アジア

平成25年4月19日
 アウン・サン・スー・チー・ミャンマー国民民主連盟議長(Hon. Ms. Aung San Suu Kyi, Chairperson of the National League for Democracy)は,外務省の招へいにより,4月13日(土曜日)から19日(金曜日)までの日程で訪日したところ,概要は以下のとおり。今回の訪日は,同議長が父アウン・サン将軍についての研究を行うため1985年から86年にかけて京都大学東南アジア研究所研究員として滞在して以来,約27年ぶりの訪問となった。
 
1 訪問日程の概要 
(1) 13日 在日ミャンマー人との交流
(2) 14,15日 京都訪問(在日ミャンマー人との交流会,裏千家今日庵訪問,京都大学・龍谷大学での講演会)
(3) 16日 皇太子殿下御接見,平田参議院議長表敬,国会視察,国会議員との懇談,岸田外務大臣との意見交換・夕食会等
(4) 17日 東京大学での講演会,織物関係者との面会,民主化支援団体・人権団体の交流会,記者会見
(5) 18日 東京スカイツリー訪問,パナソニックセンター訪問,谷垣法務大臣との面会,竹細工関係者との面会,伊吹衆議院議長表敬,安倍総理表敬
 
2 政府,国会関係者等との意見交換

(1)岸田外務大臣との意見交換・夕食会(16日)
 岸田大臣から,民主化・国民和解が進めば豊かになることをミャンマー国民が実感できるよう,(ア)少数民族への支援を含む民生向上・貧困削減,(イ)人材育成・制度整備,(ウ)持続的発展のためのインフラ整備の分野について,ODAを活用しつつ幅広く進めていく旨表明。また,ODAによる支援と民間投資が車の両輪として東南アジア諸国の経済発展に役割を果たしたことに言及。
アウン・サン・スー・チー議長は,日本からの支援を得て,ミャンマーを正しい道に進ませたい旨述べた上で,法の支配を含む国民が信頼し安定した政治的な仕組みと社会制度の発展の重要性を指摘。また,特に農業分野における課題を説明。岸田大臣からは,ミャンマーのニーズと日本の技術を踏まえ,適正な形で協力すべく検討したい旨述べた。
 
(2)安倍総理表敬(18日)
 冒頭,安倍総理から,昨年ミャンマーに小学校を寄付したことを紹介し,教育に関して意見交換。同国の発展には,教育面の整備が重要であるとの認識で一致した。
安倍総理は,同議長の尽力でミャンマーの民主化が進展していることを歓迎し,改革が一層進展するよう日本として支援する考えを表明。少数民族支援についても,政府代表を任命し,日本らしい貢献を行えるように努力している旨述べた。同議長からは,日本の支援を得つつ,議会の一員として努力する旨発言。
また,安倍総理から,官民を挙げて,ミャンマー国民の選択するミャンマーらしい国造りに向け,同国に適した形で支援していきたい,日本企業の投資は雇用を創出するものである旨述べた。同議長からは,ミャンマーもこれらの取組を評価する旨述べるとともに,日本の若者にミャンマーに関心を持ち発展に協力してほしいとの期待が表明された。
 
(3) 衆参両院議長表敬,法務大臣との意見交換等(16日,18日)
衆参両院議長表敬では,同議長は,我が国の議会運営につき興味深く質問しつつ,ミャンマーには民主主義を知らない若者が多いが期待しており,日本の若者との交流は重要である,国会間の交流等にも取り組んでいきたい旨述べた。
また,法務大臣との意見交換においては,国の統治及び平和維持のためには,法の支配が重要であるとの認識で一致した。また,アウン・サン・スー・チー議長はミャンマーの民主化や発展のためには,大学教育の向上や,司法関係者等の人材育成,女性の社会進出等が重要であると指摘した。
 
3 その他の主要行事 
 今回,3大学における講演,在日ミャンマー・コミュニティとの2回の交流会,複数の報道機関との接触や記者会見等,アウン・サン・スー・チー議長が公の場で発言する機会が数多くあった。これらの機会において同議長が強調していた点を纏めれば以下のとおり。
(1)ミャンマーは若者の失業が深刻な問題。雇用創出等が喫緊の課題。
(2)米,EUの経済制裁が解除されたことはミャンマーの経済発展にとり良いこと。日本を含め外国からの投資を期待している。
(3)自由かつ公正な選挙,国民の意思の尊重という観点からは現行の憲法の下では限界があり,2015年までに憲法改正が必要。
(4)日本人の規律正しさ,周到な段取りの付け方を見習ってほしい。
(5)変化をもたらす決意,責任への自覚が必要。ミャンマーで是非変化をもたらしたい。
(6)外国に住むミャンマー人は,その国に対する恩義を忘れてはならない。
 
4 今次訪日の評価 
(1)総理はじめ衆参両院議長,外務大臣,法務大臣など政府・議会関係者との意見交換を通じて,ミャンマー及び国際社会で大きな世論形成力を有するアウン・サン・スー・チー議長との協力関係を強化するとともに,我が国の政策・支援等に関する理解の更なる促進をはかることができた。
(2)大学における3度の講演や在日ミャンマー・コミュニティとの交流,インタビュー,記者会見等を通じ,ミャンマーにおける民主化の取組み及び日ミャンマー関係の重要性に対する日本国内での理解の一層の促進につながる機会となった。
(3)「桜の咲く頃」との希望どおりに春の訪日を実現した同議長は,かつて過ごした京都の懐かしさ,国民特に男女を問わず若者の歓待ぶり,日本式の時間の正確さや段取りの良さ等に深く印象づけられたとして,滞在中に何度も言及していた。
(4)京都では日本の伝統文化である茶道を体験する一方,東京スカイツリー,パナソニックセンター視察及び新幹線での移動など,日本の最新技術に触れる機会も設け,日本の先進技術やミャンマーにおける応用への関心が示された。

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