世界の医療事情

令和6年10月1日

1 国名・都市名(国際電話番号)

 エストニア共和国(国際電話番号372)

2 公館の住所・電話番号

在エストニア日本国大使館(毎週土曜日、日曜日休館)
住所:3rd Floor, Tallinn Business Center, 6 Harju Street, 15069 Tallinn, Estonia
電話:(06)-310-531から2
FAX:(06)-310-533
ホームページ:在エストニア日本国大使館別ウィンドウで開く

(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。

3 医務官駐在公館ではありません

 在スウェーデン日本国大使館医務官が担当

4 衛生・医療事情一般

 首都タリン市はバルト海に面する港湾都市で、ヘルシンキやストックホルム等の北欧の都市とほぼ同じ気候です。海洋の影響もあり寒暖差は内陸の都市ほどではありません。12月から3月にかけて街は積雪で覆われます。

 エストニアは旧ソ連諸国の中では衛生・医療面では最もよく整備された国のひとつです。医師の多くは英語を話すとされています。看護師等その他の医療関係者の中にも英語を解する人が少なくありません。医療機関の衛生環境、医療水準、設備等は、通常の診療にはほぼ問題なく対応可能な水準にありますが、日本や西欧諸国のような最新の医療設備や検査機器は期待できません。病気の種類や外傷の部位・程度によっては自国内で対応しきれず、現地で初期の応急処置を受けた後に、バルト海対岸のヘルシンキはじめ外国に移送となる場合があります。さらに、高度な治療が必要な場合は、西欧諸国や日本への移送を要することも考えられます。これら移送には高額な費用が必要となるため、充分な補償額の海外旅行傷害保険などへの加入をお勧めします。

5 かかり易い病気・怪我

 冬季のインフルエンザを含む上気道感染や、4月から5月にかけての花粉症などのアレルギー疾患は、よく見られる病気です。また、年間を通じてサルモネラや赤痢、ウイルス性の下痢(感染性腸炎)が散見されます。これらの他に以下の病気に注意が必要です。

(1)ダニ媒介性脳炎

 ダニ媒介性脳炎はマダニが媒介するウイルス性脳炎で、主に中央ヨーロッパから北欧、旧ソ連地域に広がる風土病です。首都タリン市を含め国土の大部分が、感染する可能性がある地帯で、春から夏にかけて森林や草地で散発的に流行がみられます。

 ダニに咬まれてから2から28日程度の潜伏期間(平均は7から14日)を経て発症します。第一期では、38度を超える発熱、倦怠感、頭痛など、特徴に乏しい症状が1から8日ほど継続します。その後症状は改善しますが、3分の1程度の患者は1から20日ほどの一時的な軽快後、第二期に移行します。第二期では40度を超える発熱が見られるほか、中枢神経系が影響を受け、髄膜炎、脳炎(およびそれに伴う麻ひ)、脊髄炎、神経根炎などの重篤な症状が出現し、最悪の場合死に至ります。回復後も40%近い患者で神経系の後遺症が見られます。

 ダニ媒介性脳炎の第一の予防はマダニに咬まれないようにすることです。散歩やハイキングなどで森林に入る場合は、長袖、長ズボン、帽子をかぶるなど、肌を露出しないよう注意し、肌が露出する部分には防虫剤を使用すると有効です。また、ダニ媒介性脳炎予防にはワクチンがあり、3回接種(初回免疫)した後、必要に応じてその3年後に追加接種を行い、以降は5年ごとの追加接種を行います。このワクチンは、日本でも当国内でも接種することが可能です。

(2)ライム病

 ダニはライム病という病気も媒介します(こちらは細菌感染症です)。

 夏に発生することの多い病気です。ダニに咬まれた箇所を中心に、痛みや盛り上がりの無いドーナツ状の発疹が発現し、発熱、悪寒、筋肉痛、頭痛など感冒様症状が現れます。治療を行わず放置すると、細菌が関節、心臓、中枢神経に拡大し、10%の患者で感染から6から12週以内に中枢神経障害が発生して顔面麻痺、リンパ球性髄膜炎、神経炎などが引き起こされます。さらに神経痛や遊走性紅斑、関節炎、心臓の炎症を引き起こすことも知られています。

