エネルギー安全保障
第26回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会
平成29年11月10日



1 会議概要
- (1)11月7日及び8日,第26回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会がパリで開催された。スウェーデンのイブラヒム・バイラン政策調整・エネルギー大臣が議長を務め,IEA加盟国29か国及びEUに加え,30番目の加盟国となるメキシコ及び非加盟国9か国(ブラジル,チリ,中国,インド,インドネシア,モロッコ,シンガポール,南アフリカ,タイ)の閣僚等が出席した。我が国からは,中根一幸外務副大臣及び武藤容治経済産業副大臣が出席した。その他,エネルギービジネス評議会に属する我が国企業を含む世界のエネルギー関連企業のCEOらも多数出席した。
- (2)今次理事会においては,「持続可能なグローバル成長に向けたエネルギー安全保障の強化」というテーマの下,主要新興国を含めたグローバルなエネルギー安全保障の強化,エネルギー投資の促進,エネルギーのデジタル化への対応,クリーンエネルギーへの転換,IEAが目指すべき将来像等について議論が行われ,議論の結果を踏まえた議長総括(英文(PDF)
/仮訳(PDF)
)が発出された。
2 主な議論の内容
(1)サイドイベント:クリーンエネルギーと女性(7日午前)
- ア クリーンエネルギー分野において女性が活躍することの重要性について認識が共有され,一層の活躍推進に向けた課題と取組の方向性について議論が行われた。
- イ 中根副大臣から,我が国は「女性が輝く社会」の実現を最重要課題の一つに位置づけ,国際女性会議WAW!2017を先週開催したことなども紹介しつつ,我が国としてもクリーンエネルギー分野における女性の活躍を一層後押ししたい旨発言した。
(2)オープニングレセプション~閣僚夕食会(7日午後)
- ア オープニングレセプションにおいて,メキシコが30番目の加盟国となることが発表され,参加閣僚及びCEO等から歓迎された。
- イ 冒頭,ペリー米エネルギー長官,シン・インド電力・新エネルギー・再生可能エネルギー大臣,ホール・ヴァッテンフォール社CEOからそれぞれ基調講演が行われ,その後,各国政府,産業界,学術界の間で多国間のエネルギー安全保障に関する連携を進める必要性につき議論が行われた。
(3)全体会合1(21世紀におけるエネルギー安全保障)(8日午前)
- ア 石油,ガス,電力の3分野を中心に議論が行われた。石油備蓄義務や緊急時対応メカニズムに関し,需要の中心がアジアへシフトする近年の石油市場の現状に合わせた現代化の必要性につき議論された。
- イ 経済成長と気候変動対策の両立の観点から,世界のエネルギー安全保障における天然ガスの役割及び重要性が高まっているとの現状認識の下,柔軟で透明性の高い市場形成を含む天然ガス安全保障の更なる強化について議論が行われた。
- ウ また,太陽光や風力を中心とした再生可能エネルギーの拡大に伴う電力供給の安定性の維持・向上についても意見が交わされた。
(4)全体会合2「クリーンエネルギーへの移行の推進」(8日午前)
- ア 再生可能エネルギーや省エネルギー及び原子力を含むクリーンエネルギー技術が,世界のエネルギー安全保障,経済成長及び気候変動対策に果たす役割,ならびに熱利用における低炭素化及びクリーンエネルギーへの転換可能性などについて議論が行われた。
- イ 中根副大臣から,我が国はODAを通じ,途上国の様々なニーズに応じたエネルギーの効率的利用や,発電・送電の効率化の支援を行うとともに,国内においても福島新エネ社会構想を始め,再生可能エネルギー由来の水素を活用した次世代のクリーンエネルギー社会の実現に向けた取組を進めており,引き続きこの分野において指導力を発揮していく考えを表明した。
(5)ワーキングランチ「IEAの将来」(8日午後)
- ア 参加閣僚は,2015年に始動したアソシエーション(IEA非加盟国との協力関係)の拡大を歓迎するとともに,「IEAファミリー」(加盟国,アソシエーション国及びパートナー国)による相互の協力関係のあり方について議論した。
- イ 中根副大臣から,相互協力の強化に向けた議論の重要性に言及しつつ,供給国のシフト,需要国のシフト,低炭素化へのシフトに象徴される国際エネルギー情勢の大きな地殻変動の中,本年7月に我が国が「日本のエネルギー・資源外交 未来のためのグローバル・ビジョン」を発表したことを紹介した。また,かかるビジョンの下,IEAファミリーと協力しながら,世界のエネルギー安全保障の一層の強化に引き続き積極的に取り組んでいく考えを表明した。
3 中根副大臣とビロルIEA事務局長との会談
7日,中根副大臣は,今次閣僚理事会に先立ち,ファティ・ビロルIEA事務局長との会談を行った。中根副大臣から,IEAが世界のエネルギー安全保障において中核的役割を果たし続けることが重要であり,邦人職員増強を含む日・IEA関係の更なる発展を期待する旨述べた。これに対し,ビロル事務局長からは,我が国のIEAへの支援・協力や人的貢献に対する高い評価が表明された。