世界の医療事情

令和6年10月1日

1 国名・都市名(国際電話番号)

 アゼルバイジャン(国際電話番号994)

2 公館の住所・電話番号

在アゼルバイジャン日本国大使館(土曜日、日曜日休館)
住所:1033, Izmir Street, Hyatt Tower 3, 6 fl., Baku AZ1065, Republic of Azerbaijan
電話:(012)-490-7818、または19
ホームページ:在アゼルバイジャン日本国大使館別ウィンドウで開く

(注)土曜日、日曜日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。

3 医務官駐在公館ではありません。

 在イラン日本国大使館医務官が担当

4 衛生・医療事情一般

 アゼルバイジャンは日本の東北地方に相当する緯度に位置します。朝夕の温度変化が大きく天候が変化しやすいです。

 バクー市内の衛生環境は良好ですが、レストランでの食中毒の事例も散見されますので、食事の前は手洗いや手指消毒を心がけ、肉、魚はよく火が通ったものを食べてください。バクー市内の水道水は日本の水質基準を概ね満たしておりますが、ホテルやアパートの水道管や貯水タンクに問題があることもあるので、飲用水はできればペットボトル水を使用し、水道水を飲む際は煮沸して下さい。

 バクー市内の外国人向けの私立病院の設備の質は低くはありませんが、各診療科の連携が不十分で、日本ほどは適切な治療が行われない例もあり、プライバシー等に関する習慣の違いや言葉の問題等もあることから、詳しい検査・手術・入院等が必要な場合は、先進国の医療機関を受診することをお勧めします。出産についても、自然分娩に対応できる医師が少なく、殆どが帝王切開で行われていることや、赤ちゃんに異常があった場合のケアに不安があることから、本邦等の先進国での出産が安全です。外国人向けの私立病院を除いて、英語を理解する医療職は少なく、受診の際はアゼルバイジャン語あるいはロシア語の通訳を必要とすることが多いです。輸血製剤はすべて献血由来の安全なものが用いられています。完全看護であり、入院に際して家族の付き添いは必須ではありません。医療費は高額ですので、事前に海外旅行保険への加入を強くお勧めします。

 バクー市内に薬局はふんだんにあり、一通りの薬剤は入手可能です。抗生剤、睡眠薬は医師の処方箋が必要になります。

5 かかり易い病気・怪我

(1)交通事故

 無謀運転、車両台数の急増、不十分な道路整備により人口10万人あたりの交通事故死者数は6.56人と、日本の約2.5倍です。外を歩く際は、歩道上や青信号下での横断歩道であっても、周囲の車両に注意して歩行してください。

(2)旅行者下痢症、食中毒、A型肝炎、腸チフス、アメーバ赤痢

 アゼルバイジャン到着後、軽度の下痢や腹痛等を認める邦人は多いです。症状が軽度であれば、スポーツドリンク等で水分を補給し、消化に良い物を食べれば多くは数日以内に軽快します。

 日本に帰国後も含めて、もし激しい下痢や血便、強い腹痛、高熱を伴う場合、黄疸(眼や皮膚が黄色くなる)または症状が数日以上続く場合は、病原性大腸菌等による食中毒、A型肝炎、腸チフスやアメーバ赤痢等が疑われますので、病院受診が必要です。

(3)麻しん(はしか)

 世界で最も麻しんが流行している国の一つで、2023年の人口10万人あたりの患者数は約137人と、日本の約7倍も確認されました。麻しんは感染力が非常に強く、簡単にヒトからヒトに感染する急性のウイルス性感染症です。先進国であっても、まれに肺炎や脳炎になることがあり、患者1,000人に1人が死亡するとされています。特に妊婦は感染すると重症化しやすいとされます。潜伏期間は10日から12日。症状は、発熱、鼻水、眼の充血等の風邪様症状の後に、高熱と全身発疹が出現します。治療は、特効薬がなく安静を中心とした対症療法です。

 麻しんにかかったことがない方、麻しんの予防接種を受けたことがない方、ワクチンを1回しか接種していない方または予防接種を受けたかどうかがわからない等、麻しんの免疫が不十分な方は予防接種をお勧めします。特に滞在中に妊娠を予定する女性は、妊娠前の接種を強くお勧めします。

(4)狂犬病

 犬に限らず全ての哺乳類が感染し、感染動物に咬まれたり引っ掻かれたりすることで感染します。潜伏期間は1から2か月、症状は発熱、頭痛、筋肉痛などの感冒様症状と咬傷部位の痛みで始まります。発症した際の死亡率はほぼ100%です。バクー市内は多数の野良猫がおり、郊外には大型の野犬も徘徊しています。犬、猫等の動物には不用意に触らないようにしましょう。もし咬まれたり引っ掻かれたりしたら、予防接種を完了している方も含めて、直ちに傷を流水で洗い、病院を受診してください。

