世界貿易機関(WTO)

平成28年9月5日

加盟国は、ここに、次のとおり協定する。

第一条 適用対象及び適用

  1. この了解に定める規則及び手続は、附属書一に掲げる協定(この了解において「対象協定」という。)の協議及び紛争解決に関する規定に従って提起される紛争について適用する。この了解に定める規則及び手続は、また、世界貿易機関を設立する協定(この了解において「世界貿易機関協定」という。)及びこの了解に基づく権利及び義務に関する加盟国間の協議及び紛争解決(その他の対象協定に基づく権利及び義務にも係るものとして行われるものであるかないかを問わない。)について適用する。
  2. この了解に定める規則及び手続の適用は、対象協定に含まれている紛争解決に関する特別又は追加の規則及び手続(附属書二に掲げるもの)の適用がある場合には、これに従う。この了解に定める規則及び手続と同附属書に掲げる特別又は追加の規則及び手続とが抵触する場合には、同附属書に掲げる特別又は追加の規則及び手続が優先する。二以上の対象協定に定める規則及び手続に関する紛争において、検討される当該二以上の対象協定に定める特別又は追加の規則及び手続が相互に抵触する場合であって、紛争当事国が小委員会の設置から二十日以内に規則及び手続について合意することができないときは、次条1に定める紛争解決機関の議長は、いずれかの加盟国の要請の後十日以内に、紛争当事国と協議の上、従うべき規則及び手続を決定する。議長は、特別又は追加の規則及び手続が可能な限り用いられるべきであり、かつ、この了解に定める規則及び手続は抵触を避けるために必要な限度において用いられるべきであるという原則に従う。

第二条 運用

  1. この了解に定める規則及び手続並びに対象協定の協議及び紛争解決に関する規定を運用するため、この了解により紛争解決機関を設置する。ただし、対象協定に係る運用について当該対象協定に別段の定めがある場合には、これによる。同機関は、小委員会を設置し、小委員会及び上級委員会の報告を採択し、裁定及び勧告の実施を継続的に監視し並びに対象協定に基づく譲許その他の義務の停止を承認する権限を有する。対象協定のうち複数国間貿易協定であるものの下で生ずる紛争に関し、この了解において「加盟国」とは、当該複数国間貿易協定の締約国である加盟国のみをいう。同機関がいずれかの複数国間貿易協定の紛争解決に関する規定を運用する場合には、当該協定の締約国である加盟国のみが、当該紛争に関する同機関の決定又は行動に参加することができる。
  2. 紛争解決機関は、世界貿易機関の関連する理事会及び委員会に対し各対象協定に係る紛争における進展を通報する。
  3. 紛争解決機関は、その任務をこの了解に定める各期間内に遂行するため、必要に応じて会合する。
  4. この了解に定める規則及び手続に従って紛争解決機関が決定を行う場合には、その決定は、コンセンサス方式による(注)。

    注: 紛争解決機関がその審議のために提出された事項について決定を行う時にその会合に出席しているいずれの加盟国もその決定案に正式に反対しない場合には、同機関は、当該事項についてコンセンサス方式によって決定したものとみなす。

第三条 一般規定

  1. 加盟国は、千九百四十七年のガットの第二十二条及び第二十三条の規定の下で適用される紛争の処理の原則並びにこの了解によって詳細に定められ、かつ、修正された規則及び手続を遵守することを確認する。
  2. 世界貿易機関の紛争解決制度は、多角的貿易体制に安定性及び予見可能性を与える中心的な要素である。加盟国は、同制度が対象協定に基づく加盟国の権利及び義務を維持し並びに解釈に関する国際法上の慣習的規則に従って対象協定の現行の規定の解釈を明らかにすることに資するものであることを認識する。紛争解決機関の勧告及び裁定は、対象協定に定める権利及び義務に新たな権利及び義務を追加し、又は対象協定に定める権利及び義務を減ずることはできない。
  3. 加盟国が、対象協定に基づき直接又は間接に自国に与えられた利益が他の加盟国がとる措置によって侵害されていると認める場合において、そのような事態を迅速に解決することは、世界貿易機関が効果的に機能し、かつ、加盟国の権利と義務との間において適正な均衡が維持されるために不可欠である。
  4. 紛争解決機関が行う勧告又は裁定は、この了解及び対象協定に基づく権利及び義務に従って問題の満足すべき解決を図ることを目的とする。
  5. 対象協定の協議及び紛争解決に関する規定に基づいて正式に提起された問題についてのすべての解決(仲裁判断を含む。)は、当該協定に適合するものでなければならず、また、当該協定に基づきいずれかの加盟国に与えられた利益を無効にし若しくは侵害し、又は当該協定の目的の達成を妨げるものであってはならない。
  6. 対象協定の協議及び紛争解決に関する規定に基づいて正式に提起された問題についての相互に合意された解決は、紛争解決機関並びに関連する理事会及び委員会に通報される。いずれの加盟国も、同機関並びに関連する理事会及び委員会において、当該解決に関する問題点を提起することができる。
  7. 加盟国は、問題を提起する前に、この了解に定める手続による措置が有益なものであるかないかについて判断する。紛争解決制度の目的は、紛争に関する明確な解決を確保することである。紛争当事国にとって相互に受け入れることが可能であり、かつ、対象協定に適合する解決は、明らかに優先されるべきである。相互に合意する解決が得られない場合には、同制度の第一の目的は、通常、関係する措置がいずれかの対象協定に適合しないと認められるときに当該措置の撤回を確保することである。代償に関する規定は、当該措置を直ちに撤回することが実行可能でない場合に限り、かつ、対象協定に適合しない措置を撤回するまでの間の一時的な措置としてのみ、適用すべきである。紛争解決手続を利用する加盟国は、この了解に定める最後の解決手段として、紛争解決機関の承認を得て、他の加盟国に対し対象協定に基づく譲許その他の義務の履行を差別的に停止することができる。
  8. 対象協定に基づく義務に違反する措置がとられた場合には、当該措置は、反証がない限り、無効化又は侵害の事案を構成するものと認められる。このことは、対象協定に基づく義務についての違反は当該対象協定の締約国である他の加盟国に悪影響を及ぼすとの推定が通常存在することを意味する。この場合において、違反の疑いに対し反証を挙げる責任は、申立てを受けた加盟国の側にあるものとする。
  9. この了解の規定は、世界貿易機関協定又は対象協定のうち複数国間貿易協定であるものに基づく意思決定により対象協定について権威のある解釈を求める加盟国の権利を害するものではない。
  10. 調停及び紛争解決手続の利用についての要請は、対立的な行為として意図され又はそのような行為とみなされるべきでない。紛争が生じた場合には、すべての加盟国は、当該紛争を解決するために誠実にこれらの手続に参加する。また、ある問題についての申立てとこれに対抗するために行われる別個の問題についての申立てとは、関連付けられるべきでない。
  11. この了解は、世界貿易機関協定が効力を生ずる日以後に対象協定の協議規定に基づいて行われた協議のための新たな要請についてのみ適用する。世界貿易機関協定が効力を生ずる日前に千九百四十七年のガット又は対象協定の前身であるその他の協定に基づいて協議の要請が行われた紛争については、世界貿易機関協定が効力を生ずる日の直前に有効であった関連する紛争解決に係る規則及び手続を引き続き適用する。(注)

    注: この11の規定は、小委員会の報告が採択されず又は完全に実施されなかった紛争についても適用する。

  12. 11の規定にかかわらず、対象協定のいずれかに基づく申立てが開発途上加盟国により先進加盟国に対してされる場合には、当該開発途上加盟国は、次条から第六条まで及び第十二条の規定に代わるものとして、千九百六十六年四月五日の決定(ガット基本文書選集(BISD)追録第十四巻十八ページ)の対応する規定を適用する権利を有する。ただし、小委員会が、同決定の7に定める期間がその報告を作成するために不十分であり、かつ、当該開発途上加盟国の同意を得てその期間を延長することができると認める場合は、この限りでない。次条から第六条まで及び第十二条に定める規則及び手続と同決定に定める対応する規則及び手続とが抵触する場合には、抵触する限りにおいて、後者が優先する。

