世界貿易機関(WTO)

平成28年9月5日

加盟国は、

閣僚がプンタ・デル・エステにおいて、「繊維及び繊維製品(衣類を含む。)の分野における交渉は、強化されたガットの規則及び規律に基づいて、その部門を究極的にガットに統合することを可能とし、もって貿易の一層の自由化という目的に貢献するような方法を確立することを目標とする」ことを合意したことを想起し、

また、千九百八十九年四月の貿易交渉委員会の決定において、統合の過程がウルグァイ・ラウンドの多角的貿易交渉の終了後に開始されるべきであり、かつ、漸進的な性格を有すべきであることが合意されたことを想起し、

更に、後発開発途上加盟国に特別の待遇が与えられるべきであることが合意されたことを想起して、

ここに、次のとおり協定する。

第一条

  1. この協定は、繊維及び繊維製品(衣類を含む。以下「繊維製品等」という。)の部門を千九百九十四年のガットに統合する経過期間中に加盟国により適用される規定を定める。
  2. 加盟国は、供給の小さい加盟国にとって意義のある市場進出の機会の増大及び繊維製品等の貿易の分野に新たに加わった加盟国にとって商業上重要な貿易の機会の増大を図るため、次条18及び第六条6(b)の規定を利用することを合意する。(注)

    注: 後発開発途上加盟国も、その輸出について、可能な限りこの2の規定による利益を受けることができる。

  3. 加盟国は、千九百八十六年以後、繊維製品の国際貿易に関する取極(この協定において「MFA」という。)の有効期間を延長する議定書を受諾していない加盟国の状況につき適当な考慮を払い、この協定の規定を適用するに当たり、これらの加盟国に対し可能な限り特別の待遇を与える。
  4. 加盟国は、綿の生産輸出加盟国と協議の上、当該生産輸出加盟国の特別の利益がこの協定の実施に当たり反映されるべきであることを合意する。
  5. 加盟国は、繊維製品等の部門の千九百九十四年のガットへの統合を促進するため、継続的かつ自律的な産業調整及び自国の市場における競争の増進を考慮すべきである。
  6. この協定に別段の定めがある場合を除くほか、この協定の規定は、世界貿易機関協定及び多角的貿易協定に基づく加盟国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。
  7. この協定の適用の対象となる繊維製品等は、附属書に掲げる。

第二条

  1. MFA第四条の規定に基づいて維持されている二国間取極の範囲内のすべての数量制限又は同第七条若しくは同第八条の規定に基づいて通報されているすべての数量制限であって、世界貿易機関協定の効力発生の日の前日に有効なものは、当該数量制限を維持している加盟国により、世界貿易機関協定の効力発生の日の後六十日以内に、第八条に規定する繊維・繊維製品監視機関(この協定において「TMB」という。)に対し、規制水準及び伸び率並びに弾力性に係る規定を含め詳細に通報されるものとする。加盟国は、千九百四十七年のガットの締約国間で維持されている当該数量制限であって、世界貿易機関協定の効力発生の日の前日に有効なものについては、世界貿易機関協定の効力発生の日からこの協定により規律されることを合意する。
  2. TMBは、すべての加盟国に対し、1に規定するTMBへの通報を参考のために送付する。いずれの加盟国も、その送付の後六十日以内に、当該通報に関し適当と認める見解につきTMBの注意を喚起することができる。この見解は、他の加盟国に対し、参考のために送付される。TMBは、関係加盟国に対し、適当な場合には、勧告を行うことができる。
  3. 1の規定に基づいて通報される制限の十二箇月の期間が世界貿易機関協定の効力発生の日の直前の十二箇月の期間と一致していない場合には、関係加盟国は、当該制限の期間を協定年(注)に一致させるための措置及びこの条の規定を実施するために当該制限の調整された基準となる水準を設けるための措置につき、相互に合意すべきである。関係加盟国は、合意に達するため、いずれか一方の関係加盟国の要請により、直ちに協議を開始することを合意する。当該措置については、特に、近年の季節ごとの貨物量の推移を考慮に入れる。この協議の結果は、TMBに通報されるものとし、TMBは、関係加盟国に対し適当と認める勧告を行う。

    注: 「協定年」とは、世界貿易機関協定の効力発生の日から始まる十二箇月の期間及びその後の十二箇月ごとの期間をいう。

  4. 1の規定に基づいてTMBに通報された制限は、世界貿易機関協定の効力発生の日の前日に各加盟国が適用していた制限の全体を構成するものとみなす。この協定の規定又は千九百九十四年のガットの関連する規定(注)に基づく場合を除くほか、産品又は加盟国に着目した新たな制限は、これを導入してはならない。世界貿易機関協定の効力発生の日から六十日以内に通報されない制限は、直ちに終了する。

    注: 「千九百九十四年のガットの関連する規定」というときは、千九百九十四年のガットに統合されていない産品については、第十九条の規定を含まない。ただし、附属書3の規定に明記されている産品については、この限りでない。

