- 第8回アジア欧州会合(ASEM8)は、2010年10月4日及び5日にブリュッセルにおいてベルギーにより主催された。会合には、アジア及び欧州の46か国の首脳、欧州理事会議長、欧州委員長及びASEAN事務総長が参加した。
- 今次首脳会合の全体のテーマは、"生活の質-すべての市民のためのより大きな幸福及び尊厳を目指して-"とされ、欧州理事会議長が会合の議長を務めた。
- 今次ASEM首脳会合に初めて参加し、この機会にASEM参加国となった豪州、ニュージーランド及びロシア連邦の首脳に温かい歓迎の意が示された。
- 首脳は、平等なパートナーシップ、相互の尊重と利益に基づくアジア欧州間の戦略的対話と協力を再確認した。首脳は、ASEM7以降に開催された教育大臣、外務大臣、エネルギー大臣、交通大臣、財務大臣及び文化大臣の各会合の成果を評価し、それらの会合の提言を支持した。
- 今次会合は、アジア及び欧州が相互に関心を有する現下の問題について、次のとおり、両地域の間に共通の基盤を築いた。
より実効的な世界経済ガバナンスに向けて
持続可能な開発に係る方針の前進
- 2008年のASEM首脳会合において採択された持続可能な開発に関する北京宣言をフォローアップするために、首脳は、より大きな人間の幸福をもたらす、持続可能な開発のために相互に補強し依存する3つの柱である経済発展、社会的一体性及び環境保護という共通の目的を更に前進させるための方策を検討した。
- 首脳は、ミレニアム開発目標(MDGs)を含む国際的に合意された開発目標に対するコミットメントを再確認した。首脳は、2010年9月20日から22日にニューヨークにおいて開催された国連首脳会合及び2012年にブラジルにおいて開催予定の持続可能な開発に関する国連会議(Rio+20)の重要性を強調した。
- アジア及び欧州の多種多様な文化を考慮し、首脳は、次の点に合意した。
経済発展
- 首脳は、世界経済危機に対応するために必要と判断される改革が、より持続可能な発展モデルの基礎を築く機会となったことを強調した。
- 最優先事項として、物品、サービス及び投資の需要は、各国の経済成長と雇用創出の原動力であることから強化されなければならない。かかる趣旨から、国内及び国際市場の斬新的な自由化が追求されなければならない。首脳は、WTOのマンデートに従い、これまでの進展を基礎とした、野心的、包括的かつ均衡のとれた成果を伴ったかかる目的への唯一の最も重要な貢献を表すドーハ開発アジェンダの速やかな妥結への決意を改めて表明した。首脳はさらに、あらゆる形態の貿易上の保護主義は拒否されるべきであり、既存の関税及び非関税障壁は遅滞なく削減されるべきであることに合意した。首脳は、また、経済成長・発展を促進するために、WTOの下での公平かつルールに基づいた多角的貿易体制の必要性を再確認した。
- 首脳はまた、製品、サービス及び製造過程の技術革新を支持した。技術革新、特に環境に優しく資源効率的でクリーンな技術の導入は、危機に対応するために各国が経済を再編成し、経済発展のより持続可能なパターンを達成することを助ける。
- したがって、首脳は、特に途上国の利益のために、これらのタイプの技術の普及を促進する政策を進めることを決意した。これに留意しつつ、首脳は、貿易及び投資を担当する高級実務者に対し、早期に非公式会合を開催し、可能で新しい活動の目的及び範囲を特定するよう課した。持続可能な開発の促進に係るASEMパートナーの経験を活用しつつ、それらの活動において、環境に優しく、資源効率的でクリーンな新しい製品及び技術の配備を阻害する貿易及び投資上の障壁及び市場歪曲メカニズムの特定及び検討を目的とした包括的な対話が行われるべきである。この対話は、まさにASEM参加国政府が差し迫った規制及び公共政策に関する問題に直面しているとき、持続可能な開発を進めるための同様の積極的な効果をもたらす可能で新しいインセンティブに焦点を当てるべきである。最終的には、この対話は、環境措置を含む持続可能な開発のための政策が、恣意的または偽装された国際貿易に対する制限措置を導かないことを確保することを助けるべきである。首脳は、この作業は、ASEM経済貿易大臣会合の再開を導くであろうとの期待を表明した。首脳はまた、この対話は、アジアと欧州の経済界との緊密な協議、またそのインプットを得て行われるべきであると決定した。
- 首脳は、貿易円滑化行動計画(TFAP)、投資促進行動計画(IPAP)及び知的財産権に関する対話の下で行われている建設的な活動について留意した。首脳は、特に、ASEM税関局長の指導の下で達成された作業を歓迎し、同様の協力を更に進展させることについて期待を強調した。
- 首脳は、金融の安定とASEM途上国パートナーのための開発資金を利用可能なものにすることの重要性を強調した。首脳は、アジア及び欧州の金融市場はより一層統合され得ること、また、両地域において事業を展開する潜在的な貿易・投資家に対するサービスの提供を拡大するための相当な余地が存在することを強調した。
- 2009年10月にビリニュスにおいて開催されたASEM第1回交通大臣会合をフォローアップするために、首脳は、持続可能な開発の目的を追求する行動計画の策定を正当化しつつ、ミッシングリンクを埋め、障害を取り除くための協力への期待に合意した。ロシア連邦の参加は、この点について新たな重要な展望をもたらす。首脳は、中華人民共和国が2011年に第2回交通大臣会合を主催するとの申し出に感謝の意を示した。
- 同様に、首脳は、グローバリゼーションと技術革新の触媒として、また、持続可能な経済発展のための積極的な手段として、情報通信技術、特に、ブロードバンドネットワーク及び社会経済活動を促進するアプリケーションの重要性を強調した。首脳は、ASEMパートナー間のデジタル・デバイドの解消を助けるために、特に途上国に対し、調査及び開発協力の拡大、技術支援並びに技術及びノウハウの移転を求めた。
