我々、アジアと欧州の首脳、欧州委員長及びASEAN事務局長は、2010年10月4日及び5日にブリュッセルにおいて、ヘルマン=ファンロンパイ欧州理事会議長の下で会合し、現下の経済及び金融情勢について議論を行った結果、以下のとおり宣言する。
- 我々は、今次の経済危機が世界経済・金融システムの脆弱性を露呈し、世界の各エコノミー間の相互依存関係を浮き彫りにしたことを認識する。第7回アジア欧州会合(ASEM)の国際金融情勢に関する声明及び2010年にマドリッドで開催された第9回ASEM財務大臣会合に続いて、我々は、強固で持続可能かつ均衡ある包括的な成長を促進し、市場の信頼を回復し、金融システムの強じん性及び透明性を強化し、金融セクターを改革し、国際金融機関の改革に貢献し、また途上国における経済成長を刺激するために、欧州とアジアの間の協力に新たなモメンタムを与えることを決意する。
- 我々は、アジア及び欧州において、強固で持続可能かつ均衡ある成長及び包括的な経済を確保するために、すべてのASEMパートナーが経済の歪みや政策対応の弱点への取組に関与すべきであることを強調する。この目的に留意しつつ、我々は、過剰な公的部門の財政赤字、持続可能でない債務及び発展の格差を含む、危機以前の脆弱性を生み出していたパターンから脱却しつつ、成長の源泉を強化するとともに構造改革を実施することを誓約する。我々は、より大きな安定のために共に行動する。我々は、各国の異なる発展段階を考慮しつつ、発生しうる政策措置の波及効果及び不均衡に注意を払うとともに、世界経済に対する共通の責任を果たすべきであることに合意する。
- 我々は、例外的かつ十分に調整された景気刺激策の結果として、世界経済の回復が続いていることに留意する。我々は、市場の信認を回復し、回復のモメンタムを維持することを優先すべきであることに合意する。我々は、インフレ圧力を抑制しつつ、堅調な回復を支え経済成長に向けたモメンタムを維持するためにアジアで実施された措置を歓迎する。我々は、金融危機の最中に行われた政府の介入による大幅な財政赤字及び債務水準の上昇並びに金融市場の不安定性及び世界経済の不透明感が続いていることとの関連性に留意する。この理由から、我々は、公的債務の市場を適切に機能させるために欧州諸国が実施した措置と、また正当であれば更にこれを進める用意ができていることを歓迎する。我々は、各国の状況に応じて財政健全化の速度と時期を十分に差別化しながら、経済成長を堅持する一方で財政の持続可能性を実現し、信頼に足る明確に説明された財政健全化計画を推進することを奨励する。我々は、適切な構造調整などを通じて経済の潜在成長力を高めることが、長期的な観点からは財政調整を軽減するための最上の方策とみなされるべきであることを強調する。
- 我々は、各国が、金融の脆弱性及び急激な資本フローの急変による経済混乱を軽減させ、各国が金融市場の変動に対処することに役立つフィナンシャル・セーフティーネットの必要性を認識した。我々は、この点について、危機予防の取組を改善するIMFの昨今の決定を歓迎する。我々は、また、アジアにおけるチェンマイ・イニシアチブのマルチ化及び欧州の金融安定化メカニズムを、有益な地域的措置であると認識する。我々は、しかしながら、健全なマクロ経済及び金融政策は、マクロ経済上のショックに対する第一防衛線であり続けるということに同意する。さらに我々は、G20が、金融安定理事会(FSB)と密接に協力し、発表したとおり金融システムの強じん性及び透明性の強化についての早急に進捗を図ることを奨励する。
- 我々は、金融規制及び監督の分野で、計画された改革を実現する必要性を再確認する。過去の教訓を学ばれるべきであり、またより効率的で、強じんで、信頼できる金融環境が創造されなければならない。より強固な自己資本と流動性に関するルールの重要性は、金融規制当局による最近の合意において強調されているとおりであり、我々は当該合意の正式採択を期待している。我々は、過剰なレバレッジ慣行を排除することの必要性を強調する。我々はまた、システム上重要な金融機関のモラル・ハザードに特に注意を払いつつ、金融監督と危機管理プロセスを改善することの重要性を強調する。我々は、システミックなリスクを抑制し、市場の効率性、透明性及び公平性を改善するために、店頭デリバティブに係る規制を強化し、金融機関、ヘッジファンド及び信用格付会社の監督を改善することに合意する。金融セクターにおける良きガバナンスは、監督当局間の規制目的の情報交換及び協力のための協定の締結により推進されるべきである。我々は、マネーロンダリング、テロ資金対策及び戦略的欠陥を有する国及び地域に関する情報交換の分野における金融活動作業部会(FATF)及びFATF型地域体(FRSB)の取組を全面的に支持する。我々は、金融セクターが危機の状況において政府が被ったコストの公平なシェアを負担するべきであり、それは、各国の異なる状況に応じて、いくつかの可能な政策アプローチを通じて実現されうるものであることに合意する。我々はまた、世界的に適用可能な単一の質の高い会計基準について国際的な合意が得られることの重要性を強調する。
