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1.欧州理事会議長であるアンゲラ・メルケル・ドイツ連邦首相、これを補佐するハビエル・ソラナ共通外交政策上級代表及びジョゼ・マヌエル・バローゾ欧州委員会委員長と、安倍晋三日本国内閣総理大臣は、6月5日、ベルリンにおいて、第16回日EU定期首脳協議を行った。
2.日EU首脳は、日EU間の長年にわたるパートナーシップを一層強化することへの希望を再確認した。日EUは、民主主義、法の支配、人権、及び市場経済といった基本的価値を共有している。日EU首脳は、地球規模の気候変動やエネルギー安全保障の問題を含むグローバルな課題の解決に貢献するとのコミットメントで一致している。この関連において、日EU首脳は、2001年に採択された日・EU協力のための行動計画の実施にあたり特筆すべき更なる前進があったことに留意し、次回日EU定期首脳協議までに実施すべき優先事項を確定した(別添参照)。
3.気候変動に関し、日EUは、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガス(GHG)の濃度を安定化するために、緊急かつ力強い行動が必要であるとの共通理解に達した。この観点から、日EUは、全ての主要排出国の参加を確保する公平、柔軟、実効的かつ包括的な国連の2013年以降の枠組みの進展に向け強力な指導力を発揮することにコミットする。この関連で、2007年末にバリで開催される国連気候変動会議は決定的な重要性を持つ。2012年の後の空白を回避するため、2013年以降の枠組みに関する交渉は可能な限り早期に妥結されるべきである。日EU首脳は、温室効果ガス(GHG)の世界的排出量を2050年までに半減またはそれ以上削減するための長期的目標が策定されることが必要であるとの考えで一致した。日EU首脳は、気候変動への対処において先進国が果たすべき継続した指導的役割を認識する。しかしながら、日EU首脳は、先進国の努力では十分ではなく、その他諸国による公平な貢献を得るための新たなアプローチが必要であることを認識する。日EUは、包括的合意の交渉及び妥結を促進するために、包括的な枠組み合意のための国連における交渉を支持する目的で、グレンイーグルズ対話を含むG8プロセス及びその他のフォーラムが、主要なエネルギー消費及び温室効果ガス排出国を建設的に関与させる重要な基盤を提供するとの考えを共有する。この関連で、日EU首脳は、排出削減及びエネルギー効率向上のための技術の開発・移転、排出量取引、パフォーマンスに基づいた規制、消費者ラベル等の市場型措置の利用、気候変動による避けられない影響に対処するための適切な適応措置、及び途上国における森林破壊による排出削減問題への対処の重要性を認識する。日EUは、適応措置の効果的な計画を支援する全球地球観測システム(GEOSS)等、気候変動研究及び関連の観測活動における協力を強化する。
日EUは、双方の共通利益を強調するとともに、EUの新エネルギー戦略と日本の新・国家エネルギー戦略における共通性を認識し、以下(a)~(i)の主要分野においてエネルギー安全保障に関する協力を強化する:
(a)世界市場における透明性、予見可能性及び安定性の向上、(b)エネルギー部門における投資環境の改善、(c)エネルギー効率及び省エネルギーの向上、(d)エネルギー・ミックスの多様化、(e)重要なエネルギーインフラの物理的な保全の確保、(f)エネルギー貧困の削減、(g)気候変動及び持続可能な開発への取組み、(h)非化石燃料、クリーンコール技術等の低炭素技術、再生可能エネルギー源(例:太陽エネルギー、風力、バイオ燃料)の使用の増進、(i)原子力エネルギーの選択肢を利用すると決定した国による原子力エネルギーの利用。エネルギー効率に関する新たな国際戦略が、国際エネルギー機関(IEA)との緊密な協力の下に展開されることとなっている。日EUは、国連国際気候会議及び日本のG8議長国に向け、気候変動及びエネルギー分野における双方の協力を強化するために、更に議論を継続し、予定されるハイリゲンダムG8首脳協議での成功を期待する。
