2022年10月
1. 国名・都市名
イスラエル国(国際電話国番号972)
2. 公館の住所・電話番号
- ○ 在イスラエル日本国大使館(毎週土日休館)
- 住所:Museum Tower, 19th & 20th Floor, 4 Berkowitz Street, Tel-Aviv 6423806;
- 電話:03-6957292
- ウェブサイト:https://www.israel.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
- ※土日以外の休館日は暦年ごとにウェブサイトにて案内していますので、ご覧下さい。
- ○ 在ラマッラ出張駐在官事務所(対パレスチナ日本政府代表事務所)(毎週金土休館)
- 住所:Abraj House 8rd Floor, 15 Tokyo Street, Al-Masyoun Quarter, Ramallah
- 電話:02-2983370
- ウェブサイト:https://www.ps.emb-japan.go.jp/itprtop_en/index.html
3. 医務官駐在公館
4. 衛生・医療事情一般
国土面積は四国と同程度ですが、南北に400㎞と細長く、ビルが林立する都市部、岩だらけの土地が広がる地方、地中海や紅海に面した沿岸部、緑豊かな北部、砂漠地帯の南部など、変化に富んでいます。
気候は地中海性気候で、夏季は日差しが強く、テルアビブでは最高気温が30℃を越える一方、冬季は最低気温が10℃以下まで下がります。また、標高800mのエルサレムでは5℃以下まで下がり、寒暖の差が激しくなります。12月から2月は毎月10日程度雨が降り、年間降水量は500㎜を越えますが、南部の砂漠では100㎜未満で、ほとんど雨が降りません。
都市部は総じて医療水準が高く、外国からのメディカル・ツーリズムに対応している病院も多数あります。医療費は私立病院を中心に高額で、旅行者や短期滞在者は治療・救援費を補償する海外旅行者保険等に加入しておく必要があります。救急外来の受診料は4~5万円程度ですが、入院すると1日あたり一般病棟で15万円以上、集中治療室で60万円以上かかります。なお、救急外来は公的病院にしか設置されていません。また、一般外来は、各病院のメディカル・ツーリズム部門などを介して予約が必要です。専門医の診察は1回につき7~9万円かかります。金・土・祝日は休診なので、緊急時は救急外来を受診します。救急医療体制は整備されており、24時間365日対応していますが、医師や看護師の不足が顕著で、救急外来では数時間以上待たされることがよくあります。ほとんどの医師は英語を話しますが、受付、技師、看護師はヘブライ語またはロシア語しか話さないことが多く、意思の疎通にしばしば苦労します。受診の際は、必ずパスポートを持参してください。
電話で101番通報し救急車を呼べば、救急隊員が病状を判断して近隣の救急外来に搬送してくれます。市内の救急搬送は1.5万円程度ですが、料金は、救急車を利用した時間帯、搬送距離、搬送後に入院となるか否かにより異なります。また妊婦の搬送は、5割増しです。
上水道は、淡水化海水と地下水を水源としており飲用可能ですが、硬水であるため、下痢をしやすく、また時折汚染があり、その際は地域ごとに水道水の使用中止が保健省から警告されます。そのため、浄水器やボトル水の利用をお勧めします。
感染症については定点報告で集計されており、全数把握は困難ですが、水痘、消化器感染症、クラミジア症(まれにポリオ:2022年)の流行が認められます。暑気にもかかわらず食品衛生管理が厳しくないので、加工食品へのサルモネラ菌やリステリア菌の混入がしばしば報告されます。
5. かかり易い病気・怪我
(1)日射病・熱中症
夏季、特に6~8月は日射しが強く気温も高いので、日中の野外活動は控えめにし、喉の渇きにかかわらず、十分な水分を摂取するように心がけて下さい。外出時は十分な量の飲料水を携行し、帽子、日焼け止め、サングラスなどを使用してください。日焼け止めは薬局で購入できます。数時間おきに塗り直すことが肝要です。
(2)交通事故
高速道路網が整備されていますが、当地の運転は荒く、車線の逸脱や急な車線変更がよくあります。通勤時間帯の幹線道路の渋滞はひどく、割り込みや連節バスに幅寄せされることもあります。また、電動キックボードや自転車、自動二輪が多く走っているため、これらにも注意が必要です。運転時だけでなく、歩行時も十分注意してください。
(3)旅行者下痢症
飲料水の違いによる軽症のものから、消化管感染症によるものまで起こります。赤痢やジアルジア症の流行や、サルモネラ菌やカンピロバクター菌による食中毒も起きています。鶏卵はサルモネラ菌で汚染されていることが多いので、生で食べることはお勧めしません。夏季は30℃を越える日が続くので、食品管理には十分注意してください。
(4)花粉症、結膜炎
杉の自生は少ないですが、春にはオリーブ、秋にはブタクサの花粉が飛散し、結膜炎・鼻炎などの花粉症が起こります。乾燥する時期には細かい砂が大気中を舞い、2月~4月頃にはハムシーンと呼ばれる砂嵐が襲来することがあります。これらに加えて、排気ガスなどによる大気汚染もあり、コンタクトレンズ使用者は結膜炎を起こしやすいので、眼鏡も持参することをお勧めします。
