寄稿・インタビュー
岩屋外務大臣によるAfrican Business誌への寄稿
「TICAD 9に向けて」
TICAD 9の重要性
2025年8月に、第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)を横浜で開催します。日本は本年をTICADイヤーであり、アフリカイヤーと位置付けています。TICAD 9は、創設80周年を迎える国連における9月の総会ハイレベルウィークや、初のアフリカ開催となる11月の南アフリカでのG20サミットにもつながる重要な時期に開催されます。私(大臣)自身も、2月には南アフリカを、そして5月にはセネガルを訪問し、アフリカのダイナミズムを肌で感じてまいりました。
国際社会が複合的な危機に直面する中、日本は、人間の安全保障の理念に基づき、特に日本が知見を有する国際保健、人材育成・教育、防災、地雷処理等のグローバルな課題への対応において、アフリカ諸国との連携を極めて重視しています。また、これらの取組は、昨年9月の国連未来サミットや、本年6~7月の第4回国連開発資金会議での議論とも軌を一にするものです。
TICADの特長
1993年に始まったTICADは、アフリカ開発に関する国際会議として、国際社会の中でアフリカへの関心を喚起する起点となりました。そして、オーナーシップとパートナーシップというキーワードの下、日本は以来30年以上にわたり、TICADプロセスを通じて、アフリカ自身が主導する持続可能な開発を一貫して後押ししてまいりました。国際機関、第三国、企業、アカデミア、NGO等を含む包摂性、オープンさ、さらにアフリカのオーナーシップの尊重といった特長は、TICADならではの強みであると考えています。
このような日本の取組について、セネガルのソンコ首相からは、「魚を与えるのではなく、魚の捕り方を教える日本の開発モデルはセネガルにとって模範となる」と評価いただきました。すなわち、資金や物資の提供のみを行うのではなく、人材を育成しながら、質の高いインフラや制度の維持強化を図り、一緒に課題解決に取り組むのが、日本の特徴です。
TICAD 9のテーマ、優先事項
TICAD 9では、「革新的課題解決の共創を、アフリカと共に」というテーマを掲げます。日本は、AI等のテクノロジーや、デジタル医療、水素・アンモニアのエネルギー利用など、日本の革新的な技術や知見を活かして、様々な課題の解決策を共に創り上げたいと考えています。
AUが掲げる開発目標であるアジェンダ2063に記載されている包摂的成長、経済統合などのアフリカの経済・社会の変革実現のためには、官民連携が鍵となります。日本の技術やノウハウを活かし、アフリカの産業化や雇用創出と日本自身の成長につながるように、投資環境の改善等による民間資金動員の促進、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の実施促進等を通じた域内統合や連結性の強化、若者・女性の能力強化と人材育成のためにアフリカ諸国と共に取り組んでいく考えです。TICAD 9では、多くの日本・アフリカの民間企業が参加し、ビジネス関連イベントやイノベーション活用の事例の展示・紹介も行われる予定です。TICADへの参加を通じて、各国の課題解決に向けた具体的なヒントを得たり、新たなビジネス拡大の機会となることを期待しています。
持続的な投資や経済成長、誰も取り残さない包摂的な社会の実現は、平和と安定の確保やグッド・ガバナンスが前提条件となります。アフリカ自身による紛争解決やガバナンス強化を後押しし、人間の安全保障の考え方に基づく紛争の予防や紛争の根本原因への取組等の平和と安定の重要問題についても、TICADの場を活用して議論していきたいと思っています。
これからの日・アフリカ関係の将来を担うのは若者や女性たちです。特に、2050年には世界の若者の3人に1人はアフリカ系になると予測されている中、若者や女性はイノベーションや平和の担い手になる必要があります。そのために、次世代の人材育成や人的交流、そして文化交流を推進していきたいと考えています。TICAD 9に向けては、ユース中心の企画も進んでいます。
結語
世界の不確実性が増す中、今日ほどアフリカとの協力の推進が重要になったことはありません。TICAD 9では、包摂的で責任あるグローバル・ガバナンスの強化を図り、国際社会を協調に導くためのアフリカとの具体的協力を確認する機会としたいと思います。