世界の医療事情

セルビア

2022年10月

1.国名・都市名・国際電話番号

 セルビア共和国(ベオグラード)(国際電話国番号 381)

2.公館の住所、電話番号

在セルビア日本国大使館
住所:Tresnjinog Cveta 13, 11070 Novi Beograd, Serbia
休館日:毎週土日
電話:(011)-301-2800

4.衛生・医療事情一般

 セルビア共和国は、人口約700万人、面積は北海道と同程度、首都ベオグラードより北部は平野部が広がり、南部〜西部は丘陵と山岳地帯が広がる海を持たない内陸国です。気候は湿潤大陸性気候に属し、北海道内陸部とよく似た気候で、寒暖の差が大きい点が特徴の一つとして挙げられます。夏には最高気温が40度近くになる日もある一方、冬は最低気温が氷点下10度以下となることもあります。月間降水量は年間を通して50~60mm程度で、やや乾燥しています。

 首都ベオグラードはドナウ川とサバ川の合流点に位置するため、秋から冬にかけては濃霧が発生しやすいことが知られています。

 国公立の総合病院、専門病院、診療所などの医療機関が存在しますが、建物、設備などは老朽化していて常に混み合っています。近年は最新の医療機器を有する私立病院が出現しています。

 24時間対応の救急病院がありますが、患者が多くトリアージ順に診ているために軽症と判断されると長時間待たされることもあります。

 病院受診時は全額自己負担となります。支払いは現地通貨(セルビアディナール)払いですが、私立病院ではクレジットカードでの支払いが可能なところもあります。パスポートなどの身分証を持参してください。また、携帯電話とその充電器もあると便利です。

5.かかりやすい病気・怪我

(1)上気道疾患

 自動車の排気ガスや、暖房機器の排煙等により大気汚染が見られます。このため風邪や気管支喘息などの呼吸器疾患やアレルギー疾患が発症、あるいは再燃することがあります。特に暖房の始まる10月から11月にかけては霧も発生しやすく、この傾向が強いので注意が必要です。

(2)動物・昆虫などによって伝搬される感染症

西ナイル熱

 蚊に刺されることによって発症するウイルス性感染症で、ベオグラードを含めてドナウ川流域地域では注意が必要です。2018年には約350名の患者が発生し、30数名ほどが亡くなっています。

ダニ脳炎

 春先から秋にかけてウイルスを保有するダニに咬まれることによってウイルス性脳炎を起こすことがあり、死亡例や後遺症が報告されています。森林地帯に入る方はダニに刺されないような服装や忌避クリームの塗布を心がけて下さい。治療法はなく、ワクチン接種が唯一の予防策です。

ライム病

 マダニに噛まれる事により発症するスピロヘータの一種ボレリア感染症です。刺された部位に紅斑が出て次第に拡大し、発熱、頭痛、嘔吐を伴い、関節炎、神経症状、心症状が出現して数ヶ月から数年続くことがあります。治療は抗生剤が有効です。

狂犬病

 野生動物に咬まれた場合はすぐに医療機関を受診して処置を受けてください。野生の動物に不用意に近づくことは危険です。

(3)その他の感染症

  • 疥癬が、ここ数年学校で増加傾向です。
  • ペットや家畜の糞便やダニ粉塵によって感染するリケッチア症のQ熱が発生しています。
  • 主に地方でリューシュマニア症などの蚊、蝿が媒介する感染症が発生しています。南部ではチフスやクリミア・コンゴ出血熱などもあり、注意が必要です。

6.健康上心がける事

 都市部では上水道はありますが、硬水に慣れていないとお腹を壊したりします。地方では水道設備が整っていなかったり、あっても汚染が見られたりして細菌性・ウイルス性食中毒、A型肝炎などの集団発生がみられます。飲用にはミネラルウオーターを用いるなど注意してください。

 当地の一般的な料理は肉中心で味付けが濃く、脂肪、塩分等を過剰に摂取することで肥満、高脂血症(高コレステロール血症)、高血圧、高尿酸血(痛風)を発症したり、悪化させたりすることがあります。また、肉食習慣と関連して、不適切な調理によって寄生虫症(エキノコッカス、トキソプラズマ症、旋毛虫症など)が発生しています。

 冬は暖房のために屋内が乾燥しています。上気道炎にかかりやすくなり、皮膚に強い痒みが生じます。加湿と肌の保湿をするようにしてください。

 市街地を出ると速度制限が緩くなり、無理な追い越しなどで交通事故が多発します。また、冬季は積雪がなくとも路面が凍結することもあり注意が必要です。外出時は防寒対策、すべり止め対策等が必要となります。

7.予防接種

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

(1)赴任者に必要な予防接種

 入国のために必要な予防接種はありません。赴任する方には、成人では、A型肝炎、B型肝炎、破傷風の予防接種を、小児では、日本の定期接種の他にA型肝炎を勧めています。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

