世界の医療事情

ベネズエラ

平成30年10月1日

1 国名・都市名(国際電話番号)

 ベネズエラ・ボリバル共和国(カラカス市)(国際電話番号58)

2 公館の住所・電話番号

住所:Torre Digitel Piso 9 Av. Don Eugenio Mendoza con Esquina Calle Miranda, Urb. La Castellana, Chacao, Miranda
電話:0212–262–3435
ホームページ:https://www.ve.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

(注)休館日は大使館ホームページにて案内していますので,ご覧ください。

3 医務官駐在公館ではありません

 在コロンビア日本国大使館医務官が担当 

4 衛生・医療事情一般

(1)首都カラカス市は,標高900メートルにあり,熱帯地域にありながら,一年中,日本の初夏を思わせる快適な気候です。カラカス市内の衛生状態は,これまでそれほど悪くはないと言われてきましたが,昨今の経済状況の悪化を受けて,上水道の供給やゴミ収集が長期間行われない地区が出る等,その衛生環境は悪化の一途をたどっています。また,カラカス首都圏は,盆地上の地形にスラム(貧民街)が取り囲むように広がっており,これらのスラムでは,衛生状態が悪く,コレラなどが発生することがあります。罹患しないためには,水道水は飲まない,手洗いやうがいを励行する等の対策を励行する必要があります。

(2)カラカス市内には,海外で研修を受けた医師が勤務する私立総合病院がいくつかあり,従来その医療水準は高く,施設や設備は整備されていると言われてきましたが,近年の経済の悪化により,優秀な医師の海外流出や設備の老朽化,医薬品の不足等により,必ずしも先進国に準じた医療を受けられない可能性があり,緊急性のない外科手術などは避けるのが無難でしょう。

(3)なお,公立病院の医療水準や衛生状態は壊滅的な状態です。公立病院の受診はお勧めできません。避けてください。特にべネズエラ経済の悪化による外貨不足から,必要とされる医療設備のメンテナンス部品,医薬品,マスクや手袋等の消耗品さえ入手できない状況が発生しています。また,物不足に加え,待遇が改善されないことによる医師や看護師の離職が進んでいることやストライキが頻発していることから,半ば閉鎖状態に陥る医療機関もあり,十分な医療処置を受けることが難しい状況が生じています。

(4)当国では多くの日常品を輸入に頼っており,外貨不足により,日常的な食料品から機械部品等あらゆる物が不足しています。その状況は医薬品においても顕著です。薬局に十分な医薬品がないことが多い当国では,医師が処方箋を処方する際に,代替医薬品も含めて記入することが一般的となってきています。当国に渡航する場合には,持病があれば,本邦から医薬品を持参することや,必要なワクチン接種を予め渡航前に受けておく等について検討してください。

(5)重篤な疾病や大怪我に遭われた場合,医療先進国へ移送され,治療を行う必要が生じる可能性があります。医療先進国への移送は,概して高額な費用が必要になりますので,万一の場合に備え,緊急移送サービス等十分な補償内容の海外旅行保険への加入をお勧めします。なお,現在,公的な救急車サービスが機能していないため,自力で病院まで行く必要があります。長期居住者の場合,私的救急車サービス会社との契約加入を検討されることをお勧めします。

5 かかり易い病気・怪我

 マラリア,デング熱,ジカ熱,チクングニア熱,黄熱等の蚊によって媒介される感染症が,また麻疹やジフテリアなどの飛沫感染による感染症の発生も確認されています。(2018年10月現在)

(ア)マラリア

 2015年以降,爆発的に感染が拡がっており,2017年の感染者数は40万人を超えています。特にアマゾンに接するアマソナス州やボリバル州での発生が多く,この二つの州だけで全体の80%を超えるケースが発生しています。これらの地域に渡航する場合は,注意が必要です。また,マラリア感染拡大に対する抜本的な対策が取られておらず,2018年の感染者数はさらに増加することが予想されています。