- 首脳は、これらのイニシアティブは、アジアと欧州との間の連結性を強化するものであることに留意した。この文脈において、首脳は、ASEANの連結性を向上させるための努力は、両地域間の結びつきにとり重要な進展であり、経験を共有し協力を深化させる機会を開くものであるとして歓迎した。
- 首脳は、食料の権利の実現を確保するための農業政策及び計画を支持した。首脳は、持続可能な途上国主導の食料安全保障政策及び国際的な調整の支援における、FAO世界食料安全保障委員会を中心とする農業、食料安全保障及び栄養のためのグローバルパートナーシップの重要性を認識した。首脳は、飢餓及び貧困との闘いにおいて不可欠であり、女性の役割が正当に認識されている持続可能な農業生産の増大及び農村開発の促進を目的として、基盤整備、責任ある投資及び強化された科学的調査を特に奨励した。持続可能な農業生産の形態を確保する観点から、首脳は、機能的な国際及び国内の農業市場の必要性を強調した。首脳は、すべてのパートナーに対し、WTOドーハ・ラウンド交渉等を通じて、輸出補助金を段階的に削減し、市場アクセスを向上するとともに、食料供給、所得の向上並びに環境面の課題に対応するよう要請した。
- 首脳は、適切に機能している地域的及び準地域的なメカニズム及びイニシアティブが、経済開発及び貧困削減に関する効率的で成果を重視した協力の実施に当たり、相当な潜在力を有していることに留意した。首脳は、大メコン圏経済協力プログラム、メコン河委員会及びイラワジ-チャオプラヤ-メコン経済協力戦略(ACMECS)をアジア欧州間の協力において大きな潜在性を有する枠組であることを強調した。
社会的一体性
- 首脳は、社会的一体性は、繁栄の創造のための可能な限り幅広い人々の参加及び所得の公平な分配によって支えられていることを強調した。
- 首脳は、雇用の創出及び労働参加によりディーセントワークを促進することに合意した。首脳は、危機からの回復に役だった実際的な措置を促進し、また「雇用を伴う成長」を促進する、2009年6月に採択されたILOグローバル・ジョブズ・パクトへの支持を改めて表明した。
- 首脳は、ILOの「労働における基本的な原則及び権利に関するILO宣言」は極めて重要であることを強調した。2008年の「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」に規定されているように、労働における基本的な原則及び権利の侵害は、正当な比較優位として援用その他利用されてはならず、また、労働基準は、保護主義的な目的に用いられてはならない。首脳は、適切な実施を確保するために、強い労働行政及び監督の重要性を強調した。
- 首脳は、移民労働者の中でも特に最も脆弱な者の人権の尊重を含め移民労働者に対して特別な関心が払われるべきことに合意した。開発と移民の関連性を認識しつつ、首脳は、ASEMパートナー間において合法的移民の共有の利益を開発し、強化された帰還政策を含む不法移民の問題に対し効率的に対処するために、最良の慣行を共有し、包括的なアプローチを探求することを求めた。首脳は、国内の法律及び規制に従って労働の平等な権利が保護されたときに移民は彼らが居住する国及び母国の社会の発展のために効果的な貢献を行うことができるであろうということに合意した。
- 首脳は、生産性、労働条件、報酬及び経済的変化といった問題に関する相互理解を促進するために、社会的パートナー間の効果的な対話が奨励されるべきであると強調した。そのような対話はまた、効果的な国内の政策設計及び実施に貢献する。危機が起きた際に、コスト削減措置や労働時間の短縮といった社会的な対話を通じて協議された方策は、全体的な雇用状況に与える悪影響を限定的なものにするということに役立った。
- 首脳は、国家、国際的な手段及び自発的なイニシアティブを通じた企業の社会的責任の促進及び実施を支持した。これらは、雇用者が被雇用者とともに、中核的な労働基準の共有、社会的安定及び社会的正義を向上させることを助ける。これと並行して、技能開発の目的も同じように達成されうる。
- 首脳は、ソーシャル・セーフティ・ネットが、危機が起きた際に、単なる福祉又は再分配メカニズムのみならず、経済の安定装置としていかに機能したかを想起した。社会セーフティネットは、平等な機会を促進し、社会的流動性に対する障壁を排除するとともに、資源の配分、持続可能な経済成長、貧困の根絶及び全体的なマクロ経済の安定に対して有益な影響をもたらすことができる。社会セーフティネットは、各国の状況と資源を考慮に入れ、国家単位で開発されなければならない。首脳はまた、国際労働機関(ILO)及び世界保健機関(WHO)が主導した、執行理事会議長の9つの共同イニシアティブの一つであるグローバルな社会的保護の段階的発展に関心を持って留意した。その考えは、根強い貧困に効果的に対抗するため貧困層及び弱い人々の生活を保証し、必要不可欠なサービスへのアクセスを提供することを追求する。首脳は、更なる経験の共有及び社会福祉政策の実施における技術支援を求めた。
- 首脳は、労働市場の包括性は、職業訓練を含む教育、訓練及び技能開発戦略に決定的に依存することを強調した。民間部門との連携が可能な場合は、低炭素産業やグリーン技術等のような戦略的分野のみならず、ヘルスケア及び高齢者ケア等のような成長分野における将来の機会のための労働力の準備を促進するであろう。労働市場は、時とともに変化することから、生涯学習及び技能開発に係る手段は、政府の政策が奨励すべき教育及び訓練への投資を通じて、労働者が新たな機会に参入していくことに役立つであろう。
