経済協力開発機構(OECD)

平成27年6月5日

 6月3日~4日,パリでOECD閣僚理事会が開催され,中山外務副大臣,佐藤農林水産大臣政務官別ウィンドウで開く及び関経済産業大臣政務官別ウィンドウで開く他が政府代表として出席したところ,結果概要は以下のとおりです。

[ポイント]

  • 今回の閣僚理事会のテーマは,「持続可能な成長と雇用のための投資の解放」。経済金融危機の後,雇用や金融セクターの安定化といった危機の清算のための取組をもう一歩進め,持続可能な成長と雇用を実現するための「投資」という要素に正面から取り組んだ。
  • 公表された「OECD経済見通し」(OECD Economic Outlook)も,世界経済の弱さの一因として投資低迷に注目。世界経済は,過去の回復に比べて緩やかなものにとどまるとの見通し。日本の実質GDP成長率は,消費税引上げ後の減速からの景気回復,石油価格低下,実質賃金上昇に支えられ,2015年は0.7%,2016年は1.4%に上昇と予測。
  • 会合では,(1)持続的経済成長のための投資政策,(2)低炭素経済の移行のための投資,(3)ポスト2015開発アジェンダへの民間資金の活用等を議論。特に2015年の主要国際会議(7月の開発資金会合,9月の持続可能な開発目標(SDGs)に関する国連サミット,12月のCOP21及びWTO閣僚会合)を念頭に,民間資金の活用を図るため,投資の促進を議論。
  • 中山外務副大臣からは,本年のCOP21やポスト2015年開発アジェンダに関する国連サミットも念頭に,(1)気候変動に係る日本の貢献策を改めてアピールしつつ,(2)開発にあたっての「質の高いインフラ投資」の重要性を指摘。
  • OECDの対外関係については,2014年閣僚理事会(日本議長国)で安倍総理が立ち上げた「東南アジア地域プログラム」に関し,OECDがグローバル・ガバナンスの一翼を担う観点からも東南アジアとの関係強化が重要であり,多数国から支持が表明され,そのモメンタムを更に築いていくことで合意(ERIAとの協力の重要性については,議長サマリーでも言及。)。中国,インドネシア,ブラジル等のキー・パートナー国との協力強化,南米・カリブの地域プログラムの立上げ検討も支持された。
  • コロンビア,ラトビアの新規加盟審査の進展と,コスタリカ,リトアニアの加盟プロセスの開始が,各国から歓迎された。
  • 閉会にあたり「閣僚声明」(英文 (PDF)Open a New Window和文仮訳(PDF)別ウィンドウで開く)を採択した他,2016年閣僚理事会の議長国にチリを指名。

I 行事概要

1.日時・場所

6月3日(水)~4日(木),パリ・OECD本部

2.参加国・機関

(1)OECD加盟国:34か国(仏からはオランド大統領出席)
(2)OECD加盟候補国:4か国(コロンビア,ラトビア,コスタリカ,リトアニア)
(3)キー・パートナー国:5か国(中国,インド,インドネシア,ブラジル,南アフリカ)
(4)招待国・地域:7か国・地域(アルゼンチン,香港,ミャンマー,モロッコ,セネガル,ペルー,カザフスタン)
(5)その他国際機関(EU他)

3.運営

(1)議長国:オランダ(ルッテ首相)
(2)副議長国:フランス,チェコ,韓国

II 主な議題と概要

今次閣僚理事会は,「持続可能な成長と雇用のための投資の解放」(Unlocking Investment for Sustainable Growth and Jobs)をメインテーマとし,「投資と成長」,「低炭素経済への移行」,「貿易・投資と開発」等について議論。

1.「OECD経済見通し」の公表(3日午前)

(1)冒頭,グリアOECD事務総長及びマンOECDチーフエコノミストから,OECDによる世界経済の見通しに関する説明があった。
(2)公表された「OECD経済見通し」(OECD Economic Outlook)は,世界経済の弱さの一因として投資低迷に注目し,経済成長のための投資の促進の重要性について指摘がなされた。世界経済については,過去の回復に比べて緩やかなものにとどまるとの見通しを示した。また,日本の実質GDP成長率については,消費税引上げ後の減速からの景気回復,石油価格低下,実質賃金上昇に支えられ,2015年は0.7%,2016年は1.4%に上昇と予測した。
(3)その後,「構造改革がいかに持続可能な成長の一助となる投資の解放を促進するか」及び「人的資源及び知識資産(KBC)への投資がいかに失業と格差を減少させるか」との観点から,パネル・ディスカッションが行われた。