第四条 協議

  1. 加盟国は、加盟国が用いる協議手続の実効性を強化し及び改善する決意を確認する。
  2. 各加盟国は、自国の領域においてとられた措置であっていずれかの対象協定の実施に影響を及ぼすものについて他の加盟国がした申立てに好意的な考慮を払い、かつ、その申立てに関する協議のための機会を十分に与えることを約束する。(注)

    注: 加盟国の領域内の地域又は地方の政府又は機関によってとられる措置に関する他の対象協定の規定がこの2の規定と異なる規定を含む場合には、当該他の対象協定の規定が優先する。

  3. 協議の要請が対象協定に従って行われる場合には、当該要請を受けた加盟国は、相互間の別段の合意がない限り、当該要請を受けた日の後十日以内に当該要請に対して回答し、かつ、相互に満足すべき解決を得るため、当該要請を受けた日の後三十日以内に誠実に協議を開始する。当該加盟国が当該要請を受けた日の後十日以内に回答せず又は当該要請を受けた日の後三十日以内若しくは相互に合意した期間内に協議を開始しない場合には、当該要請を行った加盟国は、直接小委員会の設置を要請することができる。
  4. すべての協議の要請は、協議を要請する加盟国が紛争解決機関並びに関連する理事会及び委員会に通報する。協議の要請は、書面によって提出され、並びに要請の理由、問題となっている措置及び申立ての法的根拠を示すものとする。
  5. 加盟国は、この了解に基づいて更なる措置をとる前に、対象協定の規定に従って行う協議において、その問題について満足すべき調整を行うよう努めるべきである。
  6. 協議は、秘密とされ、かつ、その後の手続においていずれの加盟国の権利も害するものではない。
  7. 協議の要請を受けた日の後六十日の期間内に協議によって紛争を解決することができない場合には、申立てをした紛争当事国(この了解において「申立国」という。)は、小委員会の設置を要請することができる。協議を行っている国が協議によって紛争を解決することができなかったと共に認める場合には、申立国は、当該六十日の期間内に小委員会の設置を要請することができる。
  8. 緊急の場合(腐敗しやすい物品に関する場合等)には、加盟国は、要請を受けた日の後十日以内に協議を開始する。要請を受けた日の後二十日以内に協議によって紛争を解決することができなかった場合には、申立国は、小委員会の設置を要請することができる。
  9. 緊急の場合(腐敗しやすい物品に関する場合等)には、紛争当事国、小委員会及び上級委員会は、最大限可能な限り、手続が速やかに行われるようあらゆる努力を払う。
  10. 加盟国は、協議の間、開発途上加盟国の特有の問題及び利益に特別の注意を払うべきである。
  11. 協議を行っている加盟国以外の加盟国が、千九百九十四年のガット第二十二条1、サービス貿易一般協定第二十二条1又はその他の対象協定の対応する規定(注)によって行われている協議について実質的な貿易上の利害関係を有すると認める場合には、当該加盟国は、当該規定による協議の要請の送付の日の後十日以内に、協議を行っている加盟国及び紛争解決機関に対し、その協議に参加することを希望する旨を通報することができる。その通報を行った加盟国は、実質的な利害関係に関する自国の主張が十分な根拠を有することについて協議の要請を受けた加盟国が同意する場合には、協議に参加することができる。この場合において、両加盟国は、同機関に対しその旨を通報する。協議への参加の要請が受け入れられなかった場合には、要請を行った加盟国は、千九百九十四年のガットの第二十二条1若しくは第二十三条1、サービス貿易一般協定の第二十二条1若しくは第二十三条1又はその他の対象協定の対応する規定により協議を要請することができる。
  12. 注: 対象協定の対応する協議規定は、次に掲げるとおりである。

    • 農業に関する協定 第十九条
    • 衛生植物検疫措置の適用に関する協定 第十一条1
    • 繊維及び繊維製品(衣類を含む。)に関する協定 第八条4
    • 貿易の技術的障害に関する協定 第十四条1
    • 貿易に関する投資措置に関する協定 第八条
    • 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定 第十七条2
    • 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第七条の実施に関する協定 第十九条2
    • 船積み前検査に関する協定 第七条
    • 原産地規則に関する協定 第七条
    • 輸入許可手続に関する協定 第六条
    • 補助金及び相殺措置に関する協定 第三十条
    • セーフガードに関する協定 第十四条
    • 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定 第六十四条1
    • 各複数国間貿易協定の権限のある内部機関が指定し、かつ、紛争解決機関に通報した当該協定の対応する協議規定

第五条 あっせん、調停及び仲介

  1. あっせん、調停及び仲介は、紛争当事国の合意がある場合において任意に行われる手続である。
  2. あっせん、調停及び仲介に係る手続の過程(特にこれらの手続の過程において紛争当事国がとる立場)は、秘密とされ、かつ、この了解に定める規則及び手続に従って進められるその後の手続においていずれの当事国の権利も害するものではない。
  3. いずれの紛争当事国も、いつでも、あっせん、調停又は仲介を要請し並びに開始し及び終了することができる。あっせん、調停又は仲介の手続が終了した場合には、申立国は、小委員会の設置を要請することができる。
  4. あっせん、調停又は仲介が協議の要請を受けた日の後六十日の期間内に開始された場合には、申立国は、当該六十日の期間内においては、小委員会の設置を要請することができない。紛争当事国があっせん、調停又は仲介の手続によって紛争を解決することができなかったことを共に認める場合には、申立国は、当該六十日の期間内に小委員会の設置を要請することができる。
  5. 紛争当事国が合意する場合には、小委員会の手続が進行中であっても、あっせん、調停又は仲介の手続を継続することができる。
  6. 事務局長は、加盟国が紛争を解決することを援助するため、職務上当然の資格で、あっせん、調停又は仲介を行うことができる。

第六条 小委員会の設置

  1. 申立国が要請する場合には、小委員会を設置しないことが紛争解決機関の会合においてコンセンサス方式によって決定されない限り、遅くとも当該要請が初めて議事日程に掲げられた同機関の会合の次の会合において、小委員会を設置する。(注)

    注: 申立国が要請する場合には、紛争解決機関の会合は、その要請から十五日以内にこの目的のために開催される。この場合において、少なくとも会合の十日前に通知が行われる。

  2. 小委員会の設置の要請は、書面によって行われる。この要請には、協議が行われたという事実の有無及び問題となっている特定の措置を明示するとともに、申立ての法的根拠についての簡潔な要約(問題を明確に提示するために十分なもの)を付する。申立国が標準的な付託事項以外の付託事項を有する小委員会の設置を要請する場合には、書面による要請には、特別な付託事項に関する案文を含める。

第七条 小委員会の付託事項

  1. 小委員会は、紛争当事国が小委員会の設置の後二十日以内に別段の合意をする場合を除くほか、次の付託事項を有する。

    「(紛争当事国が引用した対象協定の名称)の関連規定に照らし(当事国の名称)により文書(文書番号)によって紛争解決機関に付された問題を検討し、及び同機関が当該協定に規定する勧告又は裁定を行うために役立つ認定を行うこと。」

  2. 小委員会は、紛争当事国が引用した対象協定の関連規定について検討する。
  3. 小委員会の設置に当たり、紛争解決機関は、その議長に対し、1の規定に従い紛争当事国と協議の上小委員会の付託事項を定める権限を与えることができる。このようにして定められた付託事項は、すべての加盟国に通報される。標準的な付託事項以外の付託事項について合意がされた場合には、いずれの加盟国も、同機関においてこれに関する問題点を提起することができる。

