アジア

平成28年7月27日
7月26日(火曜日)11時25分から14時15分頃(現地時間)、ラオス・ビエンチャンにおいて第6回東アジア首脳会議(EAS)参加国外相会議が開催され、我が国から岸田外務大臣が出席したところ、概要以下のとおり。

1 EAS協力のレビューと将来の方向性

(1)テロ・暴力的過激主義対策

冒頭、岸田大臣から、ニースやダッカを始め、世界各地のテロ事件における全ての犠牲者に哀悼の意を表した。また,岸田大臣から、テロを断固として非難するとともに、EAS参加国によるテロ・暴力的過激主義対策のため、水際対策を含むテロ対処能力向上支援に加え、テロの根本原因の対処に一層積極的に貢献したい旨表明した。
多くの参加国から、一連のテロ事件を強く非難するとともに、テロ対策の重要性を強調する旨の発言があった。

(2)EAS強化

岸田大臣から、東アジアの安全保障環境は更に厳しさを増す中、EASは地域のプレミア・フォーラムとして更に機能を強化すべき旨述べた。さらに、岸田大臣から、「EAS10周年記念クアラルンプール宣言」を着実な実施のため、EAS大使会合の定期開催、ASEAN事務局へのEASユニットの設置を歓迎するとともに、取組を拡充すべき旨訴えた。
多くの参加国から、EAS大使会合の定期開催やEASユニットの設置といったEAS強化の流れを歓迎する旨述べるとともに、地域のプレミア・フォーラムとしてのEASを更に強化することの重要性を強調する発言があった。

(3)海洋協力

岸田大臣から、「海洋協力」をEASの優先協力分野に追加するとの提案を支持する旨述べ、昨年合意された「地域海洋協力推進に関するEAS声明」を受け、海洋協力に関する議論の深化の重要性を強調した。また、EAS参加国による極めて重要な海洋協力の枠組みである拡大ASEAN海洋フォーラム(EAMF)について、正式にEASの海洋協力部門とすることや、トラック1.5会合に併せトラック1会合の開催等も将来的に検討されるべき旨発言した。
複数の参加国から、海洋協力を新たにEASの優先協力分野に追加する提案に賛同する発言があった。

(4)東アジアの持続可能な経済発展

岸田大臣は、東アジアにおける平和と繁栄のためには、持続可能な経済発展を実現することが重要である旨述べ、TPP協定はアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)のルールの叩き台となり、21世紀の世界のスタンダードになる大きな意義を有しているとして、TPPの早期発効に向け日本も最大限努力したい旨表明した。また、RCEPについては、包括的でバランスの取れた、高いレベルの協定の妥結を目指し、各国と連携しながら、引き続き精力的に交渉を進めたい旨述べた。
加えて、岸田大臣は、東アジアの持続的成長のための鍵となる連結性向上のため、G7伊勢志摩サミットで合意した原則の下、質の高いインフラ投資や、各国ごとのニーズにきめ細かく応えた人材育成が重要である旨も訴えた。さらに、5月に「日メコン連結性イニシアティブ」を提案したことを紹介し、「生きた連結性」の推進を各国と進めていきたい旨述べた。また、東アジアの統合に貢献する政策研究を行う国際的な機関としてERIAを支援している旨述べ、各国によるERIAの活用への期待を示した。

2 地域・国際情勢に関する意見交換

(1)南シナ海

岸田大臣から、南シナ海をめぐりASEANの一体性は幾多の困難に直面してきたが、これに対し日本はこれまで一貫してASEANの一体となった対応を支持してきた旨強調した。さらに、今回ASEANは共同コミュニケに合意し、南シナ海問題に一つの声として団結する強力な意思と能力を示したとして、議長国ラオスを始めとする関係国の努力に敬意を表したい旨述べた。
さらに岸田大臣から、共同コミュニケでは、南シナ海における最近の動向への深刻な懸念を示し、国際法に従った紛争の平和的解決、非軍事化と自制の重要性、そして法的・外交的プロセスの完全な尊重を明記している旨述べた上で、こうした点は、現在の懸念すべき状況を打開する上でベースとなるものであるとの認識を示した。
加えて、岸田大臣から、南シナ海における現状を日本は深刻に懸念している、比中仲裁裁判は紛争当事国を法的に拘束するものであり、両当事国がこの判断に従うことにより、今後、問題の平和的解決につながることを期待する旨述べた。その上で、全ての関係国に対しても、力ではなく法に基づく国際秩序を遵守すべきと訴えるとともに、ASEANの一体性を支持する日本の姿勢は今後も変わらない旨強調した。
これに対して、ほとんどの参加国が南シナ海問題を取上げ、多くの国が航行及び上空飛行の自由の確保、国連海洋法条約を含む国際法に従った紛争の平和的解決に言及した。さらに、複数の国が最近の動向への深刻な懸念を表明した上で、非軍事化と自制の重要性を訴えた。多くの国は比中仲裁裁判についても言及し、又は法的・外交的プロセスの完全な尊重の重要性について発言した。そのうちいくつかの国は、右判断は最終的であり、両当事国を法的に拘束するものである旨述べた。

(2)北朝鮮

岸田大臣は、昨年11月のEAS以降、北朝鮮は4回目の核実験や相次ぐ弾道ミサイル発射を実施しただけでなく、先般も「ムスダン」と推定される弾道ミサイルを発射、SLBM開発も追求しており、断じて容認できない旨述べた。また、EASが一致して、北朝鮮に対し更なる挑発行動を自制し、安保理決議や六者会合共同声明を遵守し、非核化等に向けた具体的な行動をとるよう強く求めるべき旨訴えた。さらに岸田大臣は、安保理決議の厳格な履行の徹底等を通じ、北朝鮮に圧力を加えることが必要であるとともに、拉致をはじめとする北朝鮮の人権・人道問題についてもEASとして強いメッセージを発出すべき旨述べた。
これに対して、多くの参加国から、北朝鮮による一連の核実験、ミサイル発射が国連安保理決議違反であり、地域の安定を脅かす行為であるとして、北朝鮮が国連安保理決議を遵守するよう求める発言が相次いだ。

3 結語

岸田大臣から、議長国ラオスの下での充実した議論に謝意を表明するとともに、EAS強化に向けた流れを来年以降も継続することが重要であるとして、本年9月のEAS首脳会議に向けて、ASEAN中心性を尊重しつつ貢献していく旨決意を述べた。

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