トルコ共和国
2023年2月に発生したトルコ南東部を震源とする地震の概要と我が国の支援
I 地震の概要
1 トルコ南東部を震源とする地震及び主な余震
- (1)日時:2023年2月6日午前4時17分頃(日本時間6日午前10時17分頃)
震源:トルコ南東部カフラマンマラシュ県パザルジュック郡
規模:M7.7 - (2)日時:2023年2月6日午後1時24分(日本時間6日午後7時24分)
震源:トルコ南東部カフラマンマラシュ県エルビスタン郡
規模:M7.6 - (3)日時:2023年2月21日午後8時4分(日本時間22日午前2時4分)
震源:トルコ南東部ハタイ県デフネ郡
規模:M6.4 - (4)日時:2023年2月21日午後8時7分(日本時間22日午前2時7分)
震源:トルコ南東部ハタイ県サマンダー郡
規模:M5.8
2 被害状況等
(トルコ)
- 死者50,096人、負傷者115,000名以上(日本時間2023年3月31日時点(トルコ内務省災害緊急事態対策庁))
- 被害総額約1,036億ドル(うち住宅分野661億ドル)
- 都市部を中心に甚大な被害が発生。被災各所では建造物が倒壊・一部損壊し、道路も各所で寸断。多数の市民が避難生活を余儀なくされた。なお、2023年3月31日時点までに、邦人に関する人的被害の情報はなかった。
(シリア)
- 報道等によると、シリア国内でも5,900名を超える死者が発生した模様。
II 日本政府の支援
1 国際緊急援助隊の派遣(トルコ)
(1)救助チーム

地震発生の当日となる2月6日、トルコ政府の要請を受け、外務省、警察庁、消防庁、海上保安庁及びJICAの職員・関係者(構造評価専門家、医療関係者を含む)計74名で構成される捜索・救助活動を行う国際緊急援助隊・救助チーム(救助犬4頭を含む)の派遣を決定。先ずは団長(外務省)以下18名が同日中に出発し、翌日から震源地に近く被害が深刻なカフラマンマラシュで活動開始(残りの隊員は一日後に現地で合流)。同月15日に帰国。
発災後12時間以内の日本出発となり、派遣史上最速の派遣となった。
(2)医療チーム

トルコ政府の要請を受け、2月10日から順次、外務省員、医師、看護師、薬剤師、技師、ロジ要員、JICA業務調整員等で構成される国際緊急援助隊・医療チームを、一次隊(75名)・二次隊(65名)・三次隊(41名)の延べ181名を派遣し、同月16日より医療ニーズが高いトルコ南東部ガジアンテップ県オーゼリ郡に設営した野外病院にて診療活動を実施。
国際緊急援助隊として、手術機能や入院病棟等を伴う緊急医療チーム(EMT)「タイプ2」を初めて派遣。多い日で1日100名以上の患者が来院し、昼間の外来診療に加え、各種検査やレントゲン撮影、夜間診療、手術、入院など、総数でのべ約2,000人を診察。3月11日、同チームの診療活動を終了。
(3)専門家チーム(建築・免震・耐震技術等)

3月6日、トルコ政府の要請を受け、建築・免震・耐震技術等の専門家(国土交通省、民間コンサルタント、JICA等)で構成される専門家チーム延べ11名を現地へ派遣。被災した建物、インフラの状況を確認し、トルコ政府機関や研究機関と協議を行いながら、復旧・復興に向けた技術的な助言等を実施。建築、インフラ、社会包摂の3チームに分かれ、アンカラ、イスタンブール、カフラマンマラシュ、ガジアンテップ等で活動し、同月16日に帰国。
(4)自衛隊部隊

