寄稿・インタビュー
石破総理大臣によるTICAD 9関連寄稿
「アフリカの明るい未来の共創:TICAD 9における新たなパートナーシップの時代へ」
石破 茂
日本国総理大臣
今から25年前、私はセネガルを初訪問し、アフリカの地に初めて足を踏み入れました。若者たちの活力とアフリカ大陸の潜在力に圧倒され、そのアフリカの明るい未来を確信しました。今、その確信は現実になりつつあります。
2025年はアフリカの年でもあります。日本が横浜で開催する第9回アフリカ開発国際会議(TICAD 9)(8月20日~22日)と、南アフリカが議長国を務めるG20サミットという2つの主要な国際フォーラムが、アフリカに焦点を当て、強力な相乗効果を生み出すのです。
1993年に始まったTICADは、過去30年間、アフリカ開発に焦点を当ててきた先駆的な会議であり、「アフリカのオーナーシップ」と「国際社会とのパートナーシップ」を重視する、独自の強みを持っています。国際機関や第三国、企業、学界、NGOなど幅広い関係者と関わるTICADの包摂性と開放性も、その特色です。日本はこうした理念を継承し、今後も揺るぎないアフリカのパートナーであり続けます。
TICAD 9のテーマは「アフリカとの革新的な課題解決策の共創」です。日本は最先端技術と知見を活用して、アフリカが直面する課題に対する革新的な解決策を探求します。アフリカで生み出された現地発のソリューションと、日本の技術・知見をかけ合わせることで、双方に利益をもたらします。
アフリカは豊富な資源、活気あふれる若者人口、そしてイノベーションの可能性を秘めています。同時に、貧困、紛争、失業、感染症、気候変動といった大きな課題にも直面しています。そこで、TICAD 9は、以下の3つの主要かつ横断的なアプローチに焦点を当てることで、これらの課題に正面から取り組みます。
- 民間セクター主導の持続可能な成長:日本は、民間投資促進を通じて、アフリカの経済変革を加速させます。具体的には、投資環境の改善、AI、デジタル化、GX、衛星データの活用など、最先端技術の活用による新たな経済的機会の創出と、そのインパクトの強化、そして、日本の知見とリソースを活用したアフリカ企業の成長と産業エコシステムの強化を後押ししていきます。
- 若者・女性のエンパワーメント:アフリカの未来は、若者と女性にかかっています。日本は、成長分野における技能育成を対象とした包括的な人材開発プログラムを通じて、若者と女性のエンパワーメントに取り組んでいます。若者と女性の潜在能力を最大限に引き出すことで、包摂的な成長と持続可能な社会の実現を目指します。
- 地域統合と連結性の強化:地域統合は、アフリカの繁栄にとって不可欠です。日本は、国境を越えた貿易と投資の促進、バリューチェーンの構築を通じて、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の実現を力強く後押ししていきます。ケニアのナイロビで開催されたTICAD VIで日本が表明した「自由で開かれたインド太平洋」に沿って、日本はアフリカにおける連結性、強靱な制度、そして人材育成の強化を継続していきます。
これらのアプローチを通じて、持続可能な開発と包摂的な社会を実現するためには、平和と安定の促進が不可欠です。日本はアフリカ諸国と連携し、アフリカ主導による平和と安定の強化を力強く後押しし続けていきます。
最後に、TICAD 9は単なる国際会議の場ではありません。より深化したパートナーシップを築き、革新的な課題解決策を生み出し、アフリカと世界のための繁栄と持続可能な未来のための共通のビジョンを共有する、活気のあるプラットフォームです。日本とアフリカのパートナーシップの成果は、アフリカを越えた地域にも広がります。日本は、国際社会の平和と繁栄のための包括的で責任あるグローバルガバナンスを強化するため、アフリカと協力していきたいと考えています。