ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)

令和元年6月17日
写真1(辻清人外務大臣政務官の冒頭挨拶) (辻清人外務大臣政務官の冒頭挨拶)

 2019年6月10日(月曜日),東京大学において,外務省は「ハーグ条約締結5周年記念シンポジウム『ハーグ条約と日本』子ども中心の国際家事手続きに向けて」を開催しました。

 同シンポジウムは,次の3点を目的として開催されました。(1)ハーグ条約や子どもの連れ去り問題について,より多くの方々に正しい知識を身に付けていただき,子どもの連れ去りを未然に防止すること,(2)この5年間の日本でのハーグ条約の実施状況についてより良く知っていただくこと,(3)ハーグ条約事案を含む子どもを巡る家事手続のあり方について,国民的な議論を深めるきっかけとすること。

 全体を通して一般公開された本シンポジウムには,弁護士や裁判所関係者など条約の国内実施を担う関係者に加え,在京外交団,研究者,学生,一般の方々など総勢190名を超える聴衆が参加し,活発な議論が行われました。

1 概要

 本シンポジウムは,日米の中央当局関係者,日本の司法当局関係者,内外の研究者及び弁護士の参加を得て実施されました。

 本シンポジウムは二つのセッションにより構成され,各セッションでは冒頭,各テーマに関連する内容の基調講演が行われ,その後,パネルディスカッションが行われました。

(1)第一セッション「日本におけるハーグ条約の実施と課題」

  •  基調講演では,冒頭,図師執二外務省ハーグ条約室長より,日本でハーグ条約が発効してから5年間の取組や実績について,中央当局の立場から説明があり,続いて,澤村智子最高裁事務総局家庭局第一課長より,日本におけるハーグ条約事案の裁判手続の概要と5年間の実績について説明がありました。また,グレッグ・ガードナー米国務省児童問題部東半球課長からは,日米間のハーグ条約事案の実績と評価について講演がありました。
  •  続くパネルディスカッションでは,早川眞一郎専修大学法科大学院教授及び黒田愛久保井総合法律事務所弁護士が加わり,日本におけるハーグ条約の実施に関し,これまで直面した困難やそれを克服した方策,今後の課題等について,議論を深めました。

(2)第二セッション「今後進むべき道」

  •  基調講演では,マリリン・フリーマン英国ウェストミンスター大学教授より,連れ去りが子に及ぼす長期的な影響,再統合の後の子どものケアの重要性等について講演がありました。また,メリッサ・クチンスキーMK Family Law, PLLC米国弁護士・メディエーターからは,異なる国籍や文化的背景をもつ当事者が関わる国際的な家事事案において国際家事調停を活用することのメリットや,より有効な家事調停の活用のあり方等についてご紹介がありました。
  •  続くパネルディスカッションでは,西谷祐子京都大学大学院法学研究科教授,磯谷文明くれたけ法律事務所弁護士及び小田切紀子東京国際大学人間社会学部教授が加わり,国際家事調停を含む家事手続のあり方に関し,対象となる子の利益を最優先に考えるべきこと,そのために子の声を聴くことの重要性等について,議論を深めました。

2 評価

  • (1)日本のハーグ条約の仕組みや裁判手続,中央当局が提供するサービス等について,幅広い多くの参加者(法曹関係者,外交団,研究者,一般)に情報共有し理解を促すことができました。
  • (2)これまでの日本でのハーグ条約の実施状況やハーグ条約実施法改正の内容について,情報を提供するとともに,参加者から様々な評価や意見をいただくことができました。
  • (3)連れ去りが子に及ぼす長期的な影響や再統合後の子どものケアの重要性,国際家事調停の有用性等について,理解を深める機会を提供することができました。

3 会場配付資料


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