世界の医療事情

令和6年10月1日

1 国名・都市名・国際電話番号

 セルビア共和国(国際電話番号381)

2 公館の住所・電話番号

在セルビア日本国大使館
住所:Trešnjinog Cveta 13, 11070 Novi Beograd, Serbia
休館日:毎週土曜日、日曜日
電話:(011)-301-2800

4 衛生・医療事情一般

 セルビア共和国は、人口約660万人、面積は北海道と同程度、首都ベオグラードより北部は平野部が広がり、南部から西部は丘陵と山岳地帯が広がる海を持たない内陸国です。気候は湿潤大陸性気候に属し、北海道内陸部とよく似た気候で、寒暖の差が大きい点が特徴の一つとして挙げられます。夏には最高気温が40度近くになる日もある一方、冬は最低気温が氷点下10度以下となることもあります。月間降水量は平均57.0mm(41.2から111.2mm)で、やや乾燥しています。

 首都ベオグラードはドナウ川とサバ川の合流点に位置するため、秋から冬にかけては濃霧が発生しやすいことが知られています。

 国公立の総合病院、専門病院、診療所などの医療機関が存在しますが、建物、設備などは老朽化していて常に混み合っています。一部の公立病院では近年改修が行われつつあります。最新の医療機器を有する海外資本の私立病院もあります。

 24時間対応の救急病院がありますが、患者が多くトリアージ順に診ているために軽症と判断されると長時間待たされることもあります。

 病院受診時は全額自己負担となります。支払いは原則現地通貨(セルビアディナール)払いですが、一部の私立病院ではユーロやクレジットカードでの支払いが可能なところもあります。パスポートなどの身分証を持参してください。また、携帯電話とその充電器もあると便利です。一部の病院では検査結果を添付ファイル等で送付してもらうことも可能なので、メールアドレスの用意があると便利です。

5 かかり易い病気・怪我

(1)呼吸器疾患

 自動車の排気ガスや、暖房機器の排煙等により大気汚染が見られます。このため風邪や気管支喘息などの呼吸器疾患やアレルギー疾患が発症、あるいは再燃することがあります。特に暖房の始まる10月から11月にかけては霧も発生しやすく、この傾向が強いので注意が必要です。2024年10月現在、新型コロナウイルス感染症の大きな流行は認められていません。

(2)動物・昆虫などによって伝搬される感染症

ア 西ナイル熱

 蚊に刺されることによって発症するウイルス性感染症で、ベオグラードを含めてドナウ川・サバ川流域地域では注意が必要です。2022年には246例が登録されており、そのうち25例が死亡と報告されています。

イ ダニ媒介性脳炎

 春先から秋にかけてウイルスを保有するダニに咬まれることによってウイルス性脳炎を起こすことがあり、死亡例や後遺症が報告されていますが、当地では2018年に13例が登録されて以降、症例の報告はありません。森林地帯に入る方はダニに刺されないよう長袖、長ズボンの着用やDEETなどの忌避剤の塗布を心がけて下さい。治療法は無く、ワクチンの接種も有効な予防法で、日本国内のトラベルクリニックで受けることができます。

ウ ライム病

 マダニに噛まれる事により発症するスピロヘータの一種ボレリア感染症です。刺された部位に紅斑が出て次第に拡大し、発熱、頭痛、嘔吐を伴い、関節炎、神経症状、心症状が出現して数か月から数年続くことがあります。治療は抗生剤が有効です。

エ 野生動物咬傷による感染症

 当国における狂犬病ウイルスは駆逐されたとされていますが、野生動物に咬まれた場合はすぐに医療機関を受診して処置を受けてください。一般的に、狂犬病以外にも破傷風、パスツレラ感染症、野兎病などの危険性があります。野生動物に不用意に近づくことは危険です。

(3)その他の感染症

  • 2013年にペットや家畜の糞便やダニ粉塵によって感染するリケッチア症のQ熱が4回の流行で計83人が発症していますが、近年は減少傾向で2022年は1例のみの発症にとどまっています。
  • ペットや家畜の糞便やダニ粉塵によって感染するリケッチア症のQ熱が発生しています。
  • 主に地方でリューシュマニア症などの蚊、蝿が媒介する感染症が発生しています。南部ではチフスやクリミア・コンゴ出血熱などもあり、注意が必要です。

