世界の医療事情

イエメン

平成27年4月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 イエメン共和国(サヌア市) (国際電話国番号967)

2 公館の住所・電話番号

在イエメン日本国大使館 (毎週金土休館)
住所:Embassy of Japan, Hadda Area, West of Hadda Water Distillation Factory, Sana'a, Republic of Yemen (P.O. Box 817)
電話:10-423700,Fax:10-417850, 10-417860
ホームページ:http://www.ye.emb-japan.go.jp/別ウィンドウで開く

(注)金土以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので,ご覧ください。

4 衛生・医療事情一般

(1)イエメンはアラビア半島の南西端,北緯12度から19度に位置しています。その国土は標高2,000~3,000メートルを超える中央部から北部の山岳地域,東部の砂漠地域、紅海・インド洋に面した海岸地域に分けられます。中央部に位置する首都サヌアは,標高2,300メートルに位置するので夏でもそれほど気温が上がらず比較的過ごし易い気候です。年に2度,3~4月頃と7~8月頃に雨期がありますが,それ以外はほとんど雨が降りません。1年を通じて湿度が大変低く10~40%程です。乾燥のために土埃がひどく,コンタクトレンズを着用する場合は注意が必要です。

(2)首都サヌアでも上水道が十分に整備されておらず,上水道が引かれていない地域では給水車の水が利用されます。また,上水道が使えるところでも,煮沸して利用する必要があります。飲用には,ミネラルウォーターの利用が強く勧められます。

(3)医薬品に関しては,ある程度までは入手可能です。ただし特殊な医薬品等は入手が難しいものもあり,常備薬等は本邦から多目に持参してください。

(4)イエメンは政情不安が続いており,行政機関が十分に機能しているとは言いがたい状況にあります。国内各所には検問が設けられ,移動には許可証が必要ですが,許可が出にくい地域や,テロリストや部族勢力,反政府勢力の力が大きく中央政府の統治が十分に及んでいない地域もあります。移動が難しい場合は,その地域内での病院をまず受診することになりますが,可能であれば国外への移動も検討してください。

(5)サヌアや地方の拠点都市には当国富裕層や外国人を対象とする私立病院があり,ある程度の設備はありますが,緊急を要しない手術などは医療の進んだ国で受ける事を勧めます。地方では公立病院が医療の中心です。地方の拠点都市(アデン,タイズ,ムカッラ,サイユーンなど)の医療機関は、ある程度の医療レベルが期待できるところもありますが,それ以外では満足な設備が整っていないところも多いです。移動が可能であれば、速やかに首都サヌアや上記の地方拠点都市の中核病院に移ることをお勧めします。

(6)中核病院においても,政情不安もあり,政府系病院では人員並びに設備の不備・不足が目立ちます。また日本人など外国人が受診すると思われる私立病院でも優秀な医師の国外流出や医療物資,設備不足や不備があり,医療レベルがさらに低下している可能性が否定できない状況です。手術,侵襲的な検査(内視鏡,カテーテル検査など)が必要な場合や,重度の疾患に罹った場合は可能であれば国外の先進国での検査・治療をお勧め致します。

(7)私立病院での医療費は,高額になることが予想されます。また,当国内での治療が困難な場合には,医療先進国に緊急移送する必要が生じることもあります。緊急移送特約付の海外旅行傷害保険への加入を強くお勧めします。病院に限らず,イエメン国内での支払手段としてクレジットカードは通用しないことがほとんどで,サヌア市内にはいくつかみられるATMも,故障により現金引き出しができないことが多々あります。米ドルの現金を十分に用意しておかないと,受診できない可能性があります。日本円は両替できないか,できてもレートが非常に悪い可能性があります。病院では医師には比較的英語が通じますが,受付や予約の段階ではアラビア語しか通じない場合がほとんどです。

5 かかり易い病気・怪我

(1)高山病

 首都サヌアの標高はおよそ2,300メートルであり,気圧は平地の3/4ほどです。体質によって頭痛,めまい,息切れ,倦怠感,嘔気,睡眠障害などの症状が出ることがあります。順応するまでは行動を緩やかにするなどの注意が必要です。高山病の予防内服は健康な旅行者にはほとんど必要ありませんが,循環器系,呼吸器系,血液系に問題のある人は,事前に医師との相談が必要です。

(2)経口感染症

 衛生状態のあまり良くない当国では,腸チフス,赤痢(細菌性・アメーバ性),A型・E型肝炎,ジアルジア症などのウイルス性・細菌性・寄生虫性の経口感染症がしばしば見られます。生水や生野菜,生ジュース,氷,火が十分に通っていない料理には注意が必要です。

(3)虫刺症

 雨期には,蚊,蚤,ダニ,南京虫などが大量に発生することがあります。寝具やカーペット,絨毯などを殺菌・消毒する必要があります。

(4)各種寄生虫症

 経口感染するもの以外にも,ビルハルツ住血吸虫や回旋糸条虫症(オンコセルカ症),ハエ幼虫症などがあります。不用意に川や池,貯水池に入らないように,またハエやブユなどの虫に刺されないように気を付けてください。