4.東アジアで形成されつつある地域枠組み(「アーキテクチャー」)に関し、EUは、東アジアにおける普遍的に認められた価値及びグローバルなルールを基礎とした、開かれかつ透明な地域協力を強化するための努力を歓迎し、日本がこの面で建設的かつ積極的な役割を果たしていることを評価した。日本は、EUが東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム、EU・ASEAN関係の強化、アジア欧州会合(ASEM)プロセスを通じて、アジア太平洋における地域の政治的枠組みに対して行っている建設的な貢献を歓迎した。日本は、EUの東アジア首脳会議プロセスへの関与に対する関心と、友好協力条約(TAC)に参加する意図を歓迎した。双方は、この地域に関する日EU戦略的対話を継続して行うことの重要性を強調した。
5.EUは、日中関係の強化と深化に留意し、これを評価した。日EU首脳は、中国が国際社会に対し開放的な改革政策の下、経済的に発展していることを歓迎し、中国が国際社会における責任ある建設的なパートナーであることの重要性を強調した。日本はEUの対中武器禁輸措置解除に対する反対を改めて表明した。
6.日EUは朝鮮半島の非核化という目標への強固なコミットメントを再確認し、第一段階として2007年2月13日の六者会合で達成された合意と、国連安保理決議第1718号が迅速に実施されるべきであることを強調した。日EU首脳は、北朝鮮の人権状況に対し、継続した、また、極めて深刻な懸念を表明した。EUは、拉致問題のできる限り速やかな解決を導くことを意図するあらゆる努力に対する強い支持を確認した。
7.アフガニスタン・コンパクトの着実な実施の重要性を認識し、日EUは地方開発、警察・司法改革、非合法武装集団の解体(DIAG)の分野におけるアフガニスタンへの支援に関する緊密かつ効果的な協力を継続する。日本は、アフガニスタンにおける欧州安全保障防衛政策(ESDP)警察ミッションの開始を歓迎した。日本はESDPミッションと緊密に連携しつつ警察分野の改革の強化に貢献する意向があることを表明した。
8.日EU首脳は、中央アジアに関する日EU戦略的対話の有用性と、緊密な連携の重要性を強調した。日EUは、透明性、地域協力及びドナー間の連携が、中央アジアにおける安定と繁栄を共同で強化するために不可欠であることを確信する。国境管理、水資源管理、保健、教育を含む人材開発、人権、民主主義及び法の支配は特に相互に関心を有している分野である。中央アジア諸国自らが強化された協力を望むことを特に表明している分野にも、相応の考慮が払われるべきである。
9.中東に関し、日EUは、イラク、イラン、中東和平プロセス等といった諸課題に対処するための努力を一層強化するとのコミットメントを改めて表明した。双方はこの目的のために緊密な協力を継続する意思があることを再確認した。イランについては、日EUはイランの核計画に対する深刻な懸念を表明した。日EU首脳はイランが国際原子力機関(IAEA)理事会及び国連安全保障理事会により要求された措置を履行していないことに対する遺憾の意を表明し、この状況の平和的な解決に達することの重要性を再確認し、イランに対し、交渉が行えるよう濃縮計画を停止し、このためにIAEAと完全に協力するよう強く求めた。双方は、この問題について緊密な意見交換を継続することを決定した。
10.日EU首脳は、国際社会が直面する様々な課題に取り組むために、2005年の国連首脳会合において採択され、同会合の成果文書で言及されている国連の主要機関の改革を含む、進行中の改革プロセスの実施の重要性を強調した。日EU首脳はまた、人権理事会及び平和構築委員会の作業における一層の協力の重要性を強調した。
11.EUは、日本が今年、国際刑事裁判所に関するローマ規程を締結予定であることを強く歓迎した。
12.日EU首脳は、持続可能な開発を通じた貧困削減及び人間の安全保障の促進のための協力を強化していくことの日EUにとっての重要性を強調した。ミレニアム開発目標の達成に向け前進するために、グレンイーグルズにおいて表明されたアフリカ諸国を支援するとの戦略的なコミットメントを想起し、またハイリゲンダムで開かれる本年の主要8か国首脳会議(G8)でアフリカに焦点が当たることを指摘しつつ、日EU首脳は、アフリカの課題としての主要な開発課題及び政治・安全保障問題に関する立場をよりよく調整していくことの重要性を認識すると共に、第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)及び日本のG8議長国の準備のため緊密な協力を開始する重要性を認識した。日EU首脳は、援助効果向上に関するパリ宣言に対するコミットメントを再確認すると共に、開発問題に関する高級事務レベル協議を開始することを決定した。日EU首脳は、安定と持続可能な開発を確保するために地域機関が果たす重要かつ積極的な役割を強調した。