(5)頭シラミ
多くの子供が経験する疾患です。学校から注意喚起の案内が送られてくることがあります。子供が頭皮を痒がっている場合はよく観察して、髪の毛についた成虫や卵を探してください。診断は皮膚科で受けますが、治療のための漉き櫛と薬用シャンプーは当地の薬局で処方箋なしで購入できます。
(6)毒蛇、サソリ
毒蛇の種類はIsrael viper, Black adder, Israel mole viperが多く、毒サソリはイエロースコーピオンがもっとも危険です。毒蛇や毒サソリは北部の高原からネゲヴ砂漠までイスラエル全域に生息しており、初夏に活動性が高くなります。日中は岩陰や藪に潜んでいるので、不用意に藪の中に手足を突っ込んだり、大きな石を動かしたり、地面に座ったりしないように気をつけてください。受傷した場合は、できるだけ受傷部位を安静にし(毒蛇に咬まれた場合は、咬まれた傷口よりも心臓寄りを布などで軽く縛って)、速やかに救急外来を受診してください。症状により、抗毒素などの治療が受けられます。
6. 健康上心がけること
(1)水難事故
地中海沿岸及び紅海沿岸では海水浴が楽しめますが、離岸流による事故だけでなく、死海では高濃度塩水の嚥下による事故が起きているため、監視員のいない場所や、飲酒後の遊泳は避けて下さい。また、例年7~8月はクラゲの発生が多く、刺される事例が多いため、この時期の海水浴には注意が必要です。
(2)性感染症
旅行中の身軽さや海外生活の寂しさが感染に繋がります。HIVの感染は多くはありませんが、梅毒、淋病、クラミジア感染症が問題になっています。また、昨今話題のサル痘は、2022年10月4日時点で、イスラエル国内で254例確認されています。感染者のほとんどは、ゲイもしくはバイセクシャルの男性ですが、それ以外の男性や女性の感染例も確認されています。また、B型肝炎は性行為以外に、ピアスの孔開けやタトゥーを入れる際に感染することがあります。
(3)蚊媒介感染症
夏には蚊が増加し、西ナイル熱が散発します。この疾患は、通常は軽いインフルエンザ様症状を呈しますが、まれに脳炎を起こすことがあります。輸入感染症としてはマラリア、デング熱があります。薬局で殺虫剤やDEETなどの蚊忌避剤を購入してください。
(4)皮膚リーシュマニア症
サシチョウバエにより媒介される寄生虫疾患です。サシチョウバエの活動が活発になる6月~10月の夕暮れ時から夜明けまでの時間帯は感染リスクが高くなります。このハエは蚊の約1/3の大きさしかなく羽音もしないので見つけることは困難です。数週間の潜伏期間の後、虫刺され部に難治性の潰瘍が生じます。
(5)狂犬病
犬、牛、ジャッカルなどの野生動物への感染が年間50~80例報告されていますが、幸い、ヒトへの感染は40年間報告されていません。ただし、発症すれば死に至りますので、むやみに哺乳類に手を出さず、もし咬まれた場合は速やかに救急外来を受診して、狂犬病ワクチンの接種を受けてください。
7. 予防接種
現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)
(1)赴任者に必要な予防接種(成人、小児)
入国に際して義務づけられている予防接種はありませんが、成人にはA型肝炎、B型肝炎、破傷風の接種をお勧めします。また小児には、日本脳炎以外の日本の定期予防接種に加えて、A型肝炎、おたふくかぜの接種をお勧めします。
(2)現地の小児定期予防接種一覧
初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | 6回目 | |
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ポリオ(IPV) #1 | 2か月 | 4か月 | 6か月 | 12か月 | 7歳 | |
ポリオ(OPV) #1 | 6か月 | 18か月 | ||||
DPT #2 | 2か月 | 4か月 | 6か月 | 12か月 | 7歳 | 13歳 |
MMRV #3 | 12か月 | 6歳 | ||||
A型肝炎 | 18か月 | 24か月 | ||||
B型肝炎 | 出生時 | 1か月 | 6か月 | |||
肺炎球菌 | 2か月 | 4か月 | 12か月 | |||
ロタウイルス | 2か月 | 4か月 | 6か月 | |||
インフルエンザ菌b型 | 2か月 | 4か月 | 6か月 | 12か月 | ||
ヒトパピローマ | 13歳 | 13歳 |
#1 ポリオ:不活化ワクチン(IPV)に加えて経口ワクチン(OPV)を接種
#2 DPT:ジフテリア+百日咳+破傷風
#3 MMRV:麻疹+ムンプス(おたふくかぜ)+風疹+水痘
生後6か月以上の全年齢でインフルエンザウイルスの予防注射が推奨されており、小学2年生、3年生、4年生は学校で接種する。
(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明
現地校の場合は、ワクチン接種証明の提出は不要ですが、インターナショナルスクールに入学する場合は、ワクチン接種証明書と健康診断書の提出を求められます。
