大洋州

令和3年7月2日
開会の挨拶をする菅総理 (写真提供:内閣広報室)

1 ポイント

(1)7月2日、テレビ会議方式により、菅総理とナタノ・ツバル首相の共同議長の下、第9回太平洋・島サミット(The Ninth Pacific Islands Leaders Meeting: PALM9)が開催され、日本、島嶼14か国(ツバル、クック諸島、フィジー、キリバス、マーシャル、ミクロネシア、ナウル、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン、トンガ、バヌアツ)、豪州、ニュージーランドに加え、ニューカレドニア及び仏領ポリネシアの2地域を含む19か国・地域の首脳等が参加した。

(2)PALM9では、今後3年間の重点分野として、(1)新型コロナへの対応と回復、(2)法の支配に基づく持続可能な海洋、(3)気候変動・防災、(4)持続可能で強靱な経済発展の基盤強化、(5)人的交流・人材育成の5つの重点分野を中心に議論を行い、議論の成果として「第9回太平洋・島サミット(PALM9)首脳宣言」(骨子)(PDF)別ウィンドウで開く日本語(PDF)別ウィンドウで開く英語(PDF)Open a New Window)並びに附属文書である「太平洋のキズナの強化と相互繁栄のための共同行動計画」(骨子(PDF)別ウィンドウで開く本文(日本語)(PDF)別ウィンドウで開く本文(英語)(PDF)Open a New Window)及び「ファクトシート-PALM8以降の日本の支援」(日本語(PDF)別ウィンドウで開く英語(PDF)Open a New Window)を採択した。

(3)主なポイントは、次のとおり。

ア 菅総理から、日本と太平洋島嶼国との間の協力を更に強化する政策である「太平洋のキズナ政策」を発表し、太平洋島嶼国はこの発表を歓迎した。日本は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を進めており、太平洋島嶼国との関係では2019年に「太平洋島嶼国協力推進会議」を立ち上げるなど、オールジャパンでの取組を強化してきたところ、このオールジャパンでの積極的な取組のことを「太平洋のキズナ政策」と呼ぶこととしたものである。「太平洋のキズナ政策」の下で、5つの重点分野について日本が太平洋島嶼国と共に取り組んでいく今後3年間の具体的取組は、「PALM9首脳宣言」の附属文書である「共同行動計画」にとりまとめられた。

イ 菅総理は、新型コロナ対策について、ワクチン接種に必要なコールドチェーン整備のための機材の供与・技術協力のほか、太平洋島嶼国に対し、年内に合計300万回分を目処として、7月中旬以降に、COVAX等を通じてワクチンを供与することを表明した。

ウ 菅総理から、安全・安心な形で東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催するために、万全な感染対策を講じ、準備を進めている旨及び太平洋島嶼国の選手が最高の競技を繰り広げることを期待している旨述べ、太平洋島嶼国の首脳から、大会の開催に対する力強い支持を得た。また、拉致問題を含む北朝鮮への対応における連携等を再確認した。さらに、菅総理から、日本の国連安保理常任理事国入りに対する太平洋島嶼国首脳の引き続きの支持に謝意を表明した。

2 各セッションの概要

(1)開会

共同議長である菅総理とナタノ・ツバル首相が開会の挨拶を行い、太平洋・島サミット(PALM)の歴史を振り返るオープニング・ビデオ 別ウィンドウで開くが上映された。

(2)第1セッション(PALMのパートナーシップと地域のビジョン)

ア 菅総理から、「太平洋のキズナ政策」の下、5つの重点分野につき、今回のサミットにおける議論も踏まえ、日本の強みを活かした協力を「オールジャパン」で進めていく旨説明し、今後3年間に、しっかりとした開発協力と5,500人以上の人材交流・人材育成を実施することを約束した。

イ 太平洋島嶼国からは、PALMがこれまで果たしてきた役割に対する高い評価とともに、PALM8における日本のコミットメントの実現及び5つの重点分野に関する今後3年間の日本の新たなコミットメントに対して謝意が表明された。

(3)第2セッション(PALM9重点5分野)

ア 新型コロナへの対応と回復
 菅総理から、太平洋島嶼国において新型コロナが保健医療体制及び社会経済に与える影響は甚大かつ中長期的なものとなっているとの認識を述べつつ、ワクチン接種に必要なコールドチェーン整備のための機材供与・技術協力を更に進めるとともに、保健医療体制の強化、生活習慣病に対応するための技術協力、新型コロナ後の経済回復支援を、中長期的な視点にも立って進めていく旨述べた。この中で、菅総理から、ワクチン供与についても表明した(詳細は、上記1(3)イ参照。)。
 太平洋島嶼国から、日本による新型コロナ関連の包括的な支援に感謝の意が表されるとともに、太平洋島嶼国に対するワクチン供与の意図表明に対して謝意表明があった。