  5. 世界貿易機関協定の効力発生の日前にMFA第三条の規定に基づいてとられた一方的措置であって、MFAに基づいて設置された繊維監視機関(この協定において「TSB」という。)により既に審査が行われたものは、当該一方的措置に定められた期間、引き続き効力を有することができる。ただし、その期間は、十二箇月を超えてはならない。TSBがそのような審査を行う機会を有しなかった当該一方的措置は、MFA第三条の規定に基づいてとられた措置に関する規則及び手続に従ってTMBが審査する。世界貿易機関協定の効力発生の日前にMFA第四条の規定に基づいて締結された取極の下でとられた措置であって、TSBが審査する機会を有しなかった紛争の対象であるものは、当該審査に適用されるMFAの規則及び手続に従ってTMBが審査する。
  6. 各加盟国は、世界貿易機関協定の効力発生の日に、統一システム番号又は産品の分類に従い、附属書に掲げる産品の千九百九十年における各加盟国の総輸入量の十六パーセントを下回らない輸入量を占める産品を千九百九十四年のガットに統合する。統合される産品には、トップ及び糸、織物、衣類並びにその他の仕上げられた繊維製品の四の群のそれぞれの産品を含む。
  7. 関係加盟国は、6の規定に基づいてとる措置の詳細を次の規定に従って通報する。
    1. 世界貿易機関協定の効力発生の日のいかんを問わず、1の規定に該当する制限を維持している加盟国は、千九百九十四年四月十五日の閣僚決定により定められた日以前に6の規定に基づいてとる措置の詳細をガット事務局に通報する。同事務局は、他の参加国に対し、その通報を参考のため直ちに送付する。その通報は、21の規定の適用上、TMBが設置された時にTMBに提供される。
    2. 第六条1の規定に従い同条の規定を利用する権利を保持した加盟国は世界貿易機関協定の効力発生の日の後六十日以内に、前条3の規定の対象となる加盟国は世界貿易機関協定の効力発生の日の後十二箇月以内に、6の規定に基づいてとる措置の詳細をTMBに通報する。TMBは、他の加盟国に対し、その通報を参考のため送付し、21に定めるところに従ってその通報の審査を行う。
  8. 残存産品、すなわち、6の規定により千九百九十四年のガットに統合されることとならない産品は、統一システム番号又は産品の分類により次のとおり三段階で統合される。
    1. 世界貿易機関協定の効力発生の後三十七番目の月の初日に、附属書に掲げる産品の千九百九十年における各加盟国の総輸入量の十七パーセントを下回らない輸入量を占める産品が統合される。加盟国によって統合される産品には、トップ及び糸、織物、衣類並びにその他の仕上げられた繊維製品の四の群のそれぞれの産品を含む。
    2. 世界貿易機関協定の効力発生の後八十五番目の月の初日に、附属書に掲げる産品の千九百九十年における各加盟国の総輸入量の十八パーセントを下回らない輸入量を占める産品が統合される。加盟国によって統合される産品には、トップ及び糸、織物、衣類並びにその他の仕上げられた繊維製品の四の群のそれぞれの産品を含む。
    3. 世界貿易機関協定の効力発生の後百二十一番目の月の初日に、繊維製品等の部門が千九百九十四年のガットに統合され、この協定に基づくすべての制限が撤廃される。
  9. 第六条1の規定に従い同条の規定を利用する権利を保持しない旨の意図を通報した加盟国は、この協定の適用上、繊維製品等を千九百九十四年のガットに統合しているものとみなす。よって、当該加盟国は、6から8まで及び11の規定を遵守することを免除される。
  10. この協定のいかなる規定も、6及び8の規定に基づく統合の計画を提出した加盟国が当該計画に定める日前に産品を千九百九十四年のガットに統合することを妨げるものではない。ただし、そのような統合は、協定年の初めに実施されるものとし、また、その詳細は、すべての加盟国に送付するためその実施の少なくとも三箇月前にTMBに通報される。
  11. 8の規定に基づく統合のそれぞれの計画は、その実施の少なくとも十二箇月前にTMBにその詳細が通報される。TMBは、すべての加盟国に当該計画を送付する。
  12. 8に規定する残存産品に関する制限の基準となる水準は、1に規定する規制水準とする。
  13. この協定の第一段階(世界貿易機関協定の効力発生の日から同協定が有効な三十六番目の月(同月を含む。)までの間)においては、世界貿易機関協定の効力発生の日前十二箇月間を対象とする有効なMFAの下での二国間取極に基づくそれぞれの制限の規制水準は、各制限に定める伸び率を十六パーセント増加させたものを下回らない伸び率により毎年増加する。
  14. 物品の貿易に関する理事会又は紛争解決機関が第八条12の規定に基づき別段の決定を行う場合を除くほか、残余のそれぞれの制限の規制水準は、この協定の第二段階及び第三段階においては、それぞれ次の(a)及び(b)に定める伸び率を下回らない伸び率により毎年増加する。
    1. 第二段階(世界貿易機関協定が有効な三十七番目の月から八十四番目の月(両月を含む。)までの間)においては、第一段階におけるそれぞれの制限に係る伸び率を二十五パーセント増加させた伸び率
    2. 第三段階(世界貿易機関協定が有効な八十五番目の月から百二十番目の月(両月を含む。)までの間)においては、第二段階におけるそれぞれの制限に係る伸び率を二十七パーセント増加させた伸び率
  15. この協定のいかなる規定も、加盟国が、この条の規定に基づいて維持しているいずれかの制限を経過期間中のいずれかの協定年の初めに撤廃することを妨げるものではない。ただし、その撤廃が、実施される少なくとも三箇月前に関係輸出加盟国及びTMBに対し、通報されている場合に限る。事前の通報の期間は、規制を受けている加盟国との合意により三十日まで短縮することができる。TMBは、その通報をすべての加盟国に送付する。この15に定める制限の撤廃を検討するに当たり、関係加盟国は、他の加盟国からの類似の輸出品の取扱いについて考慮する。
  16. この条の規定に基づいて維持されるすべての制限に適用される弾力性に係る規定、すなわち、振替、繰越し及び繰入れは、世界貿易機関協定の効力発生の日の前十二箇月間を対象とするMFAの下での二国間取極に定められているものと同一とする。振替、繰越し及び繰入れを組み合せて使用することに対しては、いかなる数量的上限も設定してはならず、また、これを維持してはならない。
  17. この条の規定の実施に関連して必要と認められる運営管理上の措置は、関係加盟国間で合意される。当該措置は、TMBに通報される。
  18. 世界貿易機関協定の効力発生の日の前日に自国の輸出品が制限を受けている加盟国であって、その制限の対象となっている量が、千九百九十一年十二月三十一日の時点において輸入加盟国によって課された制限(この条の規定に基づいて通報されたものに限る。)の対象となっている総量の一・二パーセント以下であったものについては、13及び14に規定する伸び率の一段階早めた適用により又はこれと少なくとも同等の、基準となる水準及び増加並びに弾力性に係る規定の異なる組合せについての相互に合意される変更により、世界貿易機関協定の効力発生の日に及びこの協定の有効期間中、当該加盟国の輸出品の市場進出の機会の有意義な改善を行う。このような改善措置は、TMBに通報される。
  19. この協定の有効期間中、特定の産品がこの条の規定に基づき千九百九十四年のガットに統合された直後の一年の期間のいずれかの時点において当該産品に関し千九百九十四年のガット第十九条の規定に基づくセーフガード措置を加盟国がとる場合には、20の規定に従うことを条件として、セーフガードに関する協定により解釈される千九百九十四年のガット第十九条の規定が適用される。
  20. 関係輸入加盟国は、19に規定するセーフガード措置を関税以外の手段を用いてとる場合において、輸出加盟国(その特定の産品の輸出が当該措置をとる直前の一年の期間のいずれかの時点においてこの協定に基づく制限を受けていた輸出加盟国に限る。)の要請があるときは、千九百九十四年のガット第十三条2(d)に定める方法で当該措置をとる。関係輸出加盟国は、当該措置を管理する。当該措置の対象となる輸出について適用される規制水準は、最近の代表的な期間における水準、すなわち、原則として、統計が入手可能である最近の代表的な三年間における関係加盟国からの平均輸出水準を下回ってはならない。更に、当該措置が一年を超えてとられる場合には、適用される規制水準は、適用期間中一定の間隔で漸進的に緩和される。この20の規定が適用される場合には、当該関係輸出加盟国は、千九百九十四年のガット第十九条3(a)の規定に基づく実質的に等価値の譲許その他の義務を停止する権利を行使してはならない。
  21. TMBは、この条の実施について検討する。TMBは、いずれかの加盟国の要請がある場合には、この条の規定の実施に関するいかなる問題についても審査する。TMBは、関係加盟国の参加を招請した後三十日以内に、当該関係加盟国に対し、適切な勧告又は認定を行う。

