世界貿易機関(WTO)
世界貿易機関(WTO)貿易統計・見通しに関するプレスリリース(2021年3月31日)
「世界貿易は新型コロナの打撃から力強くもバラツキのある回復に向かう」
令和3年4月9日
3月31日、世界貿易機関(WTO)は、貿易統計・見通しに関するプレスリリース「世界貿易は新型コロナの打撃から力強くもバラツキのある回復に向かう(World trade primed for strong but uneven recovery after COVID-19 pandemic shock)」を発出したところ、ポイントは以下の通りです。なお、全文(英語)はWTOのホームページでご確認いただけます。
- 2020年の世界の物品貿易量は5.3%の減少となり、前回(2020年10月)
の推計(9.2%)よりも小さい減少幅であった。パンデミックによる貿易落ち込みからの回復を受け、2021年の世界の物品貿易量は8.0%の増加が見込まれる。2022年は増加率が鈍化し、物品貿易の増加率は4.0%となる見込み。これは、パンデミック前の世界物品貿易の長期増加傾向を下回るものとなる。なお、2020年の減少幅は、2020年4月にWTOが示した楽観シナリオよりも更に小さくなった。その理由としては、各国政府による力強い金融・財政政策の実施、消費者や企業側がパンデミックに対応したこと、WTOメンバーが保護主義に陥らなかったことなどが考えられる。
- 2020年のGDP成長率は-3.8%であり、前回
の推計(-4.8%)よりも小さい減少幅であった。2021年、2022年のGDP成長率はそれぞれ、5.1%、3.8%を見込んでいる。
- 上記の物品貿易量及びGDP成長率の見通しについては、COVID-19のワクチンの生産・配布等により、上方シナリオと下方シナリオがある。ワクチンの生産・配布が加速し各国の規制措置がより早く緩和された場合(上方シナリオ)、2021年の物品貿易量は更に2.5%増加、GDP成長率は更に1%増加する見込み。他方、ワクチンの生産が需要に追いつかない場合やワクチンの効果が限定的な変異種が発生した場合(下方シナリオ)、2021年の物品貿易量は更に2%減少し、GDP成長率は更に1%減少する見通しである。
- 2020年にパンデミックが物品貿易量に与えた影響は地域によって異なる。ほとんどの地域が輸出入量の双方で過去最大の減少を見せたのに対し、アジアのみ輸出量は0.3%の増加、輸入量は1.3%の減少に留まった。輸入量が最も減少したのは、中東(-11.3%)、南米(-9.3%)、アフリカ(-8.8%) であり、これは石油価格が約35%下落したことによる輸出収入の減少に伴うものと考えられる。欧州、北米の輸入量はそれぞれ-7.6%、-6.1%に留まった。
2021年については、米国の輸入量は、政府の刺激策に伴い11.4%の増加が見込まれている。一方、アジアの輸出量は8.4%増、欧州は8.3%増、アフリカも8.1%増が見込まれている。 - 2020年はサービス貿易全般も対前年比で減少したが、特に旅行サービスは63%、運送サービスは13%減少した。これはコロナ禍における各国による規制の影響を直接受けたためである。