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平成20年10月25日
10月24日及び25日、北京にて、アジア欧州会合第7回首脳会合(ASEM7)が開催され、麻生総理大臣が参加した。本会合には、アジア16カ国(日、中、韓、印、蒙、パキスタン、ASEAN10カ国)及びASEAN事務局、欧州EU27カ国及び欧州委員会の首脳が出席した(一部は代理出席)。
(1)第1セッション・ワーキングディナー:「国際経済・金融情勢」
(イ)麻生総理より、来月15日の金融・世界経済に関する首脳会合での議論も念頭に、アジアと欧州の緊密な協力・協調の重要性、新興国・途上国支援の必要性、その際のIMFの重要な役割と日本としてIMFに資金貢献を行う用意があること、ASEAN+3首脳非公式朝食会の議論を踏まえ、中長期的には、より自律的な発展をもたらす経済構造への転換、チェンマイ・イニシアティブなど地域の金融協力強化が重要であること等を述べ、また、今回の金融危機にかんがみ、市場への政府の関与のあり方、各国当局間の連携、IMF等のあり方の検討が必要である点を強調した。
(ロ)欧州諸国より、特にG7首脳を中心に、欧州諸国・EUの打ち出している金融安定化のための諸施策について説明があるとともに、グローバルな危機にはグローバルな対応が必要であるとして、大きな潜在成長力を有するアジア諸国への期待と一層の協力・協調の必要性が述べられ、また、今次危機をふまえての教訓としての金融市場の規制改革、国際機関の改革等についての意見が示された。
(ハ)アジア諸国より、自国経済の現状について説明の上、金融危機克服のためのこれまでの先進国の政策努力に対し一定の評価が示されるとともに、世界経済の今後に向けての主要先進国の役割への期待が示された。また、ASEAN+3諸国より、麻生総理の発言を受ける形で、健全な金融市場の発展、域内経済の強靱性強化のための域内協力(含む、チェンマイ・イニシアティブ)の促進の必要性についての発言が多くあった。
(ニ)アジア・欧州双方より、アジア・欧州間及び国際的な協力・協調の重要性が一致して協調され、来月15日の金融・世界経済に関する首脳会議に向けての協力が表明された。
(ホ)多くの国より、自由貿易・投資への保護主義に対抗する必要があるとして、WTOドーハラウンド交渉の早期妥結の必要性が強調された。
(2)第2セッション:「グローバルな課題」
多くの国より、食糧問題及び気候変動対策に関する、短期・中長期双方の取り組みの必要性が指摘された。特に、農業生産性の向上、流通の改善、貿易促進の必要性が指摘されるとともに、生産性の向上に関する南南協力の事例が紹介された。また、中国及びミャンマーより、それぞれの地震災害、サイクロン被害の際の国際社会からの支援に感謝の意が示されるとともに、災害対策に関し、情報交換、経験の共有を含む協調的な対応の必要性について意見が一致した。
(3)ワーキングランチ:「国際情勢・地域情勢」
特段の議題を設定しない自由討議方式で、アジアと欧州の地域協力、朝鮮半島情勢、アフガニスタン情勢、イランの核問題、ミャンマー情勢等につき意見交換が行われた。麻生総理より、北朝鮮の核問題につき、北朝鮮の核計画を検証するための実効的な具体的枠組みの構築が喫緊の課題であり、そのための六者会合での取組に支持を求めるとともに、拉致問題につき、日本の国家主権と国民の生命と安全に関わる重大な人道問題であることを説明の上、核問題と共に、早期解決に向けた協力を求め、各国から理解を得た。また、アフガニスタンについて、麻生総理より、我が国としても復興支援や「テロとの闘い」に引き続き積極的に参加していく考えを表明した。イランについては、多くの国より、核問題解決に向けた進展が見られず深刻な状況であるとの懸念が示され、国際社会が一致して解決に向け協力していくべきであるとの認識が示された。ミャンマーについては、多くの国より、ミャンマーの民主化に向けたより一層の努力が必要であり、ミャンマーがすべての利害関係者を政治プロセスに関与させていくことが重要であるとの意見が示された。
(4)第3セッション:「持続可能な開発の推進」
(イ)気候変動、エネルギー安全保障及び開発について、現下の金融市場の混乱があっても対策が減速してはならないとの意見が表明され、気候変動に関する次期枠組みについてのCOPの議論を促進させる必要性で一致した。また、エネルギー安全保障について、エネルギー源の多様化、技術移転、新技術導入の重要性につき指摘があった。
(ロ)麻生総理より、気候変動問題に関し、全ての主要排出国が参加できる枠組み作り、産業など部門別の積み上げ方式による削減目標、途上国への協力を呼びかけた。また、麻生総理より、開発に関し、国連ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けた取り組みの重要性を指摘し、食料、一次産品の価格高騰について、緊急支援、食料生産促進のための中長期的措置の必要性を指摘した。また、感染症対策についてASEMの枠組みで我が国が鳥・新型インフルエンザ対策イニシアティブを実施することを紹介した。
(5)第4セッション:「文明間の対話の深化」
多くの国が、異文化、伝統や宗教に敬意を払い、相互理解を増進していくことの重要性を強調した。また、グローバル化に伴い生じる国家間の衝突や対立を緩和する上で、異なる文明間の対話や文化交流が果たす役割を認め、ASEMパートナーが一致した行動をとることの重要性につき意見が一致した。
以上の議論を踏まえて、以下の成果文書が発出された。
(1)「ASEM7議長声明」
(2)「ASEM7持続可能な開発に関する北京宣言」
(3)「ASEM7国際金融情勢に関する声明」
麻生総理は、北京滞在中、李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領、温家宝中国総理、胡錦濤中国国家主席、メルケル・ドイツ首相、ギラーニ・パキスタン首相、ベルルスコーニ・イタリア首相、サルコジ・フランス大統領と二国間会談を行った。また、会合の前後の機会を捉え、ASEAN+3首脳非公式朝食会を行った他、エンフバヤル・モンゴル大統領、グーゼンバウアー・オーストリア首相と懇談を行い、二国間関係や国際情勢につき意見交換を行った。