(5)リーシュマニア症

 サシチョウバエが媒介し、刺されて数週間から数か月後に、皮膚に潰瘍や結節が生じます。治療は抗寄生虫剤です。治癒しても目立つ傷跡が残る場合があります。稀に内臓リーシュマニア症に罹患する場合もあります。サシチョウバエは夜間に活動し、蚊よりも小さく、羽音もしない為、気づかずに刺されることが多いです。キャンプなどで、夜間に野外で過ごす際は、虫よけスプレーの使用、肌の露出を避ける等の対策をとってください。

(6)クリミア・コンゴ出血熱

 マダニが媒介するウイルス性出血熱です。各地で散発的に報告されています。潜伏期は2から9日。主な症状は、発熱、頭痛、筋肉痛、腰痛、関節痛です。重症化すると全身の出血がみられます。有効な治療薬は無く、死亡率は15%から40%と高率です。草むらや藪に入る際は、虫よけスプレーの使用、肌の露出を避ける等の防ダニ対策をとり、野生動物や家畜に触れないようにして下さい。

(7)B型肝炎

 性行為、入れ墨、ピアス処置で感染する可能性があります。リスクを伴う行動は控えて下さい。

6 健康上心がけること

 冬季のバクーは風が強く埃っぽくなり、花粉症を発症する邦人も多いです。日本と同様に、マスクを着用する事をお勧めします。大気汚染が酷くなる日が時々ありますので、喘息などの呼吸器の持病をお持ちの方は、かかりつけ医に相談して、症状の悪化に備えた薬を持参することをお勧めします。

 バクー市内には野良猫が多数いて、現地人が餌付けして抱っこする所をよく見かけますが、狂犬病のリスクがあるため、子猫であっても触らないようにしましょう。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

(1)赴任者に必要な予防接種

 入国に必須なワクチンはありませんが、長期滞在者は以下のワクチンを接種しておくことをお勧めします。

  • 成人:破傷風、A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、狂犬病、麻しん(十分な抗体がある人は不要)、季節性インフルエンザ、帯状疱疹(50歳以上)
  • 小児:日本の定期接種、A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、ムンプス(おたふくかぜ)、季節性インフルエンザ

(2)現地の小児定期予防接種一覧

予防接種 初回 2回目 3回目 4回目 5回目
結核(BCG) 出生時        
5種混合(DTWP+Hib+HepB)(注) 2か月 3か月 4か月    
ジフテリア、百日咳、破傷風(DPT) 18か月        
ジフテリア、破傷風(DT) 6歳        
経口ポリオ生ワクチン(OPV) 2か月 3か月 4か月 18か月  
筋注不活化ポリオワクチン(IPV) 2か月 6か月      
麻しん・ムンプス・風しん(MMR) 12か月 4から6歳      
肺炎球菌(PCV) 2か月 4か月 6か月    
ビタミンA(Vit.A) 12か月 18か月      

(注)D:ジフテリア、T:破傷風、wP:百日咳、Hib:インフルエンザ菌b型、HepB:B型肝炎

  • ポリオワクチンは不活化ワクチンと経口生ワクチンの併用。
  • 5種混合の内容が日本と異なり、ポリオワクチンではなくB型肝炎ワクチンとHibワクチンが含まれる。
  • 5種混合に含まれる百日咳ワクチンの種類が違い、日本で接種するよりも副反応が強い。
  • 麻疹(はしか)・風疹・おたふくかぜの3種類が入ったMMRワクチンが使用される。
  • ビタミンAが含まれる点は日本の定期接種と異なっています。

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 渡航前に接種証明書の必要性の有無を確認し、もし必要であれば医師に依頼して、母子手帳等を基に英語またはロシア語(可能であればアゼルバイジャン語)等で接種証明書を作成してもらってください。

8 病気になった場合(医療機関等)

 公立救急車の電話番号は「103」です。ただし、英語があまり通じず現場到着まで時間がかかることもあり、救急隊員の医療レベルは日本にやや劣ります。一方、バクー市内の私立病院のいくつかは、プライベート救急車を保有しており、専用の電話番号(下記の病院説明に記載)をかければ有料(150マナト前後)ですが、英語はある程度通じ、現場到着も早く、質の高い応急処置を期待できます。

 また、ヘイダル・アリエフ国際空港の国際線ターミナル3階出国審査場前には、診療所(Medical Point)があり、英語が通じる医師と看護師が、旅行者のために24時間常駐しています。応急処置に加えて、必要に応じてバクー市内の病院への救急車搬送も調整してくれます。空港内で体調不良となった場合はこちらを受診することをお勧めします。