第八条 小委員会の構成

  1. 小委員会は、次に掲げる者その他の十分な適格性を有する者(公務員であるかないかを問わない。)で構成する。
    • 小委員会の委員を務め又は小委員会において問題の提起に係る陳述を行ったことがある者
    • 加盟国又は千九百四十七年のガットの締約国の代表を務めたことがある者
    • 対象協定又はその前身である協定の理事会又は委員会への代表を務めたことがある者
    • 事務局において勤務したことがある者
    • 国際貿易に関する法律又は政策について教授し又は著作を発表したことがある者
    • 加盟国の貿易政策を担当する上級職員として勤務したことがある者
  2. 小委員会の委員は、委員の独立性、多様な経歴及び広範な経験が確保されるように選任されるべきである。
  3. 紛争当事国又は第十条2に定める第三国である加盟国の国民(注)は、紛争当事国が別段の合意をする場合を除くほか、当該紛争に関する小委員会の委員を務めることはできない。

    注: 関税同盟又は共同市場が紛争当事国である場合には、この3の規定は、当該関税同盟又は共同市場のすべての構成国の国民について適用する。

  4. 事務局は、小委員会の委員の選任に当たって参考となるようにするため、1に規定する資格を有する公務員及び公務員以外の者の候補者名簿を保持し、適当な場合には、その名簿から委員を選ぶことができるようにする。その名簿には、千九百八十四年十一月三十日に作成された公務員以外の者である委員の登録簿(ガット基本文書選集(BISD)追録第三十一巻九ページに規定するもの)並びに対象協定に基づいて作成されるその他の登録簿及び候補者名簿を含めるものとし、世界貿易機関協定が効力を生ずる時におけるこれらの登録簿及び候補者名簿の氏名を継続して掲載する。加盟国は、第一段の候補者名簿に掲げるために公務員及び公務員以外の者の氏名を定期的に提案し、並びに国際貿易及び対象協定の分野又はその対象とする問題に関するこれらの者の知識についての関連情報を提供することができる。これらの氏名は、紛争解決機関が承認した時に当該候補者名簿に追加される。当該候補者名簿には、掲載される者について、対象協定の分野又はその対象とする問題における経験又は専門知識の具体的分野を記載する。
  5. 小委員会は、三人の委員で構成する。ただし、紛争当事国が小委員会の設置の後十日以内に合意する場合には、小委員会は、五人の委員で構成することができる。加盟国は、小委員会の構成について速やかに通報を受ける。
  6. 事務局は、紛争当事国に対し小委員会の委員の指名のための提案を行う。紛争当事国は、やむを得ない理由がある場合を除くほか、指名に反対してはならない。
  7. 小委員会の設置の日の後二十日以内に委員について合意がされない場合には、事務局長は、いずれか一方の紛争当事国の要請に基づき、紛争当事国と協議の後、紛争解決機関の議長及び関連する理事会又は委員会の議長と協議の上、紛争において問題となっている対象協定に定める関連する特別又は追加の規則及び手続に従い、自らが最も適当と認める委員を任命することによって、小委員会の構成を決定する。同機関の議長は、当該要請を受けた日の後十日以内に、このようにして組織された小委員会の構成を加盟国に対して通報する。
  8. 加盟国は、原則として、自国の公務員が小委員会の委員を務めることを認めることを約束する。
  9. 小委員会の委員は、政府又は団体の代表としてではなく、個人の資格で職務を遂行する。したがって、加盟国は、小委員会に付託された問題につき、小委員会の委員に指示を与えてはならず、また、個人として活動するこれらの者を左右しようとしてはならない。
  10. 紛争が開発途上加盟国と先進加盟国との間のものである場合において、開発途上加盟国が要請するときは、小委員会は、少なくとも一人の開発途上加盟国出身の委員を含むものとする。
  11. 小委員会の委員の旅費、滞在費その他の経費は、予算、財政及び運営に関する委員会の勧告に基づいて一般理事会が採択する基準に従い、世界貿易機関の予算から支弁する。

第九条 複数の加盟国の申立てに関する手続

  1. 二以上の加盟国が同一の問題について小委員会の設置を要請する場合には、すべての関係加盟国の権利を考慮した上、これらの申立てを検討するために単一の小委員会を設置することができる。実行可能な場合には、このような申立てを検討するために単一の小委員会を設置すべきである。
  2. 単一の小委員会は、別々の小委員会が申立てを検討したならば紛争当事国が有したであろう権利がいかなる意味においても侵害されることのないように、検討を行い、かつ、認定を紛争解決機関に提出する。一の紛争当事国が要請する場合には、小委員会は、自己の取り扱う紛争について別々の報告を提出する。いずれの申立国も、他の申立国の意見書を入手することができるものとし、かつ、他の申立国が小委員会において意見を表明する場合には、当該小委員会に出席する権利を有する。
  3. 同一の問題に関する申立てを検討するために二以上の小委員会が設置される場合には、最大限可能な限り、同一の者がそれぞれの小委員会の委員を務めるものとし、そのような紛争における小委員会の検討の日程については、調整が図られるものとする。

第十条 第三国

  1. 問題となっている対象協定に係る紛争当事国その他の加盟国の利害関係は、小委員会の手続において十分に考慮される。
  2. 小委員会に付託された問題について実質的な利害関係を有し、かつ、その旨を紛争解決機関に通報した加盟国(この了解において「第三国」という。)は、小委員会において意見を述べ及び小委員会に対し意見書を提出する機会を有する。意見書は、紛争当事国にも送付され、及び小委員会の報告に反映される。
  3. 第三国は、小委員会の第一回会合に対する紛争当事国の意見書の送付を受ける。
  4. 第三国は、既に小委員会の手続の対象となっている措置がいずれかの対象協定に基づき自国に与えられた利益を無効にし又は侵害すると認める場合には、この了解に基づく通常の紛争解決手続を利用することができる。そのような紛争は、可能な場合には、当該小委員会に付される。

第十一条 小委員会の任務

小委員会の任務は、この了解及び対象協定に定める紛争解決機関の任務の遂行について同機関を補佐することである。したがって、小委員会は、自己に付託された問題の客観的な評価(特に、問題の事実関係、関連する対象協定の適用の可能性及び当該協定との適合性に関するもの)を行い、及び同機関が対象協定に規定する勧告又は裁定を行うために役立つその他の認定を行うべきである。小委員会は、紛争当事国と定期的に協議し、及び紛争当事国が相互に満足すべき解決を図るための適当な機会を与えるべきである。

