経済上の国益の確保・増進

エネルギーをめぐる国際的議論 Vol.4

IEA発行「世界の電気自動車の見通し(2017)」レポートの概要

平成29年12月12日

 国際エネルギー機関(IEA)は,「世界の電気自動車の見通し(2017)(PDF)別ウィンドウで開く」と題する報告書を本年6月7日に発表しました(参考1)。電気自動車の導入拡大に関する現状と今後の見通しなどを分析しています。パリ協定の「世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏2度高い水準を十分に下回るものに抑えること」という目標(「2度目標」)を達成するためには,輸送部門の電化は重要課題です。電気自動車に関する最近の国際的動向とともに,この報告書の概要について解説します。

電気自動車に関する国際社会の最近の動向

 本年7月,フランス及びイギリスは,2040年までにガソリン車及びディーゼル車の販売を停止し,電気自動車への転換を促す政策を発表しました。今後自動車需要の伸びる中国,インドなどでも,電気自動車の導入拡大を促す政策が発表されています。表1には,電気自動車の導入拡大に関し,政策面での最近の主な国際的動向をまとめました。

表1 電気自動車の導入拡大に関する政策面での主な国際的動向
区分 主体 政策
国際的イニシアティブ EV30@30キャンペーン(注) 2030年までに,全ての自動車(バス,トラック含む)を対象として,新車販売シェアに占める電気自動車(EV)の割合を,参加国全体で30%以上とすることを目指す(日本も参加)
各国の政策 フランス 2040年までにガソリン車及びディーゼル車の販売を停止し,電気自動車(バッテリー及びハイブリッド車)のシェアを向上させる
イギリス 2040年までにガソリン車及びディーゼル車の販売を停止し,電気自動車(バッテリー及びハイブリッド車)のシェアを向上させる
中国 電気自動車,プラグイン・ハイブリッド自動車,燃料電池車などの新エネルギー車の国内生産割合の増加を促す
インド 2030年までにガソリン車及びディーゼル車の販売を停止し,電気自動車のみにする
ドイツ ディーゼル車の技術革新及び電気自動車への投資を推進する

(注)EV30@30キャンペーン:本年6月に打ち出された,クリーンエネルギー閣僚会合(CEM)によるイニシアティブ。2017年6月末現在,参加国はカナダ,中国,フィンランド,フランス,インド,日本,メキシコ,オランダ,ノルウェー,スウェーデンの10か国。

電気自動車の導入実績と今後の拡大の見通し

 多くの国々が電気自動車の導入拡大に積極的ですが,電気自動車の導入の現状と今後の拡大の見通しはどのようになっているのでしょうか。ここからは,IEAの「世界の電気自動車の見通し(2017)」の分析を紹介していきます。

 電気自動車は,2016年の1年間に全世界で75万台以上の販売台数を記録し,また世界の電気自動車の累積台数は,2016年に200万台を超えました。2016年時点で電気自動車の最大の市場は中国であり,世界で販売される電気自動車の40%以上が中国で販売されました。これは,米国での販売台数の2倍以上にあたります。また,中国は2016年,世界最大の電気自動車所有国ともなり,世界全体の電気自動車のうち約3分の1が中国にあるという状況になりました。2億台以上の電動二輪車,300~400万台の低速電気自動車,30万台以上の電気バスがあるなど,中国は輸送部門の電化で世界をリードしています。

 電気自動車の導入台数の実績と2030年までの見通しを図1に示します。過去5年間,電気自動車の生産台数の増加が続いていますが,世界の電気自動車の累積台数は,現時点では小型乗用車総数の0.2%を占めるに過ぎません。

  • (画像1)図1 電気自動車の導入台数の実績と2030年までの様々な見通し
    図1 電気自動車の導入台数の実績と2030年までの様々な見通し

 研究開発及び量産化の取組が継続的に進み,バッテリーコストの低下とエネルギー密度の増加につながることにより,電気自動車と内燃機関との間のコストのギャップは縮小傾向にあります。国別目標や,メーカーの電気自動車導入シナリオを分析すると,電気自動車の累積台数は2020年までに900万~2000万台,そして2025年までには4000~7000万台に達する見通しです。

 これは明るい見通しではあるものの,現在の電気自動車市場が政策的環境に大きく影響されていることは確かです。少なくとも中期的には,電気自動車導入の障壁を下げるべく,政策的支援は引き続き不可欠です。政策ツールのうち,環境性能評価,燃費規制,地方自治体対策(都市部へのアクセス差別化)に基づく税金対策などが引き続き重要となるでしょう。

 電気自動車が電力セクターに及ぼす影響について見てみると,電気自動車の充電需要が電力網に与える影響は,採用する技術と充電の方法に大きく依存します。電気自動車は多くの場合,家庭や企業,公的充電施設で充電されると予想されるため,電気自動車の普及が進むと,住宅・商業地域の低圧配電網に最初に影響する可能性が高いと言えます。

 電気自動車の拡大により,その充電のための追加電力需要は増加します。しかし,図2に示すように,IEAの2DSシナリオにおいても,2030年時点で電気自動車の電力需要を満たすのに必要な追加発電量は,総電力需要の1.5%程度です。

  • (画像2)図2 世界の電力総需要と電気自動車充電のための電力需要(IEAの2DSシナリオ)
    図2 世界の電力総需要と電気自動車充電のための電力需要(IEAの2DSシナリオ)

 図3に示すように,2030年時点でも,自動車総数の大部分はガソリン・ディーゼルなどの従来のエンジン車であることが予想されています。石油産業などからは,電気自動車の導入拡大を含む再生可能エネルギーなどへのエネルギー転換には,まだ数世代を要するとの見方も示されています(参考2)。

  • (画像3)図3 世界の全自動車総数(実績)と電気自動車台数(IEAの2DSシナリオ)の推移
    図3 世界の全自動車総数(実績)と電気自動車台数(IEAの2DSシナリオ)の推移

参考文献

用語の解説

  • 電気自動車(Electric Vehicle:EV),:バッテリー(蓄電池)からの電気エネルギーのみで駆動するタイプと,バッテリーとガソリンエンジンの両方で駆動するハイブリッドタイプの2種類の車があります。バッテリーは電気を蓄える装置で,最近は充電走行距離を伸ばすことのできるリチウムイオン電池が電気自動車向けに拡大しています。
  • IEAの2DSシナリオ:IEAの提唱するシナリオで,温室効果ガスとCO2の排出量を大幅に削減し,長期的な気温上昇を2℃以下に制限する可能性が少なくとも50%あるとする,持続可能なエネルギーシステムの展望を提示するシナリオです。
  • TWh:電力量の単位でテラワットアワー(一兆ワットアワー)と称し,1GWの電力機器を1000時間運転したときの消費電力量に相当します。


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