APEC(アジア太平洋経済協力、Asia Pacific Economic Cooperation)

平成26年11月12日
首脳集合写真 (代表撮影)(写真提供:内閣広報室)

 11月10、11日、中国・北京においてAPEC首脳会議が開催され、我が国からは、安倍晋三内閣総理大臣が出席した。習近平国家主席が議事進行を行い、「アジア太平洋パートナーシップを通じた未来の形成」というテーマの下、これまでのAPECの25年間の歩みを振り返りつつ、今後取り組むべき課題として、「地域経済統合の進展」、「包括的な連結性及びインフラ開発の強化」、「革新的な発展、経済改革及び成長の促進」について議論が行われた。
 会議の成果として、APEC首脳宣言「統合され、革新的な、かつ相互に連結されたアジア太平洋に向けた北京アジェンダ」及びAPEC25周年記念声明「アジア太平洋パートナーシップを通じた未来の形成」が発出された。

首脳会議の日程

11月10日午後APEC首脳とABACとの対話
11月11日午前首脳会議第1リトリート「地域経済統合の進展」
 首脳ワーキングランチ「包括的な連結性及びインフラ開発の強化」、「APEC25周年の成果と展望」
 午後首脳会議第2リトリート「革新的な発展、経済改革及び成長の促進」

1.首脳会議の概要

(1)第1リトリート:「地域経済統合の進展」

  • (ア)多角的貿易体制支持と保護主義抑止、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現、グローバル・バリューチェーンの推進等が議論された。多くのエコノミーから、APECとして多角的貿易体制を強く支持し、WTOの交渉機能を巡る行き詰まりに対し、強い懸念が示され、打開に向けてしっかりと取り組んでいくべきであるとの意見が多く出された。
  • (イ)安倍総理から、概要以下の点を発言した。
    • (i)WTOでの交渉機能が危機的状況にあり、状況打開のための新たな方途の検討も含め、WTOの信頼回復に向けた対応を考えていく必要がある。首脳レベルで保護主義抑止の強い決意を示し続けるべき。産業界の期待が大きい情報技術協定(ITA)拡大交渉の早期妥結のため、APECエコノミーの一層の自由化に向けた取組に期待。
    • (ii)日本は、FTAAPのロードマップを支持し、その実現に向け、環太平洋パートナーシップ(TPP)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)等を積極的に推進。同時に「次世代貿易投資課題」への対処として、製造業関連サービスに関する貿易投資の自由化・円滑化に向けた議論を加速させたい。
    • (iii)より効率的なグローバル・バリューチェーンの構築のため、日本は「投資環境改善」及び「強靭性の強化」の議論をリードし、貢献していく。

(2)ワーキングランチ:「包括的な連結性及びインフラ開発の強化」「APEC25周年の成果と展望」

  • (ア)多くの首脳から、昨年のバリAPECの合意を受け策定された「連結性ブループリント」を歓迎するとともに、その実施に期待する旨発言があった。また、発足以来25周年を迎えるAPECの実績を評価し、より一層の役割を期待する旨の発言がなされた。
  • (イ)安倍総理から、概要以下の点を発言した。
    • (i)アジア太平洋地域の膨大なインフラ需要に適切に応えることが大きな課題であり、日本は地域における官民連携(PPP)の取組を一層積極的に後押ししていく、また、質の高い成長と持続可能な開発を実現するためには、ライフサイクルコスト等の「インフラの質」を勘案するとともに、環境社会配慮、透明性等「質の高いスタンダード」を確保しつつ、現地の雇用や能力構築につなげていくことが重要である。
    • (ii)APECの1989年の発足以来、世界の模範となる国際ルールの構築を促進してきたことは称賛に値する。引き続き、他のメンバーとともに、APECにおいて主導的な役割を果たしていく。
    • (iii)エボラ出血熱は国際的な平和と安定に対する脅威であり、日本としてこれまで発表していた4000万ドルの支援に加え、さらに最大1億ドルまで支援を拡大し、今後も貢献を続けていく。

(3)第2リトリート:「革新的な発展、経済改革及び成長の促進」

  • (ア)アジア太平洋地域の成長を促進するため、経済改革の推進、イノベーション、エネルギー、女性の活躍推進、腐敗対策、テロ、気候変動等の地球規模問題への対処などについて議論された。
  • (イ)安倍総理から、概要以下の点を発言した。
    • (i)アベノミクスの大胆な規制改革による日本経済再生を通じて、地域経済の更なる成長に貢献したい。
    • (ii)LNG市場の発展や基幹電源である火力発電を可能な限り高効率化・低炭素化し、経済発展と気候変動対策を両立させることが鍵であり、日本は、世界最先端のクリーンエネルギー技術の普及により、世界のエネルギー効率改善に貢献していく。
    • (iii)9月に東京で「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」を開催。地域の潜在力を最大限発揮するためにも、女性の活躍が顕著なAPECエコノミーの約50社のベストプラクティスの共有等、日本としてAPECにおける女性の活躍推進に積極的に取り組んでいく。

2.ABACとの対話

 APEC首脳と各エコノミーのAPECビジネス諮問委員会(ABAC)委員との対話が行われた。ABAC委員からの質問に対し、安倍総理からは、アベノミクスの「成長戦略」について改めて説明するとともに、インフラ開発にあたっての「インフラの質」など重視すべき原則について日本の考え方を説明した。

3.会議の評価

  • (1)自由貿易の基盤である多角的貿易体制について、日本が率先して議論をリードしたことにより、WTO交渉機能の行き詰まりの原因となっているバリ合意実施の問題の深刻さが首脳レベルで共有され、また、ITA拡大交渉の早期妥結について多くの支持が表明されたことは有意義であった。
  • (2)地域経済統合について、2010年横浜APECの成果を踏まえ、FTAAPの実現に向けたAPECの貢献のためのロードマップが策定され、共同の戦略的研究を実施することが合意された(2016年末までに報告)。これにより、現在交渉中のTPPの先に、より大きなマーケットを創り上げる、FTAAPの実現が視野に入ってきたことは評価できる。
  • (3)昨年の首脳合意を受けて今後、2025年までに地域における物理的、制度的、人的連結性の強化に向け具体的行動をとることを定めた「連結性ブループリント」が採択された。会議において、アジア太平洋地域の連結性は地域経済統合及び持続的成長の基盤であり、日本として地域のインフラ開発投資を推進していく考えを表明することができた。
  • (4)アベノミクスの大胆な規制改革による日本の経済再生を通じて、地域の更なる成長に貢献したいとの考えを述べるとともに、地域の潜在力を最大限に発揮するため、女性の活躍をさらに推進していく重要性を訴えることができた。

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