第十二条 小委員会の手続

  1. 小委員会は、紛争当事国と協議の上別段の決定を行う場合を除くほか、附属書三に定める検討手続に従う。
  2. 小委員会の手続は、その報告を質の高いものとするために十分に弾力的なものであるべきであるが、小委員会の検討の進行を不当に遅延させるべきでない。
  3. 小委員会の委員は、紛争当事国と協議の上、適当な場合には第四条9の規定を考慮して、実行可能な限り速やかに、可能な場合には小委員会の構成及び付託事項について合意がされた後一週間以内に、小委員会の検討の日程を定める。
  4. 小委員会は、その検討の日程を決定するに当たり、紛争当事国に対し、自国の意見を準備するために十分な時間を与える。
  5. 小委員会は、当事国による意見書の提出について明確な期限を定めるべきであり、当事国は、その期限を尊重すべきである。
  6. 各紛争当事国は、意見書を事務局に提出するものとし、事務局は、当該意見書を速やかに小委員会及びその他の紛争当事国に送付する。申立国は、申立てを受けた当事国が最初の意見書を提出する前に自国の最初の意見書を提出する。ただし、小委員会が、3の検討の日程を定めるに当たり、紛争当事国と協議の上、紛争当事国がその最初の意見書を同時に提出すべきである旨を決定する場合は、この限りでない。最初の意見書の提出について順序がある場合には、小委員会は、申立てを受けた当事国の意見書を当該小委員会が受理するための具体的な期間を定める。二回目以降の意見書は、同時に提出される。
  7. 紛争当事国が相互に満足すべき解決を図ることができなかった場合には、小委員会は、その認定を報告書の形式で紛争解決機関に提出する。この場合において、小委員会の報告には、事実認定、関連規定の適用の可能性並びに自己が行う認定及び勧告の基本的な理由を記載する。紛争当事国間で問題が解決された場合には、小委員会の報告は、当該問題に関する簡潔な記述及び解決が得られた旨の報告に限定される。
  8. 小委員会の検討期間(小委員会の構成及び付託事項について合意がされた日から最終報告が紛争当事国に送付される日まで)は、手続を一層効率的にするため、原則として六箇月を超えないものとする。緊急の場合(腐敗しやすい物品に関する場合等)には、小委員会は、三箇月以内に紛争当事国に対しその報告を送付することを目標とする。
  9. 小委員会は、六箇月以内又は緊急の場合は三箇月以内に報告を送付することができないと認める場合には、報告を送付するまでに要する期間の見込みと共に遅延の理由を書面により紛争解決機関に通報する。小委員会の設置から加盟国への報告の送付までの期間は、いかなる場合にも、九箇月を超えるべきでない。
  10. 当事国は、開発途上加盟国がとった措置に係る協議において、第四条の7及び8に定める期間を延長することについて合意することができる。当該期間が満了した場合において、協議を行っている国が協議が終了したことについて合意することができないときは、紛争解決機関の議長は、当該協議を行っている国と協議の上、当該期間を延長するかしないか及び、延長するときは、その期間を決定する。更に、小委員会は、開発途上加盟国に対する申立てを検討するに当たり、開発途上加盟国に対し、その立論を準備し及び提出するために十分な時間を与える。第二十条及び第二十一条4の規定は、この10の規定の適用によって影響を受けるものではない。
  11. 一又は二以上の当事国が開発途上加盟国である場合には、小委員会の報告には、紛争解決手続の過程で当該開発途上加盟国が引用した対象協定の規定であって、開発途上加盟国に対する異なるかつ一層有利な待遇に関するものについていかなる考慮が払われたかを明示するものとする。
  12. 小委員会は、申立国の要請があるときはいつでも、十二箇月を超えない期間その検討を停止することができる。この場合には、8及び9、第二十条並びに第二十一条4に定める期間は、その検討が停止された期間延長されるものとする。小委員会の検討が十二箇月を超えて停止された場合には、当該小委員会は、その設置の根拠を失う。

第十三条 情報の提供を要請する権利

  1. 各小委員会は、適当と認めるいかなる個人又は団体に対しても情報及び技術上の助言の提供を要請する権利を有する。この場合において、小委員会は、いずれかの加盟国の管轄内にある個人又は団体に対して情報又は助言の提供を要請するに先立ち、当該加盟国の当局にその旨を通報する。加盟国は、小委員会が必要かつ適当と認める情報の提供を要請した場合には、速やかかつ完全に応ずるべきである。提供された秘密の情報は、当該情報を提供した個人、団体又は加盟国の当局の正式の同意を得ないで開示してはならない。
  2. 小委員会は、関連を有するいかなる者に対しても情報の提供を要請し、及び問題の一定の側面についての意見を得るために専門家と協議することができる。小委員会は、一の紛争当事国が提起した科学上又は技術上の事項に関する事実に係る問題については、専門家検討部会からの書面による助言的な報告を要請することができる。専門家検討部会の設置のための規則及び同部会の手続は、附属書四に定める。

第十四条 秘密性

  1. 小委員会の審議は、秘密とされる。
  2. 小委員会の報告は、提供された情報及び行われた陳述を踏まえて起草されるものとし、その起草に際しては、紛争当事国の出席は、認められない。
  3. 小委員会の報告の中で各委員が表明した意見は、匿名とする。

第十五条 検討の中間段階

  1. 小委員会は、書面及び口頭陳述による反論を検討した後、その報告案のうち事実及び陳述に関する説明部分を紛争当事国に送付する。当事国は、小委員会が定める期間内に、自国の意見を書面により提出する。
  2. 小委員会は、紛争当事国からの意見の受理に係る定められた期間の満了の後、中間報告(説明部分並びに小委員会の認定及び結論から成る。)を当事国に送付する。当事国は、小委員会が加盟国に最終報告を送付する前に中間報告の特定の部分を検討するよう要請することができる。その要請は、小委員会が定める期間内に、書面によって行われる。小委員会は、当事国の要請がある場合には、その書面の中で明示された事項に関し、当事国との追加的な会合を開催する。要請のための期間内にいずれの当事国も要請を行わなかった場合には、中間報告は、小委員会の最終報告とみなされ、速やかに加盟国に送付される。
  3. 小委員会の最終報告の認定には、検討の中間段階で行われた陳述における議論を含める。中間段階での検討は、第十二条8に定める期間内に行う。

第十六条 小委員会の報告の採択

  1. 小委員会の報告は、加盟国にその検討のための十分な時間を与えるため、報告が加盟国に送付された日の後二十日間は紛争解決機関により採択のために検討されてはならない。
  2. 小委員会の報告に対して異議を有する加盟国は、小委員会の報告を検討する紛争解決機関の会合の少なくとも十日前に、当該異議の理由を説明する書面を提出する。
  3. 紛争当事国は、紛争解決機関による小委員会の報告の検討に十分に参加する権利を有するものとし、当該紛争当事国の見解は、十分に記録される。
  4. 小委員会の報告は、加盟国への送付の後六十日以内に、紛争解決機関の会合において採択される(注)。ただし、紛争当事国が上級委員会への申立ての意思を同機関に正式に通報し又は同機関が当該報告を採択しないことをコンセンサス方式によって決定する場合は、この限りでない。紛争当事国が上級委員会への申立ての意思を通報した場合には、小委員会の報告は、上級委員会による検討が終了するまでは、同機関により採択のために検討されてはならない。この4に定める採択の手続は、小委員会の報告について見解を表明する加盟国の権利を害するものではない。