第三条

  1. 繊維製品等に関する制限(注)(MFAに基づいて維持され、かつ、前条の規定の適用の対象となる制限を除く。)を維持している加盟国は、当該制限が千九百九十四年のガットの規定に合致しているかいないかを問わず、世界貿易機関協定の効力発生の日の後六十日以内に、(a)TMBに対し当該制限を詳細に通報するか又は(b)当該制限が世界貿易機関の他のいずれかの内部機関に既に通報されている場合には、その通報をTMBに提出する。これらの通報には、可能な限り、当該制限が千九百九十四年のガット上正当とされることについての情報(当該制限の根拠となる千九百九十四年のガットの規定を含む。)を含めるべきである。

    注: 「制限」とは、すべての一方的な数量制限及び二国間取極並びにこれらと同様の効果を有する他の措置をいう。

  2. 1の規定に該当する制限(千九百九十四年のガットの規定に基づき正当とされるものを除く。)を維持する加盟国は、次のいずれかの措置をとる。
    1. 世界貿易機関協定の効力発生の後一年以内に当該制限を千九百九十四年のガットの規定に適合させ、TMBに対し、参考のためにこれを通報する。
    2. 世界貿易機関協定の効力発生の日の後六箇月以内に当該制限を維持する加盟国がTMBに提出する計画に従い、当該制限を段階的に撤廃する。当該計画は、この協定の有効期間内にすべての制限が段階的に撤廃されることを定めるものでなければならない。TMBは、当該計画につき関係加盟国に対して勧告を行うことができる。
  3. この協定の有効期間中、加盟国は、千九百九十四年のガットの規定に基づいてとられた繊維製品等に関する新たな制限の導入又は既存の制限の変更について世界貿易機関の他のいずれかの内部機関に提出された通報を、当該制限の導入又は変更の実施の後六十日以内にTMBに対し、参考のために提出する。
  4. 加盟国は、制限の千九百九十四年のガットに基づく正当性について又はこの条の規定にかかわらず通報されなかった可能性のある制限について、TMBに対し、参考のために逆通報を行うことができる。加盟国は、千九百九十四年のガットの関連する規定及び適当な世界貿易機関の内部機関の手続に基づき、当該逆通報についての対応を求めることができる。
  5. TMBは、すべての加盟国に対し、この条の規定に基づいて行われた通報を参考のために送付する。

