世界の医療事情
ベラルーシ
1 国名・都市名(国際電話番号)
ベラルーシ共和国(国際電話番号375)、ミンスク市(017)
2 公館の住所・電話番号
Prospekt Pobediteley 23/1, 8th floor, Minsk 220004, Republic of Belarus
電話:+375-17-203-6233、+375-17-203-6037(代表)
Fax:+375-17-390-2169
3 医務官駐在公館ではありません
在ロシア日本国大使館医務官が担当
4 衛生・医療事情一般
ベラルーシは亜寒帯に属し、気候は冷涼で通年降雨があります。首都ミンスク市は、北緯53度に位置し、冬期間は昼間の時間が短い上に曇り空が続き、12月の平均月間日照時間は25時間しかありません。
医療機関の設備・清潔度や医師の力量は様々ですが、平均してみれば医療レベルは一定の水準にあります。しかし、富裕層を対象とした私立病院でも医師・スタッフの多くは基本的にロシア語しか解さず、言葉が出来ないと受診は難しくなります。
医療制度は、外来診療だけ行う施設であるポリクリニカや、各診療科の病院が独立していることなど旧ソ連の影響が色濃く残ります。私立病院はありますが、いずれもポリクリニカであり、救急医療や本格的な入院加療、出産・分娩は公立の施設に頼ることになります。救急車も、私立・民間のものは無く、公立(103番)だけとなっています。
ベラルーシに入国する際、医療保険に加入している証明を求められます。日本で加入した海外旅行傷害保険の保険証書(英語表記)を提示しても受理されない事例が頻繁に起きています。その場合は、入国審査場の手前にある窓口で地元の強制医療保険に加入することとなります。費用は、滞在期間(1年間では170ユーロ)に応じた現金払い(ユーロ、米ドル、ベラルーシ・ルーブル)です。
お薬については、薬局ではベラルーシの処方箋がなければ購入できない医薬品が多く、持病(花粉症など)のお薬(内服、点眼液、点鼻液など)と常備薬(皮膚の保湿剤、整腸剤、胃薬、目薬、鎮痛薬、総合感冒薬、漢方薬など)は日本から持参なさると良いでしょう。ただし、向精神薬や一部咳止めの持ち込みは制限されています。
5 かかり易い病気・怪我
(1)花粉症
春先は雪解け前から花粉症・花粉皮膚炎が始まります。この時期の原因アレルゲンは、白樺、ハンノキ、ヤナギ、ハシバミなどです。白樺花粉症などでは、口腔アレルギー症候群といって果物を食べると口の中がかゆくなることがあります。春以降は、カモガヤなどのイネ科植物、初夏からはブタクサやヨモギなどが原因となります。
(2)食中毒
気温の高い時期を中心にサルモネラ菌などによる食中毒が散発します。手作りの瓶詰や自家製ソーセージによるボツリヌス中毒も通年見られます。一流ホテルであっても、ビュッフェの作りおきの料理や水道水で作られた氷が入った飲料水などで食中毒が起きることがあるので、注意して下さい。
(3)ダニによる噛傷
春から夏にかけて、森林や草原に出かける際は、マダニ(Tick)に注意して下さい。ベラルーシでダニが媒介する感染症として、まずライム病が挙げられます。診断治療が遅れると重い後遺症が残ります。遊走性紅斑という独特な皮疹が出ることがあります。ライム病より頻度は少ないですが、ダニ媒介性脳炎も感染リスクがあります。これはウイルス性の脳髄膜炎で、重篤な後遺症が残ることがあり、場合によっては命に関わる危険な感染症です。予防としては、虫除けを使う、長袖長ズボン等を着用し肌の露出を避ける、帰宅したらダニに刺されていないか全身を確認する等が挙げられます。虫除けとしては、有効成分がDEET(N,N-Диэтилтолуамид)の製品が確実です。DEETの濃度が30から50%であれば3から5時間おきに使用するようにして下さい。マダニに刺された場合には、自分で無理に取り除こうとせず病院を受診してください。マダニ体内の病原体の有無を調べて、その結果により治療が行われます。自分で取り除いた場合は、空きビンなど密閉容器に入れて持参して下さい。屋外活動がお好きな方は、ダニ媒介性脳炎の予防接種(日本のトラベルクリニックや当地のクリニックで接種可能)を受けておくと安心です。
(4)冬季うつ
冬期間は、昼間が短い上に曇り空が続き、日照不足から「冬季うつ」という状態になることがあります。症状としては、いくら寝ても寝足りない、食欲が増す、イライラして集中力が落ちるなどです。
(5)冬期間の転倒事故
凍った路面では、手首をついて骨折、尻もちをついて腰痛を来す、頭をぶつけるなど転倒事故が起きやすくなります。
(6)HIV/エイズと結核
