科学技術

令和5年5月23日

 5月16日、高市早苗内閣府特命担当大臣(科学技術政策)及び永岡桂子文部科学大臣、アラティ・プラバカー米ホワイトハウス科学技術政策局長兼大統領科学技術顧問は、第15回日米科学技術協力合同高級委員会を東京において開催した。合同高級委員会は、1988年に発効した日米科学技術研究開発協力協定に基づいて設置され、科学技術分野において両国にとって重要な事項について意見交換し、協力活動について検討を行う場として機能している。今次会合は、5月12日から14日の間で仙台にて開催されたG7科学技術担当大臣会合から程なくして開催され、同志国間の協力促進に向けた機運が高まる中での時宜を得た開催となった。

 今回の合同高級委員会では、両国から多くの関係省庁・機関の代表者が参加し、合同高級委員会の活動を技術・管理レベルにおいて支援するために設置されている合同実務級委員会からの報告を受けた後、両国の科学技術政策や戦略的な科学技術・イノベーション協力領域について議論を行った。米国からは、ホワイトハウス科学技術政策局に加え、国務省、国立科学財団、国立標準技術研究所、海洋大気庁、エネルギー省及び在京大使館が参加した。日本からは、内閣府、総務省、外務省、文部科学省、経済産業省が参加した。

 両国の科学技術政策に関する議論では、両国の科学技術政策の方向性や課題について情報交換を行い、両国のイノベーション推進に向けた課題や協力の可能性について議論が行われた。日本からは、内閣府が日本の科学技術政策の優先事項について、日本の施策である10兆円規模の大学ファンドの創設やグローバル・スタートアップ・キャンパスに言及しながら報告し、文部科学省が先端国際共同研究推進事業を始めとする研究協力プログラムの紹介を行った。米国からは、ホワイトハウス科学技術政策局が科学技術政策の優先事項の概観を紹介した。

 合同高級委員会は、両国の戦略的な科学技術・イノベーション協力領域として、データサイエンス・量子技術・AI、気候変動と技術、バイオテクノロジー・先端医療及びバイオものづくりといった3つの主要議題について議論を行った。データサイエンス・量子技術・AIの議論では、内閣府と米国立標準技術研究所、国務省を中心に、本年4月に決定された日本の量子未来産業創出戦略を始めとする日本の戦略や、データ、量子、AIシステム、機械学習に関する米国の取り組みについて、二国間協力の可能性を念頭に置きつつ、意見交換が行われた。

 合同高級委員会は、内閣府、文部科学省、米海洋大気庁及びエネルギー省を中心に、両国の気候変動、科学技術分野の課題等を共有し、本年4月に決定された日本のフュージョンエネルギー・イノベーション戦略を含む、地球規模課題に対処するための技術を加速させる戦略について意見交換した。また、持続可能な環境と両立した経済成長を支援するため、観測及びモデリングを含む海洋・極域研究の重要性を認識し、海洋観測や極域研究に関する両国協力を継続していくことを確認した。

 合同高級委員会は、内閣府、米ホワイトハウス科学技術政策局、国務省及び国立科学財団を中心に、医学・生命科学の研究開発、バイオエコノミーのための生物学的データ共有の規範、実践、ニーズの確立への取組、がんムーンショット計画や感染症研究協力などの日米協力プログラムなど、バイオテクノロジー及び先端医療における国際協力とイノベーションの機会について議論した。また、バイオものづくりの議論では、経済産業省・文部科学省と米国国務省を中心に、双方の取り組みを紹介しつつ意見交換が行われた。

 岸田総理とバイデン大統領が本年1月の会談で確認したように、日本と米国は、経済安全保障にとって重要な重要技術や新興技術に関する協力を深めてきた。活発な人的交流を含む科学技術協力における強力なパートナーシップは、日米両国の経済目標を推進するために不可欠であり、グローバルリーダーとしての両国の極めて重要な役割を反映している。日本と米国は、両国国民に利益をもたらし、開放性、透明性、誠実さ、公平性、公正な競争、客観性、民主的価値など、基本的な科学的価値と原則への共通のコミットメントに根ざす研究開発を優先する。今回の合同高級委員会では、科学技術協力に関する緊密なパートナーシップと協調を継続するという両国のコミットメントが再確認された。

 今回の合同高級委員会開催に合わせて、科学技術振興機構による国際共同研究事業に関連したワークショップや、産業技術総合研究所つくば本部及び量子科学技術研究開発機構那珂研究所への視察などのサイドイベントが開催され、国際頭脳循環に関する意見交換のほか、新興技術などに関する研究開発動向についての共有が行われた。


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