13.日EU首脳は、世界貿易機関(WTO)に関し、ドーハ開発アジェンダ(DDA)を成功裡かつ迅速に妥結することが極めて重要であることを強調した。日EU首脳は、野心的で、バランスのとれた包括的な合意に達するために緊密な協力を継続する。日EU首脳は、全てのWTO加盟国に対し、そのような合意を達成するために貢献することを求めた。
14.普遍的な価値と知識集約型社会への移行に向けた同様の戦略を共有する日EUは、(a)テクノロジー面での競争力によって世界経済を主導し、(b)気候変動、環境及びエネルギーといった共通のグローバルな課題への取組に貢献し、(c)日EUの人々に加えてそれ以外の地域の人々に繁栄をもたらすことを可能とするイノベーションを促進することの重要性を強調した。日EU首脳は、日EUがイノベーション分野で協力を更に強化できる領域を特定する目的で、付属文書「繁栄に向けた研究及びイノベーションの促進」を採択した。日EU首脳は、相互に持続可能な繁栄を確保し、グローバルな日EU関係を更に深化することを目的として、日EU科学技術協力を速やかに強化することを決定し、また、科学技術協力協定の仮署名が近い将来行われることを期待した。2006年12月に発効した、原子力の平和的利用に関する協力協定は、不拡散及び高レベルの原子力安全・核セキュリティーへの日EUのコミットメントを反映している。また、日EU首脳は、融合エネルギーの実現に向けたイーター事業及びブローダー・アプローチ活動に関する積極的な協力に留意した。
15.日EU首脳は、今日の繁栄する知識集約型社会の原動力としての知的財産権の保護及び執行の死活的な重要性について確認した。日EU首脳は、この分野における日EU間の協力を強化するために、この共同プレス首脳文書の付属文書として、「知的財産権の保護及び執行に関する日EU行動計画」を採択した。
16.日EU首脳は、日EUハイレベル協議による全体的監督下での、多くの二国間対話、特に規制改革対話が、良く機能し進展していることを評価した。日EU首脳は、4月に開始した貿易に関する新たなハイレベル対話、及び産業政策・産業協力ダイアログを歓迎した。これらの対話では、同様の競争上の課題に直面している日EUの間の緊密な協力の必要性が確認された。日EU首脳は、会計及び監査の問題に対処し、日EUで適用されるルール及び基準の同等性に関し満足できる解決策を見出すことを目的とした、継続中の対話及び努力を歓迎した。また、 日EU首脳は日・EC税関相互支援協定の仮署名を歓迎した。
17.日EUは、日EUビジネス・ダイアローグ・ラウンドテーブル(BDRT)を通じた、ビジネス界からの共同インプットを評価し、BDRTの提言に対応していく重要性を再確認した。日・EU首脳は、6月4日にベルリンで採択されたビジネス提言書が手交されたことを歓迎する。日EUは、日欧産業協力センターの創設20周年を祝福し、同センターが今後の10年間において、更に積極的な役割を果たすことを期待する。
18.双方は民間航空分野における協力の重要性を強調した。EUは、日本とEU加盟国との間の既存の二国間航空協定の法的安定性が確保されることの重要性を強調した。日本は、日本とEU加盟国との間の航空協定の問題は各協定の締約国間で議論すべきであると述べた。
19.日EUは、学術分野の協力及び交流が、相互理解、イノベーション、教育の質を促進するための手段として重要であることを認識する。日EUは、この分野におけるパイロット・プロジェクトの経験を踏まえていき、高等教育分野における日EU間の協力を更に強化していく。また、日EUは、相互に関心を有する教育政策の事項に関するアドホックなセミナーを開催する可能性を検討する。
20.日EU首脳は、刑事共助の分野における日EU間の協力に向けた非公式な予備協議の開始を歓迎した。