世界の医療事情

令和4年10月1日

1.国名・都市名

 ウクライナ(国際電話国番号380) キーウ市(044)

2.公館の所在地

Business Centre Europe, 7th & 8th Floor, 4, Muzeiny Lane, 01001 Kyiv, Ukraine
電話:(044)490-5500(代表)(毎週土日休館)
490-5501(領事班直通:勤務時間中のみ)

(注)渡航・滞在にあたっては、最新の「危険情報」(4段階に分かれた安全対策の目安)をご確認下さい。2023年2月現在、在ウクライナ日本国大使館は、領事窓口を閉鎖しております。

4.衛生・医療事情一般

 ウクライナは、旧ソ連欧州部の南に位置し、国土の中央を大河ドニプロ川が南北に流れ黒海に注いでいます。気候区分は、寒帯・温帯・ステップに属し、首都キーウは大陸性の気候で、数日間で最高気温が10℃以上も上下することがあり、体調を崩しやすいので注意が必要です。冬季は、暖房による屋内乾燥のため、呼吸器疾患やドライスキンに留意する必要があります。また、北緯50度と高緯度に位置するため、冬期間は日照時間が短く、季節性の気分障害(冬季うつ)に注意が必要です。水道水は、老朽化した配管等の問題があり、飲用にはミネラルウオーターか浄水器の利用をお勧めします。

 体調不良時の対応ですが、在留邦人の多くは、私立の医療機関を利用しています。具体的には、キーウ、リヴィウ、オデーサ等には英語で受診出来る外国人向けの外来クリニックがありますので、救急ではない場合は、こうしたクリニックを受診し、必要に応じて、他の病院でのレントゲン撮影や精密検査、入院、手術をアレンジして貰うのが一つの方法です。日本の海外旅行傷害保険のキャッシュレス・メディカル・サービスを利用出来るクリニックもありますので、予め保険会社に問い合わせておくと良いでしょう。

 救急車は、電話103で呼ぶことが出来ます。キーウ市内であれば、ドニプロ川左岸にあるキーウ市救急病院に搬送されます。都市部でも規定どおり10分以内に救急車が現場に到着するのは3割程です。私立の医療機関で医師の往診や救急車などのサービスを提供している施設も複数あります。

 当地の医療レベルは、日常の外来診療では大きな問題は無いと考えますが、すぐに治療しなければ命に係わる救急の場合を除き、外科手術やがん検診などは、日本や欧州の病院を利用することをお勧めします。また、万一に備えて、日本への緊急移送をカバーする十分な額の海外旅行傷害保険に加入しておきましょう。お薬については、偽薬も1割程度出回っていますので、注意が必要です。なお、近年導入されたウクライナの公的医療保障制度は、救急医療から外来診療・入院治療・出産・緩和ケアやリハビリまでカバーする先進的な制度ですが、残念ながら、一定の条件(ウクライナに永住・納税)を満たさない外国人は加入出来ません。

5.かかり易い病気・怪我

(1)ウイルス感染症

麻疹(Кір)、風疹(Краснуха)、水痘(Вітряна віспа)などが通年、散発しています。麻疹は、2018年と2019年に感染者が年間5万人を超え大流行となりました。風疹は2018年に流行しました。水痘は、大人の感染も珍しくありません。また、年末から春にかけての時期はロタウイルスの感染が増えます。

(2)冬季間は、凍結した路面での転倒による骨折事故に注意しましょう。また、屋根から落下した雪や氷による怪我や死亡例が毎年のように報告されています。

(3)花粉症

春先は雪解け前から花粉症・花粉皮膚炎が始まります。原因となるアレルゲンは、白樺(береза)、ハンノキ(вільха)、ヤナギ(верба)、ハシバミ(Ліщина)などです。白樺花粉症などでは、口腔アレルギー症候群といって、果物を食べると口の中がかゆくなることがあります。4月からは、カモガヤ(грястиця збірна)などのイネ科植物、初夏からはブタクサ(амброзія)やヨモギ(полин)など花粉症が秋まで続きます。

