科学技術

平成28年9月2日
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 平成28年8月25日から8月27日まで,岸輝雄外務省参与(外務大臣科学技術顧問)は,第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)の機会にケニアを訪問しました。岸顧問は,滞在中,ナイロビの科学技術関連施設を視察し,関係者との意見交換を行うとともに,JICA主催シンポジウム「アフリカにおける科学技術協力の意義と課題」に参加してスピーチを行いました。また,天野之弥国際原子力機関(IAEA)事務局長と懇談を行いました。訪問の概要は以下のとおりです。

1 ジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)への訪問

 25日,岸顧問は,ジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)(注)を視察し,またエスタ・カハンギ同大学副学長(研究担当)と意見交換を行いました。岸顧問は,カハンギ副学長との意見交換において,科学技術・イノベーションのアフリカ域内での水平展開・拠点支援の重要性について言及した上で,例えば感染症や防災分野等,アフリカには日本にはない研究現場があり,アフリカにおける共同研究は,日本の研究者にとっても学ぶものが多く,引き続き日アフリカ双方に取ってwin-winの成果が生まれるよう,協力を続けていきたい旨述べました。カハンギ副学長からは,これまでの日本政府による支援に謝意が述べられた上で,同大学の歴史,現状,これまでの研究の成果等について説明があり,大学が自主開発した製品の商業化の課題等について意見交換しました。

(注)ジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)
 日本が1970年代から無償資金協力,技術協力を行い,現在ではケニアにおいて実学を伴う高等教育機関として確固たる地位を築き,多くの入学希望者を得るようになった国立大学。さらに,アフリカ連合(AU)が展開する汎アフリカ大学(PAU)構想(アフリカの高等教育・研究の基盤となる優秀な高等教育機関の育成を目指し,アフリカ5地域の既存大学を各一校(計5校)拠点として選択し,PAU事務局の下でネットワーク化する構想)の下,拠点校に指定される大学の一つとして,科学技術・イノベーションをテーマとした大学院課程を設置するなど,アフリカ全体の教育・研究の質向上にも貢献している。

2 ケニア中央医学研究所(KEMRI)への訪問

 26日,岸顧問は,ケニア中央医学研究所(KEMRI)を視察し,また,同研究所の研修センター長であるサミー・ンジェンガ教授や同研究所でSATREPS事業による共同研究を行う長崎大学の熱帯医学研究所の森田所長等と意見交換を行いました。視察の際,共同研究で開発された黄熱病やリフトバレー病等の診断キットの紹介を受け,KEMRIがアフリカにおける主導的な医学研究機関でおり,ケニアそして世界の感染症等を減らすためにたゆまぬ研究を続けていることが確認されました。

(注)ケニア中央医学研究所(KEMRI)
 日本政府はKEMRIに対して,1979年に無償資金協力の実施を決定し,施設・機材の整備によって設立支援を行った。また,これを皮切りに,これまで多くの専門家を派遣して技術的な協力を行い,また,多数のKEMRI研究員,スタッフを技術研修のために日本へ派遣する等,ハード面でもソフト面でも,継続的な協力を行ってきた。現在,KEMRIは,プロジェクト関係者を含めて4,000人以上を擁する一大組織となっている。

3 JICA主催シンポジウム「アフリカにおける科学技術協力の意義と課題」における基調講演

 26日,岸顧問は,JICAが主催するシンポジウム「アフリカにおける科学技術協力の意義と課題」に出席し,基調講演及び閉会の総括を行いました。基調講演にて,岸顧問は,8月15日に岸顧問から岸田大臣に提出した日アフリカ科学技術協力に関するTICAD VIへの提言について紹介し,日アフリカ科学技術・イノベーション協力強化のため,人材育成を通じたアフリカの科学技術水準の向上,研究成果の社会への還元の重要性について述べました。シンポジウムでは,日アフリカ科学技術協力を推進する有効なツールとして共同研究(SATREPS)の重要性が確認され,また,シンポジウムの参加者からは,教育と雇用のマッチングの必要性,研究の継続性の重要性等が指摘されました。

4 天野之弥国際原子力機関(IAEA)事務局長との懇談

 26日,岸顧問は,TICADVI出席のためケニアを訪問中の天野IAEA事務局長との懇談を行いました。懇談では,科学技術分野におけるIAEAの活動,原子力を含む科学技術の持続可能な開発目標(SDGs)への貢献などについて意見交換を行いました。また,天野IAEA事務局長から,原子力の民生技術は多く存在し,これからは「Atoms for Peace」ではなく,「Atoms for Peace and Development」の時代であるとの発言がありました。


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