世界の医療事情

アメリカ合衆国(ワシントンDC周辺)

2022年10月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 アメリカ合衆国 東部(ワシントンDC、メリーランド州及びバージニア州)(国際電話国番号1)

2 公館の住所・電話番号

○ 在アメリカ合衆国日本国大使館 (毎週土日休館)
住所:Embassy of Japan, 2520 Massachusetts Avenue NW, Washington D.C. 20008
電話:(202)238-6700
ウェブサイト:https://www.us.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/別ウィンドウで開く

※土日以外の休館日は暦年ごとにウェブサイトにて案内していますので、御覧ください。

4 衛生・医療事情一般

(1)はじめに

 首都ワシントンDC及びその近郊は北緯39度付近に位置し、夏は高温多湿でしばしば激しい雷雨となることもある一方、冬の寒さは東京よりも厳しく、厳寒期にはポトマック川が氷結することもあります。時には降雪のために道路状況が悪くなり、官庁・学校等、公共機関が休業になることもあります。

(2)衛生事情

 ワシントンDCおよびその近辺は緑が多く、大気汚染の問題はありません。上水道の水をそのまま飲用しても安全であるとされていますが、ワシントンDC、メリーランド州及びバージニア州を流れるポトマック川では沈殿汚染物等による水質低下が危惧されています。また、時にレストラン等で食中毒が発生することがありますので、生ものには注意してください。米国でも食品汚染が問題になっており、腸管出血性大腸菌(病原性大腸菌O-157等)、リステリア症、A型肝炎、サルモネラ菌感染等も発生し、随時、米国疾病予防管理センター(CDC)や米国食品医薬品局(FDA)から警告が発出されています。

(3)医療事情

 米国の医学が世界最高の水準にあることに間違いはありませんが、日本と違って診療報酬制度が定められておらず、自由診療制であることにより、米国の診察・治療費は非常に高額となります。

ア 診療:

 通常、全ての診察は予約制で、当日や翌日に予約を取ることは難しく、1か月以上先になることも珍しくないため、予約は早めに取ることをお勧めします。急病時に受診出来る医療機関は、予約無しで受診できる病院の救急部(ER:Emergency Department)、もしくはImmediate CareWalk-in Clinic、Urgent Care等とも言います)と呼ばれる外来診療のみのクリニックに限られます。病院の救急部(ER:Emergency Department)はいつも患者が多く、重症者が優先されるため、軽症者は数時間待たされることになります。

イ 救急車:

 重症と考えられる急病や大怪我の場合は、「911」(日本の119番に相当しますが、警察や消防も同じ番号)に電話をかけ、“Ambulance, please.”と言って救急車を要求します。平均5分程度で救急車が到着しますが、救急車がすぐに対応できないときには、消防車の救急隊が駆けつけ、救急車が到着するまでの代役を果たしています。米国の救急医療制度は良く整備されていますので、Emergency Medical Technician (EMT)が患者の状態により移送すべき適切な病院を判断します。

ウ 米国の保険:

 日本のような国民皆保険制度がなく、民間医療保険の保険料も高額となります。米国の保険に加入する場合は、その保険の提供会社及び種類(契約内容)によって、対応する医療機関やカバーされる医療行為に大きな違いが生じます。加入前に細部まで確認のうえ、十分に検討することが大切です。当地では医師の専門分野が細分化されているので、病気によっては数人以上の医師にかかる必要があることもあり、診察、治療、支払い等個別に対応しなければなりません。

エ 海外旅行傷害保険:

 非常に高額な米国の医療費に備え、海外旅行傷害保険等には、十分な補償額で加入しておく必要があります。なお、海外旅行傷害保険等のキャッシュレスサービスを利用する場合は、事前に加入先の保険会社に連絡を取って、同サービスに対応してくれる医療機関の紹介を受けなくてはなりません。また、米国の保険に加入していない場合、医療機関受診に際し、受付で診療費の支払い能力を問われることがありますので、現金、クレジットカード等、支払い能力を十分証明できる物を持参してください。

オ 通訳の利用:

 英語が堪能でも医学専門用語は分かりにくいため、意思疎通が十分とれない場合があります。大きな病院では日本語通訳サービスを無料で提供している病院も多く、(最近は、電話を介しての通訳サービスが多くなっている)、同サービスの利用を検討してください。なお、通訳者を利用したい場合には、予約しておくことが必要です。

5 かかり易い病気・怪我

 年間を通して上気道炎が見られます。また、3月から6月にかけて花粉症が見られます。日本では通常見られず、当地に特有な病気として、蔦漆(ツタウルシ、一般にPoison Ivyと呼ばれています)による接触性皮膚炎、ライム病というマダニが媒介するスピロヘータによる感染症、夏季の蚊が媒介するウエストナイル・ウイルス熱・脳炎などが有名です。また、ワシントン周辺でも狂犬病がキツネやアライグマ等の野生動物に見られることにも注意が必要です。

(1)Poison Ivy(ツタウルシ)による接触性皮膚炎

身近にある毒性の強い草で、3枚の葉が1組になって枝についています。Poison Ivyの毒性はウルシと同じウルシオールという物質によるもので、これが原因でかぶれます。最初はこの草に触った手足や顔にうすくブツブツができますが、しだいに広がり、水疱を作ります。Poison Ivyと思われる草に触れた場合には、その部分をできるだけ早く十分に水洗いをしてください。痒みは氷で冷やすことや冷たいシャワーを浴びることで和らげることができます。全米でも毎年1,000~5,000万人の人たちがPoison Ivyの被害にあっているという報告もありますが、そのうち10~15%の人がウルシオールに対する感受性が極めて高く、重症化することがあります。顔や腕なども腫れてくることがあり、このような場合には皮膚科の受診が必要となります。

(2)ライム病

 Ixodesと総称されるマダニ(通称シカダニ)の仲間に吸血されてB. burgdorferiという人獣共通の細菌(スピロヘータ)が感染し起こる病気です。米国東北部に多く、マダニの吸血活動期である春から夏にかけて発生し、毎年25,000人以上が感染していると言われています。米国東北部の感染地域に位置するワシントンDC周辺のメリーランド州やバージニア州はハイリスク地域とされていますので、注意が必要です。病原菌を持ったマダニに咬まれてから 3~32日後に紅斑、リンパ節の腫張やインフルエンザ様の症状が出てきます。その後、髄膜炎、多発性神経炎等の神経症状、不整脈等の循環器症状、関節痛、関節の腫張等の関節炎症状をきたすことがあります。治療には抗生物質が有効です。(参考情報:https://www.aldf.com別ウィンドウで開く

(3)ウエストナイル感染症

 野鳥がウイルスの運び屋となり、ウイルスを保有した野鳥の血を吸った蚊に人が刺されて感染する病気です。米国では1999年にニューヨークで初めて患者が発見されました。2019年には全米で958人の感染が報告され、54人が死亡しています。当館周辺では、ワシントンDCで11人(死亡者なし)、メリーランド州で6人(死亡者なし)、バージニア州で6人(1人死亡)の発生がありました。また、米国疾病予防管理センター(CDC)は流行期には、時間を追って患者発生の様子を知らせてくれますので情報を得てください。(参考情報:https://www.cdc.gov/ncidod/dvbid/westnile/別ウィンドウで開く

6 健康上心がけること

(1)当地では、リクリエーションやスポーツ施設等、健康管理の面で条件に恵まれていると言えます。他方、公共交通手段が少なく、自動車で移動する生活となり、また、レストランなどの外食は、一般に、量、脂肪、塩分が多いので、過食と運動不足から肥満傾向になり易く、生活習慣病の原因となることがあります。その予防対策として、日常生活の中に運動を取り入れ、食事内容に注意し、過食を避けるように工夫する必要があります。

(2)在留邦人はワシントンDCを中心に、メリーランド州やバージニア州にまたがる広い地域に分散して居住していますので、所属する組織を超えて邦人同士が接触する機会は、比較的限られます。ストレス解消法を工夫し、現地の人々との交流に努めるなど、精神衛生面に配慮する必要があります。

7 予防接種

 現地のワクチン接種医療機関等(旅行時のワクチンを主に接種)についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

