欧州連合(EU)

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日EU定期首脳協議共同プレス声明 付属文書

繁栄に向けた研究及びイノベーションの促進(仮訳)

2007年6月5日

  1. 研究とイノベーションは、将来の人類社会の進歩に道を開き、経済成長に大きなモーメンタムを提供する。日本、EU等の先進経済においては、創造性及びアイディアや研究成果を質の高い製品やサービス、新たなビジネスモデルに作り変える能力が、さらなる発展の鍵となる推進力になる。研究とイノベーション及びこれらの分野における協力を推進することにより、日本とEUは、技術競争力を通じて世界経済をリードし、日本とEUの人々に加えてそれ以外の地域の人々にも繁栄をもたらすことができる。
  2. 日本とEUはともに、それぞれの適切な国内政策において、研究とイノベーションを促進する措置に重点をおく。
    • 日本は最近、長期的戦略ガイダンスに関する最終報告(イノベーション25)を発表し、引き続き、経済成長戦略大綱に基づくイノベーション・スーパーハイウェイ構想等のイノベーション政策、並びに第3期科学技術基本計画及びイノベーション創出総合戦略に示されたイノベーション政策を追求する。
    • EUにおいては、第7次研究開発枠組計画(FP7)、競争力・イノベーション枠組計画(CIP)、教育・訓練計画、地域の収れんと競争力のための構造及び結束基金等の教育、研究及びイノベーションを統合するための重要なイニシアティブが着手されている。大学、産業界及び研究の垣根を取り払うことを目的とした、欧州工科大学構想が進行中である。さらに、ヨーロッパ規模の戦略に追加する形で、多くのEU加盟国が研究・イノベーションに関する国内政策を有している。
  3. 日本とEUは、研究とイノベーションのための最良の枠組の条件を創造し、ベスト・プラクティスを明らかにし、民間と政府の双方においてそれらの利用を促進し、研究の成果とイノベーションを推進し保護するために好ましい法律と規制環境を確立することを目的として、協力を強化する意図を共有している。そのために、日本とEUは、研究、科学技術、貿易政策特に知的財産権の保護の問題について、また民間部門とビジネスのイニシアティブなどの幅広い分野で、既に行われている共同の協力に立脚して取り進めていく。日本と個別のEU加盟国との協力は、こうした分野における協力の重要な柱の一つを構成している。
  4. 日本とEUが協力を強化できる領域は次のとおり。

    イノベーションの上流源としての研究協力の促進

    • 第6次研究開発枠組計画(FP6)に基づく協力:第6次研究開発枠組計画に基づくこれまでのEUと日本の協力は、上記に述べられた共通の課題に対処する世界の二大プレーヤーが有する膨大な研究開発の潜在的可能性を、十分に反映しているとは言いがたい。日本の研究プロジェクトに参加する欧州研究機関の数及び研究者の数も、控えめなものにとどまっている。こうした事実は、欧州と日本の研究と開発における協力が、両者の関係を新しい次元へ導くような、より活気ある高いものとして成長するよう呼びかけている。
    • 研究者の交流:日本とEUは、研究者間の交流が、共通の問題に関する深い認識を促進し、より高いレベルの研究及びイノベーションの活動に結びつくとの考えを共有する。これまでの研究者交流は、日本から欧州に向かう研究者の数の方が、欧州から日本へ向かう研究者の数を上回っていた。日EC科学技術協力協定の発効後は、2008年から実施されるFP7の新たな「人物交流スキーム」について、日本も参加することが可能となる。参加研究機関は今後4年間にわたり、1~12ヶ月の短期間、研究者の交換を行うことができる。これにより、研究機関間の関係が改善され、交流のバランスを回復する機会が得られる。
    • 欧州研究圏(ERA)リンク・プロジェクトは、海外在住の欧州研究者に情報を提供し相互に交流するためのネットワークを構築し、海外在住の欧州研究者を結ぶ絆を形成しようとするその他の国内活動と共に欧州レベルの相乗効果を構築し、共に欧州の研究者社会と協力して、「頭脳の循環」を推進することを目的としている。ERAリンクは昨年、米国において開始され、次の実施国を日本として、既に準備活動が開始されている。2007年6月時点では、日本で活動する欧州の研究者に関する調査が開始されており、日本におけるERAリンクの立案に利用される。
    • 日本とEUは、核融合エネルギー開発の共同研究を加速する。両者はともに核融合エネルギー実現のためにイーター事業及びブローダー・アプローチ活動に対する強いコミットメントを表明し、日本とユーラトムの間のブローダー・アプローチ活動の共同実施に関する協定の発効を歓迎した。

     日本とEUは、日本政府と欧州委員会の間の科学技術協力協定早期仮署名に向けてコミットメントを新たにした。協定は、日本と欧州委員会の協力を促進する基盤となることが期待される。日EUは、科学技術分野の共同活動を更に活発化する意志を表明し、日本とEUの14の加盟国の間の二国間科学技術協力協定に基づく協力活動の重要性に留意した。