ベラルーシでは2023年に1,463人のHIV感染者が報告されています(そのうちミンスク市は340人)。感染者の87.8%が30歳以上で、性的接触による感染が83.3%、静脈注射による感染が14.4%です。ベラルーシ国内のHIV感染者数は2万5千人です。不特定多数との性交渉にはリスクがあるとお考え下さい。
結核については、2023年に1,276人(人口10万人中28人、日本は人口10万人中8.1人)が診断されています。
WHO世界保健機関は、ベラルーシをMDR-TB多剤耐性結核の蔓延国(high-burden country)の一つに挙げています。人混みや咳をする人を避けて下さい。長引く咳、微熱、寝汗などの症状があったら早めに医療機関へ。
(7)狂犬病
ベラルーシではヒト感染は極めてまれですが、野生動物の間で感染が継続しています。屋外活動がお好きな方や地方から郡部に滞在される方は、予防接種を済ませておくと無難です。
6 健康上心がけること
(1)冬期間の健康管理
暖房の効いた室内は空気が極端に乾燥します。皮膚の乾燥のほか、喉や鼻を痛め感冒に罹りやすくなります。湿度計を用意し室内の加湿を行って下さい。短い時間でも外に出て日光を浴び、身体を動かすことは冬季うつの予防になります。
(2)飲用水
水道水の水質は改善が進みましたが、地域や建物によっては水道管の老朽化による鉄さび、鉛や銅の混入リスクを否定できません。水道水をそのまま飲むのは避けて下さい。長期滞在なさる方は、浄水器を設置するのが一法です。ミネラルウオーターの宅配サービスも利用出来ます。
(3)食品へのチェルノブイリ原発事故の影響
ベラルーシでは、食品中の放射線量について厳格な基準・検査手順が定められ、それに合格した製品に販売許可が与えられます。スーパーや市場で売られているベラルーシ産の食品については、チェルノブイリ原発事故による残留放射能の問題はないとされています。しかし、きのこ、いちご、酪農製品には放射性物質が土や草から移行しやすいので、これらの食品で産地不明のものについては避けるのが無難です。
7 予防接種(ワクチン接種機関含む)
(1)赴任者に必要な予防接種
入国に際し、ベラルーシで義務付けているものはありません。供給が不安定で希望した時期に予防接種を受けられないことがありますので、必要な接種を済ませた上で渡航されることをお勧めします。
成人には、A型肝炎、B型肝炎、破傷風に加えて、接種が2回済んでいない場合は麻疹と風疹の予防接種をお勧めします。水痘も散発していますので、過去の感染歴や予防接種歴を踏まえて医師に相談して下さい。長期滞在者、アウトドアがお好きな方や地方滞在者、または東欧、旧ソ連諸国、中東へ出かける機会が多い方は、狂犬病、腸チフス、ダニ媒介性脳炎も接種しておくと無難です。
お子様をお連れになる場合は、A型肝炎を含めて日本の定期予防接種スケジュールに従って接種を受けてください。小さなお子様をお連れになる場合は、MRワクチンと水痘ワクチンを済ませてからが無難です。
(2)現地の小児定期予防接種一覧
予防接種 | 初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | 6回目 | 7回目 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
B型肝炎 | 12時間 | 2か月 | 3か月 | 4か月 | |||
BCG | 3から5日 | ||||||
DPT | 2か月 | 3か月 | 4か月 | 18か月 | 6歳 DT |
11歳 ジフテリア |
16歳 DT |
Hib | 2か月 | 3か月 | 4か月 | ||||
ポリオ IPV |
2か月 | 3か月 | 4か月 | 7歳 | |||
肺炎球菌 | 2か月 | 4か月 | 12か月 | ||||
MMR | 12か月 | 6歳 |
水痘、ロタウイルス、子宮頸がんワクチンは未導入です。2・3・4か月の接種は、小児用6種混合ワクチン(DTP+B型肝炎+Hib+ポリオ)が使われます。
(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明
現地校入学に際しては、接種証明書の提出が必要です。インターナショナルスクールについても同様です。渡航時に母子手帳を持参してください。
8 病気になった場合(医療機関等)
(1)救急電話番号:103
ベラルーシには民間の緊急医療サービスは存在せず、公立のみです。救急車を呼んだ際、ベラルーシの強制医療保険に加入していれば料金は請求されません。
(2)主な医療機関