第四条

  1. 第二条に規定する制限及び第六条の規定に基づいて適用される制限は、輸出加盟国が管理する。輸入加盟国は、第二条の規定に基づいて通報された制限又は第六条の規定に基づいて適用される制限を超える量の貨物を受け入れる義務を負わない。
  2. 加盟国は、この協定に基づいて通報され又は適用されている制限の実施又は管理において、慣行、規則、手続及び繊維製品等の分類の変更その他の変更(統一システムに関連するものを含む。)を導入することが、この協定に基づく関係加盟国間の権利及び義務の均衡を損ない、加盟国の利用し得る市場進出の機会に望ましくない影響を及ぼし、当該市場進出の機会の十分な利用を妨げ、又はこの協定に基づく貿易に混乱をもたらすべきでないことを合意する。
  3. 制限の一部を構成する産品を第二条の規定に基づき統合するために通報する場合には、加盟国は、当該制限の水準のいかなる変更もこの協定に基づく関係加盟国間の権利及び義務の均衡を損なってはならないことを合意する。
  4. 加盟国は、2及び3に規定する変更が必要な場合には、当該変更を行う加盟国が、その影響を受ける加盟国に対し当該変更の実施前に通報すること及び、可能な限り、適切かつ衡平な調整について相互に受諾可能な解決を図るため、その影響を受ける加盟国と協議を開始することを合意する。加盟国は、更に、当該変更の実施前に協議することが実行可能でない場合には、当該変更を行う加盟国が、その影響を受ける加盟国の要請により、可能な場合には六十日以内に、適切かつ衡平な調整について相互に満足すべき解決を図るため、その影響を受ける関係加盟国と協議することを合意する。相互に満足すべき解決が得られない場合には、いずれの関係加盟国も、第八条に規定する勧告を求めるために当該問題をTMBに付託することができる。世界貿易機関協定の効力発生前に導入された変更に関する紛争をTSBが審査する機会を有しなかった場合には、当該紛争は、当該審査に適用されるMFAの規則及び手続に従ってTMBが審査する。

第五条

  1. 加盟国は、積替え、仕向地変更、原産国又は原産地に関する虚偽の申告及び公文書の偽造による阻害行為が繊維製品等の部門を千九百九十四年のガットに統合することを目的とするこの協定の実施の妨げとなることを合意する。したがって、加盟国は、そのような阻害行為に取り組み及びこれに対処するために必要な法令又は行政手続を定めるべきである。更に、加盟国は、阻害行為から生ずる問題に取り組むため、自国の法令及び手続に従って十分に協力することを合意する。
  2. 加盟国は、積替え、仕向地変更、原産国若しくは原産地に関する虚偽の申告又は公文書の偽造によりこの協定の実施が阻害されており、そのような阻害行為に取り組むための若しくはこれに対処するためのいかなる措置もとられていないか又は十分な措置がとられていないと信ずる場合には、相互に満足すべき解決を求めて、関係加盟国と協議すべきである。その協議は、速やかに、かつ、可能な場合には三十日以内に、行うべきである。相互に満足すべき解決が得られない場合には、いずれの関係加盟国も、勧告を求めるために当該問題をTMBに付託することができる。
  3. 加盟国は、自国の法令及び手続に従って、自国の領域内における阻害行為を防止し、調査し及び、適当な場合には、法律上又は行政上の措置をとることを合意する。加盟国は、この協定の実施を阻害する行為又は申し立てられた当該行為の事案において、輸入地、輸出地及び場合により積替え地に係る関連事実を立証するため、自国の法令及び手続に従って十分に協力することを合意する。自国の法令及び手続に従って行われる当該協力には、規制を維持している加盟国に対する当該規制に係る輸出の増加をもたらす阻害行為を調査し並びに書類、通信、報告書その他の入手可能な関連情報を交換し並びに要請があったときに、個々の事例について、工場の訪問及び工場との連絡のための便宜を供与することを含むことが合意される。加盟国は、阻害行為又は申し立てられた阻害行為の事案に係る状況(事案に関係した輸出者又は輸入者のそれぞれの役割を含む。)を明らかにするよう努めるべきである。
  4. 調査の結果阻害行為が行われた十分な証拠がある場合(例えば、真の原産国又は原産地及び当該阻害行為の状況に関する証拠が入手可能である場合)には、加盟国は、当該阻害行為に取り組むため必要な範囲内で適当な措置がとられるべきであることを合意する。このような措置には、物品の輸入を許可しないこと又は、物品が輸入された場合には、真の原産国又は原産地の実状及び関与に十分に留意して、当該真の原産国又は原産地を反映するよう規制水準についての量の調整を行うことを含めることができる。物品の積替えに加盟国の領域が関係していることについての証拠がある場合には、当該措置には、当該加盟国に関する規制の導入を含めることができる。いずれの措置も、関係加盟国間で相互に満足すべき解決を得るため当該措置並びにそのとられる時期及び範囲について協議が行われた後にとることができるものとし、当該措置は、当該時期及び範囲と共に、十分かつ正当な理由を付して、TMBに通報される。関係加盟国は、協議の上その他の救済措置について合意することができる。いずれの合意も、TMBに通報されるものとし、TMBは、適当と認める勧告を関係加盟国に行うことができる。相互に満足すべき解決が得られなかった場合には、関係加盟国は、迅速な審査及び勧告を求めるため当該解決が得られなかった問題をTMBに付託することができる。
  5. 加盟国は、阻害行為の事案には、一以上の国又は場所を通過して輸送され、通過地域においてその輸送される物品に対しいかなる変更も行われない事案が含まれることに留意する。加盟国は、当該通過地域においてこのような輸送についての管理を行うことが一般的には実行可能でないことに留意する。
  6. 加盟国は、商品についての繊維組成、数量、品名又は種類に関する虚偽の申告もこの協定の目的を妨げることを合意する。加盟国は、いかなる虚偽の申告も阻害を目的として行われたとの証拠がある場合には、当該虚偽の申告に関係する輸出者又は輸入者に対し自国の法令及び手続に従って適当な措置がとられるべきであることを合意する。加盟国は、その虚偽の申告によりこの協定の実施が阻害されており、そのような阻害行為に取り組むための若しくはこれに対処するためのいかなる行政上の措置もとられていないか又は十分な措置がとられていないと信ずる場合には、相互に満足すべき解決を求めて、関係加盟国と速やかに協議すべきである。その解決が得られなかった場合には、加盟国は、勧告を求めるため当該解決が得られなかった問題をTMBに付託することができる。この6の規定は、申告において不注意による誤りがあった場合において、加盟国が技術的な調整を行うことを妨げることを意図するものではない。