 ライム病にはワクチンはありません。早期発見、抗生物質による治療が有効です。

(3)B型肝炎

 血液および体液により感染します。感染初期に黄疸や疲労などの症状が現れることがありますが、多くの場合には無症状であり、放置すると慢性化して肝炎、肝硬変、肝臓がんへと進展する危険性があります。また、時に感染後急性に劇症化し、死に至る場合もあります。予防接種が有効です。

6 健康上心がけること

 水道水はかなり硬度の高い硬水です。また、河川・海洋の汚染や古い水道管からの赤錆などの問題もみられるため、飲料水としてはミネラルウォーターをお勧めします。

 冬季には帽子、マフラー、手袋、厚い靴等の防寒具が必要です。また道路が凍結し滑り易くなりますので、外出の際には充分に注意してください。

 日本と比べて空気が乾燥しているため、入浴後にクリームやローションで保湿するなど皮膚の乾燥対策が大切です。また、加湿器の使用も有効です。

 風邪やインフルエンザなど上気道感染症の予防策として、外出から戻った際は手洗いとうがいを励行してください。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

(1)赴任者に必要な予防接種

 入国に際して必要な予防接種は特にありませんが、以下のものをお勧めします。

  • 成人:A型肝炎、B型肝炎および破傷風(追加接種)
  • 小児:基本的に日本での定期予防接種を受けてきてください。エストニアで推奨されている予防接種のうち、日本の定期予防接種で不足するものについては、現地の小児科医に個別相談してください。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

 現地校に編・入学する場合にはそれまでに受けた予防接種の証明書の提出が義務づけられています。なお、予防接種は希望制です。保護者や法定後見人が受けるワクチンを決めることができます。

年齢 予防接種
生後12時間
  • B型肝炎(1回目)(注1)
生後1から5日
  • BCG
2か月
  • ロタウイルス(1回目)
3か月
  • 6種混合(ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、Hib、B型肝炎)(1回目)
  • ロタウイルス(2回目)
4から5か月
  • 6種混合(ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、Hib、B型肝炎)(2回目)
  • ロタウイルス(3回目)(注2)
6か月
  • 6種混合(ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、Hib、B型肝炎)(3回目)
1歳
  • MMR(麻疹、おたふく、風疹)(1回目)
2歳
  • 6種混合(ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、Hib、B型肝炎)(4回目)
6から7歳
  • 4種混合(ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ)
12歳
  • HPV(ヒトパピローマウイルス)(1回目、2回目)(注3)
13歳
  • MMR(麻疹、おたふく、風疹)(2回目)
15から16歳
  • DTap(ジフテリア、破傷風、百日咳)
大人(10年毎)
  • ジフテリア、破傷風
  1. (注1)生直後のB型肝炎予防接種は、B型肝炎感染リスクのある乳児のみ(母親がB型肝炎感染者であるなど)に対し実施されます。
  2. (注2)5価ロタウイルスワクチンの場合のみ。異なるロタウイルスワクチンを接種した場合、3回接種となります。
  3. (注3)女児のみ接種。2回目の接種は、初回の接種から6から13か月以内に受ける必要があります。

8 病気になった場合(医療機関等)

 病気になった場合、原則としてまずホームドクター(家庭医)の診察を受け、その医師が専門医受診を要すると判断した場合のみ各科専門医(総合病院)の診察を受けることができます。エストニア国民医療保険に加入している場合、ホームドクターおよびホームドクターから紹介された各科専門医の診察費は無料です。エストニア国民医療保険に加入していない場合、公立・私立病院ともに50ユーロ以上の診察料が必要となります。

