よくある質問集
国連
- 問1.日本にとってなぜ国連は重要なのですか。
- 問2.安保理とはどのような機関でしょうか。
- 問3.国連は、軍縮・不拡散分野でどのような役割を果たしているのですか。
- 問4.「持続可能な開発目標(SDGs)」とは、どのようなものですか。
- 問5.国連は人権保護について、どのように取り組んでいるのですか。
- 問6.国連加盟各国の国連分担金の比率はどのようにして決められているのですか。
- 問7.2018年12月、国連で加盟国が負担することになっている国連分担金の比率(分担率)の見直しが行われたようですがどのような結果になったのですか。日本はどのような主張をしたのですか。
- 問8.渋谷にある「国連大学」は、どのような機関でしょうか。
問1.日本にとってなぜ国連は重要なのですか。
日本が重視する課題に関し、国連が重要な役割を果たしています。
国連は、国際社会の平和・安全と繁栄のために、紛争解決や平和構築、軍縮・不拡散、開発、人権、環境・気候変動・防災など、様々な分野で重要な役割を担っています。国際情勢が目まぐるしく変化する中、国連は国際協調主義に基づく「積極的平和主義」を掲げる日本が国際社会と連携しながら様々な課題に対応するための重要な場となっています。
例えば、北朝鮮のこれまでの弾道ミサイル発射・核実験の実施を受け、安保理では、制裁措置を含む11本の決議が採択されています。日本も2016年~2017年の非常任理事国の間に、6本の決議採択に貢献しており、日本は、決議の完全な履行を各国に対して求めています。また、核兵器のない世界の実現に向け、日本が提出した核兵器廃絶決議案は、1994年以降毎年国連総会で採択されており、核兵器廃絶の国際的機運を高めることに貢献しています。
2015年には、国連サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」が全会一致で採択され、気候変動分野では、「パリ協定」が採択されました。現在、日本を含む国際社会はその実施に向けた取組を行っています。環境問題や気候変動の影響の深刻化、格差やテロの拡大などの地球規模課題は、国境を越えて国際社会全体に影響を及ぼすものであり、その解決には国際協調が不可欠です。そのため、国連の場における、各国との連携はこれまで以上に重要になっています。
日本の外交政策を実現するには、国連の「普遍性」や「専門性」を最大限に活用することが有効です。
国連には、世界のほとんど全ての国(2019年現在193か国)が参加している「普遍性」と、世界中の情報や知見が集約されている「専門性」という2つの強みがあります。こうした国連の強みを活用することで、一国の力だけではできない国際的な諸課題の解決の実現に近づくことができます。
日本は、国連による国際社会の課題設定(アジェンダ・セッティング)や規範形成(ルール・メーキング)において日本の意向を反映させるとともに、得意分野で指導力を発揮することにより、国際社会の場で日本の外交政策を実現する努力をしています。
例えば、日本が21世紀の国際協力の理念として掲げた「人間の安全保障」。これは、人間一人ひとりに着目し、人々を脅威から守り、人が尊厳をもって生きることができるような国や社会を作っていこうという考え方です。この「人間の安全保障」については、2012年の第66回国連総会において日本主導により決議が採択され、加盟国の共通理解が得られました。それ以降、人権・平和・開発分野における重要な理念の一つとして、開発協力を実施する際に尊重されてきています。また、「人間の安全保障」の理念は、SDGsの「誰一人取り残さない」との基本理念にも反映されています。
問2.安保理とはどのような機関でしょうか。
国連憲章上、安保理は国際の平和と安全の維持に関する主要な責任を国連加盟国から託されています。また、国連加盟国は安保理の決定を受諾し、履行することに同意すると定められています。安保理はこれまで、2400を超える決議(2019年1月現在)などを通じて、大量破壊兵器の拡散やテロリズムなどの脅威、更には紛争の平和的解決、紛争後の平和構築などの課題に対応するため、平和維持活動(PKO)の派遣をしたり、各加盟国に武器禁輸や特定の個人・団体の資産凍結・入国禁止などの制裁措置を求めたりしています。