    注: 紛争解決機関の会合が1及びこの4に定める要件を満たす期間内に予定されていない場合には、この目的のために開催される。

第十七条 上級委員会による検討

常設の上級委員会

  1. 紛争解決機関は、常設の上級委員会を設置する。上級委員会は、小委員会が取り扱った問題についての申立てを審理する。上級委員会は、七人の者で構成するものとし、そのうちの三人が一の問題の委員を務める。上級委員会の委員は、順番に職務を遂行する。その順番は、上級委員会の検討手続で定める。
  2. 紛争解決機関は、上級委員会の委員を四年の任期で任命するものとし、各委員は、一回に限り、再任されることができる。ただし、世界貿易機関協定が効力を生じた後直ちに任命される七人の者のうちの三人の任期は、二年で終了するものとし、これらの三人の者は、くじ引で決定される。空席が生じたときは、補充される。任期が満了しない者の後任者として任命された者の任期は、前任者の任期の残余の期間とする。
  3. 上級委員会は、法律、国際貿易及び対象協定が対象とする問題一般についての専門知識により権威を有すると認められた者で構成する。上級委員会の委員は、いかなる政府とも関係を有してはならず、世界貿易機関の加盟国を広く代表する。上級委員会のすべての委員は、いつでも、かつ、速やかに勤務することが可能でなければならず、また、世界貿易機関の紛争解決に関する活動その他関連する活動に常に精通していなければならない。上級委員会の委員は、直接又は間接に自己の利益との衝突をもたらすこととなる紛争の検討に参加してはならない。
  4. 紛争当事国のみが、小委員会の報告について上級委員会への申立てをすることができる。第十条2の規定に基づき小委員会に提起された問題について実質的な利害関係を有する旨を紛争解決機関に通報した第三国は、上級委員会に意見書を提出することができるものとし、また、上級委員会において意見を述べる機会を有することができる。
  5. 紛争当事国が上級委員会への申立ての意思を正式に通報した日から上級委員会がその報告を送付する日までの期間は、原則として六十日を超えてはならない。上級委員会は、その検討の日程を定めるに当たり、適当な場合には、第四条9の規定を考慮する。上級委員会は、六十日以内に報告を作成することができないと認める場合には、報告を送付するまでに要する期間の見込みと共に遅延の理由を書面により紛争解決機関に通報する。第一段に定める期間は、いかなる場合にも、九十日を超えてはならない。
  6. 上級委員会への申立ては、小委員会の報告において対象とされた法的な問題及び小委員会が行った法的解釈に限定される。
  7. 上級委員会は、必要とする適当な運営上の及び法律問題に関する援助を受ける。
  8. 上級委員会の委員の旅費、滞在費その他の経費は、予算、財政及び運営に関する委員会の勧告に基づいて一般理事会が採択する基準に従い、世界貿易機関の予算から支弁する。

上級委員会による検討に関する手続

  1. 上級委員会は、紛争解決機関の議長及び事務局長と協議の上、検討手続を作成し、加盟国に情報として送付する。
  2. 上級委員会による検討は、秘密とされる。上級委員会の報告は、提供された情報及び行われた陳述を踏まえて起草されるものとし、その起草に際しては、紛争当事国の出席は、認められない。
  3. 上級委員会の報告の中で各委員が表明した意見は、匿名とする。
  4. 上級委員会は、その検討において、6の規定に従って提起された問題を取り扱う。
  5. 上級委員会は、小委員会の法的な認定及び結論を支持し、修正し又は取り消すことができる。

上級委員会の報告の採択

  1. 紛争解決機関は、上級委員会の報告を、加盟国への送付の後三十日以内に採択し(注)、紛争当事国は、これを無条件で受諾する。ただし、同機関が当該報告を採択しないことをコンセンサス方式によって決定する場合は、この限りでない。この14に定める採択の手続は、上級委員会の報告について見解を表明する加盟国の権利を害するものではない。

    注: 紛争解決機関の会合がこの期間内に予定されていない場合には、この目的のために開催される。

第十八条 小委員会又は上級委員会との接触

  1. 小委員会又は上級委員会により検討中の問題に関し、小委員会又は上級委員会といずれか一方の紛争当事国のみとの間で接触があってはならない。
  2. 小委員会又は上級委員会に対する意見書は、秘密のものとして取り扱われるものとするが、紛争当事国が入手することができるようにする。この了解のいかなる規定も、紛争当事国が自国の立場についての陳述を公開することを妨げるものではない。加盟国は、他の加盟国が小委員会又は上級委員会に提出した情報であって当該他の加盟国が秘密であると指定したものを秘密のものとして取り扱う。紛争当事国は、また、加盟国の要請に基づき、意見書に含まれている情報の秘密でない要約であって公開し得るものを提供する。

第十九条 小委員会及び上級委員会の勧告

  1. 小委員会又は上級委員会は、ある措置がいずれかの対象協定に適合しないと認める場合には、関係加盟国(注1)に対し当該措置を当該協定に適合させるよう勧告する(注2)。小委員会又は上級委員会は、更に、当該関係加盟国がその勧告を実施し得る方法を提案することができる。

    注1: 「関係加盟国」とは、小委員会又は上級委員会の勧告を受ける紛争当事国をいう。

    注2: 千九百九十四年のガットその他の対象協定についての違反を伴わない問題に関する勧告については、第二十六条を参照。

  2. 小委員会及び上級委員会は、第三条2の規定に従うものとし、その認定及び勧告において、対象協定に定める権利及び義務に新たな権利及び義務を追加し、又は対象協定に定める権利及び義務を減ずることはできない。

第二十条 紛争解決機関による決定のための期間

紛争解決機関が小委員会を設置した日から同機関が小委員会又は上級委員会の報告を採択するために審議する日までの期間は、紛争当事国が別段の合意をする場合を除くほか、原則として、小委員会の報告につき上級委員会への申立てがされない場合には九箇月、申立てがされる場合には十二箇月を超えてはならない。小委員会又は上級委員会が第十二条9又は第十七条5の規定に従い報告を作成するための期間を延長する場合には、追加的に要した期間が、前段に定める期間に加算される。

第二十一条 勧告及び裁定の実施の監視

  1. 紛争解決機関の勧告又は裁定の速やかな実施は、すべての加盟国の利益となるような効果的な紛争解決を確保するために不可欠である。
  2. 紛争解決の対象となった措置に関し、開発途上加盟国の利害関係に影響を及ぼす問題については、特別の注意が払われるべきである。
  3. 関係加盟国は、小委員会又は上級委員会の報告の採択の日の後三十日以内に開催される紛争解決機関の会合において、同機関の勧告及び裁定の実施に関する自国の意思を通報する(注)。勧告及び裁定を速やかに実施することができない場合には、関係加盟国は、その実施のための妥当な期間を与えられる。妥当な期間は、次の(a)から(c)までに定めるいずれかの期間とする。

    注 紛争解決機関の会合がこの期間内に予定されていない場合には、この目的のために開催される。

    1. 関係加盟国が提案する期間。ただし、紛争解決機関による承認を必要とする。
    2. (a)の承認がない場合には、勧告及び裁定の採択の日の後四十五日以内に紛争当事国が合意した期間
    3. (b)の合意がない場合には、勧告及び裁定の採択の日の後九十日以内に拘束力のある仲裁によって決定される期間(注1)。仲裁が行われる場合には、仲裁人(注2)に対し、小委員会又は上級委員会の勧告を実施するための妥当な期間がその報告の採択の日から十五箇月を超えるべきではないとの指針が与えられるべきである。この十五箇月の期間は、特別の事情があるときは、短縮し又は延長することができる。