2.シナリオに基づく政策議論(3日昼)

(1)冒頭,グリア事務総長から,1年間の活動報告と今後のOECDの戦略的な方向性について,報告が行われた。
(2)また,持続可能な開発と包摂的成長に向けた投資の解放に関し,長期的予測に基づく政策に関する議論が行われた。

3.グリア事務総長,ルッテ蘭首相及びオランド仏大統領による対話(3日午後)

(1)グリア事務総長,ルッテ蘭首相の冒頭発言の後,オランド仏大統領による基調演説が行われた。
(2)オランド仏大統領からは,新たな雇用創出と持続可能な経済成長を実現するための生産性の向上やイノベーション,規制改革等の必要性が指摘されるとともに,気候変動がリスク要因になり得ると述べた。その上で,本年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)について,普遍的で拘束力のある法的枠組み合意の実現,各国による削減目標の早期提示とその着実な実施,最も影響を受ける国への支援等の必要性を指摘。さらに,低炭素経済への移行のために民間資金の活用が不可欠である旨述べた。最後に,各国との信頼と連携に基づきCOP21の成功への確信が表明された。

4.成長のための投資の解放(3日午後)

(1)全体会合の後,4つの少人数グループ会合にて議論が行われた。
(2)少人数グループ会合におけるテーマは,(ア)投資と包摂的成長,(イ)技術革新と生産性,(ウ)人的資源への投資,及び(エ)責任ある投資の促進に向けたビジネス環境の改善。各国からは,インフラ投資の重要性等につき発言があり,我が国からは,「質の高いインフラ投資」の重要性や鉄鋼の過剰供給問題等につき言及した。

5.低炭素経済への投資―資源節約,投資のグリーン化(4日午前)

(1)(ア)炭素経済への移行のための政策の調和,(イ)気候資金,(ウ)気候変動適応と水・食料・エネルギーの連関をそれぞれテーマとする少人数会合により議論が行われ,その後,全体会合において,各グループの議論が報告された。
(2)中山外務副大臣からは,2013年に発表した「Actions for Cool Earth:ACE(エース):美しい星への行動計画」の柱の一つとして,途上国に対して,2013年から2015年までの3年間に官民合わせて約160億ドルの支援を行った旨,また,緑の気候資金(GCF)に15億ドルの拠出を確定し,GCFが稼働したこと等を紹介した。
(3)関経産政務官からは,経済成長と環境の両立の重要性について,特に,イノベーションこそが温暖化対策の鍵であり,産業界の自主的取組促進,温室効果ガス削減に資する革新的技術開発とその世界への普及について述べた。
(4)佐藤農水政務官からは,我が国の温室効果ガス削減のため取組や効率的な水管理等の取組をアピールするとともに,「食品ロス・廃棄の削減」を実現するためのフードバリューチェーン構築の重要性を強調した。

6.貿易と投資(4日昼)

(1)各国からは,貿易円滑化協定(TFA)の早期発効及びWTOドーハ・ラウンド交渉の妥結の重要性について言及がなされるとともに,グローバル・バリュー・チェーン/付加価値貿易(GVC/TiVA),サービス貿易制限指標(STRI)の有用性や,投資・サービスの自由化,デジタル経済拡大に伴うデータフローの保護等が重要である旨の指摘がなされた。
(2)関経産政務官からは,多角的貿易体制の維持・強化に向け,WTOドーハ・ラウンドの年内妥結,経済連携交渉やプルリ交渉の推進,新興国を中心に再燃している保護主義の抑止が重要である旨述べた。

7.開発(4日午後)

(1)ポスト2015年開発アジェンダに関するOECDの貢献について議論が行われた。各国からは,「税源浸食と利益移転」(BEPS)等の租税分野におけるOECDの取組や,「投資のための政策枠組み」(PFI)の有用性が指摘された。
(2)中山外務副大臣からは,ポスト2015年開発アジェンダには,南北対立の克服,多様な主体との連携が必要としつつ,OECDが果たす役割への期待を表明した。さらに,我が国として,新しい開発協力大綱の下での取組や「質の高いインフラ投資」の推進を通じて,ポスト2015年開発アジェンダに貢献していく旨述べた。

8.閉会式(4日午後)

(1)グリア事務総長とオランダ議長国から議論の総括がなされ,閣僚声明が採択された。
(2)また,チリから,来年の閣僚理事会議長国への立候補と抱負が述べられ,チリが2016年閣僚理事会議長国となることが決定された。 

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