6 健康上心がけること

 都市部では上水道はありますが、硬水のため慣れていないと胃腸に負担がかかります。地方では水道設備が整っていなかったり、あっても汚染が見られたりして細菌性・ウイルス性食中毒、A型肝炎などの集団発生がみられます。飲用にはミネラルウオーターを用いるなど注意してください。

 当地の一般的な料理は肉中心で味付けが濃く、脂肪、塩分等を過剰に摂取することで肥満、高脂血症(高コレステロール血症)、高血圧、高尿酸血(痛風)を発症したり、悪化させたりすることがあります。また、肉食習慣と関連して、不適切な調理によってカンピロバクターによる食中毒や寄生虫症(エキノコッカス、トキソプラズマ症、旋毛虫症など)が発生しています。

 冬は暖房のために屋内が乾燥しています。上気道炎にかかりやすくなり、皮膚に強い痒みが生じます。加湿と肌の保湿をするようにしてください。

 セルビアでの成人の喫煙率は29%と日本の19%に比較して高率です。レストラン等での分煙・禁煙もしっかりとは行われおらず、歩きタバコも多く喫煙マナーに対す考え方は日本とは異なります。受動喫煙に感受性が高い方には注意が必要です。 また、セルビア人の運転はかなり荒っぽい傾向があります。市街地を出ると速度制限が緩くなり、無理な追い越し、急な車線変更などで交通事故が多発しますので、巻き込まれないよう注意が必要です。また、冬季は積雪がなくとも路面が凍結することもあるため、11月から翌年3月まで法律で冬用タイヤの装着が義務づけられています。

7 予防接種(ワクチン接種機関含む)

(1)赴任者に必要な予防接種

 入国のために必要な予防接種はありません。長期滞在予定の方には、成人では、A型肝炎、B型肝炎、破傷風の予防接種を、小児では、日本の定期接種の他にA型肝炎を勧めています。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

 表に示すのは定期的に行われる予防接種で、この他に任意で行われる予防接種もあります。

対象の感染症 結核(BCG) B型肝炎 DTP(ジフテリア、破傷風、百日咳) ポリオ ヘモフィルス・インフルエンザb型 肺炎球菌 麻疹、流行性耳下腺炎、風疹
出生時 BCG Hep B          
1か月   HepB          
2か月     DTaP IPV Hib PCV  
3か月半     DTaP IPV Hib    
6か月     DTaP IPV Hib PCV  
6か月
以降
  Hep B          
1歳             MMR
1歳6か月     DTaP IPV Hib PCV  
7歳
(就学前)
    DTaP IPV     MMR
7から18歳までに   Hep B          
14歳     Td        

(3)現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・証明書

 小児が現地校やインターナショナルスクールに入学・入園する際は、予防接種証明書が必要になる場合があります。入学・入園時の健康診断書も含め、当地の私立病院で発行が可能です。母子手帳を忘れずに持参してください。

(4)乳児健診

 当地の小児の健診は、生後6歳までは概ね1か月から1年毎に行われており、健診スケジュールは医師の判断によります。外国人の場合は、有料となります。

8 病気になった場合(医療機関)

 救急車は電話番号「194」で24時間対応し、当番の公立の救急病院へ搬送されます。英語が通じにくいケースもあるようです。自分の症状と自分のいる住所と連絡の取れる電話番号を伝えてください。

