世界の医療事情

モルドバ共和国

2022年10月

1. 国名・都市名

 モルドバ共和国(国際電話番号373)キシナウ市(22)

2. 公館の住所・電話番号

 住所 National Business Center 5F, 73/1, Stefan cel Mare Blvd, Chisinau city, Republic of Moldova

 代表番号 +373(22)233-380

 FAX +373(22)233-390

3.医務官駐在公館ではありません。

 在ポーランド日本国大使館医務官が担当

4. 衛生・医療事情一般

 モルドバは、ルーマニアとウクライナに囲まれた人口268万人程の内陸国で、良質なワインを産する農業国です。首都キシナウは、大陸性温暖気候で、降雨は夏に多く、冬は曇空が続きます。ソビエト崩壊に伴う経済的な混乱は保健システムにも影響をおよぼし、一時的に人口が減少するなどの結果をもたらしました。現在、西側先進国をモデルとして保健システムの改革を行っていますが、国の経済状態は厳しく、順調に進んでいるとはいえません。国公立の医療機関は、整備が遅れており、在留邦人は、外国資本の民間病院を利用するケースが多いようです。救急車は電話番号112で呼ぶことが出来ますが、搬送先は国立病院となります。

5. かかり易い病気・怪我

(1)花粉症(Alergie la flori

 3月頃から、花粉症・花粉皮膚炎が始まります。この時期の原因アレルゲンは、白樺、ハンノキ、ヤナギ、ハシバミなどです。白樺花粉症などでは、口腔アレルギー症候群といって、果物を食べると口の中がかゆくなることがあります。春以降は、カモガヤなどのイネ科植物、初夏からはブタクサやヨモギなどが原因となります。

(2)食中毒(intoxicaţii alimentare

 気温の高い時期を中心に食中毒が散発します。原因は、サルモネラ菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌EHEC等です。手作りの瓶詰や自家製ソーセージによるボツリヌス中毒も通年見られます。一流ホテルであっても、ビュッフェの作りおきの料理や水道水で作られた氷が入った飲料水などで食中毒が起きることがあるので、見た目だけで衛生面を判断しないように注意して下さい。

(3)ウイルス性の感染症

 麻疹は2018年340人、2019年89人の感染が報告されています。水痘は、定期予防接種に含まれておらず、通年、子供を中心に感染者が散発しています。

(4)ダニによる噛傷

 春から夏にかけて、マダニ(căpușă、英Tick)に注意して下さい。モルドバでダニが媒介する感染症として、まずライム病(boala Lyme)が挙げられます。2018年には全国で2百人ほどの感染者が出ており、キシナウ市内でも複数の感染事例があります。遊走性紅斑という独特な皮疹が出ることがあります。診断治療が遅れると重い後遺症が残ります。ライム病より頻度は少ないですが、ダニ媒介性脳炎も感染リスクがあります。これはウイルス性の脳髄膜炎で、重篤な後遺症が残ったり死に至る事もある危険な感染症です。予防としては、虫除けを使う、長袖長ズボン等を着用し肌の露出を避ける、帰宅したらダニに刺されていないか全身を確認する等が挙げられます。虫除けとしては、DEETが有効です。ダニに刺された場合には、自分で無理に取り除こうとせず病院を受診してください。ダニ体内の病原体の有無を調べて、その結果により治療が行われます。自分で取り除いた場合は、空きビンなど密閉容器に入れて持参して下さい。ダニ媒介性脳炎の予防接種を受けておくと安心です。なお、蚊が媒介する感染症として、モルドバにはマラリアはありませんが、国境を接するルーマニアでは2021年に7人がウエストナイル熱に感染しており、モルドバでも感染者が出る恐れがあります。

(5)結核とHIV

 結核の発症率は、人口10万人あたり年間74人と日本の6倍です(2020年)。WHO世界保健機関は、モルドバをMDR-TB多剤耐性結核の蔓延国(high-burden country)30の一つに挙げています。人混みや咳をする人を避けて下さい。長引く咳、微熱、寝汗などの症状がある場合は早めに医療機関を受診して下さい。HIVについては、年間8百人弱の新規感染者があり、2020年の統計では、15才以上のHIV感染者数は1万4千人です。

(6)狂犬病(rabies

 モルドバでは、キツネなど野生動物の間で感染が維持されており、過去19年間に3名が狂犬病で亡くなっています。キシナウ市内でも野犬は多く、毎月百名以上が狂犬病専門医の診察を受けています。特にアウトドアがお好きな方や、地方~郡部に滞在される方は、モルドバへ渡航する前に狂犬病の予防接種を済ませておくことをお勧めします。また、万一、犬や野生動物に咬まれた場合は、石鹸でしっかり洗ったあと、速やかに医師の診察を受けて下さい。

6. 健康上心がける事

(1)飲用水

 水源の汚染は深刻です。浄水場は改善が進んでいますが、地域や建物によっては、水道管の老朽化による鉄さび、鉛や銅の混入リスクを否定できません。水道水をそのまま飲むのは避けて下さい。長期滞在なさる方は、逆浸透膜方式の浄水器を設置するのが一法です。

(2)食中毒の予防

 食中毒が毎年20件ほど発生しています。外食する際は、信頼出来るお店を選び、ストリートフードは避けます。自宅での注意点としては、食品は正規の流通ルートから購入し、購入後はできるだけ早く冷蔵庫に入れます。調理したらすぐに食べるようにし、残ったときは食卓の上に置いたままにせず、清潔な容器に移し替え、荒熱を取ってから冷蔵庫に入れます。冷蔵庫の中でも細菌は増殖するので、冷蔵庫を過信せず早めに食べるようにしてください。

