世界の医療事情

令和6年10月1日

1 国名・都市名(国際電話番号)

 クウェート国(国際電話番号965)

2 公館の住所・電話番号

在クウェート日本国大使館(毎週金曜日、土曜日休館)
住所:Embassy of Japan, Mishrif 7A (Diplomatic Area), Plot 57, Kuwait
電話:2530-9400
ホームページ:在クウェート日本国大使館別ウィンドウで開く

(注)金曜日、土曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内しています。

4 衛生・医療事情一般

 クウェートはアラビア半島の東岸に位置しています。気候は11月から3月は平均気温が20度前後で、時折雨も降る過ごし易い時期ですが、4月から10月の平均気温は30度を越え、特に6月から9月の最高気温は50度を越えることも珍しくなく、雨が降ることは殆どなくなり、厳しい気象環境となります。砂嵐が発生することもあります。

 当国の医療環境は中東地域の中で比較的整備されています。特に医療機器や医療設備といったハード面は充実しています。しかし実際の医療に携わる医師や看護師などの医療スタッフの多くはクウェート国外の人によって構成されており、これら外国人医療スタッフの中には、日本や欧米の医師のように十分なトレーニングを受けていない場合もあります。そのため公立・私立を問わず、本邦同様の医療水準を期待することは困難です。また全ての公立の医療機関ではクウェート人と非クウェート人とで対応を区別しているため、非クウェート人である邦人が十分な治療を受けることは困難です。重篤な、あるいは難しい疾患については、日本や欧米などの医療先進国での加療が望ましいです。一般的な疾患で受診する必要があれば、英語表記が少なくアラビア語を解さない人にとっては不便な場合が多いとみられる公立病院よりは、英語での疎通が容易でホスピタリティーの高い私立病院の方が、より快適と思われます。しかし私立病院は、多発外傷・重度外傷、脳卒中、狭心症・心筋梗塞などの心臓血管疾患といった重篤な救急疾患や公衆衛生上世界的に懸念されるような感染症に対しては対応が難しく、診療範囲が制限されます。これらの重篤な救急疾患に対する診療は、公立病院で行われます。また転落事故・交通事故など警察の介入がある外傷の場合も公立病院で診断をうけてから、他の医療機関を選択するシステムになっています。なお日本語で受診できる医療施設はありません。

 当国を含めた湾岸地域では、入国に際し殆どの国でビザが必要ですので、緊急移送が必要な状態でも、即日移送はかなり難しく、一時的に当国で治療を受けることになります。当国で就労ビザを取得する為には、B・C型肝炎、HIV、結核の検査を受けなければなりません。予防接種は原則として地域毎にある公立の保健所で受けるようになっています。当国の幼稚園を含む教育機関等に入学する際には、当国で接種が義務付けられている予防接種(別項を参照)を受け、かつ健康に問題がない旨の当国医師による証明書が必要です。

5 かかり易い病気・怪我

  1. 基本的には都市部では風土病はありませんが、夏季には強い日差し、日中45度を超す高温で熱中症を、また砂嵐による細かい砂塵や大気汚染により呼吸器系疾患(上気道炎や喘息など)、眼科系疾患(結膜炎)、皮膚科系疾患(皮膚炎)に罹患しやすく健康管理には注意が必要です。
  2. メッカヘの巡礼の後に、麻疹、水痘、髄膜炎菌性髄膜炎といった感染症が一時的に流行することがあります。
  3. 当国で最も大きな問題は、交通事故です。制限速度が時速80kmから時速120kmの道路がほとんどで、更に乱暴な運転をする車が多く大きな事故につながることがあります。事故件数が多く注意が必要です。交通事故で治療が必要な傷害を受けた場合、公立病院の診断書でないと、傷害保険会社の対象にはなりません。

6 健康上心掛けること

  1. 水道水は飲用には不向きです。ペットボトル水が適しています。
  2. 脱水に注意が必要です。意識して水分と適度な塩分の両方を補給するようにしてください。
  3. 日射病や熱射病など熱中症になりやすいので、炎天下での行動は可能な限りさけてください。
  4. 砂嵐の期間の外出は可能な限りさけ、外出時はマスクをして、うがいを励行してください。コンタクトレンズの使用には適しません。
  5. 当地の大気汚染は深刻です。特に呼吸器や循環器に基礎疾患をお持ちの方は、長時間の屋外での活動はなるべく控えたほうがよいでしょう。
  6. アルコール・豚肉が禁止された食生活やほぼ通年にわたり室内生活を強いられるなど娯楽も少ないため、運動不足や気分が塞ぎこみやすい環境となっています。スポーツジム等で適切な運動をして身体的・精神的に健康を保つよう心がけることが必要です。

7 予防接種(ワクチン接種機関含む)

(1)入国に際して義務付けられる予防接種はありません。しかしながら、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、腸チフスの予防接種を推奨します。

(2)現地の小児定期予防接種

Ministry of Health - State of Kuwait, Kuwait Childhood Immunization Schedule(PDF)(英語)別ウィンドウで開く