    知的財産権の保護と執行及びその他の貿易関連措置

     EUと日本は、先進的かつ知識集約型の経済として、イノベーションと競争を促進する上で知的財産権の保護と執行が不可欠であるとの認識を共有する。この理由により、首脳協議は知的財産権の保護と執行に関する日EU行動計画を採択した。日EUはまた、多数国間の貿易ルールが、模倣品・海賊版対策措置及び税関協力を含む知的財産権の保護と執行など、イノベーションの努力を阻害する慣行を撲滅するための様々な手段を提供するとの認識を共有する。

    産業界、学界に対する協力と支援

     研究から得られた新しいアイディアを、革新的な製品、サービス及びビジネスモデルへと翻訳していくためには、日・EU相互の民間部門、産業界、学界及び政府間のより緊密な連携を促進することが不可欠である。この文脈において、日本とEUは、日・EUビジネス・ダイアログ・ラウンドテーブル及び日欧産業協力センターの活動の重要性を認識した。日本とEUは、日欧間のクラスター協力を歓迎し、その可能性を十分に探求したさらなるクラスター協力を慫慂した。

    イノベーションを促進する環境の整備

     産業活動を活性化させる開放的かつ競争的な環境が、新たなアイディアを革新的な製品やサービス及びビジネスモデルへ変換することを容易にする。こうした環境が、また、研究と開発に関連する直接投資を促進する。日本とEUは、イノベーションに優しい法及び規制環境、並びに2004年の双方向投資促進のための枠組を通じたより高いレベルにおける民間部門による双方向投資、とりわけ規制改革対話等の様々なチャネルを通じた対話を促進する努力を継続する。加えて、日本とEUは、規制及び基準の収れんがイノベーションに優しい環境の整備につながるとの認識を共有し、規制アプローチと基準の間の相互連関を産業政策・産業協力ダイアログを含む様々な対話の機会に取り上げる意図を再確認した。

    分野別のイニシアティブ

    ライフサイエンス

     EUと日本は、ライフサイエンス及びバイオ技術が、両者の競争力に貢献すると共に、石油依存がもたらす災難、地球温暖化、食料安全保障、高齢化する人口の健康といった新たな諸課題に対処するために有効であるとの見通しを提供するとの見解を共有する。この文脈において、両者は、バイオ燃料、バイオ・プラスチック、グリーン・ケミカル等の開発及び市場開発の促進を含む対話と研究の協力を促進する。

    情報通信技術(ICT)

     2004年6月、日EU定期首脳協議において採択されたICTに関する共同声明を想起し、両者は、次の分野における協力を加速する意思を確認した。すなわち、(a)ICT分野の規制枠組に関する意見交換、(b)より安全なICT利用環境の開発に向けた協力、(c)高齢化等の共通の諸課題に対処するための公共政策を支えるICTの活用、(d)共同研究の促進、開発と標準化/相互運用の促進、(e)先端技術(高度道路交通システム、無線ICタグ及びユビキタス・ネットワーク及び次世代携帯電話システム等)に関する意見交換の促進である。

    ナノテクノロジー

     EUと日本は、責任ある研究の推進に関心を有しており、責任ある研究に関する国際対話会議を組織するとの観点から、この分野における国際的な協力に関与していく。コミュニケーションと協力に関する国際ナノテクノロジー会議(INC)もまた重要である。INC4会議は、2008年4月に東京で開催される。両者はこの分野における協力のレベルを上げる可能性を探ることを意図している。

    エネルギー/気候変動

     両者は、共同プレス声明に記載された目的を達成するためには、イノベーションの必要性と可能性が非常に高いことを考慮した。両者は、対話を継続し、適切な研究開発の促進及びクリーン・テクノロジーの展開を加速する費用効果的な措置の開発と促進等の努力を通じてこの分野におけるイノベーションを推進する。日本とEUは、気候変動の探知、予測、対処の向上、特に2007年3月にブリュッセルで行われた日・EU気候変動ワークショップで決められた全球地球観測システム(GEOSS)の観測活動、モデリング、大気の構成、水の循環、対処戦略を視野に協力を継続する。

  5. 日本とEUは、研究とイノベーション政策に関する意見交換と協力を深めるために全ての関連チャネルを引き続き利用していく。日本とEUは、同分野における適切な官民のイニシアティブを支持し、対応することを期待し、準備を整える。同分野の議論の強化と共同の努力の可能性の範囲については、2008年に東京にて開催される日EU情報通信技術フォーラム及び欧州で開催されるその他の関連行事等、上記の適切な機会に探求されるべきである。次回日EUハイレベル協議は、こうした機会を通じた進展状況についてレビューを行う。
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