- 首脳は、さらに、基礎教育へのアクセスは、自身の向上及び貧困への闘いのために有益であることから、保障されなければならないことを強調した。この点に関し、首脳は、圧倒的な若年人口を抱えるいくつかのアジア側ASEMパートナーが直面している重要な課題を認識した。首脳は、児童労働を効果的に排除するための努力を強化し、経験を共有するとともに、労働市場を下支えする教育サービスを支援し、また、強化することを目的として、可能な場合は技術支援を提供することを決定した。
- 首脳は、多くのASEMパートナーが、急速に高齢化する人口の問題に直面していることを認識した。既存の高齢者保護制度は、社会及び財政の安定性を維持するために、それぞれの状況に応じて、退職年齢、財政政策、労働市場及び年金基金行政に関する改革に迫られていることを認識した。ここにおいても、広く受け入れられる改革を策定するために、社会的対話が極めて重要なものである。
- 首脳は、2010年12月にオランダのライデンにおいて会合を予定している労働大臣に対し、政府間の協力及び社会的パートナーとの対話及び市民社会団体の関与を強化しつつ、これらの課題に関する共通の政策を更に発展させるとともにこれらの政策を実施するよう指示した。
環境保護
- 首脳は、世界全体の気候変動に対応する必要性を強調するとともに、この点に関して、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)プロセスの中心性及び正当性を認識した。首脳は、京都議定書の第一約束期間が2012年に終了することに留意しつつ、2007年に合意されたバリ・ロードマップのマンデートの下での公平、効果的かつ包括的な法的拘束力のある成果を緊急に達成するという目標を共有した。首脳は、これまでに達成された作業を考慮に入れた上で、カンクンにおけるUNFCCC及び京都議定書の締約国会議が、主要な問題に関して依然として残された相違に対して具体的に対応するべきであることに合意した。
- 首脳は、世界全体の気温の上昇が摂氏2度を超えないようにすべきとの科学的見解を認識しつつ、世界全体の排出量の大幅な削減が必要であり、科学及びUNFCCCの原則と調和したこの目的を達成するために行動を起こすことに合意した。首脳はまた、社会経済開発及び貧困撲滅は途上国の最優先事項であり、低温室効果ガス排出型開発戦略は持続可能な発展のために不可欠であることを留意しつつ、各国が共通するも異なる責任及びそれぞれの能力を基礎として、集団的努力に対して貢献するべきであるという基本的な原則を再確認した。
- 首脳は、EUパートナー、豪州、日本及びニュージーランドが2010年から2012年の期間に前倒しで新たで追加的な資金を拠出することとし、また、カンクンにおけるUNFCCC締約国会議において進捗に係る透明性のある報告を行うことに対するコミットメントを歓迎した。首脳は、先進国に対し、途上国のニーズに対応するために、意味のある行動とその実施における透明性の観点からも、2020年までに共同で毎年1千億ドルを動員するとの目標に対する先進国のコミットメントを引き続き実施するよう求めた。
- 首脳は、経済のすべての分野におけるエネルギー効率及び再生可能エネルギーの活用の増加が、気候変動に対処するための大きく貢献するものであると同時に、エネルギー供給の安定を強化するものであることを強調した。首脳は、ASEMの先進国と途上国間で最良の慣行を交換し、政策及び規制面を含め先進的、手ごろな安全かつ環境に優しいエネルギー技術とノウハウの開発、移転、展開、普及及び適用を促進するための国際協力をUNFCCCの関連規則に従って、最大限活用することを求めた。
- 首脳は、2009年6月に、ブリュッセルにおいて開催されたエネルギー安全保障にかかるASEM大臣会合において強調されたとおり、経済のファンダメンタルズを反映した価格で、信頼性があり、更に環境に責任を持てるエネルギーの十分な供給を確保するという課題を強調した。首脳は、透明性及び競争力があり、また環境面において持続可能なマーケット、国内及び国際レベルの一貫した法的枠組み、さらに、エネルギー供給源、ルート及びエネルギー源の多様化、そして緊急時対応メカニズムから得ることができる利益について強調した。これら課題のグローバルな性質及び産出国、消費国並びに輸送国間で拡大する相互依存性は、ASEMパートナー及び他の利害関係者を巻き込んだ対話及びパートナーシップの強化を必要とするであろう。
- 首脳は、持続可能な森林経営及び水資源管理の重要性及び科学的研究結果に係る情報交換を通じた協力、経験と最良の慣行の共有を通じた協力の必要性を強調した。首脳は、それぞれの大臣に対して、2011年の前半に、これらの問題に関する具体的かつ成果指向的な対話を実施するよう要請した。首脳は、国連総会が2011年を国際森林年と宣言したことを想起した。首脳は、途上国における森林減少・劣化に由来する温室効果ガスの排出の削減に係る国連の協同イニシアティブへの支持を表明した。首脳は、EUの森林法の執行・ガバナンス・貿易(FLEGT)に関する行動計画及びアジア側のイニシアティブとして、関係国との協力により違法伐採に対処し、また林業における透明性の導入による貢献を強調した。首脳は、ASEM水資源研究・開発センターをHu Nan省に設立するとの中国のイニシアティブを歓迎した。
