アフリカ

令和7年2月10日

1 名称(西アフリカ諸国経済共同体)

 英:Economic Community of West African States(ECOWAS)

 仏:Communauté Economique des Etats de l'Afrique de l'Ouest(CEDEAO)

2 設立経緯及び沿革

  • 1963年:「西アフリカ産業協力ラゴス会議」(国連アフリカ経済委員会(ECA)後援)において、西アフリカ地域経済協力のための常設機関設立に向けた、暫定機関設立につき合意。
  • 1968年:共同市場を目指した西アフリカ地域グループ結成(しかし経済共同体設立構想は、その後、ナイジェリア内戦等により進展が遅れた)。
  • 1975年5月28日:西アフリカ諸国経済共同体設立協定正式合意(於:ラゴス)。

3 設立目的及び任務

 1975年、西アフリカの域内経済統合を推進する準地域機関として設立。その後、経済統合の基盤となる、政治的安定の確保を目指し、防衛・紛争解決機能等を備え、さらに安全保障機能の強化に取り組んでいる。

  • 1975年(設立当初):西アフリカの域内経済統合を推進する準地域機関
    • 持続的経済開発のための基盤整備
    • 地域内の関税障壁の撤廃
    • 域内・域外貿易の促進等
  • 1981年:「防衛相互援助に関する議定書」調印
    • 防衛・紛争解決機能等を備える
      (経済統合の基盤となる、政治的安定の確保を目指す)
  • 1998年:「紛争予防・管理・解決・平和維持・安全保障メカニズム」規約採択
    • 安全保障機能の本格的整備に着手

4 加盟・脱退

 現在の加盟国12か国はベナン、カーボベルデ、コートジボワール、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、トーゴ。
 (注)1975年当時の原加盟国は西アフリカ15か国。その後、カーボベルデが新規加盟(1977年)、モーリタニアが通貨統合等に反対して脱退(2000年12月)。ブルキナファソ、マリ、ニジェールが脱退(2025年1月)
 (注)ギニアについては参加資格停止中。

5 組織

  • (1)首脳会合(少なくとも年1回開催):ECOWASにおける最高意思決定機関。議長(Chairman)は、2023年よりボラ・ティヌブ(Bola TINUBU)ナイジェリア大統領が就任(同年7月の首脳会議で選出され、就任。任期1年)。2024年7月、同大統領が更に1年間の任期で再選された。
  • (2)閣僚理事会(少なくとも年2回開催):ECOWASの活動に関する首脳会合への勧告、経済統合政策の調整・調和に関する指示、各種手続・規則の作成及び採択、ECOWAS及び関連機関の計画策定と予算承認を行う。
  • (3)その他、経済社会理事会、防衛会議、参謀総長会議、調停・安全保障理事会及び防衛・安全保障委員会、各種専門委員会が開催され、意思決定を行っている。

6 主な機関

  • (1)委員会(Commission)(所在地:ナイジェリア・アブジャ):
    • 2007年1月の首脳会合において事務局(Secretariat)から改編。委員長(President)、副委員長(Vice-President)及び5名の委員(Commissioners)から成る。
    • 委員長(President):オマール・アリゥ・トゥーレイ博士(Dr. Omar Alieu Touray、ガンビア人)。2022年7月、第61回ECOWAS通常首脳会議にてECOWAS委員長に任命され、就任。任期4年。
  • (2)共同体議会(Community Parliament)(所在地:ナイジェリア・アブジャ):各加盟国よりの選出議員115名で構成され、各加盟国は5議席ずつ確保されているが、残りの40席は人口に応じて各国の議席配分が決められている。2000年11月設立(諮問機関として、2001年1月より機能開始)。立法期制(4年)が導入されている。
  • (3)ECOWAS投資開発銀行(EBID)(所在地:トーゴ・ロメ):ECOWAS協力保障開発基金(通称ECOWAS基金)より1999年に改編。西アフリカ地域の投資開発銀行として、公共・民間セクターにおける地域統合に関するインフラプロジェクト等を支援。
  • (4)共同体裁判所(Community Court of Justice)(所在地:ナイジェリア・アブジャ):1991年に設立が決定され、1993年のECOWAS改定議定書により設置。2005年にECOWAS設立30周年を契機に改編。加盟国による共同体法違反やECOWAS改定議定書の解釈等にかかる係争等を扱う。首脳会合によって選出された5人の独立した裁判官から構成される。
  • (5)西アフリカ保健機構(West African Health Organisation:WAHO)(所在地:ブルキナファソ・ボボ・デュラッソ):1987年の議定書によって設立が決定され、以来、西アフリカ地域の人々の健康の保護と最高基準の保健サービスを目指し、活動している。
  • (6)西アフリカ・マネロン対策政府間作業グループ(GIABA):1999年に首脳会合により設立。当初の主な責務はマネロン対策であったが、2006年にテロ資金供与対策がGIABAの責務に盛り込まれた。