安保理は、合計15か国で構成されています。このうち、米国、英国、フランス、ロシア及び中国の5か国は常任理事国として常に議席を保持しています。残り10か国の非常任理事国は、国連総会での選挙を通じて2年間の任期で選出されますが、連続再選は認められていません。これらの非常任理事国の議席は、地域別に割り振られており、現行の制度では、アフリカグループに3議席、アジア・太平洋グループに2議席、東欧グループに1議席、ラテンアメリカ及びカリブグループに2議席、そして西欧その他グループに2議席となっています。
問3.国連は、軍縮・不拡散分野でどのような役割を果たしているのですか。
国連は、創設以来、軍縮・不拡散分野に関する議論や決議の採択を行い、また、核兵器不拡散条約(NPT)、生物兵器禁止条約(BWC)、包括的核実験禁止条約(CTBT)といった条約を採択し、制度の設立を働きかけるなど、国際社会に影響を与えてきました。具体的な機関としては、国連総会、国連総会の下部組織として軍縮・国際安全保障について議論する第一委員会、特定の軍縮問題に焦点を当てて議論する国連軍縮委員会に加え、国際の平和と安全に第一義的な責任を負う機関である国連安全保障理事会があります。さらに、国連事務総長の諮問機関である国連軍縮諮問委員会や軍縮分野の研究を行う国連軍縮研究所があります。また、唯一の多国間軍縮交渉機関として、これまでNPT、BWC、CTBTや、化学兵器禁止条約(CWC)などの交渉が行われてきたジュネーブ軍縮会議(CD)の運営に対して支援を行っています。また、2018年5月、グテーレス国連事務総長はジュネーブ大学で講演し、人類を救うための軍縮、人命を救う軍縮、将来の世代のための軍縮という3つの柱から成る「軍縮アジェンダ」を発表しました。
問4.「持続可能な開発目標(SDGs)」とは、どのようなものですか。
「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」は、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として2015年9月の国連サミットで全国連加盟国によって採択された、2030年を期限とする17の国際目標です。
MDGsは、具体的な数値目標とその達成期限を定めた開発分野の羅針盤として、8つの目標と、その下により具体的な21のターゲットを掲げ、15年の間に、極度の貧困の撲滅(目標1)や感染症対策(目標6)などで一定の成果を挙げました。一方で、教育、母子保健、衛生といった未達成の目標や、サハラ以南のアフリカなど、一部地域での目標達成の遅れといった課題が残されました。また、同じ15年の間に、深刻さを増す環境汚染や気候変動への対策、国内や国際間の格差拡大といった、相互に絡み合うグローバルな課題が新たに顕在化してきました。さらに、民間企業やNGOなどの開発にかかわる主体の多様化など、開発をめぐる国際的な環境が大きく変化しました。
SDGsは、こうした状況に対応すべく、相互に密接に関連した17の目標と169のターゲットから構成されています。最大の特徴は、MDGsが開発途上国のための目標であったのに対し、SDGsは、格差の問題、持続可能な消費や生産、気候変動対策など、先進国が自らの国内で取り組まなければならない課題を含む、全ての国に適用される普遍的(ユニバーサル)な目標になっていることです。また、その達成のために、旧来の南北の二分法を越えて、先進国も途上国も含む各国政府や市民社会、民間セクターを含む様々なアクターが重要な役割を担う参画型の目標であるという特徴があります。日本は、国際社会の議論が本格化する前から、SDGsの議論や交渉に貢献してきました。「人間中心」、「誰一人取り残さない」などの「人間の安全保障」と共鳴する基本理念や、グローバル・パートナーシップの重要性は、日本が一貫して主張してきたものです。個別分野でも、保健、教育、ジェンダー、防災など、日本が重視してきた取組が盛り込まれています。
問5.国連は人権保護について、どのように取り組んでいるのですか。
冷戦終結後の民族意識のグローバルな高まりを受けて、1993年に「世界人権会議」が開催され、翌年には国連人権高等弁務官のポストが創設されるなど人権問題への取組が活発化し、2006年3月に「国連人権理事会」が創設されました。国連では「人権」は「平和と安全」「開発」と並ぶ主要なテーマと位置付けられており、「人権の主流化」の理念の下、各種人権フォーラムにおいて、様々な国やテーマに係る人権に関する議論が行われています。