      注1: 紛争当事国が問題を仲裁に付した後十日以内に仲裁人について合意することができない場合には、事務局長は、十日以内に、当該当事国と協議の上仲裁人を任命する。

      注2: 仲裁人は、個人であるか集団であるかを問わない。

  4. 紛争解決機関による小委員会の設置の日から妥当な期間の決定の日までの期間は、小委員会又は上級委員会が第十二条9又は第十七条5の規定に従いその報告を作成する期間を延長した場合を除くほか、十五箇月を超えてはならない。ただし、紛争当事国が別段の合意をする場合は、この限りでない。小委員会又は上級委員会がその報告を作成する期間を延長する場合には、追加的に要した期間が、この十五箇月の期間に加算される。ただし、合計の期間は、紛争当事国が例外的な事情があることについて合意する場合を除くほか、十八箇月を超えてはならない。
  5. 勧告及び裁定を実施するためにとられた措置の有無又は当該措置と対象協定との適合性について意見の相違がある場合には、その意見の相違は、この了解に定める紛争解決手続の利用によって解決される。この場合において、可能なときは、当該勧告及び裁定の対象となった紛争を取り扱った小委員会(この了解において「最初の小委員会」という。)にその意見の相違を付することができる。最初の小委員会は、その問題が付された日の後九十日以内にその報告を加盟国に送付する。最初の小委員会は、この期間内に報告を作成することができないと認める場合には、報告を送付するまでに要する期間の見込みと共に遅延の理由を書面により紛争解決機関に通報する。
  6. 紛争解決機関は、採択された勧告又は裁定の実施を監視する。加盟国は、勧告又は裁定が採択された後いつでも、これらの実施の問題を同機関に提起することができる。勧告又は裁定の実施の問題は、同機関が別段の決定を行う場合を除くほか、3の規定に従って妥当な期間が定められた日の後六箇月後に同機関の会合の議事日程に掲げられるものとし、当該問題が解決されるまでの間同機関の会合の議事日程に引き続き掲げられる。関係加盟国は、これらの各会合の少なくとも十日前に、勧告又は裁定の実施の進展についての状況に関する報告を書面により同機関に提出する。
  7. 問題が開発途上加盟国によって提起されたものである場合には、紛争解決機関は、同機関がその状況に応じて更にいかなる適当な措置をとり得るかを検討する。
  8. 問題が開発途上加盟国によって提起されたものである場合には、紛争解決機関は、同機関がいかなる適当な措置をとり得るかを検討するに当たり、申し立てられた措置の貿易に関する側面のみでなく、関係を有する開発途上加盟国の経済に及ぼす影響も考慮に入れる。

第二十二条 代償及び譲許の停止

  1. 代償及び譲許その他の義務の停止は、勧告及び裁定が妥当な期間内に実施されない場合に利用することができる一時的な手段であるが、これらのいずれの手段よりも、当該勧告及び裁定の対象となった措置を対象協定に適合させるために勧告を完全に実施することが優先される。代償は、任意に与えられるものであり、また、代償が与えられる場合には、対象協定に適合するものでなければならない。
  2. 関係加盟国は、対象協定に適合しないと認定された措置を当該協定に適合させ又は前条3の規定に従って決定された妥当な期間内に勧告及び裁定に従うことができない場合において、要請があるときは、相互に受け入れることができる代償を与えるため、当該妥当な期間の満了までに申立国と交渉を開始する。当該妥当な期間の満了の日の後二十日以内に満足すべき代償について合意がされなかった場合には、申立国は、関係加盟国に対する対象協定に基づく譲許その他の義務の適用を停止するために紛争解決機関に承認を申請することができる。
  3. 申立国は、いかなる譲許その他の義務を停止するかを検討するに当たり、次に定める原則及び手続を適用する。
    1. 一般原則として、申立国は、まず、小委員会又は上級委員会により違反その他の無効化又は侵害があると認定された分野と同一の分野に関する譲許その他の義務の停止を試みるべきである。
    2. 申立国は、同一の分野に関する譲許その他の義務を停止することができず又は効果的でないと認める場合には、同一の協定のその他の分野に関する譲許その他の義務の停止を試みることができる。
    3. 申立国は、同一の協定のその他の分野に関する譲許その他の義務を停止することができず又は効果的でなく、かつ、十分重大な事態が存在すると認める場合には、その他の対象協定に関する譲許その他の義務の停止を試みることができる。
    4. (a)から(c)までの原則を適用するに当たり、申立国は、次の事項を考慮する。
      1. 小委員会又は上級委員会により違反その他の無効化又は侵害があると認定された分野又は協定に関する貿易及び申立国に対するその貿易の重要性
      2. (i)の無効化又は侵害に係る一層広範な経済的要因及び譲許その他の義務の停止による一層広範な経済的影響
    5. 申立国は、(b)又は(c)の規定により譲許その他の義務を停止するための承認を申請することを決定する場合には、その申請においてその理由を示すものとする。当該申請は、紛争解決機関への提出の時に、関連する理事会に対しても及び、(b)の規定による申請の場合には、関連する分野別機関にも提出する。
    6. この3の規定の適用上、
      1. 物品に関しては、すべての物品を一の分野とする。
      2. サービスに関しては、現行の「サービス分野分類表」に明示されている主要な分野(注)のそれぞれを一の分野とする。

        注 サービス分野分類表(文書番号MTN・GNS―W―一二〇の文書中の表)は、十一の主要な分野を明示している。

      3. 貿易関連の知的所有権に関しては、貿易関連知的所有権協定の第二部の第一節から第七節までの規定が対象とする各種類の知的所有権のそれぞれ並びに第三部及び第四部に定める義務のそれぞれを一の分野とする。
    7. この3の規定の適用上、
      1. 物品に関しては、世界貿易機関協定附属書一Aの協定の全体(紛争当事国が複数国間貿易協定の締約国である場合には、当該複数国間貿易協定を含む。)を一の協定とする。
      2. サービスに関しては、サービス貿易一般協定を一の協定とする。
      3. 知的所有権に関しては、貿易関連知的所有権協定を一の協定とする。
  4. 紛争解決機関が承認する譲許その他の義務の停止の程度は、無効化又は侵害の程度と同等のものとする。
  5. 紛争解決機関は、対象協定が禁じている譲許その他の義務の停止を承認してはならない。
  6. 2に規定する状況が生ずる場合には、申請に基づき、紛争解決機関は、同機関が当該申請を却下することをコンセンサス方式によって決定する場合を除くほか、妥当な期間の満了の後三十日以内に譲許その他の義務の停止を承認する。ただし、関係加盟国が提案された停止の程度について異議を唱える場合又は申立国が3の(b)若しくは(c)の規定により譲許その他の義務を停止するための承認を申請するに当たり3に定める原則及び手続を遵守していなかったと関係加盟国が主張する場合には、その問題は、仲裁に付される。仲裁は、最初の小委員会(その委員が職務を遂行することが可能である場合)又は事務局長が任命する仲裁人(注)によって行われるものとし、妥当な期間が満了する日の後六十日以内に完了する。譲許その他の義務は、仲裁の期間中は停止してはならない。

    注: 仲裁人は、個人であるか集団であるかを問わない。

  7. 6の規定に従って職務を遂行する仲裁人(注)は、停止される譲許その他の義務の性質を検討してはならないが、その停止の程度が無効化又は侵害の程度と同等であるかないかを決定する。仲裁人は、また、提案された譲許その他の義務の停止が対象協定の下で認められるものであるかないかを決定することができる。ただし、3に定める原則及び手続が遵守されていなかったという主張が仲裁に付された問題に含まれている場合には、仲裁人は、当該主張について検討する。当該原則及び手続が遵守されていなかった旨を仲裁人が決定する場合には、申立国は、3の規定に適合するように当該原則及び手続を適用する。当事国は、仲裁人の決定を最終的なものとして受け入れるものとし、関係当事国は、他の仲裁を求めてはならない。紛争解決機関は、仲裁人の決定について速やかに通報されるものとし、申請に基づき、当該申請が仲裁人の決定に適合する場合には、譲許その他の義務の停止を承認する。ただし、同機関が当該申請を却下することをコンセンサス方式によって決定する場合は、この限りでない。

    注: 仲裁人は、個人、集団又は最初の小委員会の委員(仲裁人の資格で職務を遂行する。)のいずれであるかを問わない。

  8. 譲許その他の義務の停止は、一時的なものとし、対象協定に適合しないと認定された措置が撤回され、勧告若しくは裁定を実施しなければならない加盟国により利益の無効化若しくは侵害に対する解決が提供され又は相互に満足すべき解決が得られるまでの間においてのみ適用される。紛争解決機関は、前条6の規定に従い、採択した勧告又は裁定の実施の監視を継続する。代償が与えられ又は譲許その他の義務が停止されたが、措置を対象協定に適合させるための勧告が実施されていない場合も、同様とする。
  9. 対象協定の紛争解決に関する規定は、加盟国の領域内の地域又は地方の政府又は機関によるこれらの協定の遵守に影響を及ぼす措置について適用することができる。紛争解決機関が対象協定の規定が遵守されていない旨の裁定を行う場合には、責任を有する加盟国は、当該協定の遵守を確保するために利用することができる妥当な措置をとる。代償及び譲許その他の義務の停止に関する対象協定及びこの了解の規定は、対象協定の遵守を確保することができなかった場合について適用する。(注)