7 財政

  • (1)加盟各国からの拠出金をもとに運営されている。域外からの輸入品に対して0.5%課税をする共同体課徴金が導入され、ECOWAS委員会やその他の活動の資金として使われている。
  • (2)主要国及び国際機関等による支援が行われている。

8 活動及び事業内容

(1)マクロ経済政策の調和

  • ア 西アフリカ経済通貨同盟(The West African Economic and Monetary Union: 英語略称WAEMU、仏語略称UEMOA): ECOWAS内で経済統合の深化を進めるサブ・リージョナルグループで、8か国(ベナン、ブルキナファソ、ギニアビサウ、コートジボワール、マリ、ニジェール、セネガル、トーゴ)から成る。
  • イ 域内統一通貨統合(ECO)の実現: ECOWAS共通通貨「ECO」の導入を目指す。2027年を目標に、ECOWAS加盟国の中で経済収斂基準を満たした国から順次、ECOの段階的な導入を計画。

(2)貿易と市場の統合

  • ア 自由貿易プログラムの推進:貿易障壁の撤廃、自由貿易地域・関税同盟・共通市場の設置。
  • イ 共通貿易政策と貿易開発戦略の制定:2015年に対外共通関税(CET)創設(カーボベルデのみ未導入)。また、域内共通税関申告書の導入も進んでいる。
  • ウ EUとの経済連携協定(EPA)の締結:2004年より、ECOWASの15加盟国にモーリタニアを加えた16か国を対象に交渉開始。

(3)域内の自由な人の移動

  • ア 域内の自由な人の移動のためのロードマップ策定
  • イ 共通パスポート導入

(4)平和、安全保障、安定とガバナンス

  • ア 選挙支援メカニズム:加盟国において自由で信頼性の高い選挙実施を保証するため、選挙監視・事前調査ミッションの派遣等を実施。
  • イ 停戦監視グループ(ECOMOG:ECOWAS Monitoring Group):
    • 紛争を抱える域内諸国にて平和維持活動を実施。
  • ウ 紛争予防・管理・解決・平和維持・安全保障メカニズム(Mechanism for Conflict Prevention, Management, Resolution, Peace-keeping and Security):
    • 調停・安全保障理事会(首脳・閣僚・大使級。首脳会議で選ばれる7か国、現議長国及び前議長国で構成)の他、補助機関として、(ア)防衛・安全保障委員会(各国軍参謀長、外交当局及び治安機関代表による合議体で、技術的助言を与える)、(イ)長老会議(2001年1月、32名の域内各国の著名人を得て発足。任期1年。予防外交の実施や選挙監視活動)、(ウ)ECOMOG(各国が平和維持活動のために部隊を指定し、各国の責任で所要の訓練を実施し出動に備える待機部隊)により構成。また、紛争監視センターを域内4箇所に設置(早期警戒情報の収集・分析等)。
  • エ ECOWAS待機軍(ECOWAS Standby Force
    • 西アフリカ地域内及び加盟国内でテロ、環境に対する危機を含む平和と安全保障に対する脅威が認められた場合、地域の平和と安定を図ることを目的として、ECOWAS加盟国から提供された軍、文民部門によって構成される待機部隊。加盟国の合意により30日以内に設置、展開される。
    • 監視、平和維持及び治安の回復、人道支援、制裁発動、汚職等を含む事案に対する警備活動、平和構築及び武装解除、予防措置発動等をミッションとし、緊急展開任務部隊(タスクフォース)1,500名及び旅団本隊5,000名の合計6,500名規模によって設置されることが目指されている。
  • オ ECOWAS小型武器条約(ECOWAS Convention on Small Arms and Light Weapons, Their Ammunition and Other Related Materials
    • 域内における小型武器の蔓延を抑制するための取組。2006年6月の首脳会合では、従来の取組の中心であった「ECOWAS 小型武器製造輸出入モラトリアム」を国際協定化した「ECOWAS 小型武器条約(ECOWAS Convention on Small Arms and Light Weapons, Their Ammunition and Other Related Materials)」が署名された。

(5)NEPADの下での取組

 2002年5月、ECOWASは西アフリカにおけるNEPAD(アフリカ開発のための新パートナーシップ)の実施機関としてのマンデートを付与されたため、アフリカ開発銀行との協力の下、域内インフラ整備短期行動計画及び事務局キャパシティ・ビルディング短期行動計画を作成し、ドナー諸国に対し協力を呼びかけている。2019年、NEPADはアフリカ連合(AU)の開発実施機関としてAUDA-NEPAD(アフリカ連合開発庁-アフリカ開発のための新パートナーシップ)へ改組。現在、ECOWASにおいて農業、気候変動、発電等の分野で9つのNEPADプログラムが実施されている。AUDA-NEPADの概要はこちら

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