- 首脳は、国際生物多様性年のための貢献として、2010年9月22日にニューヨークで開催された国連ハイレベル会合の成果を歓迎した。首脳は、2010年10月18日~29日に名古屋において開催される生物多様性条約第10回締約国会議において、条約の3つ目の極めて重要な目的の達成、すなわち遺伝資源の利用に関する"アクセスと利益配分"のための国際的な枠組に係る合意に達成するよう促した。現在の生物多様性の損失速度を大幅に減少させるという2010年目標が未だ達成されていないということについて懸念を表明しつつ、首脳は、生物多様性の損失速度を減少させ、停止させ、最終的に反転させるための国際社会の行動を導くための新たな目標を緊急に採択するべきことを強調した。
- 首脳は、環境保護措置の設計と実施における民間部門の参加及び市民社会の関与は、人々の態度を変化させ、持続可能な生産と消費のパターンをもたらすために実質的な貢献を行うことを強調した。首脳は、このような関与を、確立した政策の形として奨励する決意を表明した。
- 首脳は、"グリーンで低炭素な経済"の促進等を通じて、より持続可能な生産及び消費の形態の促進の重要性を認識した。利用可能な資源が限られているため、そのような転換が必要とされている。それは同時に、新たな市場及び投資をもたらすとともに、新たな雇用を創出するという機会を与え、また、費用及び利益の公平な分配という課題をもたらす。首脳は、炭素市場の発展に関するASEMパートナーの関心の向上に留意し、国際炭素市場の開発を通じて金融及び投資の拡大を図るという目的を支持した。首脳は、意識の向上を図り、情報及び最良の慣行を交換し、資源の効率性に関する専門家を訓練し並びに技術及びノウハウをより幅広く利用可能なものとするために、ASEMの協力を強化することにコミットした。この文脈において、首脳は、途上国におけるグリーンな成長を支援するために、2010年6月に韓国のソウルにグローバルグリーン成長研究所が創設されたことに留意した。
持続可能な開発に関する将来のアジア欧州協力
- 首脳は、ミレニアム開発目標(MDGs)を含む国際的に合意された開発目標が、持続可能な開発のための彼らの協力を導くことを再確認した。首脳は、現行の努力にもかかわらず、時宜を得た実施に向けての進展が、経済金融危機によって一部阻まれていることを認識した。首脳は、先進国と途上国との発展の格差を縮めることは引き続き重要であるとし、そのための緊急の改善策の必要性を強調した。
- 首脳は、持続可能な開発のための包括的、平等かつ相互に利益があり単なる支援にとどまらないアジアと欧州の戦略的パートナーシップを強化するために、より成果指向的なイニシアティブの必要性を強調した。首脳は、高級実務者に対し、ピア・ラーニングを促進し、政府、行政、科学・学術研究所、専門組織及び民間企業間のネットワークを促進するために、明確な目的を有するパートナーシップ計画を立案するよう課した。首脳は、効率的な事業とするために援助国と援助受入国の資源と専門性を組み合わせた三角協力を活用することを支持した。首脳はまた、債務持続可能性を適切に考慮しつつ、また、可能で、適切で、より大きなレバレッジが到達する場合には、無償及び借款協力の組み合わせた創造的な資金提供モダリティを適用することを支持した。
- 首脳は、ASEMパートナーの異なる社会経済状勢を考慮に入れつつ、協力は、それぞれのニーズ及び能力に合わせて形成され、関係国の政策・戦略に基づき、またその責任において行われなければならないことを強調した。この文脈において、首脳は、開発に係るコミットメント、特にモンテレー合意及び開発資金に関するドーハ宣言の下でのコミットメントに対する再確認を歓迎した。首脳は、開発援助の妥当性、効果及び効率は、パリ宣言及びアクラ行動計画の原則を適用することによって追求されなければならないことを強調した。
地球規模の課題
海賊
- 多発する海賊による攻撃、特にソマリア沖での状況にかんがみ、首脳は、アジア欧州間の貿易に極めて重要である海洋の自由と安全を今後も確保していく決意を示した。首脳は、国連が海賊問題に関する国際的な取組において重要な役割を今後も果たし、また、国家主権及び国際法の尊重が保障されるべきであることを強調した。
- 首脳は、国連海洋法条約(UNCLOS)及びその他の関連条約の普遍的な批准を求めた。首脳は、各国が海賊及び海上武装強盗を国内法により犯罪化するよう求めた国連安保理決議の実施の重要性を強調した。また、海賊被疑者の効果的な訴追、及び、そのために必要な海賊による攻撃及び被疑者に関する証拠収集の確保が重要であることを強調した。この文脈において、首脳は、ソマリア沖における海賊行為及び海上武装強盗に責任を有する者の訴追及び収監の訴追の促進に係る選択肢に関する国連事務総長報告書を歓迎した。今後追及すべき選択肢に関して合意できるよう、各国が法的問題に関する事務総長特別顧問に協力するよう要請した。この点に関し、さらに首脳は、海賊行為への資金提供手段の追跡及び阻止のため、ASEMパートナー間のさらなる情報の共有を求めた。
- 首脳は、特に、船員の安全及びその職業の将来について議論した。生命の確保、船員の安全又は迅速な解放は常に最優先とすべき懸念である。そのような努力を阻害する第三国による一方的な措置は受け入れられない。首脳は、船員のための海賊対処訓練及び海賊行為の被害者と家族に対する支援に係る最良の慣行の交換に関する有用性を強調した。また首脳は、海賊行為に関する公判への船員の出廷を容易にするための努力を支持した。
- 首脳は、海運業界が国際海事機関(IMO)と協力して、船舶所有者及び運航者のための最良な管理の慣行を作成した取組を賞賛した。首脳は、危険な海域を航行する船舶は合意されたメカニズムを通じて報告することの重要性を強調した。首脳は、これらの勧告が実行された場合には、実際に乗っ取られる事例が減少している点に留意した。