 なお、小児定期予防接種項目については下記7(2)を参照ください。

(1)赴任者に必要な予防接種

 入国に際して必要とされるワクチンはありませんが、小児はできるだけ日本で定められた定期予防接種を受けておき、当地に到着後は現地の接種計画に従って、ワクチン接種を行うようにしてください。(御加入の保険がワクチン接種をカバーしない場合等の御自身の状況についてお住まいの各州保健局に証明すれば、乳幼児に必須の予防接種が無償提供されるサービスを受けられることがあります。詳細は、下記9章の各州保健局・ホームページでchild, immunization, Vaccines for Children Program等のキーワードで検索ください。)公立学校の入学に際し不足しているワクチンは、小児科医又は内科医やファミリードクターのオフィスで普通行っていますが、大手チェーン薬局のカウンターや各州保健局の施設での接種も可能です。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

0-6歳に奨励されている予防接種スケジュール(US-CDC, 2018)

予防接種 初回 2回 3回 4回 5回
B型肝炎 出生時 1~2か月 6~18か月    
ロタウィルス 2か月 4か月 6か月    
3種混合(DTaP) 2か月 4か月 6か月 15~18か月 4~6歳
インフルエンザ菌b型(Hib) 2か月 4か月 6か月 12~15か月  
肺炎球菌(PCV) 2か月 4か月 6か月 12~15か月  
ポリオ(IPV) 2か月 4か月 6~18か月 4~6歳  
インフルエンザ 6か月以降毎年接種。8歳以下で最初の接種時には、4週間以上の間隔で2回接種。
MMR(麻疹、流行性耳下腺炎、風疹) 12~15か月 4~6歳  
水痘(Varicella 12~15か月 4~6歳  
A型肝炎 12~23か月 1回目から少なくとも6か月をあけて。

7-18歳に奨励されている予防接種スケジュール(US-CDC, 2018)

三種混合(Tdap) 11歳~12歳で1回接種。
ヒトパピロマウイルス(HPV) 11歳~12歳で2回接種。15歳以上は3回。(1回目から1~2か月後に2回目、その6か月後に3回目)
9歳からでも接種可能。9歳~14歳は2回。(1回目から6~12か月後に2回目)
髄膜炎菌(MCV4) 11歳~12歳で1回。16歳時にブースター。

(参考情報:https://www.cdc.gov/vaccines/schedules/別ウィンドウで開く

(3)

 現地校に入学・入園する際にはワクチン接種証明の提出を求められます。日本と米国では、必要なワクチンの種類及び接種回数が異なるので注意が必要です。州によっても少しずつ異なることがありますので、入学する州あるいは郡(County)の規定がどうなっているかを必ず確認してください。例えば、バージニア州では2014年から日本が結核の高リスク国リストから外れたため(日本人で過去5年以内に5か月以上続けて高リスク国に居住していた場合は高リスク国と同じ扱い)、ツベルクリン反応は要求されなくなりました。しかし、メリーランド州やワシントンDCでは、ツベルクリン反応又はIGRA(BCGの影響を受けない血液による結核の検査で、5歳以上であれば検査可能)と呼ばれる結核感染の有無を調べる検査が要求されています。

 次のウェブサイトからワシントンDC、メリーランド州及びバージニア州で入学に必要とされている予防接種が確認可能です。

8 病気になった場合(医療機関等)

 緊急の場合は、「911」に電話して救急車(ワシントンDC周辺では全て有料)を呼ぶことができ、24時間の救急対応が行われています。ただし、患者は病院を指定できません。希望の病院がある場合は直接救急施設に行くこともできます。受診する時は、緊急の場合を除き、電話による予約が必要です。医薬分業なので、薬は医師から処方箋を貰い薬局で買います。検査のため検査専門の施設に行かなければならないこともあり、日本よりは煩雑で時間がかかります。以下は、在留邦人が利用している主な医療施設です。

(1) 入院・手術等で利用する病院 (下記の病院には全て救急部(ER) があります。)

 米国では、ERや次項のImmediate CareWalk-in Clinic、Urgent Care等とも言います)を除き、通常、受診予約が必要です。日本語通訳が必要な場合、前もって予約すれば、無料で通訳サービスを受けることができる病院もあります。大きな病院のERは、混んでいることが多く、重症でない場合は長時間待たされることが多いので、重症以外はImmediate Careを利用することを勧めます。