    注: 加盟国の領域内の地域又は地方の政府又は機関がとる措置に関するいずれかの対象協定の規定が、この9の規定と異なる規定を含む場合には、当該対象協定の規定が優先する。

第二十三条 多角的体制の強化

  1. 加盟国は、対象協定に基づく義務についての違反その他の利益の無効化若しくは侵害又は対象協定の目的の達成に対する障害について是正を求める場合には、この了解に定める規則及び手続によるものとし、かつ、これらを遵守する。
  2. 1の場合において、加盟国は、
    1. この了解に定める規則及び手続に従って紛争解決を図る場合を除くほか、違反が生じ、利益が無効にされ若しくは侵害され又は対象協定の目的の達成が妨げられている旨の決定を行ってはならず、また、紛争解決機関が採択する小委員会又は上級委員会の報告に含まれている認定又はこの了解に従って行われた仲裁判断に適合する決定を行う。
    2. 関係加盟国が勧告及び裁定を実施するための妥当な期間の決定に当たっては、第二十一条に定める手続に従う。
    3. 譲許その他の義務の停止の程度の決定に当たっては、前条に定める手続に従うものとし、関係加盟国が妥当な期間内に勧告及び裁定を実施しないことに対応して対象協定に基づく譲許その他の義務を停止する前に、同条に定める手続に従って紛争解決機関の承認を得る。

第二十四条 後発開発途上加盟国に係る特別の手続

  1. 後発開発途上加盟国に係る紛争の原因の決定及び紛争解決手続のすべての段階において、後発開発途上加盟国の特殊な状況に特別の考慮が払われるものとする。加盟国は、特に、この了解に定める手続に従って、後発開発途上加盟国に係る問題を提起することについて妥当な自制を行う。無効化又は侵害が後発開発途上加盟国によってとられた措置に起因すると認定される場合には、申立国は、この了解に定める手続に従って代償を要求し又は譲許その他の義務の履行を停止するための承認を申請することについて、妥当な自制を行う。
  2. 後発開発途上加盟国に係る紛争解決の事案において、満足すべき解決が協議によって得られなかった場合には、事務局長又は紛争解決機関の議長は、後発開発途上加盟国の要請に基づき、小委員会の設置の要請が行われる前に、当事国が紛争を解決することを援助するために、あっせん、調停又は仲介を行う。事務局長又は同機関の議長は、その援助を与えるに当たり、適当と認めるいかなる者とも協議することができる。

第二十五条 仲裁

  1. 紛争解決の代替的な手段としての世界貿易機関における迅速な仲裁は、両当事国によって明示された問題に関する一定の紛争の解決を容易にすることを可能とするものである。
  2. 仲裁に付するためには、この了解に別段の定めがある場合を除くほか、当事国が合意しなければならず、当該当事国は、従うべき手続について合意する。仲裁に付することについての合意は、仲裁手続が実際に開始される前に十分な余裕をもってすべての加盟国に通報される。
  3. 他の加盟国は、仲裁に付することについて合意した当事国の合意によってのみ仲裁手続の当事国となることができる。仲裁手続の当事国は、仲裁判断に服することについて合意する。仲裁判断は、紛争解決機関及び関連する協定の理事会又は委員会(加盟国が仲裁判断に関する問題点を提起することができる理事会又は委員会)に通報される。
  4. 第二十一条及び第二十二条の規定は、仲裁判断について準用する。

第二十六条

  1. 千九百九十四年のガット第二十三条1(b)に規定する類型の非違反措置に関する申立て
    千九百九十四年のガット第二十三条1(b)の規定がいずれかの対象協定について適用され又は準用される場合において、小委員会又は上級委員会は、紛争当事国が、いずれかの加盟国が何らかの措置(当該対象協定に抵触するかしないかを問わない。)を適用した結果として、当該対象協定に基づき直接若しくは間接に自国に与えられた利益が無効にされ若しくは侵害されており又は当該対象協定の目的の達成が妨げられていると認めるときに限り、裁定及び勧告を行うことができる。問題が同条1(b)の規定の適用又は準用に係る対象協定に抵触しない措置に関するものである旨を当該紛争当事国が認め、かつ、小委員会又は上級委員会がその旨を決定する場合には、その限度において、この了解に定める手続は、次の規定に従って適用される。
    1. 申立国は、当該対象協定に抵触しない措置に関する申立てを正当化するための詳細な根拠を提示する。
    2. ある措置が当該対象協定に違反することなく、当該対象協定に基づく利益を無効にし若しくは侵害し又は当該対象協定の目的の達成を妨げていることが認定された場合には、関係加盟国は、当該措置を撤回する義務を負わない。この場合において、小委員会又は上級委員会は、当該関係加盟国に対し相互に満足すべき調整を行うよう勧告する。
    3. 第二十一条3に規定する仲裁は、同条の規定にかかわらず、いずれかの当事国の要請に基づき、無効にされ又は侵害された利益の程度についての決定を含むことができるものとし、かつ、相互に満足すべき調整を行う方法及び手段を提案することができる。これらの提案は、紛争当事国を拘束するものであってはならない。
    4. 代償は、第二十二条1の規定にかかわらず、紛争の最終的解決としての相互に満足すべき調整の一部とすることができる。
  2. 千九百九十四年のガット第二十三条1(c)に規定する類型に関する申立て
    千九百九十四年のガット第二十三条1(c)の規定がいずれかの対象協定について適用され又は準用される場合において、小委員会は、当事国が、同条1の(a)及び(b)の規定が適用される状態以外の状態が存在する結果として、当該対象協定に基づき直接若しくは間接に自国に与えられた利益が無効にされ若しくは侵害されており又は当該対象協定の目的の達成が妨げられていると認めるときに限り、裁定及び勧告を行うことができる。問題がこの2の規定の対象となる旨を当該当事国が認め、かつ、小委員会がその旨を決定する場合には、その限度において、この了解の手続は、小委員会の報告が加盟国に送付される時以前のものに限って適用される。勧告及び裁定の採択のための検討、監視及び実施については、千九百八十九年四月十二日の決定(ガット基本文書選集(BISD)追録第三十六巻六十一ページから六十七ページまで)に含まれている紛争解決の規則及び手続が適用される。次の規定も、また、適用される。
    1. 申立国は、この2の規定が対象とする問題に関して行われる陳述を正当化するための詳細な根拠を提示する。
    2. 小委員会は、この2の規定が対象とする問題に係る紛争解決の事案において、当該事案がこの2の規定が対象とする問題以外の問題に関係すると認める場合には、それぞれの問題に関する別個の報告を紛争解決機関に送付する。

第二十七条 事務局の任務

  1. 事務局は、取り扱う問題の特に法律上、歴史上及び手続上の側面について小委員会を援助し並びに事務局としての支援及び技術的支援を提供する任務を有する。
  2. 事務局は、加盟国の要請に基づき紛争解決に関し加盟国を援助するに当たり、開発途上加盟国に対し紛争解決に関する追加的な法律上の助言及び援助を与える必要が生ずる可能性がある。事務局は、このため、要請を行う開発途上加盟国に対し、世界貿易機関の技術協力部門の能力を有する法律専門家による援助を利用することができるようにする。この専門家は、事務局の公平性が維持されるような方法で開発途上加盟国を援助する。
  3. 事務局は、関心を有する加盟国のために、当該加盟国の専門家が紛争解決のための手続及び慣行に関して理解を深めることができるように、これらに関する特別の研修を実施する。