(首都)ベオグラード

(1)Acibadem Bel Medic general hospital
所在地:Koste Jovanovica 87, Beograd
電話:(011)-309-1000
Web:Acibadem Bel Medic general hospital(セルビア語)別ウィンドウで開く
概要:内科、小児科、外科、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻科、歯科などほぼ全科を擁する外国資本の私立総合病院です。24時間オープンで土曜日、日曜日も一部の医師の受診予約が可能です。大学病院等の専門医と契約し定期的な外来や必要なら呼び出すようなシステムです。専門的な検査や治療、中規模以上の手術は契約医師の病院(公立大病院)で実施しています。英語対応可能ですが、一部の医師、看護師では英語が通じにくいことがあります。比較的新しい検査機器を備え、入院設備もあるものの、症状が重いケースは後述のクリニカルセンターなどに移送します。この施設は本院に相当しますが、その他に4施設(本院と同じ地区のVoždovacに2施設、SlavijaとNovi Beogradに各1施設)あり、診療科、医師によって受診する施設が異なりますので、予約の際に住所を確認する必要があります。なお、ことなる施設でも連絡先としては上記の電話番号から、もしくはウェブページからの予約に統一されています。
セルビアディナールもしくはユーロでの現金、クレジットカードでの支払い可能です。
(2)MediGroup general hospital
所在地:Milutina Milankovića 3, Beograd 11070,
電話:(011)-40-40-100
Web:MediGroup general hospital(セルビア語)別ウィンドウで開く
概要:内科、小児科、一般外科、産婦人科、整形外科、眼科、耳鼻科、歯科、皮膚科、泌尿器科など、セルビア最大のチェーンを持つ私立病院グループの本院に相当する総合病院です。24時間オープン。本院と言えるこの総合病院の他、外来診療だけを行うクリニック、CTやMRIなど画像診断装置をそろえる診断センター、血液・尿検査などを行う検査室など76施設がセルビア国内に展開しています。診療科や常勤医が多く英語対応も可能です。病院施設や機材は新しく本格的な手術室、分娩室(出産スタイルはリスクによるが希望通り可能)、入院設備があります。近年、邦人をはじめ外国人の受診が増えています。支払いには現金(セルビアディナール)の他、クレジットカード利用可能。
(3)Univerzitetski klinicki centar Srbije(University Clinical Center of Serbia)
所在地:Pasterova 2, 11000 Beograd
電話:(011)-361-8444(救急)、(011)-361-7777(外来)
Web:Univerzitetski klinicki centar Srbije(University Clinical Center of Serbia)(セルビア語)別ウィンドウで開く
概要:救命救急センターを有するセルビア最大の国立総合病院です。ベオグラード大学附属病院でもあり全診療科を網羅しますが、小児に関しては同じエリアにある下記(5)のUniverzitetska Decja Klinikaが対応しています。科によって別個の建物になっており古い建物が多いのですが、一部は救急部が入る新しい建物に集約されつつあります。現在クリニカルセンターは、23のクリニック(診療所)、8つの臨床関連のセンターおよびその他の事務部門から構成されています。心臓移植を始めセルビアでの先進医療のほとんどがここで行なわれています。近隣諸国からの患者も多く、救急車を呼ぶとほとんどここの救急室に運ばれます。
(4)Vojno Medicinska Akademija(Military Medical Academy)
所在地:Crnotravska 17, Beograd
電話:(011)-360-9398、(011)-360-9399、(011)-266-27-17
Web:Vojno Medicinska Akademija(セルビア語)別ウィンドウで開く
概要:救命救急センターを有する軍総合病院です。前述(3)のUniverzitetski klinicki centar Srbijeより規模は小さいですがほとんどの診療科があり、軍関係者以外の一般人、外国人も受診可能です。英語が通じにくいことも多々あります。科によって受付時間、電話番号が異なることがありますので、HP等で確認する必要があります。
(5)Univerzitetska Decja Klinika(University Children Hospital)
所在地:Tiršova 10, Beograd
電話:(011)-2060-642(予約)
Web:Univerzitetska Decja Klinika(セルビア語)別ウィンドウで開く
概要:国立大学附属の小児科専門病院。(3)のUniverzitetski klinicki centar Srbijeと同じエリアにあり連携しています。
(6)Institut za zdravstvenu zastitu majke i deteta Srbije “Dr. Vukan Cupic”, Novi Beograd(Institute for Health Care of Mother and Child of Serbia “Dr. Vukan Cupic”, Novi Beograd)
所在地:Radoja Dakić 6-8, Novi Beograd
電話:(011)-3108-108
Web:Institut za zdravstvenu zastitu majke i deteta Srbije “Dr. Vukan Cupic”, Novi Beograd(セルビア語)別ウィンドウで開く
概要:国立系の母子総合医療センター。小児心臓外科手術までこなします。
(7)Institut za kardiovaskularne bolesti “Dedinje”(Institute for Cardiovascular diseases “Dedinje”)
所在地:Heroja Milana Tepica 1, Beograd
電話:(011)-3601-701
Web:Institut za kardiovaskularne bolesti “Dedinje”別ウィンドウで開く
概要:心臓血管外科専門病院。心臓移植もこなします。建物は古いが手術成績、スタッフ、手術機材、使用機器、薬品等は全て欧米並みとされています。
(8)Institut za javno zdravlje Srbije “Dr. Milan Jovanovic Batut”(Institute for Public Health of Serbia “Dr. Milan Jovanovic Batut”)
所在地:Dr. Subotica 5, Beograd
電話:(011)-2684-566 ext.132 (Ambulance for passengers in international traffic
Web:Institut za javno zdravlje Srbije “Dr. Milan Jovanovic Batut”別ウィンドウで開く
概要:国立公衆衛生研究所となりますが、旅行者外来(Ambulance for passengers in international traffic)を持ちます。ベオグラードでは黄熱などのワクチンが接種できるのはここのみであり、他に髄膜炎、腸チフス、ジフテリア、コレラ、狂犬病などのワクチンの接種が可能です。平日8時から13時の受付となります。
(9)SVETI VID specijalna bolnica
概要:私立の眼科病院。眼科領域では手術など定評があります。
所在地:Dobracina 27, 11158 Beograd, Srbija
電話:+381113283737、+381693283737(携帯)
E-mail:hospital@svetivid.com
時間:月曜日から金曜日8時から20時、土曜日8時から18時
Web:SVETI VID specijalna bolnica別ウィンドウで開く
(10)A1 Dental
所在地:Vracar, Skerliceva 30/5, Beograd
電話:(011)-2452-192
概要:予約制の歯科専門クリニックです。インプラント治療も行っています。
(11)Cvetic Dent
所在地:Petrogradska 14, 111118 Beograd (Vracar)
電話:(011)3238-028
概要:予約制歯科クリニックです。インプラント治療、いびき対策の装具の作成なども行っています。