第六条

  1. 加盟国は、経過期間中、特定の経過的なセーフガードの制度(この協定において「経過的セーフガード」という。)を適用することが必要となることを認める。第二条の規定に基づき千九百九十四年のガットに統合されている産品を除くほか、いずれの加盟国も、附属書に含まれる産品について経過的セーフガードを適用することができる。第二条の規定に該当する制限を維持していない加盟国は、世界貿易機関協定の効力発生の日の後六十日以内に、TMBに対し、この条の規定を利用する権利を保持することを希望するかしないかを通報する。千九百八十六年以後MFAの有効期間を延長する議定書を受諾していない加盟国は、世界貿易機関協定の効力発生の後六箇月以内にその通報を行う。経過的セーフガードは、この条の規定及びこの協定に基づく統合の過程の効果的な実施に反しない範囲内で、可能な限り限定的に適用されるべきである。
  2. 経過的セーフガードは、特定の産品が、同種の又は直接に競合する産品を生産する国内産業に重大な損害を与え又は与える現実のおそれがあるような増加した数量で自国の領域内に輸入されていることの証明がなされたと加盟国(注)が決定する場合には、この条の規定に基づき適用することができる。重大な損害又はその現実のおそれは、当該特定の産品の総輸入量の増加した数量により生じたことが明白でなければならず、技術上の変化、消費者の選好の変化等の要因によって生じたものであってはならない。

    注 関税同盟は、一の単位として又は一の構成国のために経過的セーフガードを適用することができる。関税同盟が一の単位として経過的セーフガードを適用する場合には、この協定に基づく重大な損害又はその現実のおそれの決定のためのすべての要件は、当該関税同盟全体に存在する条件に基づくものとする。経過的セーフガードが一の構成国のために適用される場合には、重大な損害及びその現実のおそれの決定のためのすべての要件は、当該構成国に存在する条件に基づくものとし、また、当該セーフガードの適用は、当該構成国に限定する。

  3. 2に規定する重大な損害又はその現実のおそれの決定に当たり、加盟国は、生産高、生産性、操業度、在庫、市場占拠率、輸出、賃金、雇用、国内価格、利潤、投資等の関連する経済指標の変化に反映される特定の産業の状態に特定の産品の輸入が与える影響を検討する。これらの経済指標はいずれも、単独でも又は他の経済指標との組み合わせによっても、必ずしも決定的な判断の基準となるものではない。
  4. この条の規定に基づく経過的セーフガードは、個々の加盟国に対して適用されるものとする。2及び3に規定する重大な損害又はその現実のおそれの原因となっている加盟国の特定は、当該加盟国からの輸入の急激な、かつ、著しい量の増加(現実の増加であるか差し迫った増加(注)であるかを問わない。)を基礎として、かつ、他の輸入源からの輸入と対比した当該加盟国の輸入水準、市場占拠率並びに商取引の同様な段階における輸入価格及び国内価格を基礎として行う。これらの要因はいずれも、単独でも又は他の要因との組み合わせによっても、必ずしも決定的な判断の基準となるものではない。この協定に基づいて既に規制されている特定の産品の輸出を行っている加盟国からの当該輸出について経過的セーフガードを適用してはならない。

    注 このような差し迫った増加は、測定可能なものでなければならず、申立て、推測又は、例えば輸出国に生産能力があることから生ずる、単なる可能性に基づいてその存在を決定してはならない。