- 首脳はさらに、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)、西インド洋及びアデン湾における船舶への海賊及び武装強盗の抑制に関連するジブチ行動指針及び国際海事機構(IMO)ジブチ指針信託基金、並びにマラッカ・シンガポール海峡海上哨戒をはじめとする地域のイニシアティブは効果的であり、更なる支援が行われるべきであると信じた。
- 首脳は、ソマリア沖海賊対策に関するコンタクトグループ会合(CGPCS)及びCGPCS信託基金を通じた強力な協力を歓迎した。首脳はまた、ソマリア沖において現在実施されている海上及び上空からの海賊対策活動は、海賊行為の阻止及び抑制のための重要な短期的措置であり、また共通の関心事項に関して欧州とアジアが協働した特筆すべき事例であるとして歓迎した。首脳は、適切な軍事資源を引き続き提供することの必要性を強調した。しかしながら、首脳は、国内及び地域的なキャパシティビルディングを含む多層的な取組を伴う長期的なアプローチが必要であるとの考えである。特にソマリアの政治情勢の安定化を含む、ソマリア沖海賊問題の根源の原因に対処するために、強い決意が示される必要がある。
テロ及び国際組織犯罪との闘い
- 首脳は、テロとの闘いにおける国連の主導的役割を改めて主張するとともに、テロとの闘いにおいて、国連憲章、国連グローバル・テロ対策戦略及び関連の国連安保理決議に沿って、確固たる措置をとることへのコミットメントを再確認した。首脳は、テロに関する国連諸条約及び議定書を遵守し、国際人権法、難民法及び人道法を含む国際法に基づく義務を遵守する必要性を強調した。首脳は、テロ行為の犠牲者に対して特別な関心を払うよう要請した。首脳は、すべての国連加盟国に対し、包括テロ防止条約の採択に向けて行動することを促した。首脳は、ASEMが、テロに関する国連グローバル・テロ対策戦略の実施を支援するために、ASEMの年次会合を通じて最良の慣行の普及を継続すべきであることを決定した。
- 首脳は、国際組織犯罪と腐敗が、貿易、開発、知的財産権、平和、安全及び人権の尊重に及ぼす負の影響に係る深い懸念を強調した。首脳は、不法薬物取引が引き起こす国際平和及び安全保障に対する脅威と闘う決意を表明した。首脳は、特に密入国及び人身取引と闘う決意に関する決定を表明した。首脳は、不法移民を抑制するための一貫した地域的なアプローチの重要性を認めた。本年は、国際組織犯罪防止条約及びその補足議定書の採択から10周年に当たる。首脳は、これらのコミットメントと国連腐敗防止条約の履行における協力を強化することを約束した。
災害予防及び災害救助
- 首脳は、人道、平等、中立及び独立といった災害救助に係る人道主義の原則を強調するとともに、これらの原則は人道的な行動の基礎であると見なした。
- 首脳は、過去数年絶えず発生する海上での災害を含む自然災害及びその悲惨な被害は、被災国である途上国において、国際的に合意された開発目標の達成を阻害すると言及した。首脳は、兵庫行動枠組(2005~2015)及び関連する国連決議に従って、リスクにさらされることの減少、人間やその財産の脆弱性の軽減、健全な環境管理、地域の能力構築及び災害への備えの強化を通じて、防災取組の重要性を強調した。首脳は、兵庫行動取組及び関連国連決議において定められた防災取組の実施を加速させるよう求めた。首脳は、さらに、ASEM内での協力の強化、特にリスク評価、ジェンダーを抱括するアプローチに特に留意した防災戦略、早期警報メカニズム、災害対応能力、捜索及び救助能力、災害救援並びに災害後の復興に関するインフラ整備災害救援活動における協力の強化を求めた。首脳は、とくにリスクの高い国々においてこれまで実施された能力構築支援活動を歓迎し、今後の継続を奨励した。ASEAN事務局と欧州委員会人道支援事務局(ECHO)との協力の強化を支持した。
人間の安全保障
- 首脳は2005年国連総会首脳会合の成果及び関連の国連総会の決議に従って、国連総会及び適切なフォーラムにおいて人間の安全保障に関連する問題について議論を継続する必要性を強調した。
人権と民主主義
- 首脳は、国連憲章及び国際法に基づいた人権へのコミットメント及び民主的統治の遵守を再確認した。首脳は、1998年以降毎年開催されている人権に関するASEM非公式セミナーを通じ、各国が実施している対話に関して満足の意を表明した。首脳は、普遍、平等及び相互の尊重を基礎として、人権の促進と保護に関する協力の拡大へのコミットメントを強調した。首脳は、人権の促進及び機能的な民主主義社会を維持するために重要な役割が与えられている市民社会との協力を奨励した。首脳は、人権事理会及び国連総会第3委員会等のフォーラムにおける協力を拡大することについて期待を表明した。
- 首脳は、ASEAN域内における人権に関する協力及び人権の促進と保護のための包括的な枠組みを提供する人権に関するASEAN政府間委員会(AICHR)の創設を歓迎した。首脳は、AICHRの目標に従って人権を促進し、及び保護するための相互協力を強化することに同意するとともに、高級実務者に対し、近い将来これを追求していくことを課した。
文化と文明間の対話
- 文化及び文明に関する対話について、首脳は、文化と文明間の対話を奨励することの重要性を強調するとともに、国際の平和と安全の維持に向けた信仰間及び文化間の対話の重要性を想起した。現行のASEMイニシアティブはアジア及び欧州の文化と信仰を豊かにし、またアジア欧州関係の深化に大きく貢献するものである。首脳は、国連の文明の同盟イニシアティブへの支援を表明するとともに、政府及び国際機関による異文化間対話のための新国家計画、新パートナーシップ協定及び地域戦略に関する発表、また教育、青年、移民及びメディアの分野における多様な関係者による具体的事業の実施を含む昨年5月にリオデジャネイロにおいて開催された第3回フォーラムの成果を歓迎した。
国連改革