  • 2015年 136,000例
  • 2016年 240,000例
  • 2017年 406,289例

 マラリアは,ハマダラカという種類の蚊に刺されることでマラリア原虫が体内に侵入して感染する病気です。ハマダラカは夕方から夜間に活発に活動する習性があります。マラリアには熱帯性マラリア,三日熱マラリア,四日熱マラリア,卵形マラリアの四種類があり,ベネズエラで確認されているマラリアのタイプは,三日熱マラリアが75%,熱帯熱マラリアが25%です。潜伏期間は種類により違いますが2~4週間で,主な症状は発熱です。

 第一の予防方法は蚊に刺されないようにすることです。予防内服薬(マラロン,メフロキン)もありますが,完全に予防できるとは限りません。現地におけるマラリア流行状況や服用者本人の性質,持病,渡航先での滞在中の生活スタイルなどを総合的に判断する必要がありますので,事前に必ず専門の医療機関(渡航外来或いはトラベルクリニック)などに相談してください。

 流行地に入ってから七日目以降に38度以上の高熱を発した場合には,直ちにマラリア検査(血液検査)を受け,陽性の場合は抗マラリア治療薬を早急に内服することが望まれます。マラリア迅速診断キット(Binax Now等),抗マラリア治療薬(Riamet, Coartem等)は,国内で不足しているため,持参することをお勧めします。

(イ)麻疹(はしか)

 2017年半ばから麻疹が急増しています。麻疹は全国24州のうち,21州とカラカス首都圏において蔓延し,2017年7月から2018年6月にかけて,2,285名の患者が確認されています。

 麻疹は,感染力が非常に強く,空気感染,飛沫感染,接触感染によって簡単に人から人に感染する急性のウイルス性発疹性感染症です。潜伏期間は10~12日で,免疫が不十分な人が感染すると高い確率で発症します。主な症状は発熱,咳,鼻汁,結膜充血,発疹などですが,まれに肺炎や脳炎になることがあります。予防のためには,血液検査で麻疹・風疹の抗体値を測定し,必要に応じて麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)の接種を必要回数受け,麻疹・風疹に対する免疫をつけておくことが重要です。

(ウ)ジフテリア

 2016年まで24年間発症例が確認されていなかったジフテリアが,同年10月にボリバル州において確認され,2016年以降1000人以上が感染し,2018年10月までに168人が死亡したとの報告もあります。さらに,カラカスでもジフテリアと思われる症例が発生しています。

 ジフテリアはジフテリア菌により発生する病気です。主にジフテリア患者の気道の分泌物によって移り,喉などに感染して毒素を放出します。この毒素が心臓の筋肉や神経に作用することで,眼球や横隔膜(呼吸に必要な筋肉)などの麻痺,心不全等を来して,重篤になる場合や亡くなってしまう場合があります。

 予防にはワクチン接種が有効です。ワクチン接種により,ジフテリアの羅漢リスクを95%程度減らすことができると報告されています。ジフテリアワクチンは1968年から始まった3種混合ワクチン(ジフテリア,百日咳,破傷風)に含まれています。定期の予防接種で2種混合ワクチン(ジフテリア,破傷風)を12歳の時に受けていれば,20代前半くらいまでは免疫がありますので,それまでは接種は不要です。その後は,1回の追加接種で10年間有効な免疫がつきます。幼少期に予防接種を受けた30歳以上の方で,10年以上ジフテリアのワクチン接種を受けていない方は,追加接種を考えてください。

(エ)デング熱

 ボリバル州,アマソナス州等国内東部を中心に,感染が拡大しています。保健省の発表によると,2015年には,51,711件が発生し,2016年には,30,000件に減少したとされていますが,当地NGOによると,2016年,2017年ともに,50,000件以上の感染が疑われています。デング熱は多くは軽症ですが,重症化して血小板が減少し,出血傾向となり,場合によっては死亡することもあります。発熱,関節痛など同疾患を疑わせる症状を認めた場合は,早めに医療機関を受診してください。