8. 病気になった場合(医療機関等)
○テルアビブ地区 Tel-Aviv District
- (1)Ichilov Hospital, Tel-Aviv Sourasky Medical Center(イヒロフ病院)
- 所在地:6 Weitzman Street, Tel-Aviv 64239
- 電話:(代表)03-6974444 (救急外来) 03-6973686(内科)、03-6973232(外科)
- ウェブ: https://www.tasmc.org.il/sites/en/Pages/default.aspx
- 概要:国内で2番目の規模の国立総合病院(1500床)で、最近救急部門が大改築されました。救急外来は,成人、小児、産科に分かれています。CT、MRI、PET、核医学などの検査施設がそろっていますが、CT、MRIの予約はかなり取りづらいのが現状です。
- (2)Sheba Medical Center at Tel HaShomer(シェバ・メディカルセンター)
- 所在地:2 Sheba Road, Tel Hashomer, Ramat Gan 52621
- 電話:(代表)03-5303030 (救急外来)03-5303101
- ウェブ:https://eng.sheba.co.il/
- 概要:1700名の医師を抱える国内最大の国立総合病院(2000床)です。ここの救急部門の外傷センターでは、年間15万人以上の外傷患者を診療しています。広い敷地内に部門別の施設が建てられ、ショッピングセンターやホテルも併設されています。
- (3)Raphael Hospitals(ラファエル病院)
- 所在地:Atidim Park, Building No.3, Tel Aviv
- 電話:03-7208005 (International Department) 03-7752100
- ウェブ:https://www.raphaelhospitals.co.il/en/international-department/about/
- 概要:2020年に開業した私立病院で、富裕層と外国人をターゲットにしています。CTは設置されていますが、MRIはまだなく、目下、診療科を増やしている段階です。ここの医師の多くは上記(2)に籍を置く非常勤医です。
- (4)Herzliya Medical Center(ヘルツェリア・メディカルセンター)
- 所在地:7 Ramat Yam Street, Herzliya 4685107
- 電話:09-9594888
- ウェブ:https://hmcisrael.com/
- 概要:1983年に開院した富裕層を対象にした私立総合病院(80床)で、VIPサービスを受けることができます。救急疾患には対応していません。2001年からメディカル・ツーリズムを実施しており、CT、MRI、PET、核医学検査などの設備が整っています。
- (5)Ben Gurion Airport Clinic(ベン・グリオン国際空港クリニック)
- 所在地:Terminal 3, Ben Gurion Airport
- 電話:03-9752625
- ウェブ:https://www.telaviv-airport.com/services.php
- 概要:国際空港にある救急診療所で、ターミナル3のレベル2にある21番出入り口脇にあります。24時間応急処置に対応しています。
- (6)Kaplan Dental
- 所在地:25 Zeitlin Street, Tel Aviv
- 電話:03-6960650
- Web:http://kaplandental.co.il/en/
- 概要:私立歯科診療所で、成人の歯科治療一般が受けられます。日~金:午前7時半から診療を開始していますが、終了時刻は曜日によって異なります。
- (7)Udental
- 所在地:Hamaapilim 39, Room 103, 1st floor, Herzliya Pituach
- 電話:072-3902477
- Web:https://www.udental.org.il/en/
- 概要:ヘルツェリアにある私立の歯科クリニック。小児も治療を受けられます。また救急対応を行っています。邦人の利用者も多いです。
◎エルサレム Jerusalem
- (1)Hadassah University Hospital-Ein Kerem(ハダッサ・エインケレム病院)
- 所在地:Ein Kerem, Jerusalem 91120
- 電話:(予約センター)02-5842111 (救急外来)02-6777222、02-6777888
- ウェブ:https://www.hadassah.org.il/en/
- 概要:1000床を有する総合病院です。市内からやや離れており、車で20分程度かかります。救急外来は24時間オープンしています。また、プライベートメディカルサービス(Sharap)があり、ここを通して専門外来を予約することができます。Mt.Scopusにも病床数350の同系列の病院があります。