- 首脳は、国連が今日の世界全体の課題に効率的に対処するとともに、加盟国に対して効果的な支援を確保し、特に途上国のニーズに対応するために、国連の包括的な改革は依然として優先課題であるということについて共有した。首脳は、すべての加盟国に対し、より代表する、より効率的かつより効果的な国連安保理を達成するために協働することを求めた。さらに首脳は、国連システム全体の一貫性及び国際社会の主体性を強化するために、国連総会の活性化、ECOSOCの強化、事務局の管理能力強化及び専門機関の実効性の強化と合理化を呼びかけた。
核不拡散・軍縮
- 首脳は、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散は、国際の平和と安全に対する脅威であり、ASEM及び世界全体の共通の懸念であることにつき一致した。首脳は、核兵器その他の大量破壊兵器のない世界という長期的な目標へのコミットメントを再確認した。首脳はまた、核軍縮及び核不拡散という相互に強化し合う目標を前進させることの重要性を認識した。
- 首脳は、核拡散の懸念に対処する上で、国際的な協力及び各国の措置の重要性につき一致した。核兵器不拡散条約(NPT)は、核軍縮・不拡散に関する国際的な努力の基礎であり、国家の原子力の平和的利用の権利の擁護に資するものである。首脳は、すべてのNPT締約国に対し、2010年NPT運用検討会議で採択された行動計画を実施するよう要請した。
- 首脳は、国際的な核不拡散体制の維持及び原子力の平和的利用の明確化の定義におけるIAEA及びその保障措置制度の重要な役割を認識するとともに、そのマンデートの範囲内のすべての問題に関して完全に協力することを求めた。首脳は、特に包括的保障措置協定の追加議定書の早期の受入れを支援した。
- 首脳は、燃料供給の保証及び燃料サイクルのバックエンドを扱うスキームの可能性を含む核燃料サイクルへの多国間アプローチの発展について、IAEAの下で行われる作業を継続する重要性を認識した。
- 首脳は、今後4年以内にすべての脆弱な核物質の管理を徹底することを含め、核テロの脅威に効果的に対応するための、2010年の核セキュリティ・サミットにおいて立ち上げられた取組を歓迎した。首脳は、2012年にソウルにおいて開催される次回サミットでレビューされる、かかる取組の継続を奨励した。首脳は、同時に、核テロ防止条約及び1980年の核物物質の防護に関する条約の改正について世界各国の批准を求めた。
- 首脳は、戦略攻撃核兵器の実質的かつ検証可能な削減のための条項を含む最近のロシア連邦及び米国間の新START条約の署名を歓迎するとともに、同条約の早期発効を要請した。首脳は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効要件国でありながらいまだ批准をしていない国々の一部において新たに生まれたCTBT批准に向けた政治的モメンタムを温かく歓迎し、CTBTの早期発効への強い支持を再確認した。
地域の課題
- 首脳は、地域の協力メカニズムは、平和、安定、繁栄、社会的発展及びつながりにとっての力となることで一致した。首脳は、相互尊重、すべての国の正統な関心の考慮及び様々な地域機関・フォーラムの間の連携に基づくアジア及び欧州における安全保障と協力の効果的な地域的アーキテクチャーの重要性を強調した。リスボン条約の発効は、欧州統合に向けての大きな前進となるものであり、アジアのパートナーを含む他国との関係及び協力を発展させるために信頼でき、有効なパートナーとしてのEUを強化することになる。同じように、首脳は、2008年12月のASEAN憲章の発効及びASEANの統合を加速するために取られた最近の措置を、力強く、活力があり、かつ、持続可能なASEAN共同体の2015年までの創設に向けた重要な進展として歓迎した。首脳はまた、実質的な進展及びにアジアの様々な地域での包括的な地域対話と協力を唱えるイニシアティブを歓迎した。これらの進展は両地域に資するものである。
- 首脳は、アジアの地域協力におけるASEANの中心性を認識した。首脳はまた、そのような地域協力は相互に裨益し合い、強化し合うものであることを認識した。首脳は、ASEANとパートナー国間の既存の対話による連携を通じ、関係強化及び協力強化がなされることへの期待を強調しつつ、ASEANの役割の拡大を支持した。首脳は、経験及び教訓を共有するための追加的な努力を奨励した。
- 首脳は、お互いの地域で行われている協力的なプロセスに対する支援及びこの精神に基づいて、EUの東南アジア友好協力条約(TAC)加盟に対する確認されたコミットメントを歓迎した。この趣旨で、首脳は、TACを改正する第三議定書の早期発効に向け、努力するという考えを共有した。
- 首脳は、イランの核計画に関し早期に交渉を通じた解決を見出すことの重要性を強調した。首脳は、イランの原子力の平和的利用の正当な権利を尊重しつつ、イランの核計画が専ら平和的性格であることに対する国際的な信頼を回復するために交渉を通じた包括的な解決に達するという目標を追求するとの決意を表明した。首脳は、国連安保理決議第1929号の完全な履行へのコミットメントを再確認した。首脳は、イランが国連安保理及びIAEA理事会の要求を完全に遵守する必要性を確認した。首脳はイランとEU3+3との対話が早期に再開することを呼びかけ、イランが前向きかつ建設的にこの対話へ参加することを奨励した。