  5. 経過的セーフガードを適用するに当たり、重大な損害又はその現実のおそれの決定の有効期間は、7に規定する最初の通報の日から九十日を超えないものとする。
  6. 経過的セーフガードの適用に当たり、輸出加盟国の利益について次のとおり特別の考慮を払う。
    1. 後発開発途上加盟国は、できる限りすべての要素において、及び少なくとも総体的条件において、(b)から(d)までのいずれかに該当する加盟国に与えられる待遇より相当に有利な待遇が与えられる。
    2. 自国の繊維製品等の総輸出量が他の加盟国の繊維製品等の総輸出量に比較して少なく、かつ、自国の繊維製品等の輸入加盟国における輸入量が当該輸入加盟国の繊維製品等の総輸入量に占める割合の非常に小さい輸出加盟国は、8、13及び14に規定する経済的条件の決定に当たり、異なる、かつ、一層有利な待遇が与えられる。これらの供給国である加盟国については、第一条の2及び3の規定に従い、将来当該供給国の貿易が発展する可能性及び当該供給国からの商業的に成り立つ輸入量を認めることの必要性を十分に考慮する。
    3. 羊毛の生産国である開発途上加盟国であって、その経済及び繊維製品等の貿易が羊毛の部門に依存し、その繊維製品等の総輸出がほぼ全部羊毛製品から成っており、かつ、その繊維製品等の貿易量が輸入加盟国の市場において比較的少ないものから輸入される羊毛製品については、割当て水準、伸び率及び弾力性を考慮する際に、当該開発途上加盟国の輸出上のニーズに特別な考慮を払う。
    4. 繊維製品等を加工及びその後の再輸入のために他の加盟国に輸出した加盟国による当該製品等の再輸入については、当該他の加盟国の繊維製品等の総輸出においてこの種の形態の貿易が相当な比率を占める場合には、一層有利な待遇が与えられる。ただし、当該加工及びその後の再輸入が当該再輸入を行う加盟国の法律及び慣行に従い、かつ、十分な管理及び証明手続に従うことを条件とする。
  7. 経過的セーフガードを適用しようとする加盟国は、当該セーフガードにより影響を受けることとなる加盟国との協議を求める。協議の要請に際しては、できる限り最新の事実関係に関する特定のかつ関連のある情報であって特に次の事項に関するものを併せて提供する。
    1. 当該セーフガードを適用する加盟国が重大な損害又はその現実のおそれがあることについて決定するための根拠となる3に定める経済指標
    2. 当該セーフガードを適用する加盟国が関係加盟国に対して当該セーフガードを適用するための根拠となる4に定める要因

    この7の規定に基づいて行われる要請に関し、当該情報は、特定の生産部門及び8に規定する期間にできる限り密接に関連するものとする。当該セーフガードを適用する加盟国は、当該関係加盟国からの産品の輸入について規制されるべき特定の水準も明示する。その水準は、8に規定する水準を下回ってはならない。協議を要請している加盟国は、同時に、TMBの議長に対し、協議の要請を3及び4に示されている関連する事実関係に関するすべてのデータ及び提案した規制水準と共に通報する。同議長は、TMBの構成員に対し、当該協議の要請について、その要請を行っている加盟国、問題となっている産品及びその要請を受けている加盟国を明示して通報する。関係加盟国は、その要請に速やかに応ずるものとし、その協議は、遅滞なく行われ、原則として、その協議の要請が受領された日の後六十日以内に終了する。