(5)有毒動物・害虫

 毒蛇や有毒のサソリがサヌア市内でも見掛けられます。庭などの物陰は注意する必要があります。噛まれたり刺されたりしたら,至急病院で手当てを受けてください。

(6)交通事故

 対向車線を逆走したり,狭い路地をスピードを出して走るなど,交通マナーはよくありません。車を運転する場合も当然ですが,歩行時には車に気を付けてください。サヌアで生活する上で,交通外傷を受傷する可能性は高いと思われます。また十分な医療サービスは期待できませんので重大な健康被害をもたらす危険性があります。

(7)マラリア

 首都サヌア及び,標高が2,000メートルを超える地域では発生していませんが,その他の地域でクロロキン耐性熱帯熱マラリアの発生がみられます。WHO(世界保健機関)によると,2012年のイエメンでのマラリア患者発生数は28~62万人,600~2,200人が亡くなっていると推計されています。特に紅海沿岸地域では患者が多く発生し,9月から2月が流行期とされ,同時期,同地方に滞在する場合には,蚊に刺されないように十分に注意する必要があります。流行地域に滞在する場合,抗マラリア予防薬の服用が必要です。滞在中または滞在後に原因不明の発熱がみられたら,医療機関を受診して検査を受けた方が良いでしょう。

(8)狂犬病

 サヌアを含めて当地の野生動物は,狂犬病に罹患している可能性が高いです。犬に限らず野生動物と接触し感染の恐れがある場合には,速やかに医療機関を受診して適切な処置を受けてください。

6 健康上心がける事

(1)紫外線

 日中は日差しが強く,大気が薄いので紫外線も強烈です。日焼け止めクリームの使用や長袖,帽子,サングラスの着用をお勧めいたします。

(2)熱中症

 炎天下では、気温が30℃を超えます。湿度が低いので汗をかいてもすぐに乾くので,脱水傾向となってもなかなか気が付きません。こまめにスポーツ飲料などで水分と電解質を補給してください。

(3)低湿度

 年間を通じて湿度が低く,雨期に雨が降った後でも湿度はあまり上がりません。また,雨が降らない日が続くと湿度は10%台まで下がります。このため,鼻や喉の粘膜に障害が起こることもあります。長期に滞在する場合など,加湿器の持参も考慮してください。皮膚が乾燥することで掻痒症が生じることもあります。クリームなどを使用するなど,皮膚が乾燥しないようにしてください。また,リップクリームなどで唇の乾燥を防ぐことも良いでしょう。

(4)排気ガス

 イエメンではいまだに有鉛ガソリンで走る車が大多数です。古い年式の車が多く,その排気ガスによって呼吸器症状が出ることもあります。とくにサヌアは盆地のために,排気ガスが溜まりやすいので注意が必要です。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

(1)赴任者に必要な予防接種

 法律で定められた,入国する際に必要な予防接種はありませんが,黄熱に感染する危険のある国から来る,1歳以上の渡航者は黄熱予防接種証明書(イエローカード)が要求されています。黄熱に感染する危険のある国ではないので,イエメンに渡航するための黄熱の予防接種はおすすめしていませんが,アフリカ諸国などの黄熱流行地域を経由して入国する際には注意が必要です。

  • 成人に勧められる予防接種:A型・B型肝炎、破傷風(追加接種) ,腸チフス。狂犬病に関しては暴露前接種の必要性に関していろいろな意見がありますので,医師等とよく相談してください。
  • 小児に勧められる予防接種:日本で一般に行われているBCG,ポリオ,3種混合(DPT) ,麻疹,風疹,日本脳炎,水痘,流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の他に,A型・B型肝炎,腸チフス,髄膜炎菌,Hib(インフルエンザ菌b型)など。狂犬病に関しては成人と同様です。

 渡航前にトラベルクリニックなどを受診し,総合的に必要な予防接種について相談することをおすすめします。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

イエメン共和国の定期一般接種(2015年)
初回 2回目 3回目 4回目
BCG 出生時
ポリオ(OPV) 出生時 6週 10週 14週
DPT/B型肝炎/Hib 6週 10週 14週
麻疹 9ヶ月 18ヶ月

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 特にありません。

8 乳児検診

 当国には,定期的な乳児健診のシステムはありません。

9 病気になった場合(医療機関等)

 一般的に医療機関のレベルは,大都市では私立病院が公立病院より上回りますが,医療費は高額になるようです。地方では、公立病院がその地方の医療の中枢となっています。救急外来受診の場合,予約は不要ですが,各科の外来は予約が必要です。受付では英語は通じないと思った方がよいでしょう。医師には英語が比較的通じます。