ノヴィ・サド

(1)Dom zdravlja Novi Sad(Health Center Novi Sad)
所在地:Bulevar cara Lazara 75, 21000 Novi Sad
電話:(021)-4879-000、(021)-4879-781
概要:一次救急診療(24時間)で外来のみの診療です。
(2)Klinicki centar Vojvodine(Clinic Center Vojvodina)
所在地:Hajduk Veljkova 1, 21000 Novi Sad
電話:(021)-484-3-484、(021)-6610-102
概要:救命救急センターを有する国立大学病院、総合病院。建物も機材も新しく、日本の病院と比べても遜色はありません。

ニーシュ

(1)Dom zdravlja Nis(Health Center Nis)
所在地:Vojvode Tankosica 15, 18000 Nis
電話:(018)-503-503、(018)-42-41-047
概要:一次救急診療(24時間)で外来のみの診療です。
(2)Klinicki centar Nis(Clinic Center Nis)
所在地:Bulevar Dr. Zorana Dindica 48, 18000 Nis
電話番号:(018)-506-900
概要:救命救急センターを有する国立大学病院です。

10 一口メモ(もしもの時の現地語)

  • Lekar、レカル
    Doktor、ドクトル
  • 飲み薬:Lekovi、レコビ
  • 注射:Injekcija、イネクツィヤ
  • Imam Bol u glavi、イマム ボル ウ グラービ
    Boli me glava、ボリ メ グラーバ
  • Imam Bol u grudima、イマム ボル ウ グルーディマ
    Bol u plucima、ボル ウ プルーチマ
  • Imam Bol u stomaku、イマム ボル ウ ストマクゥ
    Boli me stomak、ボリ メ ストマク
  • 下痢をする:Imam proliv、イマム プロリヴ
  • ここが痛い:Ovde me voli、オヴデ メ ヴォリ
  • 発熱:Groznica、グロズニツァ
  • Osecam se lose、オセチャム セ ロシェ
    Bolestan sam、ボレスタン サム
  • 気分が悪い:lose se osecam、ロシェ セ オシェチャム
  • 傷:ozleda、オズレダ
  • 左:Levo、レーボ
  • 右:Desno、デスノ
  • 病院:Bolnica、ボルニツァ
  • Mozete li da me odvedete do bolnice ?、モジェテ リ ダ メ オドベデテ ド ボルニツェ
    Molim vas, odvedite me do bolnice、モリム バス オドベディテ メ ド ボルニツェ
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