 私立病院や各地区の保健所内予防接種センターにて予防接種可能です。

  初回 2回目 3回目 4回目 5回目
BCG 3か月        
ポリオ(IPV) 2か月 4か月 6か月    
ポリオ(OPV) 12か月 18か月 3歳6か月    
DPT 2か月 4か月 6か月 18か月 3歳6か月
DT 10から12歳 16から18歳      
Hib 2か月 4か月 6か月 18か月  
MMR 1歳 2歳 10から12歳(女児)    
B型肝炎 出生時 2か月 4か月 6か月 18か月
ロタウイルス 2か月 4か月 (6か月)    
髄膜炎菌 1歳        
肺炎球菌 2か月 4か月 6か月 18か月  
水痘(水ぼうそう) 1歳 2歳      

(注)B型肝炎の初回以外はDPT、Hib、B型肝炎は5種混合ワクチンとして接種されます。5価のロタウイルスワクチンの場合、3回接種が必要です。1価のロタウイルスワクチンの場合、2回の接種で完了です。

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 小児が教育機関に入学する際には予防接種証明書が必要です。英文またはアラビア語の予防接種証明書を持参することを推奨します。本邦と当地では定期予防接種すべきワクチンの種類が異なるため、本邦の定期予防接種のみでは不足し、追加の予防接種をしなければならない可能性があります。

8 病気になった場合(医療機関等)

 警察が関係する外傷・疾病はまず地域別の公立総合病院で評価されなければなりません。治療などが必要な交通事故の場合は前述のごとく管轄内の地域公立総合病院を受診して、病院に常設されているクウェート内務省発行の報告書をもらわなければ警察で事故証明がもらえません。癌治療、重症感染症、脳外科、胸部外科、高度な整形外科、熱傷外科、外傷外科、精神科などは地域公立総合病院にはほとんどなく、Shuwaikh Health地区の公立専門病院群にかたまって設置されていますが医師の紹介状がないと受診するのは困難です。

 居住を許可され身分証明書(IDカード)保持者が公立医療機関を受診する場合は、まず居住地区の公立診療所を受診します(初診料2KD:約960円)。入院や高度な医療が必要な場合には居住地区に応じた公立総合病院へ紹介されます。但し、救急受診の場合は直接公立総合病院へ受診可能です(初診料10KD:約4,800円)。救急・消防緊急ダイヤルは112で救急搬送を依頼可能ですが搬送時間は概して本邦よりも長いため、搬送可能であれば自分で病院まで行った方が早いかもしれません。

 私立総合病院の診療費は高額ないっぽう(初診料25から30KD:約12,000から14,400円)、公立病院のようにクウェート人と非クウェート人で対応が異なることはありませんが、診療科は主に一般内科、一般外科、産科、スポーツ整形外科、美容形成外科、歯科などに限られ、対象とする疾患も重症疾患を除く限られた範囲のものとなります。公立病院に比べ空いておりサービスは良いので邦人は私立総合病院を利用することが多いようです。