サヌア SANA’A

(1)Yemen German Hospital(私立)
住所:Near to Al Masbahi intersection
電話:418000
診療時間:土―水曜日 8時-13時 / 16時-20時,木曜日 8時-13時
救急外来:休日なし。24時間対応。(電話 01-418000)
支払:現金のみ
概要:各科を有する公立総合病院。検査または重傷以外の病気で受診することは問題ありません。
(2)University of Science and Technology Hospital(私立)
住所:Near to Madban intersection, 60 Meter Road
電話:01-500000
診療時間:土―水曜日8時-13時 / 16時30分-20時,木曜日 8時-13時
救急外来:休日なし。24時間対応。(電話 01-500000, 01-471122)
支払:現金のみ
概要:大学付属病院。緊急移送会社SOSインターナショナルの診療所も同じ建物内に入っています。重症疾患,緊急手術を要する疾患の場合はサヌアで受診してもよい病院と思われます。緊急移送が必要な場合もSOSと連携が取りやすいです。
(3)Saudi German Hospital(私立)
住所:North of 60 Meter Road, Near to Al-Lamanh Field
電話:01-313333
診療時間:土―水曜日 8時-13時 / 16時30分-21時,木曜日8時-13時
救急外来:休日なし。24時間対応。(電話 01-313333, 01-312222)
支払:現金のみ
概要:近代的な設備を誇るサナア最大の私立病院。
(4)Rabies Center(Al-Jomhry Teaching Hospital)(公立)
住所:In front of Y.C.Bank, Zuberi Street
電話:01-224285, 77712745(担当医携帯)
診療時間:土―木曜日 8時-13時
支払:無料
概要:狂犬病センター。英語は通じません。サナアで唯一,狂犬病ワクチン接種などを受けることができる施設。
(5)Ajmal Dental Center(歯科)
住所:Near to Al-Rwishan Round, Hadda Road
電話:01-503963
診療時間:土―水曜日8時-13時 / 16時-20時
支払:現金のみ
概要:歯科診療所。Noman先生は新潟大学で口腔外科の学位を取得された方で,インプラントが専門です。簡単な日本語なら問題ありません。
(6)Egyptian Dental Center(歯科)
住所:Near to Zeberi Hael intersection, 8th floor, Aman Tower
電話:01-539056
診療時間:日―水曜日10時30分-20時,木曜日 10時30分-14時,土曜日 10時30分-15時
支払:現金のみ
概要:歯科診療所

 以下地方の病院を参考までに掲載します。

紅海沿岸地域 HODEIDAH

(1)Al-Salaam Hospital, Jamal St.(公立病院)
電話:03-252691

南部地域 TAIZ

(1)Al-Saeed Specialized Hospital(私立病院)
電話:04-215665 or 04-228606

アデン ADEN

(1)Saber Hospital(私立病院)
電話:02-349595 or 02-340266

ハドラマウト(内陸部) SEYOUN

(1)Seyoun Hospital(公立病院)
電話:05-407765 or 05-402119

ハドラマウト(沿岸部) MUKALLA

(1)Ibn Syna'a Hospital(公立病院)
電話:05-361454

10 その他の詳細情報入手先

(1)在イエメン日本国大使館 領事部
電話:01-423700
ホームページ:http://www.ye.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

11 現地語・一口メモ

医療関係のアラビア語

救急関連

  • 具合が悪い。: アシュオル ビル マラド
  • 病院に行きたい。: アシュティ アローヘ ムスタシュファー
  • ~を呼んでください。: ナーディ リッ ~
  • 医師: タビーブ
  • タクシー: タクスィ
  • 救急車: サイヤーラトゥル イスアーフ

医薬品

  • 薬: ダワー
  • 胃腸薬: ダワー リル ミアダ
  • カゼ薬: ダワー リル ズカーム
  • 頭痛薬: ダワー リル ソダーア
  • 解熱剤: ムダーッドゥ リル ホンマー
  • 下痢止め: ダワー リル イスハール
  • 消毒薬: ムタッヒル
  • 虫刺されの薬: ダワー リッ ラスアトゥル ハシャリーヤ
  • きず薬: ダワー リル ジャルフ
  • 鎮痛剤: ムサッキン
  • 注射: ハクヌ

身体部位

  • 全身: ジスム・クッルフ
  • 頭部: ラース
  • 目: アイン
  • 鼻: アンフ
  • 口: ファム
  • 歯: スィンヌ
  • 首: オンク
  • 喉: ホンジュラ
  • 肩: カティフ
  • 腕: ズィラーア
  • 肘: ミルファコ
  • 手: ヤドゥ
  • 手指: イスバア
  • 胸: サドゥル
  • 背中: ザフル
  • みぞおち: エル ヒジャーブル ハージズ
  • 腹: バトン
  • 腰: ハーセラ
  • 脚: リジュル
  • 膝: ルクバ
  • 足: カダム
  • 足趾: イスバアル カダム
  • 食道: マリーッ
  • 気管支: エッシュアイバートゥ
  • 心臓: カルブ
  • 肺: リア
  • 胃: ミアダ
  • 腸: アムアー

症状

  • 吐き気: ガサヤーン
  • 悪寒: コシャアリーラ
  • めまい: ドゥワール
  • 動悸: ハファカーン
  • 発熱: ハラーラ
  • 下痢: イスハール
  • 便秘: イムサーク
  • カゼ: バルド/ズカーム
  • 咳: スアール
  • 痰: バルガム
  • 頭痛: ソダーア
  • 腹痛: マグス
  • ケガ: ジャラハ/イサーバ
  • 骨折: キャスル

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