1.日程・出席者等
10月4日、ブリュッセルにて、アジア欧州会合第8回首脳会合(ASEM8)が開幕し、菅総理大臣が参加した。本会合よりロシア、豪州、ニュージーランドをASEMの新たな参加国として迎え、合計46カ国・2機関の首脳等が一堂に会したASEM8の初日では、世界経済ガバナンスについて意見交換が行われた。また、10月5日は、持続可能な開発、地球規模の課題、地域情勢等について議論された。
2.議論の概要
(1)第1セッション・ワーキングディナー:「世界経済ガバナンス」
- (イ) 菅総理より、金融危機後の世界経済についての現状認識を示した上で、我が国経済が厳しいながらも持ち直してきていることを指摘し、菅内閣として「新成長戦略」の実現に取り組みながら、デフレ脱却を最重点課題とした強力な政策を進め、特に雇用を軸とした成長に向けた具体策を講じていくことを述べた。また、世界経済の均衡ある成長に向け、経済分野で相互の協力と連携を大胆に進めることが重要であること、そのためにFTA/EPAを積極的に活用し、同時にWTOドーハ・ラウンド交渉の早期妥結を目指していくことなどを述べた。さらに、本年のAPEC議長として、APECが初めて策定する「成長戦略」を通じ、世界経済の成長に貢献していく決意を示すとともに、アジアと欧州の相互依存関係が進化する中で共に成長を実現していくために、国際社会の共通のルールを遵守し、強固な信頼関係が醸成していくことが重要であることを指摘した。
- (ロ) 各国首脳からは、2年前のASEM7の時期に発生した世界金融危機からの2年間を振り返る発言が多く、特に、世界経済は最悪期を脱し回復基調にはあるが、持続的な成長のためには更なる取り組みが必要であるとの認識を示す発言が多く聞かれ、財政再建の重要性を強調する首脳も見受けられた。また、危機を克服し成長を続けるためにはG20が重要であり、ASEMとの連携を深めるべきとの意見が聞かれた。そのほか、数多くの首脳が国際金融機関の改革、特にIMF改革の重要性に言及したほか、自由貿易体制を支持し、保護主義に反対するとの声も多く聞かれた。途上国の首脳からは、MDGsへの取り組みが重要であるとの意見が表明された。
(2)第2セッション:「持続可能な開発」
- (イ) 経済発展、社会的一体性及び環境保護という3つの大きな柱について議論された。気候変動に関して、多くの国よりCOP16の成功への期待が表明され、包括的でバランスのとれた枠組みを作るべきとの発言があった他、各国の取組・対策につき紹介があった。
- (ロ) また、多くの国から、ドーハ開発アジェンダの早期妥結を期待する旨が表明された他、自由貿易及びFTAの重要性が指摘された。ミレニアム開発目標(MDGs)達成の重要性を指摘する発言も多くなされ、アジア諸国からはODA拡大を期待する発言もあった。
(3)第3セッション:「地球規模の課題」
- (イ) 各国首脳から、自然災害対策については、食料価格の高騰による世界の食糧安全保障への影響の観点からも、国際社会の協調的な努力が必要であるとの発言が聞かれた。また、「核のない世界」実現のため、NPT非締約国を含むASEM参加国が協力を強化していくべき旨の発言があった。テロ対策について、国連主導の下、あらゆるレベルで具体的協力を進捗させるべきとの発言があった。海賊対策については、迅速かつ効果的な取り締まりの必要性と法執行機関の能力強化のみならず、根本的な政治的要因を除去するなどの中長期的取組の重要性を強調する発言が各国よりあった。
- (ロ) また、異なる宗教・文明間の調和に関し、現在のテロリズムの源泉は宗教・文明間の対立ではなく、穏健主義と急進主義の差異に着目した上で、穏健主義による協力を強化し急進主義や過激派の影響力を削いでいくことが国際平和に貢献するとの指摘がなされ、多くの国が賛意を示した。
(4)ワーキングランチ:「地域情勢」
- (イ) 地域情勢に関し、アフガニスタンをテロの温床にしないという共通の目標の実現に向けた協力への呼びかけがなされた。中東和平については、直接対話の再開を歓迎しつつも、イスラエル政府が入植凍結を延長しなかったことなどに言及しながら、和平の実現に向けた障害を克服していくべきとの意見が示された。イランの核問題については、イランが累次の安保理決議を遵守することを求めると同時に、対話と交渉を通じた平和的解決を見出していく必要性が指摘された。
- (ロ) ミャンマーについては、11月の総選挙が自由、公平、包括的なものとなることへ期待が表明されると共に、同国の現状は係る期待に応えられていないとの厳しい指摘もなされた。北朝鮮の核問題については、同問題がアジア地域においてはもとより国際社会全体にとっても深刻な懸念であるとの指摘があり、一連の安保理決議の着実な履行の必要性、そして北朝鮮が非核化の実現に向けて真剣な行動を示す必要があること、六者会合の進展に注目していること、北朝鮮の人権・人道状況を深く懸念している等の発言がなされた。我が国からは、六者会合を通じた問題解決を図るためにも、北朝鮮が非核化等の自らのコミットメントを真剣に実施する意志を具体的な行動によって示すべき旨指摘しつつ、拉致、核、ミサイルといった諸課題の解決に向けた各国の結束と協力を訴えた。
(5)第4セッション:「人と人との交流、ASEMの将来とビジビリティ」
互いの地域への関心は近年確実に高まっており、言語や文化等の違いを乗り越え、交流を促進するために、若者交流を重点的に進めるべきとの意見が出された。また、ASEMの各種交流プログラムを実施しているアジア欧州財団(ASEF)を支援し、十分活用していくべきとの点で意見が一致した。
3.発出文書
以上の議論を踏まえて、以下の成果文書が発出された。
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