(オ)黄熱

 2014年に,2例の黄熱患者が報告されています。ボリバル州,アマソナス州等,アマゾンに接する地域では黄熱感染の危険があるため,これらの地域を訪れる場合は,黄熱ワクチンを接種することを強くお勧めします。また,当国への入国に際し,黄熱ワクチン接種記録(イエローカード)の提示は求められませんが,ベネズエラから他国に入国する際には,提示を求められる可能性があるため,周辺国も訪れる予定のある方は,接種することをお勧めします。なお,同ワクチン1回の接種で,生涯免疫が持続するとWHOから報告されていますが,国により解釈が異なるため,訪れる国に確認してください。

(カ)ジカ熱

 政府発表では,2016年に,3,700人が感染したとされる一方,国内衛生団体によると,臨床診断では40万~100万人余りの感染者が出ていると疑っている報告もあります。ジカ熱は,基本的には軽症ですが,ギランバレー症候群(末梢運動神経麻痺)との関連も示唆されています。また,妊婦が感染すると,胎児の先天性奇形や小頭症の発生が危惧されています。ジカ熱はウイルス感染症で,根本的な治療法はなく,予防することが重要です。蚊媒介性疾患であり,防蚊対策が欠かせません。

(キ)狂犬病

 2002年から2008年にかけて,犬やコウモリから感染した狂犬病患者が,約500症例発生し,多数の死者が出ています。最近では,2015年から2016年にかけて,コロンビアに接するスリア州において,狂犬病による死亡者が,少なくとも2件発生しています。また,2012年までのWHOによる報告において,アマソナス州で狂犬病にかかった犬が存在することが指摘されています。全国で,犬やコウモリ等から狂犬病に感染する可能性があり,動物に噛まれた場合は,直ちに医療機関を受診し,ワクチン接種を受けてください。ただし,現在,国内の狂犬病ワクチンが不足しており,迅速な対応を受けることができるかどうかは不明であるため,事前に予防接種(暴露前接種)を受けておくことが推奨されます。

(ク)その他の熱帯疾患

 リーシュマニア病,シャーガス病の流行地域は,その多くが,都会から離れた地域です。リーシュマニア病はサシチョウバエ,シャーガス病はサシガメ(カメムシの一種)の刺咬によって感染します。宿泊施設は,虫の入ってこないしっかりしたホテルを選んでください。

出典:ベネズエラ保健省, WHO, Sociedad Venezolana de Salud Pública, Observatorio Venezolano de Violencia, Observatorio Seguridad Vial de Venezuela

6 健康上心がける事

(1)当地の治安は悪化しており,行動範囲が限られています。このような状況でストレスが溜まりやすいことから,短期滞在の場合にはジムやプールがあるホテルに宿泊し定期的な運動を心がけることや,長期滞在の場合には,ゴルフやテニス等の趣味を持つことが大切です。

(2)不衛生なレストランも多く,食品衛生には十分注意を要します。生水を避ける,肉類中心の食事を改める,非衛生的な食品を摂らない等の注意が必要です。腸管感染症を防ぐために,食事や水は衛生的なレストランでのみ接種してください。

(3)海岸地区や森林地区には,熱帯感染症を媒介する様々な昆虫が存在するため,防虫対策を厳重に行ってください。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

(ア)赴任者に必要な予防接種

成人

 黄熱,A型肝炎,B型肝炎,狂犬病,腸チフスの接種をお勧めします。また,3種混合Tdap(破傷風,ジフテリア,百日咳)は10年毎に追加接種をお勧めします。麻疹は,幼少期に予防接種を受けていても,免疫が低下してることがありますので,追加接種をお勧めします。

