寄稿・インタビュー
岩屋外務大臣によるJeune Afrique誌への寄稿
「TICAD 9に向けて:革新的な課題解決策の共創を通じて、日・アフリカのパートナーシップを新たな段階へ」
TICADの特長・重要性
6年ぶりにTICADが日本で開催される本年は、日・アフリカ関係にとって特別な年です。2月には、南アフリカでG20外相会合が開催され、私自身、南アフリカを訪問しました。アフリカの国がG20議長国を務めるのは今回が初めてです。また、4月には、セネガルを訪問し、そこでは、セネガル日本職業訓練センター(CFPT-SJ)を視察しました。ここは、日本が長年にわたり支援してきた職業訓練校であり、40年間で7,000名以上もの卒業生を送り出してきました。こうした訪問を通じて、アフリカのダイナミズムや、日本とアフリカが将来を共に創る大きな可能性を実感しました。
1993年に始まったTICADは、アフリカ開発に関する国際会議として、国際社会におけるアフリカへの関心を高める先駆けとなりました。日本は、以来30年以上にわたり、オーナーシップとパートナーシップというキーワードの下に、人材育成の重視、民間セクター主導の成長、質の高いインフラ、人間の安全保障などを通じて、アフリカ自身が主導する持続可能な開発を一貫して後押してきました。実際、このような日本の取組について、4月に表敬したセネガルのソンコ首相からは、「魚を与えるのではなく、魚の捕り方を教える日本の開発モデルはセネガルにとって模範となる」との評価を頂きました。TICADの先駆性や包摂性、アフリカのオーナーシップの尊重は、他のフォーラムにはない特徴だと考えています。
日本のアフリカ協力、TICAD 9の優先事項
日本はアフリカ各国の課題に向き合い、人材を育成しながら、共に解決策を考えてきました。今年の3月に駐日アフリカ外交団の代表と意見交換を行った際には、これまでの協力に加えて、AIやデジタル分野での技術協力について期待する声が多く聞かれました。今回のTICAD 9では、まさに、AIなどのテクノロジーやデジタル医療など、日本の技術や知見を活かして、アフリカが直面する様々な課題の解決策をアフリカと共に創り上げる「革新的な解決策の共創」がテーマです。
具体的な協力の例を紹介すれば、衛星写真・土壌分析などのデータを活用し、水や肥料の投入を最適化するデジタル農業を促進してきています。また、母子保健のデジタルプラットフォーム導入による妊産婦へのデジタル診療の普及、AIやドローン技術を活用してマラリアを媒介する蚊の幼虫が生息する水たまりを検知・駆除するシステムの普及など、先端技術を駆使する日本企業と連携したプロジェクトを他にも実施してきています。こうした課題解決の事例を更に大きく広げ、アフリカ発の解決策を共に育てていきたいと考えております。
また、アフリカの産業育成や雇用創出と、民間資金動員の促進などを通じた民間セクター主導の持続可能な成長、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の実施促進などを通じた域内統合や域内外との連結性の強化、若者・女性の能力強化と人材育成も重要なテーマとなります。
特に、アフリカ連合(AU)のアジェンダ2063が目標に掲げる包摂的成長、経済統合などのアフリカの経済・社会の変革実現のためには、官民連携が鍵となります。TICAD 9では、多くの民間企業が参加し、イノベーション活用の事例の展示・紹介や、ビジネスフォーラムも行われる予定です。TICAD 9への参加を通じて、各国の課題解決に向けた具体的ヒントを得たり、新たなビジネス拡大、産業力強化の機会となることを期待しています。
また、包摂的な社会の実現には、平和と安定の確保が重要な前提条件となります。例えば、日本は本年1月に活動を開始したAUによるソマリア支援安定化ミッション(AUSSOM)にいち早く拠出するなど、アフリカ自身による紛争解決やガバナンス強化を後押ししてきました。人間の安全保障の考え方に基づく紛争の予防や紛争の根本原因への取組についても、TICAD 9の場で議論していきます。
さらに、日本とアフリカの将来を担うのは、イノベーションや平和の担い手となる若者や女性たちです。次世代の人材育成や人的交流、そして文化交流を推進していきます。
加えて、TICAD 9では、国際機関、研究機関、NGO(市民社会)、自治体、民間企業などにより、200を超えるセミナーやシンポジウム、約300企業・団体のブース展示が行われます。また、日本企業とアフリカとの間で多くの協力覚書が結ばれることでしょう。
TICAD 9への期待・結語
世界の不確実性が増す中、今日ほどアフリカ諸国との協力が重要になったことはありません。TICAD 9では、官民連携を推進し、革新的な課題解決策を共創するため、アフリカ諸国との更なる連携強化を図りたいと思います。また、包摂的で責任あるグローバル・ガバナンスの強化に向け、国際社会を対話と協調に導く重要性を確認する機会としたいと思います。