George Washington University Hospital
所在地:900 23rd Street, NW, Washington D.C. 20037
電話:(202)715-4000(代表)
概要:ワシントンDCの中心部にある大学病院で、政府要人等も利用しています。高度な医療に対応しています。病院内に入るには写真入りの身分証明書の呈示が必要です。
MedStar Georgetown University Hospital
所在地:3800 Reservoir Road NW, Washington D.C. 20007
電話:(202)444-2000(代表)
概要:高度な医療に対応しています。下記ウのMedStar Washington Hospital Centerと同じ病院グループ(MedStar)です。
MedStar Washington Hospital Center
所在地:110 Irving Street NW, Washington D.C. 20010
電話:(202)877-7000 (代表)
概要:救急車以外に、緊急医療移送用ヘリコプター3機を有する、ワシントンDC最大の病院で、軽症から重症の疾患まで対応しています。心疾患の治療に関しては、最も信頼されている病院の一つです。
Children's National Medical Center
所在地:111 Michigan Ave NW, Washington D.C. 20010
電話:(888)884-2327(代表)
概要:MedStar Washington Hospital Centerに隣接する小児専門の病院です。小児のERがあります。
Sibley Memorial Hospital
所在地:5255 Loughboro Road NW, Washington D.C. 20016
電話:(202)537-4000(代表)
概要:DCの中心部よりやや北西に離れた中規模病院。Johns Hopkins Medicineの病院グループのひとつであり、建物の新築等がなされ、規模が大きくなっています。
Suburban Hospital
所在地:8600 Old Georgetown Road, Bethesda MD, 20814
電話:(301)896-3100 (代表)
概要:メリーランド州Bethesda市の中規模病院です。上記オと同じく、Johns Hopkins Medicineの病院グループに入りました。
Inova Fairfax Hospital
所在地:3300 Gallows Road, Falls Church VA 20042
電話:(703)776-4001(代表)
概要:バージニア州Falls Church市にある大きな病院です。
Virginia Hospital Center
所在地:1701 North George Mason Dr, Arlington VA 22205
電話:(703)558-5000(代表)
概要:バージニア州Arlington市にある中規模の病院です。
Johns Hopkins Hospital
所在地:1800 Orleans St, Baltimore MD 21287
電話:(410)955-5000(代表)
概要:メリーランド州Baltimore市(ワシントンDCから自動車で1時間強)にあるジョンズ・ホプキンズ大学の病院で、世界トップクラスの医療機関として有名です。

(2) 重症でない緊急疾患を予約なしで診てくれる外来クリニック(Immediate Care, Walk-in Clinic, Urgent Care等)

 下記は一例です。お住まいに最寄りの予約なしで受診できるクリニックは、グーグルマップ検索等で”Urgent care”又は”Immediate Care”で調べていただくことにより、下記以外にもたくさんあることがお分かりいただけます。

ア ワシントンDC

(ア) MedStar Health: Urgent Care at Adams Morgan
所在地:1805 Columbia Rd NW, Washington D.C. 20009
電話:(855) 910-3278
診療時間:毎日午前8時~午後8時
(イ) GW Immediate & Primary Care – Cleveland Park
 所在地:2902 Porter Street NW, Washington D.C. 20008
 電話:(202)525-5287
 診療時間:月~金曜日 午前8時~午後8時、土~日曜日 午前8時~午後6時

イ メリーランド州

(ア) Fast Track Urgent Care
 所在地:10540 Connecticut Ave, Kensington, MD 20895
 電話:(301)949-0030
 診療時間:月~金曜日 午前9時~午後8時45分、土~日曜日 午前9時~午後5時45分
(イ) Patient First Urgent Care (Rockville)
 所在地:726 Rockville Pike, Rockville MD 20852
 電話:(240)238-0411
 診療時間:毎日午前8時~午後8時
(ウ) Patient First Urgent Care (Silver Spring)
 所在地:8206 Georgia Ave, Silver Spring, MD 20910
 電話:(301)960-4682
 診療時間:毎日午前8時~午後8時
(エ) Righttime Medical Care
 所在地:12220 Rockville Pike, Rockville MD 20852
 電話:(301)468-6483
 診療時間:毎日午前8時~午後10時
(オ) MedStar Health : Urgent Care at Chevy Chase
 所在地:5454 Wisconsin Ave #401, Chevy Chase MD 20815
 電話:(855)910-3278
 診療時間:毎日午前8時~午後8時