  8. 協議において関係加盟国からの特定の産品の輸出に関し規制が必要な状態にあることが相互に了解される場合には、その規制水準は、協議の要請が行われた月の二箇月前に終了した十二箇月の期間の当該関係加盟国からの実際の輸出又は輸入の水準を下回らない水準に定める。
  9. 合意された経過的セーフガードの詳細は、当該合意が得られた日から六十日以内にTMBに通報される。TMBは、その合意がこの条の規定に従って正当であるかないかを決定する。TMBは、その決定を行うため、7に定めるところによりTMBの議長に提出された事実関係に関するデータを関係加盟国によって提出された他の関連情報と共に利用する。TMBは、関係加盟国に対し、適当と認める勧告を行うことができる。
  10. 協議の要請が受領された日から六十日の期間が満了した時までに加盟国間で合意が得られなかった場合には、経過的セーフガードを適用することを提案した加盟国は、この条の規定に従い、協議のための六十日間の後三十日以内に、輸入日又は輸出日を基準とする規制を適用し、同時に、TMBに当該合意が得られなかった問題を付託することができる。いずれの加盟国も、六十日の期間の満了前にTMBにその問題を付託することができる。いずれの場合においても、TMBは、速やかにその問題(重大な損害又はその現実のおそれの決定及びそれらの原因に関する問題を含む。)の審査を行い、三十日以内に関係加盟国に対し適当な勧告を行う。TMBは、その審査を行うため、7に定めるところによりTMBの議長に提出された事実関係に関するデータを関係加盟国によって提出された他のあらゆる関連情報と共に利用する。
  11. 遅延すれば回復し難い損害を与えるような極めて異常かつ危機的な事態が存在する場合には、10の規定に基づく経過的セーフガードは、その適用後五執務日以内に協議の要請及びTMBに対する通報を行うことを条件として、暫定的に適用することができる。協議により合意が得られなかった場合には、TMBは、当該協議の終了時に、その旨の通報を受ける。ただし、いかなる場合にも遅くとも当該セーフガードの実施の日から六十日以内に通報を受ける。TMBは、速やかに当該問題を審査し、三十日以内に関係加盟国に対し適当な勧告を行う。協議により合意が得られた場合には、関係加盟国は、協議の終了時に、その旨をTMBに通報する。ただし、いかなる場合にも遅くとも当該セーフガードの実施の日から九十日以内に通報する。TMBは、関係加盟国に対し適当と認める勧告を行うことができる。
  12. 加盟国は、この条の規定に従って適用された経過的セーフガードを(a)三年を超えない期間(延長することはできない。)又は(b)当該セーフガードに係る産品が千九百九十四年のガットに統合されるまでの期間のいずれか短い期間、維持することができる。
  13. 経過的セーフガードが一年を超えて引き続き効力を有する場合には、その後の年における水準は、TMBに対し別段の正当化が行われない限り、最初の一年における特定された水準を年六パーセントを下回らない伸び率で増加させたものとする。当該セーフガードに係る産品に対する規制水準は、繰入れ若しくは繰越し又はこれらの組合せにより、二の連続する年のうちいずれかの一年において十パーセントを限度として超過することができる。ただし、繰入れによるものについては、五パーセントを超えないものとする。繰入れ、繰越し及び14に規定するものを組み合せて使用することに対しては、いかなる数量的上限も設定してはならない。
  14. この条の規定に従い加盟国が他の加盟国からの二以上の産品を規制している場合には、この条の規定に基づいて合意されたこれらの産品のいずれかについての規制水準は、七パーセントを限度として超過することができる。ただし、規制の対象となっている輸出の総量が合意された共通の計算単位を基礎としてこの条の規定に基づいて規制されているすべての産品の水準の合計を超えない場合に限る。これらの産品に対する規制の適用期間が相互に一致していない場合には、この14の規定は、比例配分を基礎として、重複している期間について適用する。
  15. 世界貿易機関協定の効力発生の日の前十二箇月の間MFAに基づき規制されていた産品又はこの協定の第二条若しくはこの条の規定に基づき過去において規制されていた産品について、この条の規定に基づき経過的セーフガードが適用される場合には、新たな規制の水準は、8に規定する水準とする。ただし、その新たな規制が次に定める日から一年以内に実施される場合には、当該新たな規制の水準は、(1)当該産品が規制されていた過去十二箇月間の規制水準又は(2)8に規定する規制水準のいずれか高い方の水準を下回らないものとする。
    1. 第二条15に定める過去の規制の撤廃の通報の日
    2. この条の規定又はMFAの規定に従って実施された過去の規制の終了の日
  16. 第二条の規定に基づく規制を維持していない加盟国がこの条の規定に基づき規制を行うことを決定した場合には、当該加盟国は、(a)繊維の構成及び自国の国内市場の同一部門における競争の双方に関し、確立している関税上の分類、輸出入取引における通常の商慣行に基づく数量の単位等の諸要素について十分に考慮し、及び(b)過度の分類を避けて、適当な措置を講ずる。7又は11に規定する協議の要請には、そのような措置についての十分な情報を含む。

第七条

  1. 統合の過程の一部として及びウルグァイ・ラウンドの結果として加盟国によって行われた特定の約束に関し、すべての加盟国は、次のことを目的として、千九百九十四年のガットの規則及び規律に従うために必要な措置をとる。
    1. 関税の引下げ及び譲許、関税以外の障害の削減又は撤廃、税関手続、行政手続及び輸入許可手続の簡易化等の措置により繊維製品等の市場進出の機会の改善を達成すること。
    2. ダンピング及びダンピング防止に係る規則又は手続、補助金及び相殺措置、知的所有権の保護等の分野において、繊維製品等に関する公正かつ公平な貿易環境に関連する政策の適用を確保すること。
    3. 一般的な貿易政策上の理由に基づき措置がとられる場合には、繊維製品等の部門における輸入に対する差別を回避すること。

    当該必要な措置は、千九百九十四年のガットに基づく加盟国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。

  2. 加盟国は、この協定の実施に関連する1に規定する必要な措置をTMBに通報する。当該措置が既に世界貿易機関の他の内部機関に通報されている場合には、その通報に言及した要約の提出により、この2の規定に基づく要件が十分満たされるものとする。いかなる加盟国も、TMBに対し逆通報を行うことができる。
  3. いかなる加盟国も、他の加盟国が1に規定する必要な措置をとっておらず、かつ、この協定に基づく権利及び義務の均衡が損なわれていると認める場合には、そのような問題を世界貿易機関の関係内部機関に付託し、TMBに通報することができる。世界貿易機関の関係内部機関による当該問題に係るあらゆる認定又は結論は、TMBの包括的な報告書の一部を成す。

