核軍縮・不拡散
武井外務副大臣の2026年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第1回準備委員会出席(結果)
7月30日から8月1日(現地時間、以下同)まで、武井俊輔外務副大臣はウィーンを訪問し、2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会(7月31日から開催)に出席しました。概要は以下のとおりです。
1 2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会における一般討論演説
7月31日、武井副大臣は2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会に出席し、一般討論演説(英文(PDF)/仮訳(PDF))を行いました。
演説の中で武井副大臣は、「核兵器のない世界」への道のりが一層厳しくなる中だからこそ、NPT体制の維持・強化は国際社会全体の利益であり、引き続き「ヒロシマ・アクション・プラン」にある現実的かつ実践的な取組を進めていく旨述べました。また、核軍縮措置の基盤である透明性強化の重要性や核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の議論の再活性化の必要性を訴え、FMCTについては、政治的関心を再び集めるため、本年の国連総会ハイレベル・ウィークにおいて、フィリピンと共催でハイレベル行事を開催する予定である旨表明しました。
また、核不拡散についても、日本は国際社会と協力し、北朝鮮及びイランに関する問題を含む核不拡散の取組を進めていく旨述べました。また、民生用プルトニウム管理の透明性の維持のため、プルトニウム管理指針(INFCIRC549)の実施の重要性についても強調しました。
さらに、ALPS処理水の海洋放出について、7月に公表された国際原子力機関(IAEA)による包括報告書の内容に言及しつつ、日本は科学的根拠に基づき、高い透明性をもって、国際社会に対して丁寧に説明してきており、こうした努力をこれからも続けていく旨表明しました。
2 「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議に関するサイドイベント参加
7月31日、武井副大臣は、「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議に関するサイドイベントに出席し、冒頭挨拶を行いました。
挨拶の中で武井副大臣は、4月に東京で開催された国際賢人会議第2回会合を経て、今回の第1回準備委員会へのインプットを念頭に取りまとめられたメッセージについて触れつつ、国際賢人会議の取組の意義について述べました。
続いて、出席した国際賢人会議委員からヴィーナネン準備委員会議長に同メッセージが手交され、その後、パネルディスカッション等が行われました。
3 要人との意見交換
(1)中満国連事務次長・軍縮担当上級代表との意見交換
7月31日、武井副大臣は中満国連事務次長・軍縮担当上級代表との間で意見交換を行いました。
武井副大臣は2026年NPT運用検討会議に向けた第1回準備委員会が始まっている中、「核兵器のない世界」の実現に向けて、核軍縮に向けた着実な歩みを進めていきたい旨述べました。
これに対し中満次長からは、今次準備委員会への武井副大臣の出席に謝意が示されるとともに、引き続き核軍縮がアジェンダに載ることが重要であり、核軍縮分野を始め、広く日本と協力していきたい旨の発言がありました。
(2)ヴィーナネンNPT運用検討会議第1回準備委員会議長との意見交換
7月31日、武井副大臣はヴィーナネンNPT運用検討会議第1回準備委員会議長と意見交換を行いました。
武井副大臣は、議長就任に祝意を伝えつつ、今回の第1回準備委員会は2026年運用検討プロセスの初回会合であり、「核兵器のない世界」に向けた機運を高める上でも重要な会議である旨、また、日本政府としてヴィーナネン議長への協力を惜しまない旨述べました。
これに対しヴィーナネン議長からは、核軍縮における日本のこれまでの現実的な取組を高く評価するとともに、2026年NPT運用検討会議に向けた運用検討プロセスにおいて良い結果を出すべく日本と協力していきたい旨の発言がありました。
(3)シト・キリバス国連常駐代表との意見交換
7月31日、武井副大臣はシト・キリバス国連常駐代表との間で意見交換を行いました。
武井副大臣は、今次会議は「核兵器のない世界」に向けた機運を高める上でも重要な会議であり、貴国と協力していきたい旨述べました。
また、ALPS処理水に関し、日本政府は、人の健康及び海洋環境に悪影響を与えるような形での海洋放出を断じて認めることはないことを改めて伝えました。さらに、2月7日の岸田総理大臣と太平洋諸島フォーラム(PIF)代表団との会談において、ALPS処理水の海洋放出に関する集中的な対話の重要性につき一致したことも受け、これまで、政治レベルや専門家間のやり取りを積み重ね、日本とPIF双方の専門家の見解を対照可能な形で取りまとめた報告書についての説明を行い、PIF事務局及び各国に既に送付していることを説明の上、同報告書を手交しました。
これに対しシト・キリバス国連常駐代表からは、将来世代のためにも「核兵器のない世界」に向けて日本とキリバスで協力していきたい旨述べるとともに、ALPS処理水の海洋放出に関し、本日の詳細な説明及び報告書を受領することで最新の状況を把握することができる旨の発言がありました。
(4)フロイド包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会暫定技術事務局長との意見交換
7月31日、武井副大臣はフロイドCTBTO準備委員会暫定技術事務局長と意見交換を行いました。
武井副大臣は、フロイド事務局長の就任以来、8か国が新たにCTBTを批准するなど、同事務局長の下で条約の普遍化が着実に進展していることを評価している旨述べました。また、7月上旬に我が国が開催した、CTBT発効促進に向けた地域会合にCTBTO準備委員会暫定技術事務局(PTS)からも出席を得たことに謝意を伝えました。さらに、北朝鮮が前例のない頻度と新たな態様で弾道ミサイル発射を繰り返していることは、我が国及び地域の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であり、到底看過できない旨述べ、北朝鮮への対応を含め、PTSと一層緊密に連携したい旨述べました。
これに対しフロイド事務局長からは、CTBTの早期発効に向けた日本のリーダーシップに感謝するとともに、北朝鮮への対応を含め引き続き日本と一層緊密に連携していきたい旨の発言がありました。
(5)豪州代表団との意見交換
7月31日、武井副大臣はビッグス豪在ウィーン国際機関政府代表部大使、ウッド豪軍備管理・不拡散担当大使等の豪州代表団との間で意見交換を行いました。
武井副大臣は、軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)をはじめとする、日豪間の軍縮・不拡散分野での協力について言及しつつ、今後も引き続き、2026年NPT運用検討会議の意義ある成果に向け豪州と緊密に連携していきたい旨述べました。また、ALPS処理水の海洋放出に関して、豪州がIAEA包括報告書を歓迎し支持するステートメントを迅速に発出したことへの謝意を伝えるとともに、我が国は引き続き、科学的根拠に基づき、高い透明性をもって、国際社会に丁寧に説明していくと述べました。
これに対しビッグス大使から、NPDIを含め、軍縮・不拡散分野において日豪間で引き続き緊密に連携していきたい旨の発言があったとともに、ALPS処理水の海洋放出に関しても日本の説明に感謝し、引き続き緊密に連絡をとっていきたい旨の発言がありました。
4 その他
- (1)7月31日、武井副大臣は広島県によるバナー展示及び平和首長会議によるバナー展示を視察しました。同視察には湯﨑英彦広島県知事、松井一實広島市長、鈴木史朗長崎市長他が立ち合いました。
- (2)8月1日、武井副大臣はIAEAのサイバースドルフ研究所を視察しました。今回の視察で武井副大臣は、同研究所内に所在する、ALPS処理水の分析に携わる地球環境放射化学研究所等を視察しました。
- (3)このほかに実務レベルでもG7を始めとする各国とALPS処理水の海洋放出についての意見交換を行いました。