ウ バージニア州

(ア) McLean Immediate Care
所在地:1340 Old Chain Bridge Rd. #101, McLean VA 22101
 電話:(703)893-2273
 診療時間:月~金曜日 午前8時~午後8時、土曜日 午前9時~午後6時、日曜日 正午~午後6時
(イ) Old Dominion Urgent Care Center
所在地:6262 Old Dominion Dr, McLean VA 22101
 電話:(703)893-2505
 診療時間:月~金曜日 午前8時~午後8時、土曜日 午前9時~午後6時、日曜日 午前10時~午後4時
(ウ)INOVA Urgent Care
概要:下記の2診療所は、Fairfax Hospital、Alexandria Hospitalなどを経営しているINOVA Health Systemの病院グループに所属。
診療時間:全て共通で、毎日 午前8時~午後8時
Vienna
 所在地:180 Maple Ave West, Vienna VA 22180
 電話:(703)938-5300
North Arlington
 所在地:4600Langston Blvd., Arlington VA 22207
 電話: (571)492-3080

(3) 日本語で受診できる医師・鍼灸師・カウンセラー等

 下記のサイトを御参照ください。

https://www.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/medical.html別ウィンドウで開く

9 その他の詳細情報入手先

(1)米国疾病予防管理センター(CDC):https://www.cdc.gov/別ウィンドウで開く

(2)米国食品医薬品局(FDA):https://www.fda.gov/別ウィンドウで開く

(3)ワシントンDC保健局:https://dchealth.dc.gov/別ウィンドウで開く

(4)メリーランド州保健局:https://health.maryland.gov/pages/home.aspx別ウィンドウで開く

(5)バージニア州保健局:https://www.vdh.virginia.gov/別ウィンドウで開く

10 一口メモ

 「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしものときの医療英語)を参照ください。

11 新型コロナウイルス関連情報

 2022年10月現在、市中のコロナ感染は一定レベルで認められるものの、同年8月のCDCガイドライン改定(緩和)を受け、濃厚接触者の隔離も不要となる等、当国のコロナ対策は「感染予防」から「重症化予防」へと重点を移し、社会・経済活動を優先する方向へ舵を切っています。

 背景には過去2年間のコロナ禍で、有効なワクチンと治療薬の確保、誰もが速やかに診断できる簡易検査(及び検査所)の普及等、感染しても致命傷とならずに済むための基盤が整ったという判断があるものと思われます。

 ・予防:マスク着用やディスタンス・換気等の対策に加えて特にワクチン接種が推奨されています。対象年齢も生後6か月の乳幼児まで拡大、2022年9月からはオミクロンBA4・BA5株もカバーする二価ワクチンが解禁となりました。滞在住所を提示すれば最寄りのCVS(薬局チェーン)、GiantSafeway等ほとんどのスーパー内薬局で接種できます。

 ・治療薬:大統領等政府高官らも服用したことで有名になったパクスロビッド等の抗ウイルス薬も、医師の診察で必要と判断されれば、一般に処方を受けることができます。

 ・診断:オミクロンが急拡大した時期には連邦政府が(外国人も含め)無償配布した時期もありましたが、現在では薬局やインターネットでも入手できます。簡易抗原検査が普及したことや各国で出入国時に検査が不要になった影響で、より精度の高いPCR検査を提供する薬局チェーン(CVS等)、一部のurgent care、トラベルクリニック等の存在意義はピーク時より薄れつつありますが、まだ利用可能です。

 ・情報源:新型コロナウイルス関連の最新情報は前章9に記載のCDCや各州保健局のウェブサイトでcorona virus又はCOVID-19で検索して入手できます。CDCは国全体の指針を示しますが、実践される具体的な対策は必ずしもこの指針に則ったものではなく、学校や施設、郡のレベルで規定されることもありますので御注意ください。

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