第八条

  1. この協定の実施を監視し、この協定に基づいてとられたすべての措置及びこれらの措置のこの協定との適合性を審査し、この協定により特に求められている活動を行うため、ここに繊維・繊維製品監視機関(「TMB」)を設置する。TMBは、一人の議長及び十人の構成員から成る。その構成は、均衡がとれ、かつ、広範に加盟国を代表するものとし、構成員については、適当な間隔で交替が行われるものとする。構成員は、物品の貿易に関する理事会によって指名される加盟国によって任命され、個人の資格でTMBの任務を遂行する。
  2. TMBは、その運営手続を策定する。TMBのコンセンサス方式においては、TMBが審査中の未解決の問題に関係する加盟国によって任命された構成員の賛成又は同意が必要とされないことが了解される。
  3. TMBは、常設機関とするものとし、この協定により求められている任務を遂行するため、必要に応じて会合する。TMBは、この協定の関連条項に基づき加盟国から提出される通報及び情報並びにこれらを補足する追加的な情報及び必要な詳細な説明であって、加盟国が提出し又はTMBが決定により加盟国に対して提出を求めるものを利用する。TMBは、また、世界貿易機関の他の内部機関への通報及び当該内部機関その他適当と認める情報源からの報告を利用することができる。
  4. 加盟国は、この協定の実施に影響を及ぼすいかなる問題についても、関係加盟国との間において相互に協議のための機会を十分に確保する。
  5. 合意による解決がこの協定に定める二国間協議において得られなかった場合には、TMBは、いずれかの加盟国の要請により、そのような問題を十分かつ速やかに検討した後、関係加盟国に勧告を行う。
  6. TMBは、一の加盟国がこの協定に基づく自国の利益を害すると認める特定の問題について関係加盟国との間の協議によっても相互に満足すべき解決が得られなかった場合には、当該一の加盟国の要請により、当該問題を速やかに審査する。TMBは、当該問題に関し、当該問題に関係する加盟国にとって適当であると認める見解を述べることができる。また、TMBは、これを11に規定する審査のために用いることができる。
  7. TMBは、勧告を行い又は見解を表明する前に、当該勧告又は見解の対象となる問題によって直接に影響を受ける可能性のある加盟国の参加を招請する。
  8. TMBは、勧告又は認定を行うよう要請されたときは、この協定において異なる期限が規定されている場合を除くほか、可能な限り三十日以内に当該勧告又は認定を行う。すべての当該勧告又は認定は、直接に関係する加盟国に通報されるものとし、物品の貿易に関する理事会に対しても参考のために通報される。
  9. 加盟国は、TMBの勧告を完全に受け入れるよう努力する。TMBは、その勧告の実施につき適正な監視を行う。
  10. 加盟国は、TMBの勧告に従うことができないと認めた場合には、当該勧告を受領した後一箇月以内にその理由をTMBに提出する。TMBは、提出された理由を十分に検討した後、適当と認める新たな勧告を直ちに行う。当該新たな勧告の後問題がなお未解決である場合には、いずれか一方の加盟国は、その問題を紛争解決機関に付託し、千九百九十四年のガット第二十三条2の規定及び紛争解決了解の関連規定を利用することができる。
  11. この協定の実施を監視するため、物品の貿易に関する理事会は、統合の過程のそれぞれの段階が終了する前に主要な審査を行う。TMBは、その審査を支援するため、それぞれの段階の終了する少なくとも五箇月前に、同理事会に対し、審査対象の段階におけるこの協定の実施、特に、統合の過程、経過的セーフガードの適用に関する事項並びに第二条、第三条、第六条及び前条にそれぞれ定める千九百九十四年のガットの規則及び規律の適用に関する事項についての包括的な報告書を提出する。当該報告書には、同理事会のためにTMBが適当と認めるあらゆる勧告を含めることができる。
  12. 物品の貿易に関する理事会は、自己の行った審査を考慮して、この協定に定める権利及び義務の均衡が損なわれないことを確保するため、コンセンサス方式により適当と認める決定を行う。前条に規定する問題に関連して生ずるあらゆる紛争を解決するため、紛争解決機関は、この協定に基づく義務を履行していないことが判明した加盟国について、審査の後の統合の段階に関し、次条に規定する最終期限に影響を与えることなく、第二条14の規定に対する調整を認めることができる。

第九条

この協定及びこの協定に基づくすべての制限は、世界貿易機関協定の効力発生の後百二十一番目の月の初日に終了する。当該日には、繊維製品等の部門が千九百九十四年のガットに完全に統合される。この協定は、延長されない。

附属書 この協定が対象とする産品表

  1. この附属書は、商品の名称及び分類についての統一システム(統一システム)の六桁けたの水準の番号によって特定された繊維製品等を掲げるものである。
  2. 第六条に規定する経過的セーフガードは、特定の繊維製品等についてとられるものであって、統一システム番号自体に従ってとられるものではない。
  3. 第六条に規定する経過的セーフガードは、次のものに適用しない。
    1. 開発途上加盟国の輸出品であって、家内工業の手織りの織物若しくはこのような手織りの織物を用いた家内手工業産品又は伝統的な民芸手工芸品である繊維製品等であるもの。ただし、これらの産品が関係加盟国間で成立した取極に基づいて適正に認証されることを条件とする。
    2. 千九百八十二年以前において商業的に相当な量で国際的に取引されていた歴史的な交易対象繊維製品、例えば、袋、じゅうたんの基布、綱、かばん、敷物及びじゅうたんであってジュート、コイヤ、サイザル、アバカ(マニラ麻)、マゲー、ヘネケン等の繊維から一般的に製造されるもの
    3. 純絹製の製品

    これらの産品については、セーフガードに関する協定により解釈される千九百九十四年のガット第十九条の規定が適用される。

商品の名称及び分類についての統一システム(統一システム)の品目表の第一一部(紡織用繊維及びその製品)に含まれる産品 〔略〕

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