(首都)バクー

(1)Bona Dea International Hospital(ボナ・デア・インターナショナル・ホスピタル)
所在地:Mehdi Abbasov Street 2 Baku, 1060
ホームページ:Bona Dea International Hospital(英語)別ウィンドウで開く
電話:(012)-492-1092、プライベート救急車:900
概要:私立総合病院。医療機器は最新式で、欧米での研修経験のある医師が多数勤務しています。救急は小児科も含めて24時間対応可であり、入院は追加料金を払えば個室対応も可能です。歯科と予防接種も可。英語はよく通じ、海外の薬の取り寄せなど外国人患者向けのサービスが充実しています。海外への転院搬送にも対応可です。カード使用可。
(2)Central Clinic Hospital(セントラル・クリニック・ホスピタル)
所在地:76 Parliament ave., Baku
ホームページ:Central Clinic Hospital(アゼルバイジャン語)別ウィンドウで開く
電話:(012)-492-1092
FAX:(012)-492-4131、プライベート救急車:105
概要:私立総合病院。医療機器は最新式で、救急は小児科も含めて24時間対応可であり、入院は追加料金を払えば個室対応も可能です。歯科と予防接種も可。英語は比較的よく通じ、外国人患者の海外への転院搬送にも対応可です。カード使用可。
(3)International SOS Clinic Baku(ISOSクリニック・バクー)
所在地:29C Yeryomenko, Baku, 1025
電話:(012)-489-5471
FAX:(012)-489-5470
ホームページ:International SOS Clinic Baku(英語)別ウィンドウで開く
概要:会員制診療所。非会員の受診は不可ですが、小児救急は非会員でも事前連絡をすれば受診できることもあります。歯科と予防接種も対応可。24時間対応ですが、CTやMRI検査機器は無く、入院もできないため、重症患者の受診には向きません。患者の大半は外国人であり、英語は非常に良く通じ、海外への患者搬送の調整など、外国人患者対応に習熟しています。カード使用可。
(4)Caspian International Hospital(カスピアン・インターナショナル・ホスピタル)
所在地:31, 1-ci yaşayış massivi, Baku 1021
電話:(012)-502-5015/5016/5018
ホームページ:Caspian International Hospital(トルコ語)別ウィンドウで開く
概要:私立総合病院。産婦人科、小児科が特に充実しています。入院は追加料金を払えば個室対応も可です。英語は比較的よく通じます。また日本の病院で研修経験のある、日本語堪能な小児科医が勤務しており、必要に応じて通訳を務めてくれます。
(5)Appro Hospital(アプロ・ホスピタル)
所在地:Yeni Suraxanı qəsəbəsi, Bakı şəhəri, 4H Mərkəzi Küçə, Bakı 1128
電話:(012)-525-0901、プライベート救急車:010または203
ホームページ:Appro Hospital(アゼルバイジャン語)別ウィンドウで開く
概要:ヘイダル・アリエフ空港近傍の、新設されたばかりの私立総合病院。医療機器は最新式で、救急は小児科も含めて24時間対応可です。英語はあまり通じませんが、今後外国人患者向けのサービスが充実していく予定です。
(6)Glamour Dental Clinic”Stomatoloji Klinika(グラモール・デンタルクリニック)
所在地:40 İnşaatçılar prospekti, Bakı, 1065
電話:(055)-753-7810
概要:日本大使館近傍の歯科診療所。欧米で研修を積んだ歯科医が勤務しており、比較的英語が通じます。

10 一口メモ(もしもの時の現地語)

  • 医師:həkim(ヘキム)
  • 飲み薬:dərman(デルマン)
  • 注射:iynə(イーネ)
  • 頭痛:başım ağrıyır(バシム アグリユル)
  • 腹痛:qarnım ağrıyır(ガルヌム アグリユル)
  • (痛い場所を指で指して)ここが痛い:bura ağrıyır(ブラ アグリユル)
  • 下痢をしています:ishal oldum(イスハル オルドュム)
  • 熱がある:qızdırma var(グズドュルマ ヴァル)
  • 吐き気:ürək bulantısı(ウレキ ブラントゥス)
  • 傷:yara(ヤラ)
  • 気分が悪い:özümü pis hiss edirəm(オズム ピス ヒッセディレム)
  • 一番近い私立病院へ連れて行ってください:ən yaxın özəl xəstəxanaya aparım(エン ヤクン オゼル ハスタハナヤ アパルン)

当地ではロシア語も通じます。「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時のロシア語)も参照ください。

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