経済外交
EPA(経済連携協定)活用セミナー(平成26年)
パネルディスカッション「先行事例に学ぶEPA活用ビジネスの実際」概要
パネルディスカッション「先行事例に学ぶEPA活用ビジネスの実際」において、冒頭、EPA利用企業(内山工業株式会社、ナカシマプロペラ株式会社)、地元金融機関(中国銀行)、大阪商工会議所の各代表者の発表概要は以下の通り。
内山工業株式会社は、自動車部品・建材・断熱材・食品包装資材を製造・販売しており、日タイEPA発効(2007年11月)を機にEPA活用の検討を開始。EPAの利用によって2010年から2013年にかけて増益。
EPA利用上の課題・利便性向上に関する希望としては、以下のとおり挙げられる。
- (1)HSコードが統一されていない。
- (2)原産地資格取得時に開示したくない情報の開示を求められる。
- (3)岡山で原産地証明書を取得できない。
- (4)EPAを利用できる国を拡大して欲しい。
- (5)原産地証明申請のネット画面の操作性を改善して欲しい。
- (6)発行済み証明書の部分訂正が出来るようにして欲しい。
- (7)原産地証明書を急ぎで発行できる仕組みが欲しい。
ナカシマプロペラ株式会社は、船用推進器、環境改善装置の開発・製造・販売を行っており、主要取引国との関係でEPAの恩恵を受けている。今後は、巨大市場たる中国を含むRCEP、日中韓FTAの早期実現を期待。EPA/FTAの利用によって、早期にマーケットの寡占化を図ることが製造業の生存にとって重要である。
中国銀行は、セミナー開催・資金調達等、企業の海外進出支援を行っており、EPA締約国への企業進出事例は増加している。今後、企業のEPA/FTA活用が増加するような支援が出来るよう、ノウハウを蓄積していきたい。
大阪商工会議所は、EPAを利用する理由とその効果、特定原産地証明書の手続の流れと申請の留意点、原産地規則対応のノウハウを紹介した。
EPAを利用する理由としては、アジアを中心とした新興国の市場シェア確保の必要性、EPA/FTAが世界の潮流となる中でEPAを利用しなければ取引が成立しなくなる危惧が挙げられる。
EPAを利用するには特定原産地証明書を受給しなければならず、まず日本商工会議所への登録が必要である。その後、原産品判定、特定原産地証明書の発給申請を経て交付される。
原産地規則対応の近道は、指定発給機関(商工会議所)への相談と、社内外ネットワークの構築に尽きる。今後、広域経済連携が成立していく潮流において、既存の2国間EPAで蓄積されたノウハウは将来に活かせる可能性は大きい。今こそEPA利用に踏み出すタイミングである。
パネリスト4名の発表後、モデレーターの林禎二経済局経済連携課長からは、EPA利用企業に対し、原産地規則対応に何人充てているか質問が投げかけられ、企業からは専属の職員はおらず、通常業務と並行する形で2、3人が対応しているとの回答があった。
最後に、コメンテーターの兼光達也ブライアンケーブインターナショナルコンサルティング社駐日代表は、企業だけで悩むことなく、EPA/FTAの専門家や商工会議所等に相談し、是非EPA利用を始めて欲しいと締めくくった。