一般の外来診療(風邪、下痢、軽い怪我など)であれば、まず私立の医療機関を受診する在留邦人が多いようです。各診療科の医師が常駐しているわけではないため、事前予約が必要です。往診に応じる施設もあります。なお、以下のリストは一般的な情報提供として作成したもので、各医療機関の診療の質を保証するものではありません。なお、電話番号は携帯電話からかけることを念頭に+375からの表記を掲載しました。支払いについては、経済制裁により日本等で作ったクレジットカードが使えない可能性があります。ベラルーシには日本で加入した海外旅行傷害保険のキャッシュレス・メディカル・サービスの利用が可能な医療機関があります。病院を受診する前に、加入している保険会社に直接連絡しお尋ねください。また、ベラルーシ医療機関の病理検査は信頼に乏しいので、希望者は本邦におけるがん検診をお勧めします。
(首都)ミンスク市(順不同)
- 私立クリニック
- ア Lode (ЛОДЭ)
- 所在地:пр. Независимости 58А(Nezavisimosti avenue 58A)
ул. Гикало 1(Gikalo street 1)(小児科)
ул. Сурганово 39(Surganova street 39)(歯科) - 電話番号:111(総合案内)
+375-17-293-9800、+375-29-638-3003、+375-29-270-1003 - ホームページ:Lode(ЛОДЭ)(ロシア語)
- 概要:内科・外科の他、整形外科、皮膚科等主要な診療科の外来受診が可能。入院病棟(分院)、手術室あり。予防接種可(要予約)。予約時に希望すれば英語通訳対応可。キャッシュレス・メディカル・サービス対応。邦人利用実績あり。現金(ベラルーシ・ルーブル)及び日本のクレジットカード利用可。
(平日)7時30分から21時、(土曜日)8時から21時、(日曜日)9時から16時 - イ Nordin Medical Center(Нордин)
- 所在地:ул. Сурганова 47Б(Surganova street 47B)
- 電話番号:159(総合案内)
+375-25-607-0159、+375-44-506-0159、+375-33-607-0159 - ホームページ:Nordin Medical Center(Нордин)(ロシア語)
- 概要:小児科や歯科を含め各診療科に対応。手術室(分院)あり。予防接種可。(平日)7時30分から22時、(土曜日)8時から21時、(日曜日)8時から16時
- ウ Kravira(Кравира)
- 所在地:пр. Победителей 45(Pobediteley Avenue 45)
- 電話番号:403(総合案内)、+375-17-224-2543、+375-33-900-0003
- ホームページ:Kravira(Кравира)(ロシア語)
- 概要:戦争歴史博物館近くの本院の他、市内2か所に分院あり。小児科・歯科にも力を入れている。邦人利用実績あり。現金及び日本のクレジットカード利用可。(平日)8時から21時、(土曜日、日曜日)9時から18時
- エ Merci(Клиника "Мерси")
- 所在地:ул. Игнатенко, 8(Ignatenko street 8)
- 電話番号:414(総合案内)
+375-17-311-9414、+375-29-550-0414 - ホームページ:Merci(Клиника "Мерси")(ロシア語)
- 概要:2021年に開業した新しい医療機関で、最新の検査機器を導入している。予約時に英語対応可能な医師または英語通訳を依頼できる。
(平日、土曜日、日曜日)8時から21時 - 公立病院
- オ ミンスク市救急病院City Clinical Emergency Hospital
(Городская клиническая больница скорой медицинсой помощи г. Минска) - 所在地:ул. Кижеватова 58 (Kizhevatova street 58)
- 電話番号:+375(17)276-7621(ヘルプセンター)、+375(17)287-0010(有料診察)、患者容態問合せ+375(17)276-7621(日中)、+375(17)287-0000(夜間)
- ホームページ:ミンスク市救急病院City Clinical Emergency Hospital(ロシア語)
- 概要:ミンスク市で救急車を呼んだ際の搬送先病院。全ての診療科の救急対応が可能。24時間対応。英語対応可。病院内には英語表記の案内板や英文のインフォームドコンセント書式が準備されている。在留邦人の利用実績あり。必要に応じて、別の専門病院に移送されるケースもある。日本のクレジットカード利用可。
9 その他の詳細情報入手先
- ホームページ:在ベラルーシ日本国大使館
10 一口メモ
ベラルーシではロシア語が通じますので、「もしもの時のロシア語」をご覧下さい。