2月13日、上記の国際緊急援助隊・医療チームの活動に必要な資機材を迅速かつ確実に現地に輸送するため、自衛隊機B-777特別輸送機1機を派遣。
また、3月13日には、トルコ政府及びNATOからの要請を踏まえ、KCー767空中給油・輸送機1機の派遣を決定。3月17日、19日、21日、23日の計4回、パキスタンにあるトルコ向けの災害救助物資(テント及びテント用断熱用具)を計約89.5トン輸送。NATOと連携して実施する初めての国際緊急援助活動となった。
2 JICA専門家チームの派遣
3月19日から29日まで11日間の日程で、JICA専門家チームを派遣。同専門家チームは、阪神・淡路大震災からの復旧・復興に対応した兵庫県の有識者等で構成され、トルコの中央政府や被災自治体に対し、兵庫県の震災復興の経験を活かし、復旧・復興初期段階の知見の共有や、復興計画の策定、復興事業の実施等の準備について助言を行った。
3 緊急援助物資の支援(トルコ、シリア)
2月10日、国際協力機構(JICA)を通じ、トルコ及びシリアへの緊急援助物資(テント、毛布、スリーピングパッド等)の供与を決定。同月18日、トルコへの追加供与(毛布、スリーピングパッド、発電機)を決定、順次提供した。
4 資金援助
緊急的な支援としては、総額約4,850万ドルの人道支援等を実施。
(1)トルコ:850万ドル(2月24日発表)
- ア
- 緊急無償資金協力:600万ドル
- 国際移住機関(IOM):250万ドル
一時的避難施設、生活必需品 - 国連世界食糧計画(WFP):200万ドル
食料 - 国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC):150万ドル
一時的避難施設、生活必需品
- 国際移住機関(IOM):250万ドル
- イ
- 日本のNGO(ジャパン・プラットフォーム(JPF)経由):2億7,600万円(250万ドル)
食料、生活必需品、一時的避難施設、保護、医療・医薬品、水・衛生
(2)シリア:約4,000万ドル
- ア
- 2月24日発表
- (ア)緊急無償資金協力:1,000万ドル
- 国連世界食糧計画(WFP):200万ドル
食料 - 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR):170万ドル
一時的避難施設、生活必需品 - 国連児童基金(UNICEF):130万ドル
水・衛生、子どもの保護 - 赤十字国際委員会(ICRC):130万ドル
保健・医療、保護 - 国際移住機関(IOM):100万ドル
一時的避難施設、生活必需品 - 国連開発計画(UNDP):100万ドル
早期復旧(がれき除去) - 国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC):100万ドル
一時的避難施設 - 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA):50万ドル
早期復旧(教育施設の修復等)、一時的避難施設、保健 - 国連人道問題調整事務所(OCHA):20万ドル
機関間調整等
- 国連世界食糧計画(WFP):200万ドル
- (イ)日本のNGO(ジャパン・プラットフォーム(JPF)経由):1億6,200万円(150万ドル)
食料、生活必需品、一時的避難施設、保護、医療・医薬品、水・衛生 - (ウ)シリア復興信託基金(SRTF):約700万ドル(注:令和4年度補正予算)
一時的避難施設、水・衛生、保健・医療、エネルギー、食料
- (ア)緊急無償資金協力:1,000万ドル
- イ
- 5月16日発表
- (ア)緊急無償資金協力:750万ドル
- 国連世界食糧計画(WFP):220万ドル
食料 - 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR):150万ドル
生活必需品 - 赤十字国際委員会(ICRC):100万ドル
保健・医療、保護 - 国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC):100万ドル
水・衛生 - 国際移住機関(IOM):100万ドル
生活必需品 - 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA):80万ドル
シェルター、生計支援
- 国連世界食糧計画(WFP):220万ドル
- (イ)無償資金協力(UN-Habitat連携):9億3,000万円(約680万ドル)
震災被害状況アセスメント、震災からの早期復旧計画策定、公共サービスの修復等
- (ア)緊急無償資金協力:750万ドル
- ウ
- 上記発表以外の支援
- (ア)日本のNGO(ジャパン・プラットフォーム(JPF)経由):1億1,000万円(約100万ドル)
令和4年度補正予算 - (イ)無償資金協力(WHO連携):6億6,200万円(約610万ドル)
医療機材の供与、病院設備の整備等 - (ウ)国際原子力機関(IAEA):約10万ドル
医療用可動式X線装置の供与 - (エ)無償資金協力
- JICAを通じた支援
- 教育分野における基礎調査(UNESCO連携)
- 水分野における基礎調査(Aga Khan Development Network連携)
- (ア)日本のNGO(ジャパン・プラットフォーム(JPF)経由):1億1,000万円(約100万ドル)
5 復旧・復興に向けた支援
- (1)がれき処理や医療機材・重機等の供与を目的とする総額50億円の無償資金協力の実施
- (2)被災地の復旧・復興を支援するための800億円の借款の供与
- (3)これら資金協力と連携した、(ア)復興計画の策定支援、(イ)公共建築物の耐震補強技術支援、(ウ)がれき処理を含む災害廃棄物の管理能力強化支援など、我が国の知見を活かした技術協力を実施予定。
6 外交上のやり取り(断りない限り日本時間)
2月6日 | 岸田総理及び林外務大臣からお見舞いのメッセージ発出。 |
2月7日 | 外務大臣談話を発出。 |
2月8日 | 日・トルコ外相電話会談を実施。 |
2月10日 | |
2月17日 |
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3月9日~3月12日 | 山田賢司外務副大臣のトルコ被災地訪問。
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3月20日 | 3月20日に開催されたEU・スウェーデン共催のドナー会合において、林外務大臣によるビデオメッセージを発出。日本政府の支援を紹介した上で、被災地の復興に向け、今後も資金協力や技術協力等を通じて貢献していく旨を表明。
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4月4日(現地時間) | 4月5日に開催されたNATO外相会合に出席するためブリュッセルを訪問中、日・トルコ外相会談が実施された。林大臣から、多くの地震を経験している日本として、今後の復旧・復興に向けた日本政府による支援の方向性を説明。具体的には、(1)日本の知見を活かした震災対応に関する技術支援、(2)社会インフラ復旧等、生活再建に向けた支援、(3)経済・産業の再建に向けた支援を行う用意がある旨伝達。![]() |
7月6日 | 日・トルコ首脳電話会談が実施された。同電話会談において、岸田総理大臣から、2月に発生したトルコ南東部を震源とする震災に対して、これまで実施してきている850万ドルの緊急無償資金協力に加え、日本政府による新たな支援策として、(1)がれき処理や、医療機材・重機等の供与を目的とする総額50億円の無償資金協力の実施、(2)被災地の復旧・復興を支援するための800億円の借款の供与、(3)これら資金協力と連携した、(ア)復興計画の策定支援、(イ)公共建築物の耐震補強技術支援、(ウ)がれき処理を含む災害廃棄物の管理能力強化支援など、我が国の知見を活かした技術協力の実施に向けて準備を進めている旨伝達。 |