 すべての病院で英語が通じる訳ではありませんが、規模の大きな病院ではほぼ英語対応が可能とされています(以下の病院が比較的規模の大きな病院)。

(首都)タリン

私立病院

(1)Fertilitas kesklinna polikliinik (Fertilitas´s Centre Clinic)
所在地:Kaupmehe 4, 10114 Tallinn
電話:(6)-604-072
概要:市内中心部にある私立クリニック。耳鼻咽喉科、産婦人科(クリニック内での出産対応不可。但し、助産師による妊娠中及び産後の健診対応可)、整形外科、小児外科、耳鼻咽喉科、婦人科、泌尿器科の各種手術、小児科、睡眠障害治療、内部疾患治療(呼吸器疾患、循環器疾患、糖尿病等)の専門医の対応可能。歯科あり。英語可。
(2)Confido Meditsiinikeskus (Confido Medical Centre)
所在地:Veerenni 51, Tallinn
電話番号:1330、または、6-299-277
概要:産婦人科、皮膚科、泌尿器科医、睡眠障害治療、小児科、精神科、遺伝学、呼吸器学、理学療法、カイロプラクティック、依存症治療、外来手術、内分泌学の専門医の対応可能。

公立病院

 112番に電話して救急車を利用した場合には以下の(2)または(3)の病院にまず搬送されます。

(1)AS Põhja-Eesti Regionaalhaigla (North-Estonian Medical Centre)
ホームページ:AS Põhja-Eesti Regionaalhaigla(英語)別ウィンドウで開く
所在地:J. Sütiste tee 19, 13419 Tallinn
電話:6-17-1369(緊急時)、6-17-1049(外来受付)、(6)-17-1300(インフォメーションデスク)
概要:1150床を有する、エストニアで最大規模の総合病院。24時間の救急部門があり、医療診断・検査機器、集中治療室等も整備されている。2023年6月には、最先端技術を導入した腫瘍・血液内科等の専門診療科病棟(主にがんや腎臓治療)を開設。集中治療室は、多発外傷、心臓外科、神経外科、腫瘍外科、血管外科、術後集中治療に加え、重症感染症患者の治療、重症熱傷患者の集中治療センターの役割も担っている。他方で産科診療はなく院内での出産はできないが、未熟児治療は可能としている。救急医療センターでは、年間1日に約220人を対応。
在籍医師数500名、スタッフ総勢4800名。
(2)AS Ida-Tallinna Keskhaigla (East-Tallinn Central Hospital)
ホームページ:AS Ida-Tallinna Keskhaigla(英語)別ウィンドウで開く
所在地:Ravi tn 18, 10138 Tallinn
電話:6-207-040(緊急時)、6-66-1900(外来受付、インフォメーションデスク)
概要:総合病院。がん治療、放射線治療、産婦人科(出産可)や眼科(眼科専門病院として手術対応)にも対応している。脳外科と心臓外科以外のほとんどの診療科をカバーしており、24時間対応の救急部門を有する。コンピューター管理システムによる院内情報共有の下で、CTなど医療機器・設備も整備されている。
医師数約400名、看護師約1,000名を含むスタッフ総勢約2,500名。
(3)AS Lääne-Tallinna Keskhaigla (West-Tallinn Central Hospital)
ホームページ:AS Lääne-Tallinna Keskhaigla別ウィンドウで開く
所在地:Paldiski mnt. 68, 10617 Tallinn
電話:6-50-7301(インフォメーションデスク)、6-26-1314(外来受付)