  初回 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
BCG 出生時          
ポリオ(*1) 2ヶ月 3.5ヶ月 5ヶ月 18ヶ月 7歳 14歳
DTP 2ヶ月 3.5ヶ月 5ヶ月 17-24ヶ月 7歳
DT
14歳
DT
Hib 2ヶ月 3.5ヶ月 5ヶ月      
肺炎球菌 2ヶ月 3.5ヶ月 5ヶ月      
MMR 12ヶ月 7歳        
B型肝炎 出生時 2ヶ月 5ヶ月 12歳    

 *1 ポリオはIPVですが、OPVも選択可。
  DTP、ポリオ、Hibは2015年1月より5種混合ワクチン(Pentaxim)を使用
  麻疹、おたふく風邪、風疹は、それぞれ単独のワクチンは入手不可
  水痘ワクチンは任意接種

(3)

 小児が現地校やインターナショナルスクールに入学・入園する際は、ワクチン接種証明書が必要になります。入学・入園時の健康診断書も含め、当地の私立病院で発行が可能です。母子手帳を忘れずに持参してください。

(4)乳児健診

 当地の小児の健診は、生後6歳までは概ね1ヶ月~1年毎に行われており、健診スケジュールは医師の判断によります。外国人の場合は、有料となります。

8.病気になった場合(医療機関)

 救急車は電話番号「194」で24時間対応し、当番の公立の救急病院へ搬送されます。英語が通じにくいケースもあるようです。自分の症状と自分のいる住所と連絡の取れる電話番号を伝えてください。

◎ベオグラード

(1)Acibadem Bel Medic general hospital
所在地:Koste Jovanovica 87, Beograd
電話:(011)-309-1000
Web:http://www.belmedic.rs/別ウィンドウで開く
概要:内科、小児科、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻科、歯科など。私立病院。24時間オープン。大学病院等の専門医と契約し定期的な外来や必要なら呼び出すようなシステムでほぼ全科をカバー。専門的な検査や治療、中規模以上の手術は契約医師の病院(公立大病院)で実施。英語対応可能。入院設備はあるものの、症状が重いケースは大病院に移送します。市内4カ所に5施設あり、診療科によって受診する施設がことなることがあるので、予約の際に確認することが必要です。
Senjak診療所 所在地:Victoria loga 1
Novi beograd診療所 所在地:Palmira Toljatija 1
Vracar slavia診療所 所在地 Kneginje zorke 7
クレジットカード利用可能。
(2)MEDI group general hospital
所在地:Milutina Milankoviii br. 3, Novi Beograd
電話:(011)-40-40-100
Web:https://medigroup.rs/別ウィンドウで開く
概要:内科、小児科、一般外科、産婦人科、整形外科、眼科、耳鼻科、歯科、皮膚科、泌尿器科など。私立病院。24時間オープン。診療科が多く、常勤医も多い。英語対応可能。病院施設や機材は新しく本格的な手術室、分娩室(出産スタイルはリスクによるが希望通り可能)、入院設備あり。近年、邦人をはじめ外国人の受診が増えている。クレジットカード利用可能。
(3)Klinicki centar Srbije(Clinical Center of Serbia)
所在地:Pasterova 2, Beograd
電話:(011)-361-8444(救急)、(011)-361-7777(外来)
Web:http://www.kcs.ac.rs/別ウィンドウで開く
概要:救命救急センターを有するセルビア最大の国立総合病院。ベオグラード大学附属病院でもあり全診療科を網羅する。科によって別個の建物になっており古い建物が多い。心臓移植治療を始めセルビアでの先進医療のほとんどがここで行なわれている。近隣諸国からの患者も多く、救急車を呼ぶとほとんどここの救急室に運ばれる。
(4)Vojno Medicinska Akademija(Military Medical Academy)
所在地:Crnotravska 17, Beograd
電話:(011)-360-9398, (011)-360-9399, (011)-266-27-17
Web:http://www.vma.mod.gov.rs/別ウィンドウで開く
概要:救命救急センターを有する軍総合病院。前述(3)より規模は小さいがほとんどの診療科があり、軍関係者以外の一般人、外国人も受診可能。外国人用等VIPセクションあり。英語が通じにくい。
(5)Univerzitetska Decja Klinika(University Children Hospital)
所在地:Tirsova 10, Beograd
電話:(011)-2060-600, (011)-2060-777
Web:https://tirsova.rs/別ウィンドウで開く
概要:国立大学附属の小児科専門病院。
(6)Institut za zdravstvenu zastitu majke i deteta Srbije “Dr. Vukan Cupic”, Novi BeogradInstitute for Health Care of Mother and Child of Serbia “Dr. Vukan Cupic”, Novi Beograd
所在地:Radoja Dakica 6-8, Novi Beograd
電話:(011)-3108-108
Web:http://www.imd.org.rs/別ウィンドウで開く
概要:国立系の母子総合医療センター。小児心臓外科手術までこなす。
(7)Institut za kardiovaskularne bolesti “Dedinje”Institute for Cardiovascular diseases “Dedinje”
所在地:Heroja Milana Tepica 1, Beograd
電話:(011)-3601-701
Web:http://www.ikvbd.com/別ウィンドウで開く
概要:心臓血管外科専門病院。心臓移植もこなす。建物は古いが手術成績、スタッフ、手術機材、使用機器、薬品等は全て欧米並み。
(8)Institut za javno zdravlje Srbije “Dr. Milan Jovanovic Batut”Institute for Public Health of Serbia “Dr. Milan Jovanovic Batut”
所在地:Dr. Subotica 5, Beograd
電話:(011)-2684-566 ext.132(Ambulance for passengers in international traffic)
Web:http://www.batut.org.rs/別ウィンドウで開く
概要:国立公衆衛生研究所。旅行者外来(Ambulance for passengers in international traffic)を持つ。ベオグラードでは黄熱などのワクチンが接種できるのはここのみ。他に髄膜炎、腸チフス、ジフテリア、コレラ、狂犬病などのワクチンの接種が可能。
(9)SVETI VID specijalna bolnica
概要:私立の眼科病院。眼科領域では手術など定評がある。
所在地:Dobracina 27, 11158 Beograd, Srbija
電話:+381113283737、+381693283737(携帯)
E-mail:hospital@svetivid.com
時間:月曜-金曜 8時から20時、土曜 8時から18時
Web:svetivid.com別ウィンドウで開く
(10)A1 Dental
所在地:Vracar, Skerliceva 30/5, Beograd
電話:(011)-2452-192
概要:歯科専門クリニック。予約制。インプラント治療も行っている。
(11)Cvetic Dent
所在地:Petrogradska 14, 111118 Beograd(Vracar)
電話:(011) 3238-028
概要:歯科クリニック、予約制