- 我々は、我々の共同の努力は、良く機能し、素早く反応し、そして十分に資金を有する国際金融機関に依存することを強調する。
- 我々は、IMFのガバナンスを現代化し、IMFの信頼性、正当性及び有効性を改善するという我々の強い望みを確認し、IMFがそのマンデートを遂行するために必要な資金を有していることを確保するよう決意することを求めた。この点で、我々は、IMFがそのマンデートを新たなものにし、国際通貨及び金融システム全体の監視及び安定維持に関するIMFの役割及び責任を明確にするというIMFの努力を支持する。
- ダイナミックな新興国及び途上国の力強い成長にかんがみ、我々は、世界経済におけるIMF加盟国の相対的地位及び責任を適切に反映するための、2010年11月のG20ソウル・サミットを期限とする、IMFのクォータ(出資割当額)改革実施への支持を表明する。2009年10月にイスタンブールにおいて開催された国際通貨金融委員会の会合で決定されたとおり、我々は、最貧国の投票権を保護しつつ、現在のクォータ計算式を用いて、過大代表国から過小代表国への少なくとも5%の、ダイナミックな新興国及び途上国へのクォータ・シェア移転がなされなければならないことを再確認する。我々はこれと平行して、より広いガバナンスの問題に取り組まなければならないことを認識する。これらは、国際機関の長及び上級リーダーに対する開かれた、透明で、能力本位の選任プロセス、IMFの戦略的な監督へのIMF総務の関与、上級及び中級スタッフの多様性、投票方法、理事会の代表性並びに規模の問題を含む。我々は、来るIMF世界銀行年次総会において、財務大臣及び総裁の間で建設的な対話が行われることを期待する。
- 我々は、世界銀行の開発委員会によって行われた、途上国及び体制移行国の投票権を2008年に比べて4.59%増加させる世界銀行のボイス改革の決定を歓迎し、総務による時宜を得た承認を期待する。我々は、各国の経済的地位及び世界銀行の開発使命を主に反映するダイナミックな計算式に基づき、極めて小さな貧困国を保護しつつ、衡平な投票権の配分へ徐々に移行し続けるという我々のコミットメントを強調する。
- 我々は、より持続可能な発展モデルを奨励し、途上国に利益をもたらし、及び、貧困を削減するための措置を特に求める。我々は、これらの措置は、市場アクセス、国境を越えた投資、国際的支援、債務に関する措置及び技術移転を含むものであることを信じる。この点で、我々は、G20が発表した、発展格差を縮小し貧困削減を図るための途上国の経済成長に焦点を当てたイニシアティブを歓迎すると共に、G20の開発アジェンダと複数年にわたる行動計画を策定するとの意思を表明した。
- 我々は、WTOドーハ・ラウンドの成功裏の締結は、世界の持続可能な回復のために強力な経済的刺激を与えるものであるとして、早期の締結に関する決意を改めて表明する。我々は、保護主義を排除し、貿易及び投資に係る新たな障壁を設けず、開放的な市場を維持することに対するコミットメントを再確認する。我々はまた、世界の回復を図る方法として、地域内及び地域間の経済統合を深化させることの関する重要性を強調する。我々は、我々に対し、世界的な経済及び金融政策の協調を促進及び強化することを支えるという高い期待が我々の上に課せられていることを認識する。
- 我々は、持続可能な回復の達成に向け、ASEMパートナー間の包括的な協議と調整の重要性を改めて表明する。我々は、世界経済を強化し、適切な多国間フォーラムにおいて、求められる高い水準と必要な規制改革を達成するために、G20と協働する十分な用意があることを表明する。我々は、来るG20ソウル・サミットで成功裡の結果を確保するために全面的な協力を求める。
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