中東

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第2回日本・アラブ経済フォーラム(概要と評価)

2010年12月14日

 12月11日(土曜日)及び12日(日曜日)の2日間,チュニジアのチュニスにおいて,我が国(当省,経済産業省)及びアラブ連盟共催の下,第2回日本・アラブ経済フォーラムが開催されたところ,概要と評価以下のとおり。

 このフォーラムは,日本・アラブ双方の政府及び経済界から多数且つハイレベルの参加を得て,エネルギー,環境,科学技術,貿易,投資等の幅広い分野での協力を通じた日本とアラブ諸国との相互の経済関係の強化を目的とするものであり,第1回フォーラムは昨年12月東京において行われた。

1.日程

12月11日(土曜日)
開会式
閣僚級会合(エネルギー,環境,人材開発,教育,科学技術)
セクター別セミナー(太陽光・太陽熱,水ビジネス,
日本企業のアラブ地域でのビジネス活動)
12月12日(日曜日)
閣僚級会合(投資,観光,金融,貿易)
セクター別セミナー(原子力,インフラ,IT,ハイテク,衛星)
閉会式

2.参加者

 日本から約400名,アラブ側から約700名が参加。双方の主な出席者は以下のとおり。

(日本側)

前原誠司外務大臣,大畠章宏経済産業大臣,渡文明社団法人日本経団連評議員議長,槍田松瑩日本貿易会会長,佐々木幹夫中東調査会会長,奥田碩中東協力センター会長

(アラブ側)

アムル・ムーサ・アラブ連盟事務総長,アル・クサイビ・アラブ連盟経済社会理事会議長(オマーン国家経済省事務総長),モハメド・ガンヌーシ・チュニジア首相(開会式に出席),カメル・モルジャン・チュニジア外相

 以上を含め,アラブ諸国・機関メンバー関係閣僚級約30名(末尾に一覧

3.概要

  1. (1) 11日の開会式では,前原大臣,大畠大臣,渡経団連評議委員長,アムル・ムーサ・アラブ連盟事務総長,ガンヌーシ・チュニジア首相他が挨拶を述べた。前原大臣は,魅力的な市場及び投資先へと変貌しつつあるアラブ諸国との間で,共に発展することを目指す対アラブ経済外交について発信した。同大臣の発言の主要点は以下のとおり。
    1. ア インフラ整備への日本の先進技術活用の促進,人材育成や科学振興の貢献を中心とする対アラブ経済外交を積極的に推進する。
    2. イ JICAは毎年アラブ諸国から4000人の研修員を受け入れており,日本で学ぶアラブ人留学生は過去7年間で70%増加。我が国は,このような取り組みを通じ,アラブ諸国の人材育成に貢献する。
    3. ウ アラブ諸国間の貿易自由化への動きが一層実効的になることを期待し,GCC諸国とのFTAを推進する。
    4. エ 中東の平和と安定の確保のため我が国として,中東和平に貢献していく(パレスチナ支援)。東エルサレムを含むイスラエルの入植活動の完全凍結を求める。
    5. オ 中東非大量破壊兵器地帯設立の目標を完全に支持する。原子力発電に関心を有する国については,日本の経験が役に立つ。ただし,核不拡散,原子力安全及び核セキュリティの確保が重要。
    6. カ 日・アラブ関係は,文化面での交流・協力を進めることにより更に深められる。
  2. (2) 大畠経済産業大臣は,第1回フォーラムが契機となって,この一年間で日アラブ間の具体的な動きにつながっており,今次フォーラムを契機に,具体的な取組が更なる広がりを見せ,相互の信頼関係が一層深まることを祈念する旨述べた。また,同様に今次フォーラムが,日・アラブ間の人と人とのつながりを作り上げ将来のビジネスの萌芽となることを期待する旨述べた。
  3. (3) 開会式に引き続き,日・アラブ間の新規事業・計画される活動が発表された。主な案件は以下のとおり。
    1. ア 日・クウェート租税条約及び日・サウジアラビア租税条約の署名
    2. イ 経済産業省,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO),チュニジア開発・国際協力省,チュニジア工業・テクノロジー省による,チュニジア太陽熱発電事業における協力に関する共同声明発出
    3. ウ チュニジア・ソーラー・プランNo.14の推進に関する覚書締結
    4. エ 経済産業省,NEDO,モロッコ・エネルギー・鉱山・水利・環境省,モロッコ太陽エネルギー発電庁,モロッコ電力公社(ONE)との間で,太陽エネルギー分野に関する協力について協力文書を締結
    5. オ 日本貿易振興機構(JETRO)とアラブ連盟の間の協力覚書
    6. カ 国際石油交流センター(JCCP)とアラブ石油輸出機構(OAPEC)などアラブ側国際機関との協力声明の発出 
    7. キ 中東協力センター及びJETROによる日アラブ諸国間の貿易・投資関連情報交流促進のためのウェブ上のポータルサイトの立ち上げ。
  4. (4) 閣僚級会合では,5つのセッションが設けられ,それぞれのテーマの下,エネルギー・環境,人材開発・教育・科学技術,投資,観光,金融,貿易等の幅広い分野について,議論が行われた。また,セクター別分科会では,太陽光・太陽熱,水ビジネス,原子力,インフラ,IT等について議論が行われた。
  5. (5) 11日夕刻,日・アラブ間の共同声明である「チュニジア宣言」が発表された。同宣言は,1)エネルギー環境分野(特に太陽エネルギー,水,原子力)の協力,2)人材育成,教育・科学技術分野(我が国の経済協力案件であるエジプト日本科学技術大学及びボルジェ・セドリア・テクノパーク(チュニジア)への言及)の協力,3)投資,観光,金融,貿易分野の協力に焦点を当てたものとなった(英文全文及び和文骨子別添)。
  6. (6) 2012年に東京で第3回フォーラムが開催されることが決定され,また,2014年の第4回フォーラムについて,ヨルダンがホストする意向を表明した。
  7. (7) また,前原大臣は今次フォーラムの機会を利用して,11日,ムーサ・アラブ連盟事務総長と会談し,双方は,日本とアラブ諸国との文化協力・交流について,有識者間で議論するためのフォーラム会合を,2011年中にも開催することで一致し,その旨の共同プレス声明(英文仮訳)を発表した。
  8. (8) 前原大臣及び大畠大臣は,マグレブ5カ国の閣僚級8人及びアラブ・マグレブ連合事務局長と共に,日マグレブ関係史上初の日マグレブ閣僚級懇談会を行った。インフラ整備,再生可能エネルギー,科学技術,人材育成が共通の関心分野として確認され,今後,具体的プロジェクトにつながるよう,協議を行っていくこととなった。また,政治面での対話の重要性も指摘された。