- 首脳は、アフガニスタンが困難な治安状況にもかかわらず選挙を実施したことを称賛した。この選挙は2001年以来二度目の下院議会選挙であり、アフガニスタン人自身の手で実施された最初の下院議会選挙であった。また、アフガニスタンの統治権を重要かつ目に見えるかたちで示すものであり、自らの国家の将来を形作るとのアフガニスタン国民の意志を明確にするものであった。この関連で、首脳は、2010年7月のカブール会議で示された文脈に基づいて、選挙過程も含めた、国民のための平和と安定の達成及び国家のガバナンス強化に向けたアフガニスタン政府の取組に対して、国際社会が支援を継続することの重要性を改めて表明した。首脳は、カブール会議で定められた、移譲、和解、再統合といった目的の重要性や、アフガニスタンのオーナーシップが長期的な安定や平和のための鍵であることを強調した。首脳は、国際社会がアフガニスタンに対する支援を行い、ガバナンス、法の支配、保健、農業、教育、貧困削減等の分野における技術協力を提供すべきであることを強調した。また、ケシ畑を撲滅する方法の探求、前駆物質の輸送の減少及び持続的な代替生計開発の推進を含む包括的な対麻薬戦略を通じて、麻薬の抑圧や制御のための支援も継続されるべきである。首脳は、アフガニスタンが再び国際テロ活動の基地となることを防ぐことを再確認し、アフガニスタン治安部隊がこの挑戦に立ち向かうキャパシティを強化するとのアフガニスタン政府の努力を歓迎した。
- 首脳は、2010年9月2日にイスラエルとパレスチナ自治政府間の直接対話がワシントンで開始され、以後継続していることに勇気づけられた。首脳は、バラク・オバマ米国大統領及び米国政府、カルテット、アラブのパートナー及びその他の国際的なパートナーによるこの和平プロセスに対する支援と貢献を称賛した。首脳は、関連の国連決議、中東和平ロードマップ及びアラブ和平イニシアティブに沿った「土地と平和の交換」原則に基づく交渉による解決を支持した。また、独立し、主権を有し、民主的であり、地理的連続性を持ち、自立可能なパレスチナ国家を樹立し、平和で安定した地域内でパレスチナとイスラエルの平和的共存を達成するという最終的な目標を改めて表明した。首脳は、入植地建設は国際法上違法であり、中東和平に関するロードマップにおけるイスラエルの義務とも相容れないことを想起した。当事者は、障害を乗り越え、交渉が継続しモメンタムを得るための十分な方法を見出すべく、決意を持って取り組まなければならない。また、当事者は、合意された期間内に交渉による解決を図るというカルテットの要請に沿って、最終的な地位の問題に関して集中的に取り組まなければならない。一方、すべての関係者が、対話の成功を阻害する可能性のある挑発的な行動や暴力を慎むことも、非常に重要である。首脳は、多くのパートナーが恒久的和平を助長するための紛争後の作業に実質的に貢献する用意があることを歓迎した。
- 首脳は、ガザの現状は持続的ではないとの考えである。封鎖解除を支持しつつ、首脳は、国連安保理決議第1860号(2009年)に沿って、ガザへの及びガザからの人道支援物資、商業物資及び個人の妨げられない流れを確保しつつ、正当な安全保障上の懸念に対処するような解決策をとるよう呼びかけた。イスラエル政府が最近発表した措置は重要な進展である。しかし、ガザの復興及び経済的回復を可能にする政策の根本的な変化を達成するためには、その措置の完全な履行及び補完的措置の実施が必要とされている。
- 首脳は、中東和平プロセスを包括的に進展させるため、平行して、シリア・イスラエル間及びレバノン・イスラエル間の問題の対話や交渉による解決を推進することが重要であることを強調した。
- 首脳はミャンマーにおける最近の進展について意見交換した。首脳は、2010年11月7日の全国選挙の公示に留意した。首脳は、選挙が自由、公平かつ包括的なものとなり、正統で立憲的かつ文民システムによる政府に向けた確かな歩みとなることを保証するためにミャンマー政府が必要な措置を講ずることを奨励した。すべての拘禁者が適時に釈放されることは、選挙がより包括的、参加可能かつ透明なものとなることに貢献する。首脳は、国連事務総長による周旋ミッションの継続を支持し、ミャンマーに対し国連及び国際社会とより密接に関与し協力することを呼びかけた。首脳は、ミャンマー政府が包括的な国民和解プロセスに関心のある全ての関係者との対話に取り組む必要性を強調した。首脳はまた、アウン・サン・スー・チー女史についても言及した。首脳は、国内和解及びミャンマー国民の経済社会状況の改善という目的を達成するために、建設的に関与し続ける用意があることを表明した。首脳は、ミャンマーの主権及び領土の一体性並びにミャンマーの未来がその国民に属するという見解を尊重する旨改めて表明した。
- 首脳は、朝鮮半島の情勢について意見を交換し、朝鮮半島及び地域における平和と安定を維持することの重要性を強調した。首脳は、韓国政府に対し、韓国哨戒艦「天安」号の沈没による人命の損失について哀悼の意を重ねて表明した。首脳は深刻な懸念を表明し、2010年7月9日付け国連安保理議長声明に対する支持を再確認した。首脳は、更なるそのような攻撃を防止することの重要性を強調した。首脳は、北朝鮮に対し人道支援を提供する努力を認識した。首脳は、離散家族再会事業に関する議論を含む、韓国・北朝鮮間でとられた最近の動きに留意し、そのような家族再会事業が再び定期的に実施されることを奨励した。首脳は、このような動きが北朝鮮と韓国の間の真の対話と協力へとつながることに期待を表明した。首脳は、すべての当事者に対して2005年9月19日付け共同声明及び関連する国連安保理決議におけるコミットメントを履行することを求めた。これらは、北朝鮮が完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法ですべての核兵器及び既存の核計画を放棄する枠組みを提供するものである。首脳は、この問題の包括的な解決を目指して六者会合において行われる外交的取組への支持を再確認した。首脳は、六者会合が再開される環境を作り出すための共同の努力を要請した。首脳はまた、関連の安保理決議の完全な履行の重要性を強調した。また、首脳は、国際社会が有する人道上の懸念に対応することの重要性を強調した。
