経済外交
G20ブリスベン・サミット(結果)
平成26年11月16日



1.日程・場所,参加国・国際機関
(1)日程・場所
2014年11月15日-16日 (於:豪・ブリスベン)
(2)参加国・国際機関
(ア)G20:G7(日本,カナダ,仏,独,伊,英,米,EU),露,アルゼンチン,豪,ブラジル,中国,インド,インドネシア,韓国,メキシコ,サウジアラビア,南アフリカ,トルコ。
(イ)招待国: スペイン,ミャンマー(ASEAN議長国),モーリタニア(アフリカ連合(AU)議長国),セネガル(アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)運営委員会議長国),シンガポール,ニュージーランド。
(ウ)金融安定理事会(FSB),国際労働機関(ILO),国際通貨基金(IMF),経済協力開発機構(OECD),国際連合(UN),世界銀行(WB),世界貿易機関(WTO)。
2.議論の概要
(1)総論
今回のサミットでは,経済成長の強化及び雇用創出を最優先課題として位置づけ,その実現に向けた具体的な取組につき首脳間で率直な意見交換を行った。首脳会合後に首脳宣言を採択した。
また,首脳宣言と併せ,G20全体のGDPの水準を2018年までに2%以上引き上げるための「ブリスベン行動計画」やG20各国の国別の「包括的な成長戦略」等が発表されるとともに、喫緊の課題であるエボラ出血熱に関し、会議第1日目に首脳声明を発出した。
各議題についての議論の概要は以下のとおり。
(2)世界経済(成長強化・雇用創出)
(ア)世界経済については,いくつかの主要国において成長がより強固になっていることを歓迎しつつ,引き続き,強固で持続可能かつ均衡のある成長を実現するために協調していくことで一致した。
(イ)安倍総理からは,日本が1990年代からデフレに陥った状況に言及しつつ,デフレ脱却を目指した安倍政権のこれまでの改革の取組及び経験について説明した。特に,安倍政権が三本の矢で経済政策を力強く進めてきた結果,経済の好循環が生まれ,デフレ脱却に向けて着実に前進し,成長力を回復しつつあること,また,日本には引き続き課題が残されていることを紹介した。さらに,安倍総理から,今年4月の消費税引き上げについて触れるとともに,10%への引き上げについては,今後法律に従って判断する旨を説明した。
(ウ)安倍総理から,インフラ整備支援に関する日本のアプローチ(人間中心の投資を通じた,質の高いインフラ整備と強固で持続可能な経済成長の実現)を説明した。また,経済成長のためには女性の経済への参画が重要であるとし,9月の「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」の開催を含む日本の具体的な取組と成果について説明した。
(3)貿易
(ア)貿易に関しては,首脳間で,貿易は経済成長及び雇用創出の原動力であり,WTOは多角的貿易体制の基盤であるとの認識で一致した。また,保護主義抑止の重要性を指摘し,スタンドスティル(新たな保護主義措置の不導入)及びロールバック(既存の保護主義措置の是正)のコミットメントの重要性が再確認された。
(イ)安倍総理から,2018年までにG20全体のGDPの2%以上引き上げという目標達成のため,WTOを中心とする多角的貿易体制の維持・強化と高いレベルの経済連携の推進が不可欠である旨主張した。また,安倍総理から,WTOドーハ・ラウンド交渉(バリ合意)に関し,今般,事態の進展にとって前向きな動きがあったことを評価する旨述べた。さらに,安倍総理から,日本として,TPP及び日EU・EPAを含む8つのEPA交渉を戦略的かつスピード感をもって推進し,世界が裨益する自由貿易の枠組構築に貢献していく考えである旨表明した。
(4)強靱な世界経済
(ア)国際課税:「BEPS行動計画」に関するOECD租税委員会の作業の進捗を歓迎し,非居住者金融口座情報に係る自動的情報交換を早期に開始することで一致した。
(イ)金融規制改革:金融危機への対応として進めてきた作業が概ね完了しつつあることを歓迎し,今後は,安定した金融システムが成長の支えとなるよう,各国は国際的合意を着実に実施していくことが重要であるとの点で一致した。また,巨大銀行の破綻時に納税者負担を回避するための総損失吸収力に関するFSB(金融安定理事会)の提案を歓迎することで一致した。
(ウ)IMF改革:各国から,2010年のIMF改革の早期発効への期待が表明された。
(5)エネルギー・気候変動
(ア)エネルギー:強靱なエネルギー市場が経済成長に不可欠であるとの認識の下,エネルギー分野における更なる協調が必要であることで一致し,エネルギー協力に関するG20原則に合意した。また,エネルギー効率の改善が経済成長,エネルギー安全保障等に資するとの観点から,G20省エネルギー行動計画に合意。
安倍総理から,石炭火力発電を始めとする火力発電は世界の重要電源であり,途上国への支援を通じて,これを可能な限り高効率化・低炭素化していくこと,世界最先端のクリーンエネルギー技術の普及により,世界のエネルギー効率改善に貢献していくことを表明。また,LNGを含む天然ガスが石油と並んで重要なエネルギー源となっている中,柔軟で競争的なガス市場の構築,特に,仕向地条項の緩和の重要性について説明した。
(イ)気候変動:全ての国が参加する公平で実効的な枠組みが来年のCOP21で採択されることの重要性が確認された。安倍総理から,COP21に向けて日本として最大限貢献していくこと,この貢献の一環として,日本は,緑の気候基金(GCF)に対し,国会の承認が得られれば,各国の拠出額を勘案しつつ,最大15億ドルを拠出したいと考えている旨表明するなど,日本の取組を説明した。
(ウ)開発:安倍総理から,ポスト2015年開発アジェンダは,人間の安全保障の理念に基づくべきで,その観点から,日本はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC),ジェンダー,防災を重視していること,特に,防災に関しては,来年3月に仙台で開催する第3回国連防災世界会議を成功させたい旨表明した。
(6)エボラ出血熱対策
エボラ出血熱の流行が国際の平和と安全に対する深刻な脅威であることが再確認され,国際社会として協調して対応することで一致した。エボラ出血熱に関する首脳声明を発出した。
3.今後のG20サミット
来年はトルコが,翌2016年は中国がG20サミットを開催する予定。