(4)ダニが媒介する感染症

初夏から秋にかけては、マダニが媒介する病気に注意が必要です。森林や草原、草むらに入る場合は、皮膚の露出を防ぎDEET等の虫除けを使って下さい。ライム病(Хвороба Лайма)は、キーウ在住の外国人からも発生があり、診断・治療が遅れると後遺症が残る厄介な感染症です。遊走性紅斑と呼ばれる独特な発疹が出ることがあります。また、カルパチア地方やクリミア地方等ではダニ媒介性脳炎(Кліщовий вірусний енцефаліт)の報告があります。2020年8月にはヴォリーニ州からも報告がありました。こちらは都市部では稀ですが、屋外活動がお好きな方はワクチンを接種しておくと安心です。クリミア・コンゴ出血熱ウイルスは生態系に存在していますが、ヒトが感染することは非常にまれです。なお、蚊が媒介する感染症としては、マラリアの発生はありませんが、ウエストナイル熱(гарячка Західного Нілу)が過去10年間に百人ほどが感染しています。報告が多いのは、ポルタヴァ・ザポリッジャ・ドネツクの各州です。2022年には、キーウ市近郊(キーウ州ブロヴァリー)でも患者が報告されています。

(5)食中毒と経口感染症

気温の高い時期を中心にサルモネラ菌などによる食中毒(Харчові отруєння)が散発します。手作りの瓶詰や自家製ソーセージによるボツリヌス中毒(Ботулізм)も通年見られます。A型肝炎(Гепатит А)は、毎年10月から1月にかけて発症者が増えます。

6.健康上心がける事

(1)水道水やキーウ市内の井戸の水はそのままでは飲用に適しません。

(2)路面状況、運転マナー、車両整備が悪く、交通事故が多発しています。特に夜間、道路を横断する際に注意しましょう。

(3)花粉症のある方は、使い慣れたマスク、お薬(内服・外用)を十分量持参しましょう。

(4)食品衛生に通年、留意してください。毒キノコによる食中毒も起きています。また放射性物質が蓄積しやすいキノコ類、ベリー類、畜産製品を購入する際には生産地を確かめて下さい。

(5)急激な自動車の増加による慢性的な渋滞等に伴い大気汚染も深刻な状態が続いています。異臭・目の痛みを感じることがあります。

(6)冬期間の注意点としては、昼間が短い上に曇り空が続き、日照不足から「冬季うつ」という状態になることがあります。症状としては、いくら寝ても寝足りない、食欲が増す、イライラして集中力が落ちるなどです。また、地域暖房が入ったら居室の加湿に留意してください。凍った路面での転倒事故にも気をつけましょう。

(7)結核とHIV:WHO世界保健機関は、ウクライナをMDR-TB多剤耐性結核の蔓延国(high-burden country)の一つに挙げています。結核の発生率は人口比で日本の5倍以上です。人混みや咳をする人を避けて下さい。長引く咳、微熱、寝汗などの症状があったら早めに医療機関へ。ウクライナ国内のHIV感染者数は20万人で、その4割は自分が感染していることを知らないと推定されています。不特定多数との性交渉にはリスクがあるとお考え下さい。

(8)狂犬病:狂犬病(сказ)は、近年減少しましたが、ゼロではありません。2020年8月にはキーウ市南部で狂犬病に罹った野良猫が見つかり、2か月間の動物検疫措置が実施されました。2022年6月には、キーウ市のペチェルスク区で狂犬病に感染した野良猫が報告されたほか、同8月にはリヴィウ州で狂犬病に感染したテン(Куниця)に3名が噛まれ治療を受けています。

(9)レプトスピラ症(лептоспіроз):ネズミが原因の感染症で、診断治療が遅れると命に関わります。感染したネズミの尿で汚染された河川・湖水で経皮感染するほか、汚染された食物から経口感染することもあります。症状は、結膜の充血が特徴的です。2022年はチェルカーシ州やリヴィウ州で患者が報告されています。

7.予防接種

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

(1)成人には、A型肝炎、B型肝炎、破傷風に加えて、接種が2回済んでいない場合は麻疹と風疹のワクチン接種をお勧めします。水痘も散発していますので、過去の感染歴やワクチン接種歴を踏まえて医師に相談して下さい。長期滞在者、アウトドアがお好きな方や地方滞在者、または東欧、旧ソ連諸国、中東へ出かける機会が多い方は、狂犬病、腸チフス、ダニ媒介性脳炎も接種しておくと無難です。

 お子様は、A型肝炎を含めて日本の定期予防接種スケジュールに従って接種を受けておいてください。ウクライナではワクチンの供給が不安定で、スケジュールどおりに小児定期接種を受けられないケースがままありますので、小さなお子様は渡航する前にMRワクチンと水痘ワクチンを済ませるのが無難です。