人と人の交流、ヴィジビリティとASEMの将来
- 首脳は、経済界、商業従事者、学者、学生、有識者、メディアの代表、文化人、市民社会の代表並びに地方及び地域の指導者の間の人的交流及び相互作用を更に促進するという包括的な目標を進めることを奨励した。相互作用の多様化及び観光の促進は、アジアと欧州の間の相互関係を強化する。
- 首脳は、議員間のパートナーシップ、市民フォーラム及びビジネスフォーラムにおいて並行して行われる対話が、ASEMの目的の達成のため価値ある役割を果たすことを再確認した。多くの首脳が、これらの対話に参加した。首脳は、彼らの提言及び決定に留意した。首脳は、達成された作業を評価するとともに、高級実務者に対し、その作業を考慮に入れて適宜、適切な行動に係る提案を行うよう課した。
- 首脳は、2009年5月にハノイにおいて開催された第2回ASEM教育大臣会合に引き続く学術協力の拡大を歓迎した。首脳は、エラスムス・ムンドスとASEM―DUOフェローシップ・プログラム等の成功を踏まえて、流動性、質の保証、単位認定及び単位互換に関する対話を促進するボローニャ・政策フォーラムの実施を賞賛した。首脳は、ASEMの教育活動を調整するASEM教育事務局をドイツ・ボンに設置したことを強く支持した。首脳は、デンマークによる、2011年に第3回ASEM教育大臣会合を主催するという申し出を歓迎した。
- 首脳は、特に持続可能な開発を前進させるための共通の課題において、科学技術に係る共同のイニシアティブが、科学、技術及び社会の前進を達成する上で中心的な役割を果たすことを強調した。
- 首脳は、アジアにおける、またアジア・欧州間の研究及び教育における直接のインターネット網を増大するトランスユーラシアン情報ネットワーク(TEIN)の果たす重要な役割を認識した。首脳は、その第4フェーズの開始及び韓国が主催する協力センターの設置及びそのためのASEMパートナーからの資金的貢献を歓迎した。
- 首脳は、昨年9月にポズナンにおいて開催されたASEM文化大臣会合の成果を歓迎した。首脳は、文化遺産及び過去の貴重品に関する意識を向上することは、無知と偏見を克服し、相互理解と協力を増進することへの重要な前進であることを強調した。したがって、首脳は、あらゆるレベルの政府及び市民社会の関与を得て、この分野の活動を強化するよう奨励した。首脳は、インドネシアが2012年に第5回ASEM文化大臣会合を主催することに感謝の意を示した。
- 首脳は、ベルギー及びASEMアジア側参加国がASEM8の文化的イベントとして開催した"アジアへの道"と題した展覧会の開催を歓迎した。この展覧会は、25世紀にわたり、アジアと欧州間の商業及び政治ネットワークを通じ、どのように人類の科学及び哲学が往来したのかということを表している。これは、現在の対話と人と人との交流に向けて豊かな歴史的背景を提供するものである。
- 首脳は、ASEMの唯一の常設機関であり、アジア欧州間の相互理解を促進するためのネットワークの基点として活動するアジア欧州財団(ASEF)が達成した重要な活動を評価した。首脳は、ASEMの優先事項を推進し、ヴィジビリティを向上するASEFの最も重要なプログラムの価値を認識した。首脳は、ASEM参加国に対し、定期的な拠出を通じて、ASEFのプログラムの財政面での長期的な持続可能性が確保されるよう求めた。首脳は、新しいASEM参加国もそれぞれの貢献を行うよう求めるとともに、ASEF活動に積極的に参加することを奨励した。
- 首脳は、ASEMの内的及び外的ヴィジビリティの顕著な向上に満足の意をもって留意した。首脳は、ベルギーが、ASEMのロゴを、ASEM8のロゴの基本として使用したことを賞賛し、将来の首脳会合主催国が同様のアプローチを採用することを奨励した。首脳は、参加国主導の集まりであるASEMはそのヴィジビリティに関し、参加国自身のイニシアティブ、活動及びコミュニケーション政策に決定的に依存していることを認識した。従って、首脳は、すべてのASEMパートナーに対し、さらなる努力を行い、ヴィジビリティに関する作業計画と政策、精選されたコミュニケーション手段及び焦点を絞った文化活動を通じてASEMに対する一般の認識を向上させるよう求めた。
- 現存の協力枠組みの継続的な効力を再確認しつつ、首脳は、拡大したASEMの作業方法の改善を期待することに合意した。首脳は、次回ASEM首脳会合の主催国が、"首脳会合から首脳会合へ"の調整メカニズムの役割を果たすべきという高級実務者の提言を承認した。首脳はさらに、高級実務者に対し、ASEMの活動の効率性、一貫性、継続性及びヴィジイリティを向上させる機動的で費用対効果の大きい技術支援を提供するために、適切かつ現実的な提案を考え出すよう課した。首脳はまた、高級実務者に対し、ASEMパートナー間の既存の多様な協力メカニズムの改善を追求するよう求めた。この点で、首脳は、高級実務者が2011年の次回会合においてASEM外相が検討できるよう提案を提出することを指示した。
おわりに
- 首脳は、別添1の新しいASEMイニシアティブのリスト及び別添2の2010~2012年のASEM作業計画を承認した。
- 首脳は、第8回会合の成功裏の開催について、主催国に対し感謝の意を示すとともに、ASEM9をホストするとのラオス人民共和国の申し出を感謝をもって受け入れ、2012年10月にビエンチャンにおいて再会することに期待した。
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