4.評価

  1. (1) 今般の第2回日本・アラブ経済フォーラムは,昨年12月に東京で行われた第1回フォーラムに引き続き,日アラブ双方から総勢約1100名が参加,うち閣僚級が,前原大臣及び大畠大臣を含め30名余り参加し,盛大にとり行われた。
  2. (2) 前原大臣が発信した日本の対アラブ経済外交は,アラブ諸国から広く歓迎された。特にチュニジア宣言でも示されたエネルギー・環境,人材育成・教育・科学技術分野での協力を進めていくことで一致したことは意義深い。
  3. (3) 前原大臣より明確に表明した日本の中東和平を支援する意思と,イスラエル入植活動に関する立場は,アラブ側より高く評価された。
  4. (4) 前原大臣とムーサ・アラブ連盟事務総長の会談で,日・アラブ間での文化協力・交流を深めることで一致したことは,日・アラブ関係を政治・経済面に加えて文化面でも発展させることを示すものとして,歴史的意義がある。
  5. (5) 高い経済的ポテンシャルを有し,国際政治上も存在感を示すマグレブ諸国との間で,協力関係強化のための話し合いが行われたことは意義深い。

5.閣僚級アラブ側参加者

(1)アラブ連盟

  • アムル・ムーサ・アラブ連盟事務総長
  • モハメド・ビン・ナーセル・アル・クサイビ・アラブ連盟経済社会理事会議長
    (オマーン国家経済省事務総長(閣僚))

(2)チュニジア

  • モハメッド・ガンヌーシ首相(開会式のみ)
  • カメル・モルジャン外務大臣(閉会式のみ)
  • モハメッド・ヌーリ・ジュイニ開発・国際協力大臣(開会式議長)
  • アフィフ・シェルビ工業・テクノロジー大臣

(3)アルジェリア

  • アブデルハミド・テマール予測・統計大臣

(4)イエメン

  • ヤヒヤ・ムハンマド・アル・ムタワッキル産業・貿易大臣

(5)イラク

  • サファ・アル・ディン・サフィ貿易大臣代行

(6)エジプト

  • ハーニー・ヒラール高等教育大臣兼科学研究担当国務大臣

(7)カタール

  • ムハンマド・サーレフ・アル・サダ・エネルギー・工業担当国務大臣

(8)ジブチ

  • アフメド・アリ・シライ国際協力担当大臣

(9)シリア

  • アーメル・ホスニ・ルトフィ国家企画庁長官

(10)スーダン

  • アリー・アフマド・オスマン石油担当国務大臣

(11)モーリタニア

  • モハメド・アブダライ・ウルド・ウダー産業・鉱業大臣
  • シディ・ウルド・ターハ経済関係・開発大臣
  • ハビビ・ウルド・ハム投資庁長官

(12)モロッコ

  • アブデラティフ・マアズーズ貿易大臣

(13)ヨルダン

  • ナジブ・ファフーリ公共部門開発大臣兼大規模事業担当国務大臣

(14)リビア

  • アブドゥルハフィド・マハムード・ズリティニ計画・財務大臣
  • マフムード・ジブリール・リビア経済開発理事会会長

(15)レバノン

  • ファウディ・アブド観光大臣

(16)国際機関

  • ハビーブ・ベン・ヤヒヤ・アラブ・マグレブ連合事務局長
    (前チュニジア外務大臣,初代チュニジア駐日大使)
  • アドナン・カッサール・アラブ商工会議所会頭(レバノン国務大臣)
  • アファンディ・アラブ投資家組合(AIU)会長
  • バイユーミ・アラブ投資家組合(AIU)事務局長
  • ハミディ・タッバー・アラブビジネスマン連盟(FAB)会長
    (上院議員,元ヨルダン通商産業大臣)
  • タベット・タヘール・アラブビジネスマン連盟(FAB)事務局長
    (元ヨルダン・エネルギー・鉱物資源大臣)
  • アッバス・アリ・ナキ・アラブ石油輸出機構(OAPEC)事務局長
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