核軍縮・不拡散

2020年NPT運用検討会議第1回準備委員会

平成29年5月16日

 5月2日より12日まで,国連ウィーン本部において2020年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第1回準備委員会が開催された。議長は,オランダのファン・デル・クワスト軍縮代表部大使が務めた。我が国からは,岸田外務大臣(冒頭),髙見澤軍縮代表部大使,北野ウィーン代表部大使他が出席した。

1 今次準備委員会の概要

  • (1)今次準備委員会は,前回の2015年NPT運用検討プロセスが最終文書に合意出来なかったこともあり,新たな2020年NPT運用検討プロセスの出発点となる重要な会議との位置付け。
  • (2)初日の冒頭にて,議題や手続規則等の手続事項が円滑に採択された。次回の第2回準備委員会は,明年4月23日から5月4日まで,ジュネーブにおいて開催され,ポーランドが議長を務めることが決定された。
  • (3)手続事項採択後,直ちに実質的議論に入り,一般討論,NGOセッションに続き,核軍縮,核不拡散(北朝鮮,イラン,中東非大量破壊兵器地帯等の地域問題を含む),原子力の平和的利用の各クラスターについての討論が行われ,三本柱の内容がバランスよく議論された。なお,NGOセッションでは被爆者の方による被爆証言が行われるとともに,本年5月に国連軍縮部上級代表に就任した中満泉氏が第二週目の初日にステートメントを実施した。
  • (4)核軍縮については,核軍縮アプローチを巡って,核兵器国と非核兵器国との間及び非核兵器国間で見解の相違はあったが,2020年NPT運用検討会議の成功に向けてNPT体制の維持・強化が必要であるとの認識が共有されるとともに,多くの国が核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT),包括的核実験禁止条約(CTBT),検証といった現実的且つ実践的な措置の必要性について言及した。
  • (5)不拡散では,北朝鮮の核・ミサイル問題につき,日米韓を含む多数の国より,北朝鮮の核・ミサイル関連活動は,関連国連安保理決議等に明白に違反しており,NPTを中心とする国際的な軍縮・不拡散体制に対する重大な脅威であるとして,北朝鮮の活動を厳しく非難し,安保理決議等の遵守を求める発言が相次いだ。また,2015年運用検討会議決裂の直接の原因となった中東非大量破壊兵器地帯構想については、同構想の進め方について様々な考えが表明された。イランの核問題に関しては、包括的共同作業計画(JCPOA)の履行及びIAEAによる検証監視の重要性が強調された。
  • (6)原子力の平和的利用では,不拡散,原子力安全及び核セキュリティを確保しつつ,原子力の平和的利用を促進していくことの重要性について各国の発言は一致した。また,原子力の平和的利用を進める取組みとして、天野IAEA事務局長の掲げる「平和と開発のための原子力」が評価され、我が国も主要なドナーであるIAEA平和的利用イニシアティブ(PUI)への支持が多く示された。
  • (7)最終日に,一般討論,各クラスターの議論及び各国作業文書の内容を踏まえた議長責任の下での議長サマリーが発表された。

2 日本の対応

  • (1)岸田外務大臣が,一般討論の冒頭の一番目に演説を行い、北朝鮮の核ミサイル開発を厳しく非難し、安保理決議等の遵守を求めると共に、核兵器のない世界を実現していくためには,核兵器国と非核兵器国の信頼関係の再構築が必要であるとした上で,透明性,安全保障環境,被爆の実相の認識に関する「3つの向上」を提案した。また,日本の考える核兵器のない世界に向けた具体的な道筋や我が国の取組について述べたほか,NPT普遍化の重要性も主張した。更に,日本を含む12か国の地域横断的グループ「軍縮不拡散イニシアティブ(NPDI)」の首席代表と意見交換を行い,NPDIとして引き続きNPTを重視し,2020年運用検討会議の成功に向け皆で協力していくことを確認した。
  • (2)髙見澤軍縮代大使,北野ウィーン代大使他が各クラスターや特別時間において個別事項(核軍縮,安全保証,核不拡散,北朝鮮や中東を含む地域問題,原子力の平和的利用、運用検討プロセス強化等)についてのステートメントを行った。
  • (3)NPDIとして,6本の作業文書(透明性(報告),FMCT,CTBT,軍縮不拡散教育,北朝鮮、原子力の平和的利用)を提出した。また,ドイツが一般討論においてNPDI共同ステートメントを実施し,日本主導にて透明性・報告に関するNPDIサイドイベントを開催した。さらに,NPDIとして,核兵器国(N5)や新アジェンダ連合(NAC)等との対話を行った。
  • (4)CTBT発効促進共同調整国としてカザフスタンと共催で,CTBTに関するサイドイベントを開催し,多くの大使級を含む150名以上の参加を得て,発効促進に向けた数々の実践的な提案が得られた。また,長崎の原爆投下をテーマとした映画「母と暮せば」の上映会の開催に協力した。さらに,髙見澤軍縮代表部大使や北野ウィーン代表部大使が中心となり,広島や長崎のユース非核特使のイベントに参加する等、市民社会と対話を行うとともに、核兵器国を含む各国と活発に意見交換を行った。

3 今次準備委員会への評価

  • (1)今次準備委員会において,速やかに手続事項の採択がなされ,実質的議論に入り,特段議論が紛糾することもなく平和裡に準備委員会が終了したことは,事前の関係各国との調整や公平な議事進行といった議長(ファン・デル・クワスト・オランダ大使)の手腕によるにところが大きかった。
  • (2)NPT体制が北朝鮮の核・ミサイル問題等の深刻な挑戦に直面し,また,核軍縮アプローチを巡り締約国間の見解の相違が見られる中で開催された今次準備委員会であったが,各国が2020年運用検討会議の成功に向けてNPT体制の維持・強化が必要であるとの共通認識を示した点は望ましい動きと言える。また,北朝鮮については,我が国を含む多くの国の発言を受け,北朝鮮による核兵器・弾道ミサイル開発を最も強い言葉で非難し,全ての核兵器及び核・弾道ミサイル計画を放棄し,NPT及びIAEA保障措置に早期に復帰するよう強く求めると共に,関連安保理決議等の完全な履行を求める内容が議長サマリーに反映された。
  • (3)日本は,岸田外務大臣が演説を実施したことに加えて,各分野別の議論にも積極的に関与し,存在感を示した。また,NPDIは,一般討論にて共同ステートメントを実施し,北朝鮮問題や透明性を含む6本の作業文書を提出するとともに,サイドイベントの開催等を通じて今次準備委員会に積極的に貢献した。日本及びNPDIの主張は議長サマリーに然るべく反映された。

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