日本の安全保障と国際社会の平和と安定

平成26年4月9日
  1. 近年,核軍縮分野において核兵器の非人道性に着目するアプローチが盛り上がりを見せつつあることを受け,我が国としても,核兵器の非人道性に関する認識を世代と国境を越えて広めていくとともに,科学的側面についての知見を深めていくことが重要と考えております。
  2. この度,そうした科学的知見を深めていく一環として,核兵器が使用された際の様々な側面における影響について,以下のとおり,5名の研究者に外務省から委託して調査研究を実施しました。(なお,本件委託調査研究における見解は,必ずしも日本政府の見解を代表するものではありません。)
    (1)研究内容
     核兵器が使用された際に発生する医学面,社会インフラ面,経済面における被害の検証
    (2)研究メンバー
    朝長万左男(座長)
    日本赤十字社長崎原爆病院長(放射線医学)
    鎌田七男(財)
    広島原爆被爆者援護事業団理事長(放射線生物学)
    葉佐井博巳
    広島大学名誉教授(放射線物理学)
    伴金美
    大阪大学大学院経済学研究科教授
    (マクロ計量モデル分析,経済予測,応用一般均衡モデル分析)
    林春男
    京都大学防災研究所巨大災害研究センター教授(土木システム工学)
    (3)主な研究要旨
    • (i)医学面:核攻撃を受けた地域の住民の身体に対する医学的影響(即時的な被害のみならず,中期的・長期的な健康被害を含む。)について,現代都市では,建物の強度の進歩により広島・長崎原爆投下時よりは被害の割合は小さくなるものの,大都市への攻撃は大きな人命の損失をもたらす。
    • (ii)社会インフラ面:核兵器爆発の際の爆風と熱線が社会インフラ(道路,水道,電気,通信等)に与える影響については,爆心地から円心円状に広がる被害の概要を明らかにしている。特に半径1キロ以内は壊滅的被害。
    • (iii)経済面:核攻撃を受けた地域の人口趨勢に与える中・長期的影響,周辺地域及び国際経済に与える影響(サプライチェーン,金融システム等)については,広島市は,人口趨勢の回復に30年を要した。過去の大規模災害等の例との比較により,核攻撃も世界的規模の経済的被害をもたらすことが明らかとなった。
日本の安全保障と国際社会の平和と安定へ戻る