脱却しつつあり,活力あふれる日本経済の状況について発信するとともに,改革を継続する意思が示された。また,21世紀の新たな経済秩序に向け,日EU・EPAの早期成立,TPPを含むEPA戦略とOECDの使命につき言及し,ピンチをチャンスに変え,構造改革にチャレンジし,女性,外国人,ベンチャーをはじめあらゆる人の可能性を引き出す決意が示された。
  • 議長国主催夕食会の機会を活用し,日本食,日本文化の魅力をPRした。
  • OECDフォーラムでは,山中伸弥京都大学iPS細胞研究所所長をはじめ12人の有識者が日本からモデレーターまたはスピーカーとして参加するとともに,二階俊博衆議院議員をはじめとするOECD議連メンバーが参加した。

 5月6日(火曜日)から7日(水曜日)にかけ,パリのOECD本部でOECD閣僚理事会が開催され,我が国からは,安倍総理,岸田外務大臣,甘利経済財政担当大臣,林農林水産大臣,茂木経産大臣他が出席した。今次閣僚理事会には,OECD加盟国34か国に加え,加盟審査中国(コロンビア,ラトビア(ロシアは欠席)),キー・パートナー諸国(中国,インド,インドネシア,ブラジル及び南アフリカ)及びASEAN諸国の閣僚等が参加した。
 7日午後,閣僚理事会の最後で「閣僚声明(仮訳(PDF)PDF英文(PDF)PDF)」が採択された。また,各セッションの議論をまとめた議長総括(和文(PDF)PDF英文(PDF)PDF)が発出された。

1 総論

 今次閣僚理事会は,「しなやかで強靱(レジリエント)な経済と包摂的社会-雇用と成長に向けた人々の能力強化」をメインテーマとし,(1)人々の能力強化による持続可能でバランスの取れた包摂的成長の実現に向け,人々の能力強化によるしなやかで強靱な経済の構築,(2)東南アジアとの強固なパートナーシップ構築等を通じたよりグローバルなOECDの貢献の強化に焦点があてられ,経済危機への対処,女性・高齢者・若年者の活用,長期的課題(少子高齢化と気候変動),東南アジアとの関係強化,開発等のトピックについて議論された。

2 各議論の概要

5月6日(火曜日)

(1)閣僚理事会議長国による基調演説(6日午前)

 冒頭,安倍総理から基調演説を行ったところ,概要以下のとおり。

  • 「三本の矢」による経済政策により,まさにデフレから脱却しつつある。景気の先行きも良好であり,2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け,活力あふれる日本経済が復活しつつある。こういった条件は整いつつあり,財政・税制改革,電力・医療などの規制改革をはじめ改革にこだわり続ける。
  • 日本は,“Centre of the Pacific Rim”としての地理的メリットを活かし,ASEAN,豪とのEPAが合意され,TPPを加速化させる。EPA戦略のゴールは,新たな経済秩序を構築することであり,日EU・EPAの早期成立を目指す。そして,OECDには,公正なルールを世界にあまねく広げることという使命がある。
  • 世界全体の成長スピードが減速するとの長期予測対して,ピンチをチャンスに変えることが重要。そのためには,構造改革にチャレンジし,新たな産業革命,イノベーションを起こし,そのための教育改革に取り組むとともに,女性,外国人,ベンチャーをはじめあらゆる「可能性」を引き出すことが重要。
  • こういった「アベノミクス」が,閣僚理事会の2つのテーマ(「レジリエンス」と「エンパワーメント」)に対する回答。

(2)東南アジア地域プログラム立ち上げ式典(6日午前)

 東南アジア地域プログラム立ち上げ式典が行われたところ,概要以下のとおり(グリア事務総長,安倍総理からの挨拶に続いて,ASEAN閣僚(カン・ゾー・ミャンマー国家計画経済開発大臣,トンルン・ラオス副首相兼外務大臣,スン・チャントール・カンボジア商業大臣,ドミンゴ・フィリピン貿易産業大臣,ハティブ・インドネシア財務大臣)から発言。

グリア事務総長から,東南アジア地域プログラムの立ち上げとともに,OECDはパートナーである東南アジアと双方向で関係を深め,東南アジアの成長に向け協力していきたい旨述べた。
続いて,安倍総理より,東南アジア地域プログラムの実施に当たっては,3つのL(linking, Listening, Learning)が重要であり,投資環境の更なる整備や「中所得国の罠」といった課題に対して,OECDの知見をぜひ活用してもらいたい旨述べた。
これを受け,ASEAN各国の閣僚から,主に,東南アジアはOECDの知見を借りながら,成長を力強いものとしていきたい,OECDと東南アジアとの関係強化に向け,議長国としての日本のイニシアティブに感謝する旨の発言があった。

(3)エコノミック・アウトルック(6日午前)

 グリア事務総長及び玉木林太郎チーフエコノミスト代理から,OECDエコノミック・アウトルックが示され,世界経済の成長及び貿易は,2014年から2015年にかけて緩やかに強化されていくとの見通しが示されるとともに,米国経済の成長の加速化や,中国等新興国経済のリスク,地政学的リスク等について言及がなされた。
 日本からは,甘利経済財政担当大臣がパネリストとして登壇し,アベノミクス,包摂的で持続的かつレジリエントな成長,人材の強化,雇用について言及した。

(4)経済的課題に対する新たなアプローチ(NAEC)(6日昼)