附属書一 この了解が対象とする協定

  1. 世界貿易機関を設立する協定
  2. 多角的貿易協定
    • 附属書一A 物品の貿易に関する多角的協定
    • 附属書一B サービスの貿易に関する一般協定
    • 附属書一C 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定
    • 附属書二 紛争解決に係る規則及び手続に関する了解
  3. 複数国間貿易協定
    • 附属書四 民間航空機貿易に関する協定
    • 政府調達に関する協定
    • 国際酪農品協定
    • 国際牛肉協定

この了解は、複数国間貿易協定については、各協定についてのこの了解の適用の条件(附属書二に規定する特別又は追加の規則及び手続等)に関し当該協定の締約国が採択する決定に従って適用されるものとし、その決定は、紛争解決機関に通報される。

附属書二 対象協定に含まれている特別又は追加の規則及び手続

協定 規則及び手続
衛生植物検疫措置の適用に関する協定 第十一条2
繊維及び繊維製品(衣類を含む。)に関する協定 第二条の14及び21、第四条4、第五条の2、4及び6、第六条の9から11まで、第八条の1から12まで
貿易の技術的障害に関する協定 第十四条の14.2から14.4まで、附属書二
千九百九十四年のガット第六条の実施に関する協定 第十七条の17.4から17.7まで
千九百九十四年のガット第七条の実施に関する協定 第十九条の3から5まで、附属書二の2(f)、3、9及び21
補助金及び相殺措置に関する協定 第四条の4.2から4.12まで、第六条6.6、第七条の7.2から7.10まで、第八条8.5、第十条注、第二十四条24.4、第二十七条27.7、附属書五
サービスの貿易に関する一般協定 第二十二条3、第二十三条3
金融サービスに関する附属書 4
航空運送サービスに関する附属書 4
サービス貿易一般協定に係る特定の紛争解決手続に関する決定 1から5まで

この附属書に掲げる規則及び手続は、その一部のみが対象協定に含まれている特別又は追加の規則及び手続に該当し得るものを含む。

複数国間貿易協定の特別又は追加の規則及び手続は、各協定の権限を有する内部機関が決定し、かつ、紛争解決機関に通報する規則及び手続とする。

附属書三 検討手続

  1. 小委員会は、その検討において、この了解の関連規定に従う。更に、次の検討手続が適用される。
  2. 小委員会の会合は、非公開とする。紛争当事国及び利害関係を有する当事国は、小委員会により出席するよう招請された場合に限り、その会合に出席する。
  3. 小委員会の審議及び小委員会に提出された文書は、秘密のものとして取り扱われる。この了解のいかなる規定も、紛争当事国が自国の立場についての陳述を公開することを妨げるものではない。加盟国は、他の加盟国が小委員会に提出した情報であって当該他の加盟国が秘密であると指定したものを秘密のものとして取り扱う。紛争当事国は、秘密の意見書を小委員会に提出した場合には、加盟国の要請に基づき、当該意見書に含まれている情報の秘密でない要約であって公開し得るものを提供する。
  4. 紛争当事国は、小委員会が当該紛争当事国との間で行う第一回の実質的な会合の前に、問題の事実関係及び自国の主張を示す意見書を小委員会に提出する。
  5. 小委員会は、当事国との間で行う第一回の実質的な会合において、申立国に自国の立場を表明するよう求める。申立てを受けた当事国は、その後、同一の会合において、自国の立場を表明することを求められる。
  6. すべての第三国(紛争について利害関係を有することを紛争解決機関に通報した加盟国)は、小委員会の第一回の実質的な会合中に特別に開催される会議において自国の立場を表明するよう、書面によって招請される。すべての第三国は、当該特別に開催される会議の全期間出席することができる。
  7. 正式の反論は、小委員会の第二回の実質的な会合において行われる。申立てを受けた当事国は、最初に発言する権利を有し、その後に申立国が続く。当事国は、反論を、当該会合の前に書面によって小委員会に提出する。
  8. 小委員会は、いつでも、当事国との会合において又は書面により、当事国に質問し及び当事国に説明を求めることができる。
  9. 紛争当事国及び第十条の規定に従って自国の立場を表明するよう要請された第三国は、その口頭による陳述を書面にしたものを小委員会が入手することができるようにする。
  10. 5から9までに規定する表明、反論及び陳述は、透明性を確保するために、当事国の出席しているところで行われる。更に、各当事国の意見書(小委員会の報告の説明部分に関する意見、小委員会による質問に対する回答等から成る。)については、他の当事国が入手することができるようにする。
  11. (小委員会に関する特別の追加の手続がある場合には、その手続)
  12. 小委員会の検討の日程案
    1. 当事国の最初の意見書の受理
      1. 申立国 三週間から六週間
      2. 申立てを受ける当事国 二週間から三週間
    2. 当事国との間で行う第一回の実質的な会合及び第三国のために特別に開催される会議の日時及び場所 一週間から二週間
    3. 当事国の書面による反論の受理 二週間から三週間
    4. 当事国との間で行う第二回の実質的な会合の日時及び場所 一週間から二週間
    5. 報告の説明部分の当事国への送付 二週間から四週間
    6. 報告の説明部分についての当事国の意見の受理 二週間
    7. 中間報告(認定、結論等から成る。)の当事国への送付 二週間から四週間
    8. 当事国が中間報告の一部を検討するよう要請するための期限 一週間
    9. 小委員会による検討(当事国との間で行うことのある追加の会合を含む。)の期間 二週間
    10. 最終報告の紛争当事国への送付 二週間
    11. 最終報告の加盟国への送付 三週間
    (a)から(k)までに定める日程は、予見されなかった事態の進展を踏まえて変更することができる。要請がある場合には、当事国との追加の会合が予定される。

附属書四 専門家検討部会

第十三条2の規定に基づいて設置される専門家検討部会(この附属書において「部会」という。)については、次に定める規則及び手続を適用する。

  1. 部会は、小委員会の権限の下に置かれる。部会の付託事項及び詳細な作業手続は、小委員会が決定するものとし、また、部会は、小委員会に対して報告を行う。
  2. 部会には、問題となっている分野において専門的な能力及び経験を有する者のみが参加することができる。
  3. 紛争当事国の国民は、紛争当事国の合意がある場合を除くほか、部会の構成員となることはできない。ただし、他の者では遂行することができない特別な科学上の専門知識が必要であると小委員会が認める場合は、この限りでない。紛争当事国の公務員は、部会の構成員となることはできない。部会の構成員は、政府又は団体の代表としてではなく、個人の資格で職務を遂行する。したがって、政府又は団体は、部会に付託された問題につき、部会の構成員に指示を与えてはならない。
  4. 部会は、適当と認めるいかなる者とも協議し、並びにこれらの者に対して情報及び技術上の助言の提供を要請することができる。部会は、いずれかの加盟国の管轄内にある者に対して情報又は助言の提供を要請するに先立ち、当該加盟国の政府にその旨を通報する。加盟国は、部会が必要かつ適当と認める情報の提供を要請した場合には、速やかかつ完全に応ずる。
  5. 紛争当事国は、部会に提供されるすべての関連情報(秘密の性質を有するものを除く。)を取得する機会を有する。部会に提供された秘密の情報は、当該情報を提供した政府、団体又は個人の正式の同意を得ないで開示してはならない。当該情報の開示が部会に対して要求された場合において、当該情報の部会による開示について同意が得られないときは、当該情報を提供した政府、団体又は個人は、当該情報の秘密でない要約を提供する。
  6. 部会は、紛争当事国に対し、その意見を得るために報告案を送付し、適当な場合には、最終報告(小委員会に提出される際に紛争当事国にも送付される。)において当該意見を考慮に入れる。部会の最終報告は、助言的なものにとどまる。

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