国連における人権の保護・促進メカニズムは、(1)国連人権理事会や国連総会第3委員会などの人権フォーラムの運用、(2)人権関連文書の法典化に大別され、日本は双方を通じて、国連加盟以来一貫して世界の人権状況の改善に貢献しています。
問6.国連加盟各国の国連分担金の比率はどのようにして決められているのですか。
現行の算定方式の下での国連分担率は、基本的には加盟国の「支払能力(Capacity to pay)」に応じるものとなっています。具体的には、各国の経済力(国民総所得(GNI)の世界計に対する各国の比率)を基礎としながら、合意された一定の算出方法に従って、途上国に対して対外債務や1人当たり国民所得に応じた割引措置、更には分担率の上限(シーリング、22%)や下限(フロア、0.001%)の調整等が加えられます。
問7.2018年12月、国連で加盟国が負担することになっている国連分担金の比率(分担率)の見直しが行われたようですがどのような結果になったのですか。日本はどのような主張をしたのですか。
国連の加盟国が支払う国連分担金の比率(分担率)は、3年に一度国連総会で見直すこととなっています。2019年から2021年までの3年間の分担率を決める交渉が2018年10月から国連総会第5委員会で行われ、2018年12月末に最終的に現行の算定方式を維持することで各国の合意が成立しました。その結果、新しい統計値を考慮した各国の分担率が決定され、日本の分担率は、9.680%(2016年~2018年)から8.564%(2019年~2021年)に引き下げられることになり、米国の22%、中国の12.005%に次ぐ第3位です。中国は、前回の7.921%から大きく上昇しました。
日本政府としては、国連分担率が国連決議にある支払い能力の原則に基づき各国にとって衡平なものとなるべきであり、また、各国がその経済力に見合った応分の負担をすべきであると主張し、積極的に交渉に参加しました。その結果、現行算定方式の維持での合意が実現し、我が国を含む先進国の分担率が低下し、中国の分担率が増したことは、近年の世界経済情勢を反映したものとして意義があったと考えています。
日本政府としては、わが国がこれまで国連分担金の支払いを含め、国際の平和と安全、開発等、国連の諸活動に関する加盟国としての義務と責任を誠実に果たしてきたからこそ、国連の中で信頼を得、一定の発言力を確保してきたものと考えています。今後も引き続き、国連第3位の主要な財政貢献国として、積極的に国連における様々な議論をリードし、国際社会における責任ある役割を果たしていく決意です。
問8.渋谷にある「国連大学」は、どのような機関でしょうか。
東京、渋谷にある国連大学(United Nations University)は、日本に本部を置く国連機関です。
国連大学は「大学」と名が付いていますが、キャンパスがあったり、多くの学生が在籍する一般的な意味での大学とは少し異なります。国連大学は東京にある本部と12か国にわたる14の研究所やプログラムで構成されており、国連システム全体のシンクタンクとして、世界が直面する様々な問題、例えば、紛争処理などの平和の問題、持続可能な開発に関する問題、環境汚染や地球温暖化などの環境問題、科学技術と社会に関わる問題などに関する研究、人材の育成、知識の普及を行っています。国連大学が取り組んでいる研究分野は、持続可能な開発目標(SDGs)における17の目標すべての分野に関わっています。2009年に国連大学憲章が改正されたことにより、修士・博士の学位を授与することができるようになり、教育機関としての側面が加わりました。更に、一般の学生や市民を対象としたセミナーや講演会等も実施しています。日本には、国連大学本部内にサステイナビリティ高等研究所が設置されており、持続可能な未来の構築に貢献するため研究・研修を行っています。また、日本は、国連大学が東京に設置されるに当たって、国連大学基金に対し、1億ドルを拠出したのに加え、大学本部ビルを建設し提供しました。用地は東京都がこれも無償で提供しています。また、国連大学本部とサステイナビリティ高等研究所の事業・運営への協力として、外務省、文部科学省、環境省などが毎年国連大学に対し任意拠出を行っています(例:令和2年度の外務省からの拠出金は1.6億円)。