甘利大臣が議長を務め,リーマンショックの反省を踏まえ,2012年にスタートした「経済的課題に対する新たなアプローチ(NAEC)」プロジェクトについて議論され,レジリエンスを強化するためには,(1)マクロ経済の安定性を高め,(2)より包摂的な成長を目指すとともに,(3)長期的課題に取り組み,(4)政策の国際協調を改善することの重要性が強調された。

(5)しなやかで強靱な経済と包摂的成長-雇用に向けた人々の能力強化(6日午後)

ア 経済成長と福祉の新しいポリシー・ミックスの探求

 甘利大臣が議長を務め,経済,社会,制度の観点からレジリエンスについて議論。経済の面からは,安定的なマクロ経済政策や構造改革が,レジリエントで包摂的な成長を実現する上で不可欠との認識が共有された。経済と産業の生産性と競争力を高めていくことの必要性,新しい成長の源泉として,知識資産,オープン・インターネット,イノベーション,科学技術,起業促進の重要性が議論された。
社会の面からは,拡大する格差が社会的一体性を危うくし,社会のレジリエンスを弱めるとの認識の下,人間の安全保障の強化により,包摂的な成長を実現することが鍵であり,OECDのジェンダー平等,若年者雇用,高齢化社会,移民の統合に関する取組に評価が示された。
制度の面からは,地域・都市政策が果たす役割の重要性,透明性と説明責任を通じた政府の信頼を再構築する重要性が確認された。

イ 環境に持続可能な(グリーン)成長の促進

 環境の面からは,様々な環境リスクに対応することが必要であり,気候変動は経済社会に包括的な影響を与え得ることから,国連気候変動枠組み条約締約国会合(COP)の成功に向け,OECDがIEAを始めとする他の国際機関とともに,COPでの交渉をサポートする取組を継続することで一致した。また,気候変動に関する閣僚声明が採択された。

(6)議長国主催夕食会(6日午後)

 冒頭,岸田大臣が主催者として挨拶を行い,OECD加盟50周年の意義,OECDと二人三脚で歩んで来た戦後日本経済,OECDと東南アジアとの関係強化に向けた橋渡し役について述べた。また,林農水大臣が乾杯の音頭を取り,被災三県の日本酒のプロモーションを行った。カクテルや夕食会においては,和のテイストが取り入れられたメニューを提供した他,大野敬正氏による津軽三味線の演奏を行うなど,出席していた閣僚,OECD事務局関係者に,日本食,日本文化の魅力をPRし,大好評を博した。

5月7日(水曜日)

(1)グローバルなしなやかな強靱さ(レジリエンス)のためのパートナーシップと能力強化としての開発(7日午前)

 東南アジア地域プログラム立ち上げ,コロンビアとラトビアの加盟審査進捗が歓迎されるとともに,中所得国の罠に対するOECDの更なる取組への期待が示された。また,OECD開発戦略の主流化と,効果的な開発協力のためのグローバル・パートナーシップをはじめ,グローバルなイニシアティブへのOECDの取組を歓迎された。また,ODAに加えて,民間資金等の活用を最大限活用していくことが確認された。

(2)多角的貿易体制の強化 -グローバル・バリュー・チェーン(GVC)(7日午後)

 茂木大臣が議長を務め,自由貿易が成長と雇用創出の鍵となることを協調し,保護主義に対抗するためのスタンド・スティル,ロールバックのコミットメントを再確認された。また,GVCに関する作業の強化を奨励し,サービス貿易制限指標(STRI)に関するOECDの取組が歓迎された。
投資も雇用と成長にとって重要であり,投資のための政策枠組(PFI)改訂作業への期待とともに公平な競争条件の確保に向けたOECDの作業の支援が確認された。

(3)閉会(7日午後)

 岸田大臣が議長を務め,各セッションの議論の総括を行った。閉会の場で閣僚声明が採択された。

(4)閣僚理事会議長国とグリア事務総長による共同記者会見(7日午後)

 岸田大臣とグリア事務総長が共同で記者会見を行った。

3 OECDフォーラム概要

 本年のテーマは,「包摂的社会のためにしなやかで強靱(レジリエント)な経済」。同フォーラムはOECD事務局が主催し,ビジネス界や労働団体のリーダー,市民団体関係者,学識経験者,政府閣僚や国際機関のリーダー等の幅広い関係者が集まり,国際的な関心を集めているテーマについてオープンな形で議論。日本からは二階俊博衆議院議員をはじめOECD議連メンバー及び以下のモデレーター,スピーカーが参加。
 5日には二階議員他立ち会いの下,OECDとERIA(東アジア・ASEAN経済研究センター)の協力覚書(MOU)が署名された。

  • 阿部 伸一/グーグルエンタープライズ部門マネージングディレクター
  • 内永 ゆか子/J―Win(NPO法人)代表
  • 国谷 裕子/NHKクローズアップ現代キャスター
  • 古賀 伸明/日本労働組合総連合会(連合)会長
  • 小暮 真久/Table for Two(NPO法人)代表
  • 斎藤 ウィリアム浩幸/内閣府参与
  • 斎藤 勝利/第一生命会長・経団連副会長
  • 佐久間 総一郎/新日鐵住金副社長
  • 滝田 洋一/日経新聞編集委員
  • 長島 忠之/JETRO理事
  • 原山 優子/総合科学技術会議常勤議員
  • 山中 伸弥/京都大学iPS細胞研究所所長
  • OECD東北スクール生徒(小山康平,釣巻洋子)



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