ODAと地球規模の課題
第14回日米科学技術協力合同実務級委員会・第2回オープン・フォーラム(メディア・ノート)
平成26年7月11日
平成26年7月7日,桂誠外務省科学技術協力担当大使及びジェニファー・ハスケル米国国務省国際科学技術協力部長を共同議長として,第14回日米科学技術協力合同実務級委員会(JWLC)の会合を東京において開催した。これは,4月23日に岸田文雄外務大臣とキャロライン・ケネディ駐日米国大使との間で署名した議定書により日米科学技術研究開発協力協定が10年間延長されて以降,初めての政府間会合である。
JWLCには両国の幅広い政府機関からハイレベルの代表者が参加し,2013年4月30日の第12回日米科学技術協力合同高級委員会で議論された幾つかのテーマの結果及び進捗状況を確認し,高エネルギー物理学,核融合科学,原子核物理学,ビッグデータ,ハイ・パフォーマンス・コンピューティングの分野において,更に協力を発展させるという共通理解に到達した。
両国の参加者はまた,潜在的な日米協力に向け多数の新たなテーマに関し意見交換を行い,次回2015年の第13回JHLCで議論すべき幾つかの先駆的分野を特定した。この中では,イノベーション創出のための産学連携,プロジェクト・マネジメントのための人材育成,研究者交流,研究者倫理,リスクコミュニケーション等の課題が特に強調された。加えて,両国の参加者は,がんに関する臨床研究,脳科学,材料情報科学,気候変動,北極研究,海洋掘削,アジア太平洋地球変動研究ネットワーク,アジア太平洋地域に共通する課題への対応等に関し見解を共有した。
JWLCに続いて,外務省,文部科学省,及び独立行政法人科学技術振興機構の共催,駐日米国大使館の協力により,日米STIE(科学技術,イノベーション,教育)協力第2回オープン・フォーラムが7月8日に開催された。本フォーラムは日本科学未来館において開催され,両国の学術界及び産業界の参加を得て,「新しい社会への進化-科学的知見とイノベーションの活用」をテーマとして議論を行った。このオープン・フォーラムでは,最初に岸信夫外務副大臣による安倍晋三内閣総理大臣のメッセージの代読が行われ,続いて,科学技術を社会にどう活かすのか,どのように経済成長につなげるか,どのように日米協力を進めてグローバル課題に対処するか,副大臣自身の見解を述べた。キャロライン・ケネディ米国大使からは,日米二国間の科学技術協力には極めて大きな可能性があり,現在及び将来の世代の生活をより良くする力があることを強調した。このフォーラムの最後には,櫻田義孝文部科学副大臣が閉会挨拶において,重要テーマの議論を総括し,日米科学技術協力の更なる深化への期待を表明した。フォーラム後のレセプションでは,石原宏高外務大臣政務官の開会挨拶と毛利衛日本科学未来館館長による未来館の紹介に続き,山中伸弥京都大学iPS細胞研究所長による基調講演が行われた。
パネル・ディスカッションは,両国の学術界及び産業界のハイレベルの代表者が参加して,「新しい社会への進化-科学的知見とイノベーションの活用」というテーマの下で,2部構成で行われた。第1部「科学的知見と意思決定」では,ジェシカ・ウェブスター米国大使館経済・科学公使参事官をモデレータ,春日文子日本学術会議副会長,三島良直東京工業大学学長,山下光彦日産自動車株式会社取締役・上級技術顧問,アブラム・バーコーエン米国国防高等研究計画局プログラム・マネージャー,及びダグニー・オリバレス米国疾病予防管理センター部長代理を発表者として,関係機関の経験を共有し,両国に豊富に存在する科学的研究やデータを利用することにより,産業界や学術界が政策決定者と協働する最善の方法について,聴衆と共に議論を行った。
パネル・ディスカッション第2部では,中村道治独立行政法人科学技術振興機構理事長のリードにより,「イノベーション創出のための人材育成」の議題の下で包括的な議論が行われた。濱口道成名古屋大学総長,宮本洋一清水建設株式会社代表取締役社長,小林りんインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢代表理事,ブレンディ・ラング・ダウ・ケミカル日本株式会社 ストラテジー・ディレクター及びリチャード・ミラー・オーリン工科大学学長が,教育やビジネスにおいてイノベーションの取組を促進し持続させるための方途について各自の見解を述べ,その後聴衆と共にこのテーマについて充実した議論を行った。
本フォーラムにおいて,第1部・第2部の両パネルで提起された問題は多くの難しい要素を含んでおり,日米双方が継続的に取り組み,科学技術,イノベーション,教育における両国の強固な協力関係を更に進め,次回オープン・フォーラムにおいて確認していく必要性が認識された。