○ノビ・サド

(1)Dom zdravlja Novi Sad(Health Center Novi Sad)
所在地:Bulevar cara Lazara 75, 21000 Novi Sad
電話:(021)-4879-000, (021)-4879-781
概要:一次救急診療(24時間)。外来のみ。
(2)Klinicki centar VojvodineClinic Center Vojvodina
所在地:Hajduk Veljkova 1, 21000 Novi Sad
電話:(021)-484-3-484, (021)-6610-102
概要:救命救急センターを有する国立大学病院、総合病院。建物も機材も新しく、日本の病院と比べても遜色ない。

○ニーシュ

(1)Dom zdravlja NisHealth Center Nis
所在地:Vojvode Tankosica 15, 18000 Nis
電話:(018)-503-503, (018)-42-41-047
概要:一次救急診療(24時間)。外来のみ。
(2)Klinicki centar NisClinic Center Nis
所在地:Bulevar Dr. Zorana Dindica 48, 18000 Nis
電話番号:(018)-506-900
概要:救命救急センターを有する国立大学病院。

9.その他の詳細情報入手先

大使館ホームページ https://www.yu.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

ワクチン接種医療機関について http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/vaccine/pdfs/serbia.pdf別ウィンドウで開く

10.現地語一口メモ

  • 医師:Lekar、レカル
      ;Doktor、ドクトル
  • 飲み薬:Lekovi、レコビ
  • 注射:Injekcija、イネクツィヤ
  • 頭痛がします:Imam Bol u glavi、イマム ボル ウ グラービ
          ;Boli me glava、ボリ メ グラーバ
  • 胸痛があります:Imam Bol u grudima、イマム ボル ウ グルーディマ
           ;Bol u plucima、ボル ウ プルーチマ
  • 腹痛があります:Imam Bol u stomaku、イマム ボル ウ ストマクゥ
           ;Boli me stomak、ボリ メ ストマク
  • 下痢をする:Imam prolivイマム プロリヴ
  • ここが痛い:Ovde me voliオヴデ メ ヴォリ
  • 発熱:Groznica、グロズニツァ
  • 吐気:Osecam se lose、オセチャム セ ロシェ
      ;Bolestan sam、ボレスタン サム
  • 気分が悪い:lose se osecamロシェ セ オシェチャム
  • 傷:ozledaオズレダ
  • 左:Levo、レーボ
  • 右:Desno、デスノ
  • 病院:Bolnica、ボルニツァ
  • 病院へ連れて行って下さい:Mozete li da me odvedete do bolnice ?、モジェテ リ ダ メ オドベデテ ド ボルニツェ
                ;Molim vas, odvedite me do bolnice、モリム バス オドベディテ メ ド ボルニツェ

11.新型コロナウイルス関連情報

 2020年3月に世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言した後、何度も感染流行の波を経て2022年8月の感染のピーク後は流行は勢いを減じ小康状態となっています。マスク着用、手洗いなどの基本的な予防対策を適宜行ってください。手指消毒用アルコール、マスクなどは薬局等で容易に入手できます。セルビア政府は情報提供のため、ウェブサイトを開設し、感染者数等に関して最新情報を更新するとしています。また新型コロナウイルス感染が疑われる際には保健省また滞在区域を管轄する衛生研究所に連絡し、指示を仰ぐように要請しています。

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