イ 法の支配に基づく持続可能な海洋
 菅総理から、法の支配に基づく、自由で開かれ、持続可能な海洋は、地域の平和と安定のために極めて重要との認識を述べた上で、海洋安全保障、海洋環境、漁業資源を含む海洋資源分野の協力を推進していく旨述べた。
 太平洋島嶼国から、海洋資源の持続可能な管理を確保するために、国連海洋法条約を含む国際法を遵守することや、排他的経済水域において水域に基づく管理を実施することの重要性を強調した。 
 東京電力福島第一原子力発電所における多核種除去設備(ALPS)処理水の海洋放出に関する基本方針について、菅総理から、国際基準を踏まえた規制基準を遵守してALPS処理水の海洋放出を行うこと、IAEAと緊密に協力し、科学的根拠に基づく説明を引き続き提供することを説明した。これに対し、太平洋島嶼国の首脳は、菅総理による透明性を持った丁寧な説明に謝意を表明するとともに、太平洋島嶼国・地域との緊密な対話を継続していく日本の意図を歓迎した。

ウ 気候変動・防災
 菅総理から、昨年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言した旨紹介しつつ、「2050年カーボンニュートラル」とも整合的で、野心的な目標として、2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す旨述べ、太平洋島嶼国は、この菅総理による発表を歓迎しつつ、太平洋島嶼国にとって「唯一最大の脅威」である気候変動問題への更なる取組を呼びかけるとともに、災害に対する脆弱性に対する継続的支援の重要性を訴えた。

エ 持続可能で強靱な発展の基盤強化 
 菅総理から、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のため、太平洋地域における質の高いインフラによる連結性を重視している旨述べ、日本は、太平洋島嶼国の港湾、空港、道路、通信インフラ等の整備に向け、開放性、透明性、経済性、債務持続可能性を重視した質高インフラ支援を行っていく旨述べた。
 太平洋島嶼国から、日本による質の高いインフラ整備事業の実施に対して謝意が表明されるとともに、経済の強靱性を高める投資や貿易を拡大するためには、更なるインフラ整備が必要である旨述べた。

 

オ 人的交流・人材支援 
 菅総理から、日本と太平洋島嶼国との活発な人的交流は、両者のキズナの基盤である旨述べるとともに、技術協力や研修事業を始めとする人材育成は、太平洋島嶼国地域の持続可能な発展のために不可欠であり、まさに日本の強みである旨強調した。「太平洋のキズナ政策」の下、日本は、今後3年間で様々なレベルや分野で5,500人以上の積極的な人的交流・人材育成を実施していく旨表明した。
 太平洋島嶼国からは、人々の生活向上のために最も大事な資源である人材の育成支援に対する日本のコミットメントを歓迎した。

(4)第3セッション(国際場裡における協力)

ア 菅総理から、日本の安保理常任理事国入りや各種国際選挙における太平洋島嶼国からの強い支持に感謝の意を述べた。

イ 北朝鮮への対応について連携を再確認するとともに、菅総理から、拉致問題の即時解決に向け、太平洋島嶼国の引き続きの理解と協力を求め、支持を得た。

ウ 東京オリンピック・パラリンピック競技大会について、太平洋島嶼国の首脳から、大会の開催に対する力強い支持が表明された(詳細は、上記1(3)ウ参照。)。

(5)第4セッション(PALM10に向けて)

ア 菅総理から、PALMプロセスは進化し続けており、PALM9では具体的で行動志向の議論を行うことができたとの評価を述べた。菅総理は、また、中間閣僚会合を太平洋島嶼国で開催したいとの、太平洋島嶼国からの提案に謝意を表明した。

イ 太平洋島嶼国から、PALMプロセスを一層強化することを歓迎し、日本と太平洋島嶼国で今後も緊密に連携していく旨述べた。

(6)閉会

共同議長のツバルから、PALM9を成功に導いた日本をはじめとする各国に対して謝意が述べられるとともに、日本と太平洋島嶼国のパートナーシップを更に強化していきたい旨述べた。
最後に、菅総理から、PALM9の成功に尽力いただいた共同議長であるツバル及び各国・地域に謝意を述べ、閉会を宣言した。

(出席者)
ツバル : カウセア・ナタノ首相
クック諸島 : マーク・ステファン・ブラウン首相
フィジー共和国 : ジョサイア・ヴォレンゲ・バイニマラマ首相
仏領ポリネシア : ティアリ・アルファ副大統領
キリバス共和国 : ターネス・マーマウ大統領
マーシャル諸島共和国 : クリストファー・J・ロヤック大統領代行
ミクロネシア連邦 : デイビッド・W・パニュエロ大統領
ナウル共和国 : ライノル・エニミア大統領
ニューカレドニア : ティエリー・サンタ大統領
ニウエ : ダルトン・タンゲランギ首相
パラオ共和国 : スランゲル・S・ウィップス・Jr大統領
パプアニューギニア独立国 : ジェームス・マラペ首相
サモア独立国 : ペセタ・ヌメア・シミ外務貿易省次官
ソロモン諸島 : マナセ・ダムカナ・ソガバレ首相
トンガ王国 : ポヒヴァ・トゥイオネトア首相
バヌアツ共和国 : ボブ・ロウマン首相
オーストラリア連邦 : マリズ・ペイン外相
ニュージーランド : ナナイア・マフタ外相
太平洋諸島フォーラム(PIF) : ヘンリー・プナPIF事務局長


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