(注)外国人の短期滞在者の場合は公立でも高額の医療費を請求されます。
ラマダン期間中は診療時間が変わりますので、その都度確認が必要です。

(首都)クウェート

(1)Hadi Clinic(ハデイ・クリニック:私立)
所在地:Street 110, Block 8, Jabriya Area
電話:2531-2555、182-8282
FAX:2531-4717
ホームページ:Hadi Clinic(英語)別ウィンドウで開く
概要:入院可能な私立総合病院で、邦人の利用実績が多いです。
診察時の使用言語:英語、アラビア語。
診療科目:内科、外科、小児科、産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科、泌尿器科、皮膚科、形成外科、理学療法科、歯科。外来要予約。緊急時24時間対応。成人健康診断は可能で、小児(乳児含む)健康診断も受診可能。
診療時間:土曜日から木曜日8時30分から11時30分、16時から19時30分。金曜日休診。
支払い方法:クウェートデイナール貨(KD)による現金払いまたはクレジットカード払いが可能。
(2)International Clinic(インターナショナル・クリニック:私立)
所在地:Salem Al-Moubarak Street, Salmiya Area(Laila Galleriaの隣)
電話:188-6677
FAX:2575-4056
ホームページ:International Clinic(英語)別ウィンドウで開く
概要:外来専門のクリニックで、入院が必要な場合は紹介されます。急患以外は予約制でゆっくりと治療が受けられます。歯科もある私立の総合クリニックです。
診察時の使用言語:英語、アラビア語。
診療科目:総合診療科、内分泌糖尿病内科、消化器内科、循環器内科、血液内科、外科(含む腹腔鏡外科)、小児科、産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科、泌尿器科、皮膚科、放射線科、歯科。救急外来は毎日9時00分から21時00分までの対応で、小児緊急受け入れも可能。成人健康診断は可能で、小児(乳児含む)健康診断は事前に要相談。
診療時間:土から木曜日9時00分から21時00分。金曜日休診(ただし科によっては16時00分から21時00分まで診療を行っていることもあります)。
支払い方法:クウェートデイナール貨(KD)による現金払いまたはクレジットカード払いが可能。
(3)New Mowasat Hospital(ニュー・モワサット病院:私立)
所在地:Yousuf Ben Hammoud Street, Block 2, Salmiya Area
電話:182-6666、2572-6666
FAX:2573-8055
ホームページ:New Mowasat Hospital(英語)別ウィンドウで開く
電子メール:info@newmowasat.com
概要:入院可能な私立の総合病院です。
診察時の使用言語:英語、アラビア語。
診療科目:内科、外科、小児科、産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科、泌尿器科、歯科。外傷以外の緊急が24時間対応可能で、小児緊急も受け入れ可能。成人健康診断は可能で、小児(乳児含む)健康診断も受診可能。
診療時間:土曜日から木曜日8時から22時。金曜日2時から18時。
支払い方法:クウェートデイナール貨(KD)による現金払いまたはクレジットカード払いが可能。
(4)Dar Al Shifa Hospital(ダル・アル・シーファ病院:私立)
所在地:Beirut Street, Hawally Area(消防署の対側)
電話:180-2555
FAX:2263-9016
ホームページ:Dar Al Shifa Hospital(英語)別ウィンドウで開く
電子メール:contactus@daralshifa.com
概要:1961年に設立され、63年の経験がある私立総合病院。
使用言語:英語、アラビア語。
診療科目:内科、外科、小児科、産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科、泌尿器科、形成外科、皮膚科、歯科。緊急時24時間対応で、小児緊急も受け入れ可能。成人健康診断は可能で、小児(乳児含む)健康診断も受診可能。
診療時間:土曜日から木曜日8時から22時。金曜日休診。
支払い方法:クウェートデイナール貨(KD)による現金払いまたはクレジットカード払いが可能。
(5)Al-Seef Hospital(アル・シーフ病院:私立)
所在地:Blajat Street, Salmiya Area(ガソリンスタンドの隣)
電話:5010-9460
FAX:2576-4444
ホームページ:Al-Seef Hospital(英語)別ウィンドウで開く
概要:2009年に設立された婦人科と小児科を中心とした病院です。
診療言語:英語、アラビア語。
診療科目:内科、外科、産婦人科、小児科、耳鼻咽喉科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、形成外科、歯科。緊急時24時間対応で、小児緊急も受け入れ可能。成人健康診断は可能で、小児(乳児含む)健康診断も受診可能。
診療時間:土曜日から木曜日9時から21時。
支払い方法:クウェートデイナール貨(KD)による現金払いまたはクレジットカード払いが可能。
(6)Royale Hayat Hospital(ロイヤル・ハイアット病院:私立)
所在地:Block 3A, Jabriya Area(環状4号線沿い)
電話:2536-0499(緊急)、2536-0000(代表)
FAX:2536-0001
ホームページ:Royale Hayat Hospital(英語)別ウィンドウで開く
電子メール:info@royalehayat.com
概要:豪華な産院で有名な私立総合病院です。
使用言語:英語、アラビア語。
診療科目:内科、外科、小児科、産婦人科、形成外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、歯科。緊急時24時間対応で、小児緊急も受け入れ可能。成人健康診断は可能で、小児(乳児含む)健康診断も受診可能。
診療時間:土曜日から木曜日8時から21時。婦人科と小児科は24時間対応。
支払い方法:クウェートデイナール貨(KD)による現金払いまたはクレジットカード払いが可能。
(7)Al-Amiri Hospital(アル・アミリー病院:公立)
所在地:Al-Sharq Area(Sharq Marketの対側)
電話:2242-2366(緊急)、2245-0005(代表)
概要:当国で最も充実しているとされる入院可能な国立病院です。国際会議場などイベント関係会場が多いシティ地区にありますので、この地域の救急患者は当病院の救急室に搬送されます。
診察時の使用言語:アラビア語、英語。
診療科目:内科、外科、小児科、産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科。緊急時24時間対応。健康診断は不可。
診療時間:日曜日から木曜日7時30分から13時30分。金曜日・土曜日休診。
支払い方法:クウェートデイナール貨(KD)による現金払い。
(8)Mubarak Al-Kabir Hospital(ムバラク・アルカビール病院:公立)
所在地:Block 3, Jabriya Area(環状4号線沿い)
電話:2531-2700
概要:クウェート大学医学部の付属病院です。Salmiya地区を含むHawalli県の住居地区を担当する国立総合病院で多くの邦人が管轄地区に住んでいます。特に救急部門が充実しており、交通事故含む救急疾患で、公的救急車(電話:112)を要請した場合、多くはこの病院に搬送されます。
診察時の使用言語:アラビア語、英語。
診療科目:内科、外科、小児科、整形外科、泌尿器科。緊急時24時間対応で、小児の緊急受け入れ可能。健康診断は不可。
診療時間:日曜日から木曜日7時30分から13時30分。金曜日・土曜日休診。
支払い方法:クウェートデイナール貨(KD)による現金払い。

10 一口メモ

 医療機関(保健所を含む)では、公立私立を問わず、医師には英語が通じますが、公立病院の一般事務員や看護師などにはアラビア語しか通じないこともあります。英語に関しては、「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照願います。

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