- (2)Shaare Zedek Medical Center(シャーレ・ツェデクメディカルセンター)
- 所在地:12 Shmuel Bait Street, Jerusalem 9103102
- 電話:02-6666666(救急外来)02-6555509、02-6555249 (小児救急)02-6555510
- ウェブ:https://www.szmc.org.il/eng/home/
- 概要:1000床を有する総合病院です。市内にあり混雑しています。救急外来は成人と小児に分かれています。小児救急の受付は午前8時から午後11時までで、それ以外の時間帯は成人の救急外来で受付します。
- (3)Kurer Jackson Dental Office
- 所在地:29 Keren HaYesod St, Jerusalem
- 電話:02-6250870
- ウェブ:https://www.kjjdentaloffice.co.il/en/home-page/
- 概要:歯科。邦人の通院も多く、救急対応も行っています。英語がよく通じます。
○ハイファ Haifa
- (1)Rambam Health Care Campus
- 所在地:HaAliya HaShniya St 8, Haifa, 3109601
- 電話:(総合案内)04-7773568, *5324(救急外来)04-7771300
- ウェブ:https://www.rambam.org.il/en/
- 概要:1938年開設。イスラエル北部最大の病院で、病床数は約1000床です。救急外来は24時間対応しています。メディカルツーリズムに力を入れています。
○ラマッラ Ramallah
- (1)Palestinian Medical Complex
- 所在地:Al-Ahli Hospital Street, Ramallah
- 電話:(代表)02-2982222
- 概要:パレスチナ政府が運営する300床を有する公立総合病院群です。市内にあり混雑しています。救急外来のベッドは20床あります。
- (2)Istishari Arab Hospital
- 所在地:Al-Rayhan, Ramallah
- 電話:(代表)02-2943200
- ウェブ:http://www.iah.ps/index.php/en/
- 概要:ラマッラ郊外にある私立総合病院(150床)で、高度医療機器を備えています。救急外来がありますが、救急車はないので搬送は赤新月社に依頼します。
○ジェリコ Jericho
- (1)Jericho Governmental Hospital
- 所在地:Abdul Aziz Saqr Street, New Jericho Quarter, Jericho
- 電話:(代表)02-2321966~1969
- 概要:パレスチナ政府系の総合病院です。病床数は54床で24時間対応の救急外来があります。
9. その他の詳細情報入手先
(1)イスラエル保健省(英語)
https://www.gov.il/en/departments/ministry_of_health/govil-landing-page
(2)在イスラエル米国大使館 医療機関、医師リスト2019(英語)
https://il.usembassy.gov/wp-content/uploads/sites/33/ProvidersApr2019.pdf
10. 一口メモ(もしもの時の医療ヘブライ語)
医師(Medical doctor):ロフェ(רופא)、看護師(Nurse):アホト(אחות)、のみ薬(Pill):カドゥール(כדור)、注射(Injection):ズリカ(זריקה)、頭痛(Headache):ケェベイ・ローシュ(כאב ראש)、腹痛(Stomachache):ケェベイ・ベテン(כאב בטן)、痢(Diarrhea):シルシュール(שלשול)、発熱(Fever):ホム(חום)、 吐き気(Nausea):ブヒラ(בחילה)、ケガ/傷(Wound):ペツァ(פצע)、 病気(Illness):マハラ(מחלה)、病院(Hospital):ベイト・ホリム(בית חולים)、具合が悪い(I don’t feel well):アニ・ロ・マルギッシャ・トーヴ(אני לא מרגיש טוב)、病院へ連れて行って下さい(Take me to a hospital):カハ・オティ・レ・ベイト・ホリム(קח אותי לבית חולים)
11. 新型コロナウイルス関連情報
2022年10月時点で、イスラエル国内における新型コロナウイルス感染症の感染状況は落ち着いており、屋内外を問わず、マスクの着用義務はありません。当地におけるコロナワクチン接種に関しては、イスラエルの医療保険に加入していない外国人が接種を受ける機会は非常に限られているため、希望者は必ず日本で接種を済ませてください。当地では、マスクや手指消毒液の流通に問題はありません。また、抗原検査キットは薬局で簡単に購入することができるため、イスラエル保健省からは、新型コロナ感染が疑わしい場合は、まず自分で市販の検査キットを用いて検査することが求められています。