(2)小児の定期予防接種一覧

小児の定期予防接種一覧(2022年10月現在)

予防接種 初回 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
BCG 3~5日          
B型肝炎 1日 2ヶ月 6ヶ月      
ジフテリア・破傷風 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 18ヶ月 6才 16才
百日咳 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 18ヶ月    
ポリオ 2ヶ月
不活化
4ヶ月
不活化
6ヶ月
OPV
18ヶ月
OPV
6才
OPV
14才
OPV
HIB 2ヶ月 4ヶ月 12ヶ月      
MMR 12ヶ月 6才        

メモ:ポリオのワクチンは、不活化(注射)とOPV(経口生ワクチン)の両方が使われています。水痘、ロタウイルス、肺炎球菌ワクチン、子宮頸がんワクチンは未導入です。

(3)現地校入学に際しては、接種証明書の提出が必要です。

 インターナショナルスクールについても同様の書類が必要です。ウクライナ渡航時に母子手帳を持参してください。

8.病気になった場合(医療機関等)

 ウクライナには日本語で診察を受けることが出来る病院、クリニックはありません。

 救急番号 103(全国共通)

◎キーウ市(順不同)

以下のリストは一般的な情報提供として作成したもので、各医療機関の診療の質を保証するものではありません。(1)~(2)は私立の総合病院、(3)~(5)は外国人向けの外来クリニック、(6)(7)は専門施設、(8)は歯科です。歯科を除いて、24時間救患受付が可能ですが、電話をかけて症状を伝えてから受診してください。往診や医療機関の救急車(有料、100米ドル以上)を依頼することも可能です。私立の医療機関では一般にVISAカードとMasterカードが使用可能です。

(1)Medikom Clinic Клініка '' Медіком''
住所:9,Obolonska embankment Str., Kyiv Київ, вул. Оболонська набережна , 9
電話:(044)503-7777(代表番号)、(044)503-0000(救急部門)24時間対応
ホームページ:http://www.medikom.ua/別ウィンドウで開く
概要:入院手術が可能な本院を含め市内5か所に施設を有する私立の総合病院です。住所は本院のみ掲載しました。вул. Василя Тютюнникаにある分院は、米国移民ビザ等を申請する際の健康診断指定医療機関の認証を得ています。
(2)Oberig Clinic (клініка “Оберiг”)
住所:3 Zoologicheskaya Str., Kyiv
Київ, вул. Зоологічна, 3, корпус "В"
電話:(044)521-3003、3003(救急車要請)
ホームページ:https://oberig.ua/別ウィンドウで開く
概要:2009年にオープンしたCT、MRI等の検査設備も完備した施設で、特に脳神経外科の急性期治療とリハビリ、小児科に力を入れています。
(3)American Medical Centers
住所:1 Berdychivska Str., Kyiv
Київ, вул. Бердичівська 1
電話:(044)490-7600
ホームページ:http://www.amcenters.com別ウィンドウで開く
概要:メトロ・ルキヤニウスカ駅に近い外来診療所で英語で受診できます。英国人総合診療医GPや臨床心理士も勤務しています。一般診療を主に、内科、小児科、予防接種などの診療をしています。専門外来は、他院の専門医の紹介および呼び出しになります。リヴィウとオデーサに系列のクリニックがあります
(4) Universum Clinic
住所:4 Volodymyra Vynnychenka Str., Kyiv
Київ, вул. Володимира Винниченка, 4
電話:(044)599-5405、(067) 242-6240
ホームページ:https://universum.clinic/en/別ウィンドウで開く
概要:キーウ市内に2クリニックを有する英語で受診出来る外来診療所です。オブセルヴァトールナ(天文台)通りに近い本院には眼科が併設されています。2022年にメトロ・ウニベルシテート駅近くに分院が開設されました。住所は本院を記載しています。
(5) International Multi-Profile Clinic
住所:44 Yevhena Konovaltsia Str., Kyiv
Київ,Вул. Евгения Коноввльца 44
電話:(044)499-8687
ホームページ:http://imp-clinic.com別ウィンドウで開く
概要:メトロ・ペチェルスク駅に近い英語で受診可能な診療所です。婦人科、内科、小児科。
(6)ISIDA Hospital(産婦人科病院)
住所:65 Ivana Lepse Boulevard, Kyiv
Київ, б-р Вацлава Гавела (Івана Лепсе), 65
電話:0800 60 80 80(総合)
ホームページ:http://www.isida.ua別ウィンドウで開く
概要:分娩も可能な本院を含めキーウ市内に4施設を有する私立の産科・婦人科・小児科病院。住所は本院のみ掲載しました。不妊治療も行っています。邦人の出産事例があります。詳しい料金は、ホームページに記載があります。2022年5月にザカルパチア州ウジュホロドに分院が開設されました。
(7)Heart Institute Інститут серця МОЗ України
住所:5A Bratyslavska Str.
Київ, вул. Братиславська, 5а
電話:(044)291-6131
概要:キーウ市の東部にある国立の循環器病センターです。4台の血管撮影室に加えMRI、CTを備えています。心筋梗塞のステント留置などの処置が可能です。キーウ市救急病院(https://bsmp.kiev.ua/)が隣接しています。
(8)Porcelain Dental Clinic(歯科)(Порцелян на Воздвиженській
住所:26-B Otto Shmidta Str., Kyiv
Київ, вул. Отто Шмідта, 26-б
電話:(044) 593-7787
ホームページ:https://porcelain-dent.com.ua/別ウィンドウで開く
概要:ポヂール、ペチェルスクに分院がある歯科クリニックです。ルキヤニウカの本院の住所を掲載しています。技術・価格とも先進国並です。インプラント治療も扱っています。