小児科

 小児科診療を行っているのは私立病院が多く、以下の病院が規模の大きな病院です。

私立病院
(1)AS Fertilitas
ホームページ:AS Fertilitas(英語)別ウィンドウで開く
ア Fertilitas Mustamäe polikliinik (Fertilitas’ Mustamäe clinic)
所在地:Sütiste tee 17/1 (4. floor), Tallinn
電話:6-64-6444
イ Fertilitas kesklinna polikliinik (Fertilitas’ Tallinn centre clinic)
所在地:Kaupmehe 4, Tallinn
電話:(6)-60-4072
(2)AS Medicum Tervishoiuteenused (Medicum Healthcare Services)
ホームページ:AS Medicum Tervishoiuteenused(英語)別ウィンドウで開く
ア Lasnamäe Medicum
所在地:Punane 61, 13619 Tallinn
電話:(6)-05-0601
イ Sadama Medicum
所在地:Uus-Sadama 21, 10120 Tallinn
電話:8-81-1300
(3)City Tervisekliinik (City Health Clinic)
ホームページ:City Tervisekliinik(エストニア語)別ウィンドウで開く
所在地:Narva mnt 5, 10117 Tallinn (Foorumi keskus 5. korrus、フォーラムセンター5階)
電話:(6)-60-4931
(4)Qvalitas Arstikeskus (Qvalitas Medical Centre)
ホームページ:Qvalitas Arstikeskus別ウィンドウで開く
ア Pärnu mnt centre
所在地:Pärnu mnt 102c / Jalgaplli 1, Tallinn
電話番号:(6)-05-1500
イ Narva mnt centre
所在地:Narva mnt 7, 10117 Tallinn (I entrance, II floor)
電話番号:(6)-05-1500
(5)Confido Meditsiinikeskus (Confido Medical Centre)
ホームページ:Confido Meditsiinikeskus(英語)別ウィンドウで開く
所在地:Veerenni 51, Tallinn
電話番号:1330、または、6-299-277
公立病院
(1)Tallinna Lastehaigla (Tallinn Children’s Hospital Foundation)
ホームページ:Tallinna Lastehaigla(エストニア語)別ウィンドウで開く
所在地:Tervise 28, 13419 Tallinn
電話:(6)-97-7111
FAX:(6)-97-7143
概要:North-Estonian Regional Hospitalの関連病院。小児科専門病院。医師は英語可。

9 その他の詳細情報入手先

10 一口メモ(もしもの時の現地語)

  • 病院(入院治療用病院):haigla(ハイグラ)
  • 病院(外来患者用総合診療所):polikliinik(ポリクリニック)
  • クリニック(診療所):kliinik(クリニック)
  • 薬局:apteek(アプテーク)
  • 医者(男性):doktor/arst(ドクトル/アルスト)
  • 医者(女性):doktor/arst(ドクトル/アルスト)
  • 救急車:kiirabi(キーラビ)
  • 内科:üldarstiabi(ユルド・アルスト・アビ)
  • 外科:kirurgiline abi(キルリギリネ・アビ)
  • 整形外科:ortopeedia(オルトペーヂア)
  • 小児科:lastearst/pediaatria(ラステアルスト/ペヂアートリア)
  • 婦人科:günekoloogia(ギュネコローギア)
  • 歯科:stomatoloogia/hambaarst(ストマトローギア/ハムバアルスト)
  • 飲み薬:ravim/medikament(ラヴィム/メヂカメント)
  • 注射:süst/injektsioon(シュスト/イヌイェクツショーン)
  • 予防注射:vaktsiin(ヴァクシーン)
  • 頭痛:peavalu(ペアヴァル)
  • 胸痛:valu rinnus(ヴァル・リンヌス)
  • 胃痛:maovalu(マオヴァル)
  • 腹痛:kõhuvalu(クフヴァル)
  • 下痢:kõhulahtisus(クフラヒティスス)
  • 発熱:palavik(パラヴィク)
  • 吐き気:süda on paha(シュダ・オン・パハ)
  • 傷:vigastus(ヴィガスツス)
  • 具合が悪い。:Mul on halb olla(ムル・オン・ハルブ・オッラ)
  • 救急車を呼んでください。:Kutsuge kiirabi!(クツスゲ・キーラビ)
  • 病院へ連れて行ってください。:Palun viige mind haiglasse!(パルン、ヴィーゲ・ミンヅ・ハイグラッセ)
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