中南米
米州機構(OAS)概要
1 名称及び概要
米州機構(Organization of American States, OAS)
1951年発足。米州における唯一の汎米国際機関で、同地域の諸問題の解決にあたり中心となる機関。近年は米州各国での選挙監視活動等に重要な役割を果たす等、特に域内の民主化の確立、維持に取り組んでいる。
2 目的・原則
(1)目的:
- ア 米州地域の平和と安全の強化
- イ 代表制民主主義の強化
- ウ 加盟国間の紛争の防止及び平和的解決の確保
- エ 侵略に対する共同行動
- オ 加盟国間の政治的、法律的、経済的諸問題の解決
- カ 共同的行動による加盟国間の経済的、社会的、文化的発展の促進
- キ 極度の貧困の撲滅
- ク 経済社会開発への資源分配のための通常兵器の制限の達成
(2)原則:
- ア 国際法の遵守
- イ 主権平等
- ウ 信義誠実の原則
- エ 米州諸国の連帯
- オ 内政不干渉
- カ 侵略戦争の否定
- キ 集団的安全保障
- ク 紛争の平和的解決
- ケ 経済的協力
- コ 基本的人権の尊重
- サ 文化的価値の尊重
- シ 正義、自由、平和を志向する教育の推進
3 加盟国
(1)加盟国
- アメリカ合衆国、カナダ、ニカラグアを除く全中南米諸国(全34か国)
- (注)1962年、キューバはOAS脱退を発表。その後、2009年に同決議を廃止する旨の決議が採択されたものの、キューバ側は復帰をしていない。
- (注)2023年11月、ニカラグアはOASから離脱。
(2)オブザーバー国・機関
- 世界70か国及びEU
- (注)2022年4月、ロシアの常駐オブザーバーの地位を停止する決議が採択。
4 組織・機能
(1)総会:
OASの最高意思決定機関。全加盟国がその代表権を保有。通常総会は、毎年1回開催。特別総会は常設理事会の要請により開催。決定は原則として加盟国の過半数の賛成による。
(2)外相協議会:
米州諸国にとり緊急かつ共通の利害関係のある問題を審議。
(3)理事会:
- (ア)常設理事会:政治、法律、安全保障、紛争解決を担当する他、総会の準備機関の役割を果たす。
- (イ)統合開発理事会:民主主義に対する脅威である「絶対的貧困」対策に取り組む。
(4)米州法律委員会:
法律問題にかかる諮問機関。
(5)米州人権委員会:
人権の遵守・擁護を目的とする協議機関。
(6)米州人権裁判所:
米州人権条約(1978年発効、加盟国19か国)により設立された、同条約の適用・解釈を行うための独立司法機関。
(7)事務局:
ワシントンDC(米国)に所在。
(8)専門機関:
米州諸国に共通の利害を有する専門的事項を扱う政府間機関で、多数国間協定により設立。
- (ア)米州農業協力機関(IICA、本部サンホセ、1942年設立)
- (イ)米州児童研修所(IIN、本部モンテビデオ、1927年設立)
- (ウ)米州婦人委員会(CIM、本部ワシントンDC、1928年設立)
- (エ)汎米保健機構(PAHO、本部ワシントンDC、1902年設立)
- (オ)汎米地理歴史研究所(PAIGH、本部メキシコシティ、1928年設立)
(9)その他の主な機関:
- (ア)全米麻薬濫用取締委員会(CICAD)
- (イ)米州原子力エネルギ-委員会(IANEC)
- (ウ)米州防衛評議会(IADB)等
5 活動概要
(1)米州の平和と安全の維持:
外相協議会及び常設理事会が主要活動主体。活動例として、82年のフォ-クランド紛争時の英の武力行使に対する非難決議、ニカラグア内戦終了後のコントラ解体支援検証活動、米国同時多発テロに際する決議などが挙げられます。
(2)民主主義の擁護・促進:
活動主体は、90年に設置された民主主義促進室(UNIT FOR THE PROMOTION OF DEMOCRACY)。選挙監視活動をはじめ、法整備援助、市民教育等の分野で支援活動を実施。
(3)経済社会開発:
貧困撲滅、失業対策、経済成長伸長、貿易拡大等を目的に、社会開発・技術協力活動を実施。特に、近年は環境分野における活動が活性化しています。
(4)その他:
94年12月に開催された米州サミットにおいて、OASの活動の拡大・強化が合意され、上記各種活動を充実するほか、貿易の自由化、文化交流、汚職問題、テロ防止、通信・情報インフラの開発等、広範な分野での活動が期待されています。
6 我が国との関係
日本は、1973年12月、OASの常任オブザーバー国となった。我が国では、OASと共同でのプロジェクト形成調査、OASのプロジェクトや下部機関に対する専門家派遣、研修生受入れを行う他、選挙監視活動への資金援助、オブザーバー派遣、中米地域での地雷除去活動に対する資金供与等を実施している。