9.その他の詳細情報入手先

在ウクライナ日本国大使館 ホームページ:https://www.ua.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

10.現地語・一口メモ

 私立医療機関では英語通訳を準備してくれる場合がありますが、国公立医療機関ではウクライナ語、ロシア語以外は、ほとんど通じません。

(ウクライナ語)

(1)助けを求める

  • 私は具合が悪い:Я погано себе почуваю.(ヤ ポハーノ セベー ポチュヴァーユ)
  • ここが痛い(指さしながら):Тут болить.(トゥートゥ ボルィッチ)
  • 犬に噛まれた:Мене покусав собака. (メネー ポクサーウ ソバーカ)
  • 私を病院へ連れて行ってください:Відвезіть мене до лікарні. (ヴィドゥヴェジーチ メネー ド リカールニ)
  • 私は日本人です。 女性:Я японка. (ヤー ヤポーンカ)、男性:Я японець.(ヤー ヤポーネツ)
  • 日本大使館に連絡を取って下さい:Будь ласка, зателефонуйте до Посольства Японії. (ブッヂラースカ ザテレフォヌーイテ ド ポソーリストヴァ ヤポーニイ)

(2)症状を説明する

  • 頭痛:головний біль(ホロヴヌィー ビーリ)
  • 腹痛:біль у животі(ビーリ ウ ジヴォチー)
  • 下痢:діарея(ジアレーヤ)
  • 熱がある:У мене жар (ウ メーネ ジャール)
  • 発熱:температура(テンペラトゥーラ)
  • 不眠・眠れない:Безсоння(ベズソーンニャ)
  • 吐き気:відчуття нудоти(ヴィドゥチュッチャー ヌドーティ)
  • 傷:рана(ラーナ)
  • 骨折:Перелом(ペレローム)
  • 肺炎:пневмонія(プネウモニーヤ)

(3)病院で

  • 医師:лікар(リーカル)
  • 注射:уколи(ウコールィ)
  • 飲み薬:медикаменти(メディカメーンティ)
  • 点滴:крапельна інфузія(クラーペリナ インフージヤ)
  • 入院:госпіталізація(ホスピタリザーツィヤ)
  • 退院:Виписка з лікарні(ヴィーピスカ ズ リカールニ)
  • 自宅隔離:Ізоляція вдома(イゾリャーツィヤ ウドーマ)
  • 手術:Хірургічна операція(ヒルルヒーチナ オペラーツィヤ)
  • 全身麻酔:Загальний наркоз(ザハーリニィ ナルコーズ)
  • 酸素吸入:кисневий інгалятор(クィスネーヴィィ インハリャートル)
  • 私の血液型はO型(A型、B型、AB型)です。:Я маю першу (другу, третю, четверту) групу крові.(ヤー マーユ ペルシュ(ドゥルーフ、トゥレーテュ、チェトゥヴェルトゥ)フループ クローヴィ)

ロシア語での会話は、主要言語ロシア語別ウィンドウで開くをご参照ください。

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