小児

 現在,ベネズエラは,深刻な医薬品不足で,ワクチンの接種も困難な状態にあります。特に,免疫力の低い乳幼児や小児は感染症にかかりやすいため,日本の定期接種ワクチンと任意接種ワクチンについては,年齢的に可能なものは全て接種した上で当国に赴任することをお勧めします。加えて,黄熱,腸チフスのワクチン接種もお勧めします。

(注)日本から当国に入国する際に,黄熱予防接種証明書(イエローカード)の提示は必要ありません。しかし,黄熱汚染国から当国に渡航する場合や,当国から他国へ渡航する場合には,イエローカードの提示を求められることがあります。

(イ)現地の小児定期予防接種一覧

現地の小児定期予防接種一覧(2018年WHO)
ワクチンの種類 初回 2回目 3回目 4回目 5回目
BCG 出生時        
B型肝炎 出生時        
ポリオ(OPV,IPV) 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 18ヶ月 5歳
DPT 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 18ヶ月 5歳
Hib(インフルエンザb菌) 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 18ヵ月 5歳
MMR 1歳 5歳      
黄熱 1歳        
季節性インフルエンザ 6-23ヵ月        
ロタウイルス 2ヶ月 4ヶ月      
肺炎球菌 2ヶ月 4ヶ月 1歳    

WHO vaccine-preventable diseases: monitoring system. 2018 global summary

(注)現在,国内でワクチンが慢性的に不足しており,当地の医療機関でワクチンが接種できる保障はありません。可能な限り接種可能なワクチンを本邦で接種してから渡航されることを推奨します。

(ウ)その他

 小児が現地校に入園・入学する際は,原則,予防接種証明書の提出を求められます。提出を要する予防接種の種類は,学校によって異なりますので,赴任前にあらかじめ確認し,準備しておくことをお勧めします。

(注)乳幼児健診について:強制検診はなく,任意に行われています。出生後7ヶ月は毎月検診があり,その後は2ヵ月に1回あります。検診の内容は,身長・体重・頭囲の測定,心音の確認,耳や鼻のチェック等です。

8 病気になった場合(医療機関等)

(ア)病院

(1)Centro Medico Docente La Trinidad
住所:Av. Intercomunal La Trinidad-El Hatillo, Caracas
電話:0212-9490-6411
概要:海外留学経験のある医師がほとんどを占め,スペイン語だけでなく英語での受診も可能です。Dr. Victor E. Bracho Mosqueraは日本で二年間勉強したことがあり,多少の日本語が理解できます。専門は消化器系。
(2)Clinica El Avila
住所:6ta Transversal con Av. San Juan Bosco, Altamira, Chacao, Caracas
電話:0212–276-1111 / 1052
(3)Policlinica Metropolitana
住所:Cale A1, Urb. Caurimare, Baruta, Caracas
電話:0212-908-0100 / 0140
(4)Hospital de Clinicas Caracas
住所:Av. Panteon com Av. Alameda, Urb. San Bernardino, Caracas
電話:0212-508-6111

(イ)救急車サービス会社

(1)Aero Ambulancias Silva
住所:Av. Lic. Aranda, Urb. San Bernardino, Caracas
電話:0414-923-4257
概要:事前に契約する必要あり。ベネズエラほぼ全域をカバー。
(2)Rescarven
住所:Av. Orinoco com Calle Mucuchies, Urb. Las Mercedes
電話:0212-628-2483/0212-628-2426(個人)
0212-628-2571/0212-628-2507(団体)
概要:事前に契約する必要あり。カラカス首都圏のみカバー。

9 その他の詳細情報入手先

(1)在ベネズエラ日本国大使館 メールアドレス:consul@cr.mofa.go.jp

(2)厚生労働省検疫所 国・地域別情報(ベネズエラ):http://www.forth.go.jp/destinations/country/venezuela.html別ウィンドウで開く

10 現地語・一口メモ

 「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療スペイン語)をご参照ください。

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