(3)夏の健康管理

 夏季は日中の気温が30度を超える日が続き、紫外線も強力です。湿度が高く蒸し暑い日は、熱中症の心配があります。湿度が低い日は、気付かないまま大量に汗をかいて脱水のリスクがあります。いずれにせよ水分を十分に摂取し、外出時は、帽子や日焼け止めを使用するようにしてください。日焼け止めと虫除け(DEET)を併用する場合は、先に日焼け止めを塗って、その上に虫除けを使います。

(4)冬の健康管理

 暖房の効いた室内は極端に乾燥し、鼻や喉を痛め風邪を引きやすくなります。加湿器を用意し、手洗い・手指消毒・うがいを励行してください。また、日照不足から気分が落ち込みやすくなります。眠気、食欲過多、イライラなどの症状が出る場合もあります。出来るだけ太陽光を浴び、休暇などで気分転換を図ってください。

(5)健康診断・人間ドックの受診

 モルドバにおける病理診断は限定的です。特にがん検診は、定期的に日本で受診なさることをお勧めします。

7. 予防接種

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

(1)赴任者に必要な予防接種

 入国の際に義務づけられている予防接種はありません。モルドバでは、輸入が不安定で希望した時期にワクチン接種を受けられないことがありますので、必要な接種を済ませた上で渡航なさることをお勧めします。

 成人には、A型肝炎、B型肝炎、破傷風に加えて、接種が2回済んでいない場合は麻疹と風疹のワクチン接種をお勧めします。水痘も散発していますので、過去の感染歴やワクチン接種歴を踏まえて医師に相談して下さい。長期滞在者、アウトドアがお好きな方や地方滞在者、または東欧、旧ソ連諸国、中東へ出かける機会が多い方は、狂犬病、腸チフス、ダニ媒介性脳炎も接種しておくと無難です。

 お子様をお連れになる場合は、A型肝炎を含めて日本の定期予防接種スケジュールに従って接種を受けておいてください。小さなお子様をお連れになる場合は、MRワクチンとおたふくかぜ、水痘の接種を済ませてからになさると無難です。

(2)現地の小児定期予防接種一覧(2022年8月現在)

  初回 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
B型肝炎 24時間以内 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月    
BCG 2~5日          
ポリオ 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 22~24ヶ月 6~7才  
Hib 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月      
DTP 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 22~24ヶ月    
DT/Td         6~7才DT 15~16才Td
MMR 1才 6~7才 15~16才      
ロタ 2ヶ月 4ヶ月        
肺炎球菌 2ヶ月 4ヶ月 1才      

 ポリオは経口生ワクチンOPVが使われています。水痘と子宮頸がんワクチンは未導入です。

(3)現地校入学に際しては、接種証明書の提出が必要です。

 インターナショナルスクールについても同様です。赴任時に母子手帳を持参してください。

8. 病気になった場合(医療機関など)

◎キシナウ

(1)Medpark International Hospital (Spital Internațional Medpark)
所在地:Doga street 24, ChisinauChișinău, Andrei Doga street, 24
電話番号:+373(22)400-040
ホームページ:https://medpark.md/別ウィンドウで開く
概要:Joint Committee InternationalGold Seal認証を有する私立の総合病院。歯科を含めほぼ全診療科に対応。救急車、救急部あり。心筋梗塞のステント治療を実施している。海外旅行傷害保険のキャッシュレス・メディカル・サービスが使えるケースがあるので、加入している方は、日本の保険会社に連絡してから受診すると良いでしょう。
(2)Moldovan-German Diagnostic Center (Centrul de Diagnostic German)
所在地:Bd. Negruzzi 4/2, Chisinau, Chișinău, Bulevardul Constantin Negruzzi 4/2
電話番号:+373(22)840-000
ホームページ:https://cdg.md/別ウィンドウで開く
概要:検査・診断に重点をおいた私立の外来診療所です。CT、MRI、超音波診断装置など最新機器が導入されています。
(3)Caracas-Dental (Clinica Caracas Dental)
所在:Gheorghe Asachi street 65, Chisinau, Chişinău, Strada Gheorghe Asachi, 65
電話番号:+373(22)721-984
ホームページ:https://caracas.md/別ウィンドウで開く
概要:外国人の利用者も多い私立の歯科クリニック。

9. その他の詳細情報入手先

 在モルドバ日本国大使館ホームページ https://www.md.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

10. 一口メモ(もしもの時の医療モルドバ語)

 モルドバではルーマニア語、ロシア語が通じますので、世界の医療事情の「ルーマニア」編、「もしもの時のロシア語」をご覧下さい。

11. 新型コロナウイルス関連情報

 モルドバ保健省は、発熱や咳など疑わしい症状がある場合は、112あるいは特設番号(LINIA VERDE A AGENȚIEI NAȚIONALE PENTRU SĂNĂTATE PUBLICĂ, 0 800 12300)に連絡するように求めています。詳細は、モルドバ政府(https://www.covidinfo.gov.md/別ウィンドウで開く)のホームページをご覧下さい。ワクチン接種については、特設サイトが用意されています。(https://vaccinare.gov.md/別ウィンドウで開く

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